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はじめに
厚生労働省の種類別障害者数の推移では,現在,内部障害者は増加傾向であり,心臓疾患が約半数を占めている1).慢性心不全患者は同年齢の健常者と比べて,有酸素運動能力が有意に低く日常生活動作(activities of daily living;ADL)に多くの不便を感じており2),心臓疾患患者に対して,ADL訓練を行うことが望ましいとされている.作業療法士の役割は,ADL遂行能力の評価をもとにした効率的な動作・作業の指導や作業方法の工夫など3)とされているが,現在,心臓疾患に対する作業療法の効果に関する報告は少ない.
無酸素性代謝閾値(anaerobic threshold;AT)は,心肺運動負荷試験(cardio-pulmonary exercise test;CPX)にて算出できる.負荷が増すにつれ,ある時点より運動筋において乳酸が産生し,乳酸の産生量に応じて二酸化炭素排出量(carbon dioxide output;VCO2)の産生が急増する.酸素摂取量(oxygen consumption;VO2)をX軸に,VCO2をY軸にしたときのスロープは乳酸の産生増加の時点から急峻となり,この時点のVO2がATとなる.AT以下の運動は,乳酸の蓄積が生じにくいため長時間,安全に施行できるとされている4).
現在,心臓疾患においてADL・手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living;IADL)へのアプローチに関する報告は少なく,心機能の低下により運動耐容能が低下している場合,より低い運動強度が要求され,安全で効率的な運動を行うためにCPXによる個々の運動耐容能の評価が必要とされている5).今回,ATを測定後,呼気ガス分析装置を用いてIADL動作時のVO2を算出し,心臓疾患患者に対して,過負荷を避けたIADL評価や動作指導を安全かつ効果的に実施できた症例を経験したので報告する.なお,発表に関して対象者に説明を実施し,同意を得ている.
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