総合リハビリテーション 45巻6号 (2017年6月)

特集 救命救急におけるリハビリテーション

今月のハイライト
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 急性期病院の入院期間の短縮が求められるなか,救命救急の分野における早期リハビリテーション介入の重要性が高まっている.本特集では,高度救命救急センターをもつ基幹病院で実際に救命救急におけるリハビリテーションにかかわっている専門家に,各方面からの解説をお願いした.

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はじめに

 集中治療領域において早期リハビリテーション介入の重要性は明らかとなっており,人工呼吸患者に対して早期から理学療法や作業療法を含め,チームとしてリハビリテーション介入をしていくことで日常生活動作(activities of daily living;ADL)を改善し,在院日数を短縮することが明らかとなっている1,2).待機手術を受けるために入院した患者に対しては,手術前からリハビリテーション介入が可能であり,事前に身体機能や精神機能などを把握し,集中治療室(intensive care unit;ICU)入室前までに手術後の早期リハビリテーション介入の重要性を説明することも可能である.一方,重症救急患者においては,入室までに十分な検査を受けているわけでもなく,病態やリスクが十分に把握できている状態ではない.救命救急センター(以下,救命センター)に入室する患者は術後ICUに入室するような患者とは疾患や病態が全く異なり,理学療法の実施内容を段階的に引き上げる判断を行うことがより難しい.

 本稿では,当院の救命センターの現状と理学療法士専従システムを紹介し,重症救急患者に対するリハビリテーションの介入効果や多職種連携のための取り組みを説明する.また,重症救急患者に対する早期リハビリテーションを安全に実施するための文化や制度の構築の必要性,リハビリテーション・スタッフの教育と多職種連携を促進するための教育などの課題および今後の展望について述べる.

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はじめに

 救命救急患者の多くは重症疾患を有し,しばしば複数の併存疾患を伴う.

 そのため全身状態が不安定で人工呼吸器,体外循環回路,高用量の血管作動薬が使用されていることも多い.ここでは,高い安全管理が求められる救命救急患者に対して,急性期からリハビリテーション処方を施行する際に,注意すべき点,リスク管理,リハビリテーションの中止基準について解説する.

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はじめに

 近年,敗血症など重症疾患(critical illness)による治療で集中治療室(intensive care unit;ICU)へ入室後,急性に左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群がICU関連筋力低下(ICU acquired weakness;ICU-AW)として知られる1,2,3).日本集中治療医学会および日本救急医学会による「日本版敗血症診療ガイドライン2016」4)では,ガイドライン改訂に伴いICU-AWが独立した章として取り上げられ,国内でも注目されている.しばしば抜管困難や離床困難に陥り,患者の日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL)を低下させることから,適切な診断や治療が必要である.今回,ICU-AWの疾患概念,診断,予防や治療について解説する.

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はじめに

 「重症疾患から生き残ることはICU-AWなどに関連する身体機能障害からの,回復の困難な旅の始まりです」1).この言葉は臨床にいるわれわれにとって非常に印象的な言葉である.

 過去20年,敗血症などの重症疾患により集中治療室(intensive care unit;ICU)で人工呼吸器管理を行った患者の生存率は大幅に改善している.それまで世界中の研究者は28日,90日の死亡率,ICU滞在期間,入院期間などの短期のアウトカムを調査してきた.しかし死亡率の低下とともに,近年ではICU退室後6か月〜5年間の身体機能や生活の質(quality of life;QOL)などの長期のアウトカムが評価されるように変化している.その理由として敗血症などの重症疾患の生存した患者に集中治療室獲得性筋力低下(intensive care unit-acquired weakness;ICU-AW)や集中治療後症候群(post intensive care syndrome;PICS)と呼ばれる患者の退院後の生活,そしてQOLなどを長期的に脅かす現象が明らかになったことが挙げられる.

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はじめに

 救命救急の現場において初期からリハビリテーション専門職〔言語聴覚士(speech therapist:ST)〕が摂食・嚥下障害のリハビリテーションを行うことはそれほど多くはない.しかし多くの患者がその時期はさまざまであるがいずれ口から食べることを検討される.特に長期人工呼吸管理後には嚥下障害を合併していることが多く,摂食・嚥下リハビリテーションの依頼も多い.長期人工呼吸管理後に多くみられる嚥下障害患者に対する多職種によるアプローチの実際を,ある症例を通して紹介する.

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 リハビリテーション医は何をめざして何をすべきなのか? について私が最近思っていることを述べさせていただきます.なお内容はリハビリテーション医学会近畿地方会誌の巻頭言でも同様のことを述べたが,非常に重要なことなので新たな読者のためにも掲載することをご容赦ください.

 近年,高齢社会の到来にともない身体の機能回復がさまざまに望まれ,それに応じてリハビリテーションへの期待は少しずつ大きくなっているようです.そのような背景でリハビリテーション医は何をめざして何をすべきなのでしょうか?

入門講座 障害者権利条約・2

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障害者権利条約の全体像

 今回は,障害者の権利に関する条約(以下,権利条約)の内容に焦点を当て,なかでもとくに重要と思われる事柄を紹介したい.これに先立って,権利条約の全体像をみることにする.

 実はあまり知られていないかもしれないが,権利条約は同じ理念の元で,2つの条約に分かれている.1つは,本連載が主題としている障害者権利条約であり,もう1つは障害者の権利に関する条約選択議定書(Optional Protocol to the Convention on the Rights of Persons with Disabilities,以下,選択議定書)である.これらは別々の条約で,前回記したように,前者の障害者の権利に関する条約は国連による29番目の人権条約で,障害者の権利に関する条約選択議定書は30番目の人権条約となる.

実践講座 体幹装具・下肢装具—私はこう選んでいる・1【新連載】

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はじめに

 片麻痺歩行では,非麻痺側による代償は必要不可欠である.しかしながら,麻痺肢を使わなければその神経回路は退行し(use it or lose it),過剰な代償的運動制御(bad habit)は機能回復に悪影響をもたらし(principle of interference),パフォーマンスの達成に必要な運動スキルの練習を反復しなければ改善は見込めない(principle of specificity)1).したがって,リハビリテーション治療における共通の方略は,麻痺肢の使用を促して,代償的適応(compensatory adaptation)をできる限り抑制し,課題特異的な運動スキルの練習(task-specific practice)を「“repetition”and“intensity”」の原則に基づいて課すことである.

 これらを実現するために,下肢装具はなくてはならないツールである.一方で,異常歩行を矯正し,安全性,安定性と効率性を提供する歩行用日常用具としての役割も重要である.この治療的側面と生活支援的側面とを鑑みた脳卒中片麻痺の下肢装具療法の考え方について,歩行再建の過程を追って述べる.

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要旨 本研究は,高齢者施設に入居している高齢者を対象に,短距離の歩行で詳細な歩容が測定できるシート型歩行分析装置を用いて,転倒経験高齢者の歩容の特徴を明らかにすることを目的に実施した.過去1年間に転倒を経験した高齢者19名と転倒を経験しなかった68名の歩容を比較した結果,転倒経験群は非転倒群と比べて歩行速度が有意に遅く,ストライドや歩幅が有意に狭かった.一方,歩隔や歩行角は有意に広く,立脚時間と両脚支持時間は有意に長かった.さらに,非転倒群の測定値を基準に転倒経験群の測定値の変化率を求めると,その変化の割合が大きかったのは,進行方向の距離因子(ストライド,歩幅)や時間因子(立脚時間,両脚支持時間)よりも,左右方向の距離因子である歩隔(24.1%増大)および歩行角(48.6%増大)であった.これらの知見から,転倒経験高齢者の歩容の特徴として,歩行速度の低下に関与するストライドや歩幅,および立脚時間や両脚支持時間の変化とともに,不安定な歩行を安定させるための歩隔や歩行角の変化が生じていることが示唆された.すなわち,転倒を経験した高齢者は,歩行の効率性よりも安定性を優先していることが伺えた.また,短距離の歩行分析でも高齢者の転倒を予測し,転倒の危険性が高い高齢者やその家族に注意喚起することで,転倒予防に貢献できる可能性が示された.

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要旨 【目的】人工股関節全置換術(total hip arthroplasty;THA)後の生活空間に影響する因子を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は女性THA患者35名とした.評価時期は,術後3か月および6か月とした.生活空間の指標にはLife Space Assessment(LSA)を用い,その他の評価項目は年齢,Body Mass Index(BMI),疼痛,膝伸展筋力,股外転筋力,歩行速度,Timed Up & Go test(TUG)遂行時間,Harris Hip Score(HHS),modified Gait Efficacy Scale(mGES),脱臼不安感とした.各時期において,LSAを従属変数とし,その他の項目を独立変数とした重回帰分析を行った.【結果】術後3か月ではLSAに影響を与える因子としてmGES,年齢,歩行速度が,術後6か月ではmGESおよび年齢が抽出された.【考察】本研究結果より,THA術後の生活空間は歩行に関する自己効力感や年齢,移動能力が影響し,脱臼不安感や個別の筋力は関連しないことが明らかとなった.したがって,THA術後患者の生活空間を拡大するためには筋力トレーニングや関節機能に対するアプローチだけでは不十分であり,歩行に対する自己効力感への介入も必要であると考えられる.

連載 リオパラリンピックレポート—東京パラリンピックへの道

本部医務班の活動 羽田 康司
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 リオ2016パラリンピック競技大会(以下,リオパラ)は2016年9月7〜18日にかけてブラジル・リオデジャネイロで開催された.本部医務班は医師3名(内科,整形外科,リハビリテーション科各1名),看護師2名,トレーナー3名で構成され,日本時間8月30日に日本を出発し9月22日に帰国した.本稿では医務班の出発前国内での準備・活動と現地での活動について概説する.

連載 呼吸リハビリテーションの評価

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 運動耐容能(exercise tolerance functions)とは,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)によれば「身体運動負荷に耐えるために必要な,呼吸や心血管系の能力に関する機能」であり,全身持久力や有酸素能力などが含まれている.運動耐容能の評価指標には,最大酸素摂取量(maximal oxygen uptake;VO2 max),嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold;AT),最大仕事量(maximal work rate;WR max),歩行距離などがあり,主観的指標としては自覚的運動強度(ratings of perceived exertion;RPE),呼吸困難(dyspnea,ボルグCR-10スケール1)で測定)などがある.

 運動耐容能を測定するには,運動負荷試験(exercise testing)が行われ,トレッドミル(treadmill)や自転車エルゴメータ(cycle ergometer)が用いられる.また,フィールドテスト(field tests)として6分間歩行試験SIX-minute walk test;6MWT)やシャトル歩行試験(shuttle walking test;SWT)などの歩行試験も行われるようになってきた.運動負荷様式には,一段階(一定)負荷,多段階負荷,ランプ(ramp)負荷などがある.

連載 認知症の臨床評価尺度

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 認知症の中核症状である認知機能障害の評価を行う場合,質問式の認知機能尺度と行動・観察式による評価尺度がある.質問式は,直接被験者と面接し認知機能障害の評価をするものである.普段の日常生活や最近の出来事について家族からの情報がない場合に,認知機能障害の評価を行う際には有用である.また,患者単独での受診や独居者に対する判定の場合でも同様である.しかし,被験者が視力障害や難聴などの感覚器機能の障害を有する場合,あるいは麻痺や失調などの運動機能障害を有する場合には,検査施行が困難であり,その評価は一部分に限られてしまう.

 神経心理学的検査やスクリーニング検査の多くが質問式に該当する.質問式でも行動・観察式による評価尺度であっても注意しなければならないのは,一部スクリーニング検査などではカットオフ・ポイントが設定されているものの,これら評価尺度の結果は臨床情報の一部であって,神経心理学的検査の結果のみによって診断が決定されるものではない.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 昭和8年に37歳で亡くなった宮沢賢治は,自らの結核患者としての体験をいくつかの詩に綴っている.たとえば,『夜』は,「これで二時間 咽喉からの血はとまらない」という書出しで始まる詩であるが,「こんやもうここで誰にも見られず ひとり死んでもいいのだと いくたびもさう考へをきめ 自分で自分に教へながら またなまぬるくあたらしい血が湧くたび なほほのじろくわたくしはおびえる」と,半ば死を覚悟しながらも,いざ咽喉からの出血を見ると脅えてしまうという,当事者ならではの実感に溢れた詩である.また『眼にて言ふ』には,大量出血して死に瀕した時の澄みきった心境が描かれているが,これらの中で最も賢治らしい詩は,賢治の死後,『十一月三日(雨ニモマケズ)』とともに手帳に発見された『十月廿日(この夜半おどろきさめ)』ではないかと思われる.

 『雨ニモマケズ』の2週間前に書かれたと推測されるこの詩は,「この夜半おどろきさめ 耳をすまして西の階下を聴けば ああまたあの児が咳しては泣き また咳しては泣いて居ります」という書き出しの詩である.この女児の両親は,昭和3年12月に賢治が急性肺炎になった時,自分たちが使っていた日の当たる広い部屋を賢治に与え,自分たち夫婦はそれまで賢治が病んでいた暗い部屋に移ったのである.

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 ドキュメンタリー映画「小さな町の小さな映画館」の被写体となった浦河大黒座は,北海道は日高振興局所在地・浦河町の海辺に立地している.スクリーンの両袖には,次回公開作品,近日公開作品のポスター.ブザーが鳴っておもむろに幕が開く.本編前はCMや犯罪抑止・マナー喚起の映像を流すこともなく,予告編のみ.これぞ昭和30年代まではあったであろう田舎町の映画館の風情.映画愛好家なら一度はここに来るべきだ.今冬,筆者は,ここでアニメ「この世界の片隅に」(監督/片渕須直)と正対した.贅沢の極みである.

 本作の真骨頂は,戦前,戦中を生きた一人の女性にスポットを当てながら,当時の庶民の生活をリアルに再現するところにあるが,それは大正7年(1918年)に創業し,100周年を迎える浦河大黒座の劇場空間とも共振する.それゆえ<贅沢の極み>なのだ.

私の3冊

私の3冊 三苫 由紀子

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 現在,歩行分析に関連する多くの書籍のうち,国内で最も販売実績があるのは『観察による歩行分析』(医学書院,2005年)であろう.評者が行っている医療関係者を対象とした講習会では,参加者が講習会にこの本を持参されることが多い.評者はこの本の訳を担当した関係でサインを頼まれることがあるが,ほとんどの場合に持参された本が使い込まれていることに驚いている.『観察による歩行分析』は購入しただけでなく,実際に活用されている本なのだと実感する.

 今回紹介する『実践にいかす歩行分析』は,『観察による歩行分析』の次のステップに読まれるべき書籍である.原著者はドイツ人の生物学博士であり,整形外科靴技術の臨床応用と技術開発に取り組んでこられたOliver Ludwig氏,訳者は『観察による歩行分析』の訳で中心的役割を果たされた月城慶一氏と,多くのドイツ語の専門資料翻訳の経験をお持ちのハーゲン愛美氏である.

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 医療系学部で生理学を教えている立場から,本書を紹介させていただく.

 本書は第1章「一般生理学」,第2章「植物性機能」,第3章「動物性機能」,第4章「臨床生理学」から構成されている.

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文献抄録

次号予告

編集後記
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 創刊45周年を迎えた今年,表紙,誌面のレイアウトを一新したことは1月号ですでにお伝えいたしました.実はもう一つ,4月号から「投稿規定」がリニューアルしております.重要なページですので,この場を借りて,「投稿規定」の改定点についてちょっとご説明させていただきます.

 まず,「抄録」について.これまでは,『研究と報告』『短報』『調査』『総説』には400〜600字の抄録を付すとなっていましたが,すべての論文に400字程度の抄録を付すこととなりました.また,抄録は執筆枚数に含めなくてもよくなりました.そして,「利益相反について」「二重投稿について」「共著者について」の項目が追加されました.これらは論文投稿にあたってとても大切な事項ですので,この度の改定であえて記載しました.抵触するかどうか判断に迷った場合は,規定の最後にあるように,投稿の際に関連書類もすべて提出してください.編集委員会で判断いたします.せっかくの研究論文.知らず知らずのうちにルールに反していた……となってしまっては残念です.他にも細かな改定事項がありますので,投稿の際には今一度「投稿規定」をご確認ください.

基本情報

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総合リハビリテーション
45巻6号 (2017年6月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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