Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「この世界の片隅に」—<愛は独占するものではなく分けるもの>という振る舞いを描く
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.663
発行日 2017年6月10日
Published Date 2017/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201003
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ドキュメンタリー映画「小さな町の小さな映画館」の被写体となった浦河大黒座は,北海道は日高振興局所在地・浦河町の海辺に立地している.スクリーンの両袖には,次回公開作品,近日公開作品のポスター.ブザーが鳴っておもむろに幕が開く.本編前はCMや犯罪抑止・マナー喚起の映像を流すこともなく,予告編のみ.これぞ昭和30年代まではあったであろう田舎町の映画館の風情.映画愛好家なら一度はここに来るべきだ.今冬,筆者は,ここでアニメ「この世界の片隅に」(監督/片渕須直)と正対した.贅沢の極みである.
本作の真骨頂は,戦前,戦中を生きた一人の女性にスポットを当てながら,当時の庶民の生活をリアルに再現するところにあるが,それは大正7年(1918年)に創業し,100周年を迎える浦河大黒座の劇場空間とも共振する.それゆえ<贅沢の極み>なのだ.
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