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はじめに
第一・第二鰓弓症候群とは,第一および第二鰓弓の発生時の異常により骨や軟部組織の形成不全を生じる先天性疾患である.特徴的な変形は外耳道閉鎖と耳の形態をなさない小耳症および下顎部に認められ,多くは片側性であり顔面は非対称となる1).発生頻度は,診断基準により幅があるが,おおむね3,000〜5,000出生に1人と報告されており,男女差はない2,3).
これまで,耳介形態を問わない小耳症例53例中25例に軟口蓋の運動不良を伴うこと4)や,外耳道閉鎖症を伴う小耳症例16例中13例に軟口蓋の運動不良を伴うこと5),第一・第二鰓弓症候群あるいは小耳症例の48例中24例に軟口蓋の運動不良,そのうち7例に鼻咽腔閉鎖機能不全があること6)が報告されている.これらの報告では,小耳症の変形の程度はさまざまであり,第一・第二鰓弓症候群の症例の鼻咽腔閉鎖機能と音声言語に関する報告はほとんどみられない.
国立成育医療研究センター(以下,当院)では,鼻咽腔閉鎖機能不全のある症例に対して,口蓋裂チーム外来による評価を行っている.本稿では,当院の口蓋裂チーム外来を紹介し,第一・第二鰓弓症候群と診断された個々の症例についての考察を報告する.
当院の口蓋裂チーム外来とは,関連する形成外科医師,耳鼻咽喉科医師,歯科医師,リハビリテーション科言語聴覚士が一堂に会して,鼻咽腔閉鎖不全の症例の検討を行うものである7).口蓋裂チーム外来は,1か月に1回の頻度で行い,症例は10例を上限に行っている.表1のごとく,各科の医師,言語聴覚士らが専門性を活かし,多面的に評価を行う.症例によって異なるが,口蓋裂チーム外来の当日までに表1の評価を組み合わせて行い,当日は,耳鼻科医師により鼻咽腔内視鏡を用いて,会話時と復唱時の鼻咽腔の動態を各診療科医師および言語聴覚士らで評価する.内視鏡検査では直接,鼻咽腔の閉鎖動態を観察でき,閉鎖時の軟口蓋,咽頭側壁,咽頭後壁の動きを同時に知ることができ,産生する音の比較などが可能である8).また,本人および家族を含め全員で観察するため,現状の評価をもとに方針が明確になりやすく,有益であるといえる.
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