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はじめに
病院内での感染症への対応については,通常時からの感染予防,早期発見の体制整備ならびにアウトブレイクが生じた場合の早期対応が重要となる.医療機関などにおける院内感染対策について,リハビリテーション分野においても重要な義務の1つである.
リハビリテーションの現場では,セラピストが,さまざまな病棟や科の患者に対し,同じ空間・同じ器具を使用しリハビリテーションを実施しているため,セラピストと患者による身体接触とリハビリテーション器具による間接的接触が問題となる.さらに,リハビリテーション科は病院内のさまざまな病棟の患者と接点があるという点において,病院全体へ感染を拡大させてしまうリスクがあることを念頭に置く必要がある.病室でリハビリテーションを実施する場合もまた,セラピスト自身が感染拡大を引き起こす可能性がある.
また,リハビリテーションを受ける患者のなかには,抗がん剤治療やステロイド治療によって免疫力が低下し,感染症になりやすい患者もおり,易感染性をもつ患者への対応も注意すべき点である.
院内感染は病院にとって不利益な事象であるが,リハビリテーションにとってもまた大きなデメリットをもたらす.第一に,院内感染によって個室隔離や訓練場所の制限が指示され,活動が制限されることは離床や運動の妨げとなり,もともと治療で臥床を余儀なくされがちな急性期ではさらなる臥床や廃用症候群を引き起こす要因となってしまう.
第二に,急性期リハビリテーションは,回復期や維持期(生活期)へ患者をつなぐ役割があるが,感染によって転院先や施設入所,在宅サービスの利用にも制限を及ぼし,退院・転院に難渋してしまうケースもある.
第三に,疾患の治療の妨げになるだけでなく,院内でアウトブレイクした際は病院の費用面,評判面でも痛手となってしまう.
第四に,患者自身の精神的な負担となり,うつ傾向や全般的な意欲の低下につながってしまうケースもある.そのため,病院職員として院内感染の意識を高め,実践していくことは,リハビリテーションスタッフにおいてもきわめて重要な責務である.
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