総合リハビリテーション 13巻4号 (1985年4月)

特集 老人痴呆とリハビリテーション

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はじめに

 近年,わが国は平均寿命の延長と出生率の低下などによって老年人口は年々増加し,急速な勢いで高齢化社会を迎えつつある.それにともない老年痴呆(senile dementia)と脳血管性痴呆(cerebrovascular dementia)に代表される老年期痴呆患者の増加が深刻な社会問題となってきた.長谷川らの調査によると65歳以上人口の4~5%にみられ,全国では約50万人の痴呆老人が推定されている1)

 痴呆に関してこれまで数多くの研究がなされているが,そのメカニズムと治療に関し,現在,われわれの持っている知識は極めて限られている.しかし,ごく最近,老年痴呆におけるコリン作動性ニューロンの重要性やMeynert核を中心とする病理学的所見が明らかにされるに及んで,難問解決への糸口が発見された感がある.

 本稿では,老年期痴呆の定義,診断,Alzheimer型老年痴呆の病理および神経伝達物質について,最近の知見を概説する.

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緒言

 わが国における高齢者人口の急増にともない,単なる運動機能障害と共に老人の精神機能の低下は無視出来ない問題となっている.また老齢化の比率が高まるにつれ,痴呆を来す老人数が増加していることは諸家の認めるところである.この重要な課題への解明の手がかりとして,われわれは脳循環の加齢に伴う変化,またその知的精神機能との関係について検索を行ったので述べる.

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はじめに

 近年,わが国は世界有数の長寿国となり,高齢者対策が社会的問題になっている.しかし,それらの問題は,長命になった日本人の生物学的ライフ・サイクルと社会的ライフ・サイクルとの間の微妙な狂いが生じている点にあり,今日の老人の悲劇はここに要約されるともいえるのではないだろうか.

 過去に較べて,現代の日本人は成長も老化もゆるやかになり,熟年期間も持続されるようになり,その人生はなだらかな丘陵に似てきているのである.つまり,明治時代と較べて現代の50歳は知力,体力,気力のすべてにおいて若くなっている.この活力を産業革命ともいうべき生産構造の変革を根底とすべき社会体制のなかでどう生かすかということが問題なのである.人々の英智が新しい社会的ライフ・サイクルを完成し,老人や障害者問題などの社会福祉問題を解決する糸口にしたいと考えている.

 かつてない速さで到来する高齢者社会に臨床医学も対応しなければならないのは当然である.そのような意味で今回のテーマは時宜に適したものといえよう.けれども,それに答えるのは難しいことである.それは老人痴呆の定義とその範囲をどこにとどめるかということにつきるものといえよう.

 昭和45年以降,脳卒中の発病率は下降線をたどっているが救命率がそれ以上に上昇しているために,有病率は老齢人口比に比例して増加の傾向を示している.

 脳卒中の有病率は年々増加の傾向にある.初発年齢も高齢化の傾向にある.発作後の平均余命も長くなってきている.つまり,脳卒中のリハビリテーションの対象者は漸次高齢化し,長期間のケアーが必要になってきている1)

 高齢者が痴呆様症状を示したからといってもその成因は種々様々である.脳実質の退行変性による老年痴呆,Alzheimer病や脳血管障害による多発梗塞性痴呆や脳動脈硬化性痴呆などがある.また,老年期うつ病,老人ぼけ,軽度の意識障害なども類似した症状を示す.しかも,痴呆が軽いときには症状が改善されることがあるが,多くは進行性であり非可逆性である.さらに,心理的要因や環境因子などもこれに複雑に関与してくるのである.

 リハビリテーション医療の役割は,損われた機能を回復させようとするだけではなく,残存能力を強化・開発して失われた能力を代償したり,道具や生活環境を整備することで社会生活における不自由を克服させようとするものであり,さらに,その治療過程において,障害者が自らの障害を受容し,新しい価値を創造して,全人間としての生活を再生させようとするものである.

 したがって,回復不能な老人痴呆患者が脳卒中で倒れたとしても,はたして,リハビリテーション医療にどれ程のことができるというのであろうか.たしかに,痴呆症状を呈する患者の治療に従事することは少なくない.しかし,その治療目標はけっして高いものではない.むしろ,私は,脳卒中患者に対するリハビリテーション医療において最大の阻害因となるものが,身体的機能の重症度よりも知能の低下~痴呆化を中心とする精神的機能障害の影響の方が大きいと考えている.

 そこで本稿では,老人にみられる痴呆と痴呆症状を呈するものについて紹介するとともに,脳卒中後にみられる精神的機能障害,卒中後痴呆について私見を述べ,さらに,若干の症例について言及することにしたい.

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はじめに

 高齢化社会の到来とさけばれるようになって老年者への関心がとみに高まってきた.なかでも「寝たきり老人」,「ぼけ老人」という言葉はすっかり日常的になっている.わが国における人口高齢化速度は,昭和75年までに14~15%の水準に達するとされている.西欧ではこの数値に達するのに100年を要しているが,わが国ではわずか45年間でこの人口に至るのである.このことは,高齢者につきまとう疾病の多様さと慢性化傾向を有するという医療上の点のみならず,高齢者をとりまく家族,住宅などの社会問題に早急の対応を迫られていることを意味しているが,各問題に含まれる意味の検討が十分に行われない限り,問題相互のシステム的な解決は容易なことではない.

 老年期痴呆は,老年期における特徴的な疾患として取り上げられる.この疾病は今後も増大することが予想され,複雑な問題を提供してくる.たとえばささいな原因でも臥床が続くと寝たきり状態になり易いこと,そのためリハビリテーションプログラムにのりにくいことがあげられる.したがって,その予防と対策を進めることが切に望まれている.

 一方,大腿骨頸部骨折は同じように高齢者に多く,確実に歩行不能におちいり,早急に積極的整形外科的治療を行いリハビリテーションのルートに乗せないと「寝たきり」にしてしまう.大腿骨頸部骨折と老年期痴呆との合併は,航海中の船体(身体)と船長(精神)との関係にたとえることができるであろう.いずれにも障害を認める際に,一方の障害のみに治療介入しただけでは治療プログラムが円滑に進まないことは当然のことであろう.海に漂う破損船の中で船長の治療を行い,また一方で船長の十分な指令が得られない破損船の修復を自ら行うのである.ここにいたって人間全体へのケアが問われてくるのであって,われわれの眼前に存在するこの老年者は,現実に毎日数多くみられる.この中にわれわれが関わらねばならぬ「何か」がある.テーマである大腿骨頸部骨折と老年期痴呆との関りは,患者の「寝たきり」防止にあるといってよい.だが現実にはそれが困難なことが多く,リハビリテーション医学の可能性にチャレンジしている課題の一つでもあろう.

痴呆老人のデイケア 矢内 伸夫
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はじめに

 急速な長寿化現象は,老人特有の疾患,障害への関心を高め,そのキュアとケア,あるいは,医療と福祉の接点を求め,深刻な社会的課題にまで発展してきた昨今である.

 なかでも,いわゆる呆け老人対策は,少なからずも社会危機の様相を呈しつつある.それと言うのも,わが身,わが家族を呆け老人に,また,その介護する立場になぞらえるほど身近な問題であり,何十年の苦節と栄光を飾るエピローグに陰さす姿を目のあたりにしながら,さて,その介護ともなれば,家族ばかりでなく,施設,病院のいずれもが,それぞれの限界を越えた対応に苦慮するからであろう.

 ことに最近は,老人医療とリハビリテーションの用語が一対になるほど,老人リハの関心は高まっているが,ただ,これを手離しで喜べないジレンマを臨床家は皆体験しているのではないだろうか.いわゆる従来型のリハ概念では対処できないことばかり提起されるところに,その特長があるとさえ言えよう.

 たとえば,直面するプラトーの壁,痴呆をはじめ,リハ阻害因子と言われる悪条件を避けて老人リハは存在しないからである.まして,痴呆老人のほとんどは多発性脳梗塞などの脳血管障害を原疾患としているため,ADL改善に向けての諸訓練もさることながら,高次機能,精神機能への対処が重要となってくる.このように,痴呆老人は,身体的・精神的・社会的状況において,あらゆる障害を包括しており,そのリハこそ,本来的なリハビリテーションの集大成ではないかと思う.あえて,この痴呆老人リハビリテーションへの試行錯誤として,今回,デイケアを実施した動機と現況から,その意義および問題点などについて若干触れてみたい.

巻頭言

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 私が心疾患,とくに心筋梗塞のリハビリテーション(以下リハ)に興味をもち始めたのは,昭和34,5年のことであった.昭和34年夏,まじめで,診断についてはかなりの認識があると思われた臨床家から,約10カ月間も絶対安静をさせられている心筋梗塞例について,某誌の質疑応答欄で質疑を受け,いろいろと感じさせられることが多かった.さらに翌35年,心筋梗塞患者の病後指導について原稿を依頼され,必要にせまられ,文献を集めて少々勉強する機会をもち,心筋梗塞のリハについて認識を新たにした.

 これより前の昭和31年日本内科学会の狭心症のシンポジウムで,故木村登教授がMasterの2段階を使用した積極的運動負荷療法について,画期的な御発表をされた.当時の私の率直な感じでは,何だかおそろしいような,不安な,懐疑的な感じが強かったが,今日からみて卓見というべきである.昭和35年頃から東大の小林太刀夫教授とその御一門が心臓病のリハ,無線テレメータ心電図などを発表されるようになり,それにも刺激されて,心筋梗塞患者の入院中のリハを日常臨床のうちに少しずつ導入するように心がけた.昭和37年雑誌「内科」の社会復帰の特集で,心筋梗塞の社会復帰を担当し,予後とリハについて不十分ながらも総説し,乏しい経験を述べた.当時,私どもは運動負荷心電図の判定基準の問題も検討していたが,その面から無線テレメータ心電図の研究にも入った.これはリハの方にも応用し,単なる運動負荷ばかりでなく,入浴中(浴槽中)の心電図の記録にも成功するようになったのが,昭和38年のことであった.

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はじめに

 男子脳卒中患者における発作後の性機能回復は,患者の心理情緒面への影響1)は勿論,リハビリテーションプログラムの外泊や退院時の生活指導においても無視できない問題である2,3).しかし,我が国では脳卒中後の性機能回復については,プライバシーに関する事柄のためこれまであまり深い検討は行われていない.ことに脳卒中急性期は病院に入院し,さらにリハ施設で訓練を受け,その後に家庭に帰るという現在の医療体系の中で,どのように脳卒中患者の性機能回復が起こっているかを検討したものは少ない.

 我々は男子脳卒中患者の性機能回復の時期と性機能回復の頻度を明らかにするとともに,自宅生活の患者における性機能障害と心理情緒面との関連を検討したので報告する.

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はじめに

 運動における持久性について猪飼1)は一定の速度や強度をもった運動を持続して遂行する能力であるとし,また一定の時間以上持続する身体活動というストレスに耐える能力でもあると述べている.一般にこの持久性は筋活動が主体である局所持久性と呼吸循環機能が主役をなす全身持久性に大別されることがある.全身持久性を測定する方法について進藤2)は作業成績(Performance)によるものと身体資源(Physical resources)によるものとに分け,前者としてトレッドミルでの最大持久走時間,自転車エルゴメーターによる最大作業量4),一定時間内に走った距離5)などを,後者として最大酸素摂取量6),最大換気量,最大心拍数,肺拡散能力などを挙げている.これらの方法で測定される全身持久性は体力科学の分野では筋力,敏捷性,平衡性,協応性,柔軟性などと並び,体力に関する代表的な評価項目の1つである.

 一方,運動機能に障害がある場合には運動機能に関するテストとして関節可動域,筋粗大力,動作のスピード,平衡機能,協調動作などの評価が行われるが,全身持久性が評価の対象となることは少ない様に思われる.この理由として1つには運動機能に障害がある場合,全身持久性をどの様な概念として捉えたらよいかについての検討が十分なされていないこと,2つには主として健常人を対象に開発されてきた測定法がそのままの方法で適用することが困難であることを挙げることが出来よう.ところで全身持久性を評価する場合,健常人では運動負荷テストを実施するための運動機能には大きな支障がないことが前提となっている.しかし運動機能に障害がある場合には,実施可能な運動種目に大きな制限をうけるため,全身持久性の中核ともいえる呼吸循環機能をテストの成績に十分反映することが困難となる.そこで先ず対象者の運動機能の障害の程度に応じて,その能力を最大限に引き出し得る運動種目を選択し負荷条件を設定することが必要となってくる.実際のテストにあたってはall outまでの時間測定の方式は適用できないことが多いため,先ず一定の時間内に努力を払って実施し得た運動の回数などと,その運動時の呼吸循環器系の応答を示す指標をもとめる.そしてこの両者またはいずれかをもって全身持久性の1つの側面を評価するという考え方を提案したい.著者ら7)は片麻痺に運動負荷テストを行う場合,あらかじめ運動能力に応じた負荷方式を設定しておくことが有用であるとの考えに立ち,4つの段階とそれに対応する6つの負荷方式を設定している.今回これらの負荷方式の中から踏台昇降テストを選び,片麻痺の応用的な生活動作の能力を予測することを主目的に全身持久性の評価を行い,本テストの臨床応用に関する基礎的な諸問題について検討を行ったので報告する.

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はじめに

 1909年Horsley1)が“Chronic Spinal Meningitis”として梅毒性クモ膜炎を報告して以来,かつては“原因不明の脊髄炎”として扱われてきた疾患が見直され,種種の原因によるクモ膜炎が明らかにされた.結核性のクモ膜炎に関しては,1947年Smithら2),Ransome3)らが初めて報告し,その後1950-60年代に多数の症例4~6)が発表された.しかし最近は,抗結核剤の普及により,結核性クモ膜炎の発症は稀となった7~10).また1978年Shawら11)はMyelographyでクモ膜炎と診断された症例に,結核菌を含めて感染が証明されるのは,極く稀であると報告している.

 最近,当リハビリテーションセンターにおいて,近年稀となった結核性髄膜炎に続発したクモ膜炎性の不全対麻痺2例を経験した.これらは深部覚障害を前景に有する特異な対麻痺のため,リハビリテーション的に興味のある経過をたどった.若干の考察と共に報告する.

講座 リハビリテーション医に必要な全身管理(4)

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はじめに

 リハビリテーション科が対象とする患者には,高齢者が多い上,障害の原因としても血管原性の疾患が比較的多い.また,少数ではあるが,筋ジストロフィーのように原疾患そのものが心筋を冒す場合もあり,多くの患者に心合併症の存在が予想される.一方われわれが日頃処方している運動療法は,心・循環器系からみれば負荷そのものである.適切な運動負荷であれば,心機能を改善することはすでに指摘されているところであるが,過負荷になれば心疾患をもつものにとって致命的であることはいうまでもない.それ故,リハビリテーション医にとって患者の心機能を正しく評価することは,これらの患者の機能的ゴールと運動量を決定する上で,基本的かつ重要な条件である.

 ここではリハ医の立場から,リハビリテーション科で入院治療した患者のデータを基に,心合併症の発見とその管理について検討する.

講座 リハビリテーション医学と性の問題(4)

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はじめに

 骨関節障害者が性に関して,特長あるかかわり方をしている,とすれば,それは先ず肢体の不自由と外観上の変形からの問題であろう.肢体の不自由は直接性的行為に関する行動制限や障害を想起させるし,外観上の変形は疾患や外傷による脊柱後彎や四肢の短縮,変形,先天畸形,関節運動制限や麻痺による動作の異常などをふくめて,個人の審美的外観4)をそこない,対社会的側面からのハンディキャップとして性の行動を制限する.

 すなわち,身体的問題と並行して重大なのは,外観上の変形,肢体不自由に対する障害者自身の精神心理的なダメージである.骨関節障害者の性の問題を考えるとき,このことを除外するわけにはいかない.それは性に関しての身体的困難度よりも,このような精神心理的側面が障害者自身に与える影響の方がむしろ大きいと考えられるからである.つまり,精神心理的なダメージのために,障害者が自分の身体的困難度をより過大視して日常社会的生活に消極的になることは多々あるが,そのうちでも性に関する問題への取組は最も困難度の高くなっているものの一つであろうと思われる.

 ここに報告する5例は幼時骨関節結核に罹患し,躯幹・下肢に発育障害・変形をもっている.結核予防機構の発達した現代では,今後の世代にこのような発育障害・変形をもつ症例に遭うことはないかもしれないが,現時点ではこのような重度の骨関節障害をもつ女性たちが,主婦として積極的に社会に飛びこみ,結婚・妊娠・出産・育児に,心身両面からの多くの難題を乗り越えつつ女性としての歩一歩をあゆんでいる.そこにおこる多くのドラマは他の原因による骨関節障害者の日常生活や,精神心理的問題,性の問題に関する取組みに,大きな示唆と具体的な助言・勇気を与える糧となりうるのではなかろうか.

 このような観点から,5例の生活歴と身体的困難を克服していく過程,障害受容のあり方などについて報告する.

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 第8回を迎えたリハビリテーション交流セミナーは,昭和59年12月12日,13日の両日に3年ぶりに東京都に戻り,新宿区戸山町に新設された全国身体障害者総合福祉センター戸山サンライズで開催された.

 “交流の広さと深さを求めて”のテーマの下で1988年に東京で開かれる第16回Rehabilitation International世界会議を目指し405人の参加者を得て開催された.

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 七戸幸夫博士は大正13年生れの生粋の道産児で,旭川中学,陸軍士官学校(中退),北大医学部を終え昭和26年,札幌医大整形外科に入局,累進して講師となられた.昭和32年,北海道立札幌整肢学院副院長にお迎えしたが,全道の肢体不自由児父母の会の育成や,昭和35年,全北海道を襲った空前絶後のポリオ集団発生のとき私の無二の協力者として果たされたすばらしい活躍は,いまもリハビリテーション関係者の話題をにぎわせる.

 これまで28年もの間,七戸氏は心身障害児者のために一身を捧げてきた.外柔内剛,心やさしい理想家で先見性に秀で,昭和37年,新設の旭川整肢学院(現在の療育センター)院長就任後は,全国肢体不自由児施設運営協議会の理事として日本の療育界に重きをなし,特に北海道北半部では辺地のすみずみまで直接療育の実践に当られた.巨大な実践的指導者として氏が手づくりで育てた子供たちは,いますくすくと社会復帰の緑野に伸びている.

一頁講座 義肢のパーツ・4

油圧,空圧制御膝 中川 昭夫
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 摩擦を利用した制動装置と簡単な伸展補助装置によっても,かなり満足できる歩行が可能であることは,前回述べられた通りである.しかし,日常の歩行は一定のものばかりではなく,歩行速度は様々に変化する.そのような状況では,歩行速度の変化に応答して,制動抵抗が変化する装置が必要である.現在では,これらは空気または油などの流体を利用した装置により,ある程度実現されている.歩行のサイクルのうち,速度にかかわるのは遊脚相であり,いずれの装置も遊脚相制御を中心として設計されている.

 流体を媒体とした装置の抵抗力は,シリンダのある部屋と他の部屋の間に設けられたオリフィス(絞り)部分を,流体が高速で流れる際に発生する.この抵抗力は,そこを流れる流体の流速に応じて変化するため,オリフィスの断面積が一定であっても,ある程度の範囲で歩行速度に対応して,その抵抗が変化する.

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 本書は,いろいろな病気からのリハビリテーションを網羅してあり,リハビリテーションという言葉の意味を十分理解させる内容である.つまり,リハビリテーションといえば運動障害あるいは言語障害に限って使用されるという従来の漠然とした考え方をあらためさせる本である.第3版であり,初版から約10年を経ており,多くの人々に愛読されていたことが解る.

 内容は,まず老人人口の推移について述べ,老人の問題の基本的な概念が得られる.次いで老人と老化現象について細胞レベルから臓器,器官レベルまでを解り易く解説してある.続いて,老人の訴えの特徴とその接し方として,具体的な問題の注意点などをきめ細かに説明されている.

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文献抄録

編集後記 横山 巖
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 今月の特集は老人痴呆とリハビリテーションである.高齢化社会が進行中の今日のわが国において,老人痴呆は極めて大きな社会的関心事となっているが,リハビリテーションの領域においても大きな問題としてクローズアップされてきている.

 本特集では先ず,老人痴呆(老年期痴呆)の定義,診断,病理に関する最近の知見について,阿部・東儀氏がわかり易く解説をされている.老年痴呆に関する最近の病態生理学的知見の進歩については注目すべきものがあるが,一方,臨床に携わる者にとっては,著者らが指摘されたように,痴呆症例の20~30%を占める回復可能の痴呆の鑑別に細心の注意を払わなければならない.次に米本氏らは,超音波による総頸動脈血流量の測定値と老人痴呆に関する長谷川スケールの値との相関関係について検索して有意の知見を得たことを述べられたが,この超音波総頸動脈血流量測定は比較的簡単に行える検査法なので,もし再現性がかなり高いものであるならば,痴呆以外にもリハビリテーション上で応用の範囲が広いものと思われる.次に三島氏らは脳卒中のリハビリテーションと老人痴呆について,水島・岩倉氏は大腿骨頸部骨折のリハと老人痴呆について,また,矢内氏は痴呆老人のデイケアについて,それぞれ,豊富なご経験に裏打ちされた数々の知見を述べられている.ことにデイケアに関しては将来の実施を考えておられる方が多いと思われるので参考になることが多いであろう.

基本情報

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総合リハビリテーション
13巻4号 (1985年4月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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