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はじめに
運動における持久性について猪飼1)は一定の速度や強度をもった運動を持続して遂行する能力であるとし,また一定の時間以上持続する身体活動というストレスに耐える能力でもあると述べている.一般にこの持久性は筋活動が主体である局所持久性と呼吸循環機能が主役をなす全身持久性に大別されることがある.全身持久性を測定する方法について進藤2)は作業成績(Performance)によるものと身体資源(Physical resources)によるものとに分け,前者としてトレッドミルでの最大持久走時間,自転車エルゴメーターによる最大作業量4),一定時間内に走った距離5)などを,後者として最大酸素摂取量6),最大換気量,最大心拍数,肺拡散能力などを挙げている.これらの方法で測定される全身持久性は体力科学の分野では筋力,敏捷性,平衡性,協応性,柔軟性などと並び,体力に関する代表的な評価項目の1つである.
一方,運動機能に障害がある場合には運動機能に関するテストとして関節可動域,筋粗大力,動作のスピード,平衡機能,協調動作などの評価が行われるが,全身持久性が評価の対象となることは少ない様に思われる.この理由として1つには運動機能に障害がある場合,全身持久性をどの様な概念として捉えたらよいかについての検討が十分なされていないこと,2つには主として健常人を対象に開発されてきた測定法がそのままの方法で適用することが困難であることを挙げることが出来よう.ところで全身持久性を評価する場合,健常人では運動負荷テストを実施するための運動機能には大きな支障がないことが前提となっている.しかし運動機能に障害がある場合には,実施可能な運動種目に大きな制限をうけるため,全身持久性の中核ともいえる呼吸循環機能をテストの成績に十分反映することが困難となる.そこで先ず対象者の運動機能の障害の程度に応じて,その能力を最大限に引き出し得る運動種目を選択し負荷条件を設定することが必要となってくる.実際のテストにあたってはall outまでの時間測定の方式は適用できないことが多いため,先ず一定の時間内に努力を払って実施し得た運動の回数などと,その運動時の呼吸循環器系の応答を示す指標をもとめる.そしてこの両者またはいずれかをもって全身持久性の1つの側面を評価するという考え方を提案したい.著者ら7)は片麻痺に運動負荷テストを行う場合,あらかじめ運動能力に応じた負荷方式を設定しておくことが有用であるとの考えに立ち,4つの段階とそれに対応する6つの負荷方式を設定している.今回これらの負荷方式の中から踏台昇降テストを選び,片麻痺の応用的な生活動作の能力を予測することを主目的に全身持久性の評価を行い,本テストの臨床応用に関する基礎的な諸問題について検討を行ったので報告する.
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