総合リハビリテーション 13巻5号 (1985年5月)

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 Ⅰ.肢体不自由児施設の4半世紀―10年毎におしよせた重要課題に思いをよせて

 高木憲次博士が1917年(大正6年)にわが国ではじめて「夢の楽園教療所の説」を提唱され,さらに1924年(大正13年)に「クリュッペルハイムについて」と題する論文の中で,“療育の理念(高木)”にもとづいた肢体不自由児施設とこれを拠点とする地域療育事業推進の必要性を説かれてからすでに70年近くが経過した.

 しかし,わが国のこれらの事業が現実に全国的に推進できるようになったのは,第2次大戦後の1947年(昭和22年)に制定された児童福祉法を根拠とするものである.

身体障害者更生援護施設 今田 拓
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はじめに

 わが国の社会保障制度の中で,社会福祉施設の体系は今や重要な分野として,その目的を果たして来ている.1983年におけるわが国の全社会福祉施設は実に45,442を数え,施設在籍者数2,316,700,従事者数518,170という大きな集団となっているが,1951年における数字(施設数11,813,施設在籍者数784,334,従事者数88,181)と比較すると,いずれも3倍以上(従事者数は6倍)であり,その発展して来た経過を読み取ることが出来る.

 この特集は「施設の再検討」という主題で,私に与えられた分野は身体障害者更生援護施設であるが,社会福祉施設全体の流れの中でこの問題を捉えながら,再検討されている事項や,関連施設などの問題で今後検討されるであろう課題も含めてリポートする.

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 Ⅰ.身体障害者更生相談所の役割と変遷

 身体障害者更生相談所(以下身障相談所とす)は,身体障害者福祉法第11条の中で規定された行政機関であって,都道府県および政令市に設置することが義務づけられている.

 その業務は,身障者の医学的,心理学的,職能的判定などを行う専門的な判定機関である.身障相談所は,判定を主とするが,治療を行わずに単に診察のみを行う場合があるために,医業をなす場所として医療法の診療所に該当し,都道府県知事の許可を受けねばならぬとされている.そして,相談所の施設,職員の構成と資格,職務分掌,さらに所内の判定会議の実施,判定業務の指標が,昭和27年6月19日の厚生省社会局長通知により示され,これが現在も存続している.

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はじめに

 わが国にリハビリテーション医学が導入されて30年,ようやく一般市民の中に“リハビリステーション”ではなく“リハビリテーション”であると認知されるようになってきた.もちろん,国際障害者年のキャンペーンがこの点に大きく寄与したことは事実だが,基本的には,脳卒中片麻痺に対する機能訓練の効果そのものが,立役者になったことは誰もが認めるところである.

 しかし,それ故に医療関係者の中でさえ,リハビリテーションに対する認識は“機能訓練”に歪曲かつ限定されたものになっていた感を免がれず,保健所を中心とした地域保健活動とリハビリテーションがどのような形で結びつくのか,そのイメージは極めて曖昧であった.この曖昧さは老人保健法の実施に伴ない一層明らかであり,多くの不十分さが指摘されているところである.本来,地域における保健活動は,障害を対象とする限りリハビリテーションそのものであり,両者はイコールで結ばれなければならないであろう.

 本稿ではこのような視点から,現在横浜市の保健所が取組んでいるリハビリテーション事業を紹介し,その役割と問題点および今後の展望について述べる.

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 Ⅰ.寝たきり老人の数

 昭和59年厚生省行政基礎調査によると,全国の寝たきり老人(65歳以上・6カ月以上寝たきり)は366,000であったという.これは65歳以上人口の3.4%にあたる.

 一方,将来のわが国の老人人口の推計によると表1に示す如く,昭和55年の国勢調査時の65歳以上人口10,647,356が,昭和75年(2000年)には19,943,000,昭和95年(2020年)には,27,950,000になると予測されており,寝たきり老人化の比率が変らない限り,近い将来,寝たきり老人の数は現在の2倍以上になることになる.

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 人間が人間であることの所以は,二本足で歩くことができることと,ことばを話すことができることであるといわれている.進化論によれば,人間は35億年昔,単細胞動物から出発して,進化に進化を重ねようやく万物の霊長の座を占めることができたというわけである.これはあたかも登山家が高い山の登頂に成功して,山頂に旗を立て,意気軒昂としている姿に似ている.

 進化論的な考え方は,生物学ばかりでなく医学や社会学,あるいは日常生活上の物の考え方にまで深く影響をおよぼしているように思える.私たちは物をみるとき,過去のものよりは現在のものの方が優れており,そして未来はもっと優れたものになるだろうと考えがちである.このように下等から高等へと発達の方向ばかり目が向いてしまいがちなのも多分に進化論が影響しているのではないだろうか.

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はじめに

 水泳運動は心肺の能力を高め,全身の持久力を養う効果がある1~3).しかも呼吸器や循環器の機能をさかんにするばかりでなく,浮力を利用することによって体重の負担が軽くなるので骨格や関節,腱などへの負担が軽くなり老人や身体障害者に適した運動といえる.

 このような利点から水泳は循環器疾患,筋神経疾患,リウマチなどの慢性期疾患のリハビリテーション,また最近では精神病やぜんそくの治療法として注目されている4~12)

 障害者水泳は大きく分けて1)特殊教育機関,2)医療機関,3)障害者福祉施設,4)障害者体育・スポーツ施設,5)一般体育施設という5つの場で,それぞれ独自の目的と性格をもって行われている(図1).従って,これらの水泳プール(以下,プールと略す)における障害者への配慮は施設を運営する側の方針と対象となる障害の内容と程度によって相異がみられる.

 また障害者の水泳が年々さかんになっている傾向にあるが,在宅障害者が利用できるプール施設は少なく,さらに各種の障害または各年齢層が同一施設を利用して行えるプールは極めて少ない現状である.

 そこで本稿では,現在わが国で建設されている障害者プールを総覧し今後の課題について述べてみたい.

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はじめに

 身体運動を制御し具体的動作を円滑に遂行するためには,空間における身体各部位の位置ならびに運動の方向や程度などを伝える運動感覚(kinesthesis)が正常に保たれていなければならない3,4).また運動感覚は運動技能を向上させる際,とくに感覚―運動学習(sensory motor learning)過程においては自己受容的フィードバック(proprioceptive feedback)情報として重要な役割を果たしている5,6).その中の一部のものは主に関節内部の自己受容器やその周辺組織の外受容器などからの求心性神経衝撃によって中枢へ伝達され,意識的深部知覚(conscious deep sensation)として認識される1,17)

 このような感覚の検査は一般的には神経学的診察法による方法を用いて行われている2,13).それは四肢の関節を他動的に動かして,その時の関節覚を位置覚(sense of position)や運動覚(sense of passive movement)として測定しようとする方法である.しかし他動的な関節運動を徒手的に行った場合には検者の手による圧力や運動速度を一定に保つことが難しく,その識別能力を定量的に評価することは不可能である.

 そこで,われわれは新しく開発された等運動性理論(isokinetic consepts)7,14)による訓練機器9)を用いることによって,他動運動時の関節覚を定量的に測定することを試みた.今回はとくに健常者における等速度他動運動時の運動覚について検討したので,その成績を報告する.

短報

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はじめに

 ある地域の在宅ねたきり老人の断面調査の報告は多いが1~4)その後の死亡調査の報告は極めて少ない5).今回,その死亡統計,年次死亡数,年齢と死亡,ADLとの関係などにつき検討することができたので報告する.

講座 リハビリテーション医に必要な全身管理(5)

慢性閉塞性肺疾患 山口 明
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はじめに

 近年,老齢人口の増加,公害などによる大気汚染,喫煙習慣などから慢性閉塞性肺疾患Chronic obstructive lung(pulmonary)disease(COLD,COPD)とよばれる疾患群の数も増加し,臨床的にも注目されてきている.

 COLDのリハビリテーションに関しては1960年代の報告では客観的にリハビリテーションの効果を示すことの困難性から一部にその有効性を疑問視するむきもあったが,最近,リハビリテーションによる肺機能の生理学的効果を示す報告も多くなり,慢性呼吸不全の長期ケアの面からも重要な位置を占めてきている.

 今日,わが国でとられているCOLDの分類は閉塞性(気道コンダクタンスの低下,一秒率の低下)を共通項に原因の如何を問わない一連の疾患群として①肺気腫pulmonary emphyseme,②慢性気管支炎chronic bronchitis,③喘息asthmaの三つに総括している.③については気道閉塞が治療その他で間歇的に変化する可逆性閉塞性肺疾患として最近ではCOLDから除外される傾向にある.しかし,慢性型のasthmaには不可逆的な肺病理学的変化を伴っている例も多く,①,②の合併例もあり,必ずしも前二者との鑑別は容易ではない.また,最近,慢性気管支炎に類似した感染症状を繰り返し,高度の気道閉塞を示すびまん性汎細気管支炎diffuse panbronchiolitisをCOLDに含めて論ずる傾向にある.

 次に,これら各疾患の特徴とリハビリテーションを中心に治療上の問題点について述べる.

講座 機能修復(1)

脳卒中の機能回復 福井 圀彦
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はじめに

 脳卒中による片麻痺,およびそれに随伴する症状がどのように,どこまで回復するか,それにたいして訓練の効果があるか,その回復機序はなにかなどの諸問題は,従来リハビリテーション(以下,リハ)的立場からとくに関心の深い分野であった.

 その一部は解明せられつつあるが,未だに不明な部分が多く,とくに回復機序についての知見は動物実験にもとづいているものであるために直ちにヒトに適用されるわけではなく,未開拓の分野を多く残している.

 ヒトについては臨床的データをなるべく多く集積し,その解析結果を中心にし,動物実験の結果を参考にし,回復機構を推論してゆく他ないであろう.

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 〈研修講演〉

 血友病性関節症の整形外科的リハビリテーション

 自治医大リハビリセンター

 岩谷 力

 

 血友病のリハビリテーションには,内科医と整形外科医の緊密な関係が不可欠である.本症の出血管理は,血液製剤の補充療法を主体とするが,関節内出血に対しては,各種の整形外科的治療法が必要となる.

 補充療法は,家庭治療の導入により,治療上大きな飛躍をとげた.その基礎には患者およびその家庭への徹底した教育があり,疾病を正しく理解し自らの手で,疾病をコントロールしようとする強い意欲があった.

 内科医によるこのような活動に加え整形外科的な出血管理への参加により,リハビリテーション体制を軌道にのせることができる.

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 岡崎先生は,大正11年岡山県に生れ,昭和19年9月京都帝国大学医学部卒業後軍医として戦場へ行かれ多くの兵士の死と直面し,その時の思いを胸に帰国,昭和21年8月「精薄の父」糸賀氏との宿命的な再会により近江学園創設とともに園医として勤務,昭和38年には,西日本で初めての重症心身障害児施設第一びわこ学園を,昭和41年には第二びわこ学園を設立し,両園の園長として就任し,活躍されて来ました.先生はその外,障害児の早期療育にも目を向けられ,いわゆる「大津方式」の確立,保健所での精神発達相談等の開発にもお力添えを頂いているところです.

 私も,大津医学生会の頃,先生に「この仕事を何年続けるつもりか」と聞いたところ「さあ…10年はやりたい」と答えられ,その息の長さに感嘆,それから40年,公私共,兄貴格として導いていただいた先生がこの度,朝日社会福祉賞を受賞されたことを非常にうれしく思っています.

一頁講座 義肢のパーツ・5

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 〔股義足〕:片側骨盤切除(hemipelvectomy),股関節離断(hip disarticulation),大腿切断・極短断端(坐骨結節以下約7.0cm程度まで)(very short above knee amputation)に用いられる.

 構造は,図1のようにソケット,股継手,大腿支持部,膝継手,下腿支持部,足継手をも含めた足部から成っている.他の要素との重複をさけるため,ここではソケットと股継手について紹介する.

 股義足の従来型は図2のような受皿式,ティルトテーブル式があるが,現在はカナダ式股義足に占められている.

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 入門書として優れた書物に要求される条件としては,一貫した観点から書かれていて,わかりやすいこと,その書かれた時点においてわかっていることと,わかっていないことが明示されていること,そして何よりも,読者をしてその分野に対する限りない興味を抱かせる魅力を持った書物であること,が挙げられよう.畏友 山鳥 重先生の手になる「神経心理学入門」は,正にこれらの条件を充分に満足した絶好の入門書と言える.

 神経心理学の対象として最も重要な位置を占める失語,失行,失認の研究は,神経科学の他の領域の研究に比べてその歴史が極めて古いものであるが,比較的近年に至るまで,真の意味での生物学的,科学的なアプローチがなされて来なかった.その故をもって,神経心理学は,その難解なことでよく知られ,いざこの分野の勉強を始めようと志す人々をひるませ,たじろがせるに充分な,複雑きわまりない用語と,容易に理解しえない思弁的な理論という他の神経科学とは異質な特性を持っていた.

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文献抄録

編集後記 大川 嗣雄
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 東京地方では昨冬の大雪につづいて今春の大雨と,不順な天候が続きました.しかし,この号が御手許に届く頃には,風薫る新緑の候となり,素晴しい季節になっている事をこの文を書きながら祈っております.

 まず今号の巻頭言に日本リハ医学会の高橋会長から大変興味ある一文を頂いた.重症心身障害児をはじめとして,リハ医学の対象が次第に重度・重複化している現在の状況で考えねばならない点を指摘して頂いた.

基本情報

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総合リハビリテーション
13巻5号 (1985年5月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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