Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
骨関節障害者が性に関して,特長あるかかわり方をしている,とすれば,それは先ず肢体の不自由と外観上の変形からの問題であろう.肢体の不自由は直接性的行為に関する行動制限や障害を想起させるし,外観上の変形は疾患や外傷による脊柱後彎や四肢の短縮,変形,先天畸形,関節運動制限や麻痺による動作の異常などをふくめて,個人の審美的外観4)をそこない,対社会的側面からのハンディキャップとして性の行動を制限する.
すなわち,身体的問題と並行して重大なのは,外観上の変形,肢体不自由に対する障害者自身の精神心理的なダメージである.骨関節障害者の性の問題を考えるとき,このことを除外するわけにはいかない.それは性に関しての身体的困難度よりも,このような精神心理的側面が障害者自身に与える影響の方がむしろ大きいと考えられるからである.つまり,精神心理的なダメージのために,障害者が自分の身体的困難度をより過大視して日常社会的生活に消極的になることは多々あるが,そのうちでも性に関する問題への取組は最も困難度の高くなっているものの一つであろうと思われる.
ここに報告する5例は幼時骨関節結核に罹患し,躯幹・下肢に発育障害・変形をもっている.結核予防機構の発達した現代では,今後の世代にこのような発育障害・変形をもつ症例に遭うことはないかもしれないが,現時点ではこのような重度の骨関節障害をもつ女性たちが,主婦として積極的に社会に飛びこみ,結婚・妊娠・出産・育児に,心身両面からの多くの難題を乗り越えつつ女性としての歩一歩をあゆんでいる.そこにおこる多くのドラマは他の原因による骨関節障害者の日常生活や,精神心理的問題,性の問題に関する取組みに,大きな示唆と具体的な助言・勇気を与える糧となりうるのではなかろうか.
このような観点から,5例の生活歴と身体的困難を克服していく過程,障害受容のあり方などについて報告する.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.