小児科診療 87巻8号 (2024年8月発行)

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特集　公費補助制度を使いこなす！

序文石毛　美夏 , 加藤　元博 87巻8号 , 2024年8月 , pp.853-853

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　小児には公費による医療費の補助制度や行政による支援事業があります．難病や困難に立ち向かう子どもたちを広く社会で支えるためには医療と支援が両輪となることが必要であり，施策の積み重ねにより充実した制度や事業が実施されています．これらは子どもたちに良質の医療を提供し，子どもとその家族に支援を適切に届けるためには欠かせないものです．しかし，医療の高度化・複雑化に伴い多くの制度・事業が必要となった結果，体系的な知識を得る機会がないままon the job trainingで手探りしているのが現状ではないでしょうか？

Ⅰ．総論

小児に対する医療費助成制度の歴史と課題儘田　光和 87巻8号 , 2024年8月 , pp.859-864

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SUMMARY

▷医療費助成制度は社会的背景を反映させる形で導入，拡大，見直し，さらなる拡充とされてきた．

▷乳幼児等医療費助成制度の効果や課題を理解し，持続可能な制度として維持することが求められる．

▷小児慢性特定疾病とその後の助成制度とのギャップを埋めて支援を継続していくことが課題である．

乳幼児・子ども医療費助成掛江　直子 87巻8号 , 2024年8月 , pp.865-869

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SUMMARY

▷乳幼児・子ども医療費助成とは，都道府県および市区町村において実施される子どもの医療の自己負担分の一部もしくは全部を助成する制度である．

▷地方単独事業なので，自治体の財政状況や政策により，対象年齢，所得制限や自己負担の有無などに違いがみられる．

▷小児慢性特定疾病など他の公費負担医療の対象である場合は，適用優先度に従い利用する．

▷地域格差はあるが，全国すべての自治体において実施され，子育て世帯の経済的負担の軽減や早期治療による子どもの健全育成および児童の福祉の向上に役立っている．

育成医療・更生医療平良　勝章 87巻8号 , 2024年8月 , pp.870-872

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SUMMARY

▷育成医療は障害児が心身の障害の状態の軽減をはかり，自立した生活や社会生活を営むことを目的に提供される．

▷実施主体は市区町村である．

▷所得によって利用者に費用負担が生じるので注意が必要である．

▷医療給付の支給対象にならないものもある．

養育医療武田　充人 87巻8号 , 2024年8月 , pp.873-875

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SUMMARY

▷出生体重2,000g以下の低出生体重児などに対する入院治療費を市区町村が負担する制度である．

▷母子保健法の「養育医療の給付」および「費用の徴収」を根拠法としている．

▷指定養育医療機関の入院治療費の自己負担分に対して給付が行われる．

小児慢性特定疾病盛一　享德 87巻8号 , 2024年8月 , pp.876-881

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SUMMARY

▷小児慢性特定疾病医療費助成の新規申請は18歳未満までで，申請には医療意見書が必要である．

▷医療意見書は小児慢性特定疾病指定医でなければ記載ができない．

▷医療費助成は小児慢性特定疾病指定医療機関における保険診療の自己負担分に対して行われる．

▷受給開始日は受給要件を満たしたと判断された日である診断年月日をもとに決定される．

▷小児慢性特定疾病医療と乳幼児・子ども医療費助成は併用されることが望ましい．

▷日常生活用具給付事業や自立支援事業の実施状況については，居住地の自治体に確認する．

指定難病西條　晴貴 87巻8号 , 2024年8月 , pp.882-886

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SUMMARY

▷難病法は令和3年7月に意見書の取りまとめが行われ，令和4年12月に改正難病法が成立した．

▷医療費助成の対象となる疾病は，難病法施行前の旧事業では56疾病であったが，対象疾病は順次拡大しており，令和6年4月，341の疾病が指定難病として指定されている．

▷難病の医療提供体制の整備や難病に関する調査研究，移行期医療支援体制の整備等を推進している．

予防接種および感染症にかかわる費用助成制度峯　眞人 87巻8号 , 2024年8月 , pp.887-892

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SUMMARY

▷予防接種政策は感染症の蔓延を防止するという観点から公益性がきわめて高い．

▷感染症への対応・対策は危機管理に通じる側面もあり，公益性がきわめて高い．

▷公益性が高い事象については，その運営には法律を基とした助成制度が必要である．

▷日本における予防接種政策，感染症対策は十分ではなかった．

▷新型コロナウイルスのパンデミックを機に，これらの対策の充実は必須である．

生活保護法・児童福祉法（措置医療）鈴木　彩 87巻8号 , 2024年8月 , pp.893-897

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SUMMARY

▷小児科に受診する患者にかかわる生活保護法による医療扶助について説明する．

▷児童福祉法による措置等にかかる医療の給付について説明する．

▷生活保護や児童福祉法の措置を受ける子どもの医療を受ける権利を守る．

▷行政の担当者と医療機関が連携を取る必要があり，ソーシャルワーカーの介入が望ましい．

移行期支援にかかわる支援事業窪田　満 87巻8号 , 2024年8月 , pp.898-903

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SUMMARY

▷移行期医療を推進するため，厚生労働省は「都道府県における小児慢性特定疾病の患者に対する移行期医療支援体制の構築に係るガイド」を策定し，移行期医療支援センターの設置を都道府県に対して求めた．

▷全国の移行期医療支援センターの実態を把握するため，令和4年度厚生労働省難病等制度推進事業として，移行期医療支援体制実態調査が行われた．

▷医療提供体制は地域によって状況が様々であり，移行期医療支援センターを1か所に置くことにこだわらず，協議会から始めて，医師会や様々な支援施設を含め，複数箇所において連携する形も模索されるべきである．

医療費以外の給付事業・支援事業澤　恭弘 87巻8号 , 2024年8月 , pp.904-908

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SUMMARY

▷補装具・日常生活用具については居住地の市区町村へ申請する．

▷様々な手当金があり，状況に応じて申請する必要がある．

▷税の控除はいくつもあり，条件が定められている．

相談窓口佐藤　杏 87巻8号 , 2024年8月 , pp.909-912

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SUMMARY

▷日本の社会保障制度は申請主義であり，申請に基づき福祉サービスが利用できる．

▷複雑な社会保障制度活用のためにも相談窓口の利用は患者家族にとって有用である．また，相談窓口同士の連携により適切に社会資源につながれる．

▷院内での相談窓口として医療ソーシャルワーカーの活用を推奨する．

障害者手帳（身体障害者手帳，療育手帳，精神障害者保健福祉手帳）城戸　貴史 87巻8号 , 2024年8月 , pp.913-918

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SUMMARY

▷障害者手帳は，一般的には，身体障害者手帳，療育手帳，精神障害者保健福祉手帳の総称である．

▷身体障害者手帳は，身体障害者福祉法別表に掲げる身体上の障害があるものを対象とする．

▷療育手帳は，児童相談所または知的障害者更生相談所で知的障害があると判定されたものを対象とする．

▷精神障害者保健福祉手帳は，一定程度の精神障害の状態にあることを認定されたものを対象とする．

▷各障害者手帳で使える福祉サービスが異なる場合がある．複数取得できる場合は，取得を検討する．

医療ソーシャルワーカーの役割丸山　昌子 87巻8号 , 2024年8月 , pp.919-922

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SUMMARY

▷医療ソーシャルワーカー（MSW）とは病院にいる福祉の相談員のことである．その役割と専門性について説明する．

▷制度利用をするときにMSWが介入する意味について説明する．

▷MSWを上手に活用するための方法について例を交え説明する．

▷MSWの強みとは，他機関連携ができること，全国のMSWとのネットワークがあることである．

Ⅱ．各論

白血病・リンパ腫（急性リンパ性白血病，急性骨髄性白血病，悪性リンパ腫）髙地　貴行 , 浜﨑　亮 , 久保田　幸介 87巻8号 , 2024年8月 , pp.923-927

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SUMMARY

▷小児造血器腫瘍患者の医療費と医療費と別にかかる費用に対する補助制度は重要である．

▷特別児童扶養手当などの現金給付制度は自治体によって運用が異なる．

▷小児がん経験者が成人すると医療費の助成制度がない．

▷公費補助制度以外の補助利用も含め医療ソーシャルワーカーとの連携が重要である．

固形腫瘍山田　悠司 87巻8号 , 2024年8月 , pp.928-931

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SUMMARY

▷中枢神経系腫瘍を含む固形腫瘍は，診断がなされれば小児慢性特定疾病の対象疾病となる．

▷原疾患だけでなく合併症も公費補助の対象となる場合がある．

▷悪性疾患は指定難病の対象とはならない．

▷ワクチン再接種や妊孕性温存などは自治体から費用助成が得られる場合がある．

微小変化型ネフローゼ症候群白井　陽子 , 三浦　健一郎 , 服部　元史 87巻8号 , 2024年8月 , pp.932-935

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SUMMARY

▷微小変化型ネフローゼ症候群の30～40%が頻回再発型またはステロイド依存性ネフローゼ症候群を呈し，成人期まで持ち越すことも多い．

▷小児慢性特定疾病では，半年間で3回以上または1年間に4回以上再発した場合や免疫抑制薬または生物学的製剤を用いる場合などが医療費助成の対象となる．

▷対応する指定難病は「一次性ネフローゼ症候群」であり，一度も完全寛解に至らない場合やステロイド依存性あるいは頻回再発型を呈する場合などが重症度判定基準に該当する．

IgA腎症秋岡　祐子 87巻8号 , 2024年8月 , pp.936-941

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SUMMARY

▷小児期発症IgA腎症のおもな発見契機は学校検尿である．

▷小児IgA腎症の重症度は，臨床症状（蛋白尿とGFR）と腎病理所見の組み合わせで分類され，重症例では多剤併用療法が選択される．

▷ステロイドや免疫抑制薬などで治療中の小児IgA腎症は，小児慢性特定疾病における医療費助成の対象となる．

▷難治性IgA腎症は指定難病の対象となるが，小児慢性特定疾病の基準とは異なることに注意する．

気道狭窄肥沼　悟郎 87巻8号 , 2024年8月 , pp.942-946

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SUMMARY

▷小児慢性特定疾病の気道狭窄には，狭窄部位と病態に応じて「咽頭狭窄」「喉頭狭窄」「気管狭窄」「気管軟化症」「気管支狭窄症/気管支軟化症」の5つの疾患が含まれる．

▷医療費助成の対象者は1か月以上にわたって治療が必要な患者である．気管切開や人工呼吸管理を必要としている患者では，自己負担額の軽減がみとめられている．

▷成人移行時には，小児慢性から指定難病への移行ができない患者がいることに留意する．

慢性肺疾患桐戸　雄紀 87巻8号 , 2024年8月 , pp.947-949

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SUMMARY

▷慢性肺疾患は早産児において重要な呼吸器合併症の一つである．

▷出生前後の様々な因子による未熟肺胞および肺胞微小血管の発達異常が本態である．

▷新生児期だけでなく，小児期・青年期の呼吸機能にも影響を与えることがわかってきている．

▷小慢申請の条件は呼吸管理，酸素療法または中心静脈栄養のうち一つ以上を行っていることである．

▷成長により酸素化が改善することが多く，指定難病には含まれていない．

▷しかし，慢性閉塞性肺疾患発症のリスクとなる可能性も指摘されており，留意が必要である．

気管支喘息稲毛　英介 , 大塚　宜一 87巻8号 , 2024年8月 , pp.950-955

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SUMMARY

▷気管支喘息の医療費助成は，歴史的に削減を重ねている．

▷思春期喘息の医療費には地域間格差が大きい．

▷小児慢性特定疾病の適応としては，生物学的製剤の使用が重要である．

▷気管支喘息は成人の難病指定がなされておらず，移行期に経済的な問題を生じることがある．

ファロー（Fallot）四徴症住友　直文 , 山岸　敬幸 87巻8号 , 2024年8月 , pp.956-960

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SUMMARY

▷Fallot四徴症は，新生児期，乳幼児期から外科的手術介入を要するチアノーゼ性心疾患である．

▷多くの症例では，心内修復術後にも右室流出路狭窄，肺動脈弁逆流などの遺残病変を有する．

▷術後の遺残病変が重度の場合には，術後遠隔期（成人期）に再手術が必要となる．

▷小児では，術前後ともほぼ全例で小児慢性特定疾病の申請に該当する．

▷成人では，NYHA心機能分類Ⅱ度以上の心不全症状を伴う場合，指定難病申請に該当する．

▷ペースメーカー埋め込み，人工弁置換，人工弁移植症例では，心臓機能障害1級相当に該当する．

心室中隔欠損廣野　恵一 87巻8号 , 2024年8月 , pp.961-965

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SUMMARY

▷心室中隔欠損の患者において他の疾患を合併する場合や術後の合併症・遣残症を伴い生涯にわたる治療を必要とする場合には，適した公費補助を用いることが重要である．

▷小児慢性特定疾病の医療費助成は，手術や検査，内科的治療費，入院時の食事代等の負担額が軽減される．

▷自立支援医療は身体障害を除去，軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される．

▷特別児童扶養手当は精神または身体に障害を有する児童の福祉の増進をはかるために手当が支給される．

▷身体障害者手帳は一定の症状がある心臓病児者に交付される

川崎病深澤　隆治 87巻8号 , 2024年8月 , pp.966-971

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SUMMARY

▷川崎病は乳幼児に発症する原因不明の全身性血管炎で，冠動脈に炎症をきたす結果，冠動脈瘤を生じる．

▷冠動脈瘤は急性期以降縮小に向かい，ときに正常径となるが，組織学的に正常化することはない．

▷ひとたび冠動脈瘤を形成すると，活発な血管リモデリングは成人期以降も継続する．

▷中等瘤以上の冠動脈瘤の既往がある症例は，生涯にわたる経過観察・治療が必要となる．

▷冠動脈瘤をきたすと小児慢性特定疾病の対象となる．

▷難病指定はなく，日本小児科学会として厚生労働省に要望書を提出している．

成長ホルモン治療佐藤　真理 87巻8号 , 2024年8月 , pp.972-975

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SUMMARY

▷わが国における小児のGH治療適応疾患は，9疾患である．

▷SGA性低身長症，SHOX異常症の2疾患は，小児慢性特定疾病の対象ではない．

▷2024年4月1日より，小児慢性特定疾病医療費助成におけるGH治療に対する取り扱いが，保険診療と同様になった．

▷2023年12月にPWSに対して体組成改善目的でのGH治療が承認された．

甲状腺疾患岩山　秀之 87巻8号 , 2024年8月 , pp.976-980

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SUMMARY

▷甲状腺疾患は幅広く小児慢性特定疾病の対象となっており，ほとんどすべての疾患が対象となる．

▷甲状腺機能亢進症では，バセドウ病およびバセドウ病を除く甲状腺機能亢進症が含まれる．

▷甲状腺機能低下症は先天性と後天性に分類され，先天性甲状腺機能低下症では異所性甲状腺，無甲状腺症，先天性甲状腺刺激ホルモン分泌低下症，それら以外の先天性甲状腺機能低下症が，後天性甲状腺機能低下症では橋本病，萎縮性甲状腺炎，それら以外の後天性甲状腺機能低下症が含まれる．

▷その他の甲状腺疾患では，甲状腺ホルモン不応症と腺腫様甲状腺腫が小児慢性特定疾病に含まれる．

▷ほとんどの甲状腺疾患は指定難病となっておらず，甲状腺ホルモン不応症のみが含まれる．

性分化疾患辻　敦美 87巻8号 , 2024年8月 , pp.981-985

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SUMMARY

▷性分化疾患は，身体的な性の分化を構成する染色体・性腺・内外性器の3階層の組み合わせや階層内の発達過程が非典型的となる疾患の総称である．

▷内分泌・外科・生殖・心理など幅広い領域に関する対応を，生涯にわたって必要とする．

▷小児慢性特定疾病による性分化疾患の公的補助は確立しているものの，対応する指定難病制度が存在しない疾患もあり，成人期以降の公的補助制度に課題がある．

Ca，P代謝異常，くる病池側　研人 , 長谷川　行洋 87巻8号 , 2024年8月 , pp.986-991

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SUMMARY

▷PTH，ビタミンD，FGF23などのホルモンの分泌異常，受容体の異常で，Ca，P代謝異常症，くる病は発症する．

▷Ca，P代謝異常症，くる病の患者は，一生涯の外来通院，検査が必要である．

▷XLHに対する新規治療であるブロスマブは薬価が高く，公的助成は必須であり，医療費助成の適応範囲を議論することが必要である．

ゴナドトロピン依存性思春期早発症市橋　洋輔 87巻8号 , 2024年8月 , pp.992-995

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SUMMARY

▷ゴナドトロピン依存性思春期早発症は，生理的な思春期プロセスが集団よりも早いことで診断される．

▷わが国における治療としてはGnRH analogueであるリュープロレリンの月1回皮下注射でゴナドトロピン分泌を抑制する治療が一般的である．

▷ゴナドトロピン分泌抑制により思春期プロセスを一時的に停止させることで，身長予後や社会心理的問題を改善すると考えられている．

▷どの疾患にもいえることだが，「診断基準を満たす＝治療で予後が改善する」がすべての患者にあてはまるわけではないことを医療者と家族で共有することが重要である．

ターナー症候群川井　正信 87巻8号 , 2024年8月 , pp.996-1000

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SUMMARY

▷ターナー症候群では，生涯管理を必要とする．

▷ターナー症候群は，小児慢性特定疾病の対象疾患であるが，指定難病には指定されていない．

▷ターナー症候群の成人期の実態を明らかにし，適切な成人期医療を提供するための基盤形成が重要である．

若年性特発性関節炎水田　麻雄 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1001-1005

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SUMMARY

▷全身型は持続する発熱と皮疹を特徴とする自己炎症性疾患と考えられており，致死的な合併症であるマクロファージ活性化症候群のリスクが高い．

▷関節型は持続する慢性関節炎が特徴であり，少関節炎，多関節炎でそれぞれ臨床的な特徴に違いがある．

▷7つに分類される若年性特発性関節炎のいずれも小児慢性特定疾病の対象となるが，申請に際しては条件の確認が必要である．

▷20歳以降は指定難病制度の申請ができるが，全身型と関節型（少関節型，RF陽性多関節型，RF陰性多関節型）のみが対象となり，一定の条件がある．

全身性エリテマトーデス清水　正樹 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1006-1012

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SUMMARY

▷18歳未満で，診断の手引きの基準を満たし，何らかの治療を受けている場合，小児慢性特定疾病の認定がなされる．

▷2019 EULAR/ACR分類基準を満たし，SLEDAI 4点以上で指定難病の認定がなされる．

▷SLEでは，基準を満たす場合，身体障害者手帳，障害者総合支援法，小児慢性特定疾病対策による福祉サービスを受けることができる．

皮膚筋炎/多発筋炎岸　崇之 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1013-1018

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SUMMARY

▷若年性皮膚筋炎は，血管炎をベースとした自己免疫性疾患であり，筋炎特異自己抗体ごとの臨床的特徴を理解することが重要である．

▷成人期の予後は改善傾向で，薬剤投与の終了も期待できるが，機能障害を残す症例もみとめており，ADLのさらなる向上のために適切な治療，管理が必要である．

▷小児慢性特定疾病，指定難病いずれの基準でも，典型症例だけでなく，皮膚所見もしくは筋所見を欠く場合にも診断でき，治療中もしくは疾患の活動性がある場合に医療費助成の対象となる．

1型，2型糖尿病田嶼　朝子 , 会津　克哉 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1019-1023

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SUMMARY

▷1型，2型糖尿病いずれも小児慢性特定疾病の対象である．

▷1型糖尿病は指定難病に認定されておらず，20歳以降は公的補助を受けるのが困難である．

▷1型糖尿病の予後はCGM，CSIIなどの先進医療により改善したが，治療は高額である．

▷医療費負担が大きいために治療方針を変更せざるを得ないこともある．

▷内因性インスリンが枯渇し生涯治療を要する1型糖尿病患者にとって，指定難病認定が求められる．

アミノ酸代謝異常症（フェニルケトン尿症等）小川　えりか 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1024-1029

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SUMMARY

▷治療の基本である特殊ミルクは高額であり，小児慢性，指定難病を活用して治療を継続する．

▷フェニルケトン尿症の食事療法以外の治療は高額であり，公費補助なしで治療は困難である．

▷メープルシロップ尿症は頻回の入院も必要だが，小児慢性は入院費用も補助の対象である．

▷肝移植および移植後の治療には自立支援医療や身体障害者手帳も利用できる．

▷ホモシスチン尿症は2021年に指定難病に指定され，治療継続の環境が整備された．

ミトコンドリア病志村　優 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1030-1035

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SUMMARY

▷ミトコンドリア病は，小児慢性特定疾病医療費助成制度，難病医療費助成制度の対象疾患である．

▷身体障害者手帳による医療費助成，障害福祉サービスとして介護給付と訓練給付を受けることができる．

▷特別児童扶養手当，障害児福祉手当，特別障害者手当の給付対象となる場合がある．

ライソゾーム病（ムコ多糖症Ⅱ型等）角皆　季樹 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1036-1040

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SUMMARY

▷ライソゾーム病は細胞内のライソゾームでの酵素異常により，代謝物が蓄積し，様々な症状を引き起こす疾患である．

▷治療法は存在するが，高額で長期にわたるため，公的支援が必要である．

▷小児慢性特定疾病や指定難病制度においてカバーされているため，適切な申請が重要である．

▷患者や家族にとって負担が大きいため，病院や地域のサポートが欠かせない．

血友病（先天性血液凝固因子欠乏症）長江　千愛 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1041-1046

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SUMMARY

▷非出血時に不足している凝固因子製剤を定期的に注射する定期補充療法が重症血友病の標準的な治療となり，血友病患者のQOLは飛躍的に改善した．

▷2014年に半減期延長製剤が市販され，2018年にはインヒビターの有無にかかわらず，血友病Aでヒト化二重特異性モノクローナル抗体のエミシズマブを用いることにより，皮下注射で出血予防ができるようになったことは血友病治療に大きな変革をもたらした．

▷凝固因子製剤やnon-factor製剤は高額であるが，医療費助成制度を利用することにより，2024年現在，血友病にかかわる診療については自己負担なしで治療を受けることができる．

免疫性血小板減少症（免疫性血小板減少性紫斑病，特発性血小板減少性紫斑病）森　麻希子 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1047-1049

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SUMMARY

▷免疫性血小板減少症は，「免疫性血小板減少性紫斑病」として小児慢性特定疾患，「特発性血小板減少性紫斑病」として指定難病と定められた疾患である．

▷小児期発症の慢性ITPでも，その後も自然寛解が得られず，成人期に至るまで長期の治療を要する例もあり，適切な時期に助成制度の利用を検討する必要がある．

再生不良性貧血平林　真介 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1050-1053

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SUMMARY

▷再生不良性貧血は骨髄での造血幹細胞が減少し，末梢血における汎血球減少を特徴とする．

▷血球減少の重症度や造血細胞移植ドナーの有無によって治療方針が異なる．

▷小児慢性特定疾病医療費助成制度，難病医療費助成制度を利用できる．

原発性免疫不全症（X連鎖無ガンマグロブリン血症等）金兼　弘和 , 西小森　隆太 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1054-1059

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SUMMARY

▷易感染性を示す男児で，血清免疫グロブリン低値かつ末梢血B細胞欠損を伴う場合には家族歴の有無を問わずX連鎖無ガンマグロブリン血症を疑う．

▷今後，拡大新生児スクリーニングの普及により無症状で同定されるX連鎖無ガンマグロブリン血症を含むB細胞欠損症が増えると思われる．

▷X連鎖無ガンマグロブリン血症に限らず原発性免疫不全症候群患者は小児慢性特定疾病ならびに指定難病の対象であり，早期診断すべきである．

慢性活動性EBウイルス病矢田　裕太郎 , 石村　匡崇 , 大賀　正一 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1060-1063

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SUMMARY

▷慢性活動性EBウイルス病（CAEBV）はその発症メカニズムがいまだ不明な難治性致死性疾患である．

▷CAEBVは造血細胞移植を含む適切な治療によって，生命予後の改善が期待できる疾患である．

▷現時点ではCAEBVに対する公費補助制度として小児慢性特定疾病のみ申請が可能だが，若年成人でも多く発症があり指定難病として認定されることが望ましい．

点頭てんかん（ウエスト症候群）伊藤　進 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1064-1069

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SUMMARY

▷点頭てんかん（ウエスト症候群）は，てんかん性スパズム，ヒプスアリスミア，精神運動発達停止・退行の三徴を呈する．

▷新国際てんかん症候群分類では，三徴を必ずしも満たさない症候群として，乳児てんかん性スパズム症候群に診断名が改訂された．

▷第1選択薬は，結節性硬化症以外ではACTH療法，結節性硬化症あるいはACTH療法のリスクが高い場合ではビガバトリンである．

▷小児慢性特定疾病と指定難病の診断基準は両者で若干異なる．

▷自立支援医療（精神通院医療）費助成や精神障害者保健福祉手帳などの対象となることもある．

もやもや病荻原　英樹 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1070-1074

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SUMMARY

▷もやもや病は内頸動脈終末部の狭窄・閉塞ともやもや血管をみとめ，小児ではおもに脳虚血による症状をきたす．

▷脳虚血に対する治療の第一選択は血行再建術で，直接法と間接法があり長期的な予後の差はないとされている．

▷小児慢性特定疾病の申請には，運動障害，知的障害，意識障害，自閉傾向，行動障害（自傷行為または多動），けいれん発作，等の症状が続いていることが必要である．

レノックス・ガストー症候群宮本　雄策 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1075-1079

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SUMMARY

▷「発達性あるいはてんかん性脳症」に分類されるてんかん症候群である．

▷臨床所見と脳波所見から診断される．病因は多様である．

▷発作症状は強直発作，非定型欠神発作，転倒発作の3種類が中心である．

▷小児慢性特定疾病医療費助成，（指定）難病医療費助成を受けることができる．

▷重複障害を呈することが多く，重度障害者医療費助成を受けることができる場合が多い．

多発性硬化症梶原　健太 , チョン　ピンフィー , 酒井　康成 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1080-1084

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SUMMARY

▷多発性硬化症は，時間的および空間的に多発する中枢神経の炎症性脱髄性病変を特徴とする自己免疫性神経疾患である．

▷多発性硬化症は小児期から発症し得る疾患であり，急性期の治療だけでなく，再発および進行防止のための治療や慢性期の対症療法やリハビリテーションなどの治療継続が，生涯にわたり必要となる．

▷本稿では，成人期の予後を含めた疾患の概要のほか，わが国での多発性硬化症に対する医療費助成や公的支援について述べる．

筋ジストロフィー齊藤　利雄 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1085-1090

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SUMMARY

▷筋ジストロフィーは，骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患であり，種々の病型がある．

▷本疾患に対しては，小児慢性特定疾病，指定難病による医療費助成制度が利用可能である．

▷また，乳幼児・子ども医療費助成制度，重度障害児（者）医療費助成制度，自立支援医療制度も利用可能である．

▷医療費助成以外では，障害者総合支援法による自立支援給付と地域生活支援事業の利用や，年金，社会手当などの受給が可能である．

▷医師は，種々の制度に関する理解を深める必要がある．

脊髄性筋萎縮症（SMA）本橋　裕子 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1091-1095

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SUMMARY

▷脊髄性筋萎縮症（SMA）は進行性の筋力低下を示す遺伝性疾患である．

▷呼吸，側彎，消化管，摂食・嚥下機能などの問題に対して，長期かつ多面的なケアが必要である．

▷近年，3つの新規治療薬が開発，承認され，早期診断と早期治療開始の重要性が強調される．

▷新規治療薬は高額であり，公費補助制度がSMAの診療に果たす役割は大きい．

胆道閉鎖症古賀　寛之 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1096-1101

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SUMMARY

▷小児慢性特定疾病の医療費助成制度における自己負担上限額は重症患者認定基準の内容によって定められる．

▷難病指定における胆道閉鎖症の重症度判定項目により判定し，医療費助成制度における自己負担上限額は所得区分と治療内容（自己負担額とその期間）によって定められる．

▷身体障害者手帳には指定医の診断書が必要であるが，保有すると医療費の助成をはじめ様々な制度が受けられる．

潰瘍性大腸炎加藤　健 , 水落　建輝 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1102-1106

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SUMMARY

▷潰瘍性大腸炎は原因不明の大腸のびまん性非特異性炎症であり，年々増加傾向にある．

▷潰瘍性大腸炎自体が直接死因である例は減少している一方で，大腸癌合併による死亡例が増えている．

▷潰瘍性大腸炎と診断されたら，18歳未満は小児慢性特定疾病を，18歳以降は指定難病を申請できる．

▷治療をはじめたら，高額療養費制度，医療費控除，セルフメディケーション税制の利用を検討する．

▷労働不能の場合は，傷病手当金の利用を検討する．

▷障害が残る場合は，障害年金，身体障害者手帳の利用を検討する．

クローン病清水　泰岳 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1107-1110

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SUMMARY

▷クローン病は消化管に肉芽腫性炎症を生じる疾患で，小児期発症例も増加傾向にある

▷現在もなお，根治的治療法はなく，寛解と再発をくり返す慢性疾患である．

▷生物学的製剤の登場により，寛解を維持して通常の生活を送れる患者も増えている．

▷一方，中心静脈栄養や腸管切除，ストーマ造設を要する難治例もあり，依然として，成長・発達・日常生活への影響も少なくない．

▷生物学的製剤などの高額薬が使用されることも多く，患者負担の軽減に公費補助が担う役割は大きい．

ダウン症候群大場　大樹 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1111-1115

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SUMMARY

▷公的支援制度の利用には本人や家族等による申請が必須である．

▷ダウン症候群の包括的支援には公的支援制度の情報提供が含まれる．

▷公的支援制度の情報提供は，医療ソーシャルワーカーとの連携が肝要である．

▷ライフステージごとに，利用可能な公的支援制度の見直しが必要である．

18トリソミー症候群西　恵理子 , 古庄　知己 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1116-1121

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SUMMARY

▷18トリソミー症候群の子どもにおいて遺伝学的検査に基づく正確な診断は，疾患の特性に応じた包括的健康管理のみでなく小児慢性特定疾病の申請などにも必要である．

▷18トリソミー症候群の子どもにおいて発達の丁寧な評価は，子どもの発達支援の礎であると同時に小児慢性特定疾病の重症認定や特別児童扶養手当の申請などにおいても大事な所見となる．

▷18トリソミー症候群の子どもにおいても，成長や発達に応じて必要な療育支援・就園就学支援が受けられるよう自治体の窓口でそのときにあった社会支援を相談することが重要である．

マルファン症候群森崎　裕子 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1122-1126

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SUMMARY

▷結合組織の先天的脆弱性により発症する常染色体顕性遺伝性疾患である．

▷大動脈瘤・解離のリスクが高く，これらの合併の有無が生命予後を左右する．

▷早期診断・早期治療により，大動脈瘤・解離のリスクを抑えることが可能である．

▷診断には遺伝学的検査（保険診療）が有用である．

レックリングハウゼン病（神経線維腫症1型）松尾　宗明 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1127-1130

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SUMMARY

▷レックリングハウゼン病（NF1）は，皮膚病変，骨病変，腫瘍性病変と神経発達症，てんかんなど中枢神経の機能異常を呈することがある．

▷小児慢性特定疾病の申請には，NF1の診断に加え，多数の皮膚の神経線維腫または大きなびまん性神経線維腫の存在，または，麻痺や痛みなどの神経症状もしくは高度の骨病変が必要とされるが，この基準は今後修正の必要がある．

▷指定難病の申請には，NF1の診断に加え，重症度分類Stage 3以上に該当する必要がある．

▷合併する症状により，自立支援医療などの利用も可能である．

先天性魚鱗癬加藤　塁 , 須賀　康 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1131-1136

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SUMMARY

▷先天性魚鱗癬は出生時から皮膚バリア機能が障害され，角層が増殖して，全身乾燥により容易に皮膚炎や感染症を発症し瘙痒も強い．

▷ネザートン症候群，シェーグレン・ラルソン症候群など魚鱗癬症候群は皮膚以外の他臓器障害も伴う．

▷医療費負担が高額となるため，わが国では国の公費負担医療制度である小児慢性特定疾病に指定されている．

▷地方自治体の乳幼児・子ども医療費助成制度の対象ともなるが，年齢制限や助成範囲は自治体で異なる．

▷本症を抱えた患児が健全に育成され，社会参画をすすめるため，治療支援，生活支援などの公費補助制度のさらに積極的な活用をすすめたい．

軟骨無形成症・低形成症大薗　恵一 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1137-1141

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SUMMARY

▷軟骨無形成症，軟骨低形成症は，骨系統疾患に分離され，四肢短縮を伴う低身長を呈する．

▷軟骨無形成症と軟骨低形成症は，小児慢性特定疾病であるが，指定難病となっているのは軟骨無形成症のみである．

▷身長に対する治療法は，内科的，整形外科的なものがあるが，高額であり，医療費助成を必要とする．

骨形成不全症望月　弘 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1142-1147

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SUMMARY

▷骨形成不全症（osteogenesis imperfecta）は全身の骨脆弱性に伴う易骨折性，歯牙形成不全，難聴，青色強膜などを共通の特徴とする遺伝性骨系統疾患である．

▷骨形成不全症の医療補助には，小児慢性特定疾病と指定難病がある．いずれも診断基準を満たしたうえで，前者では何らかの治療を受けていること，後者では重症度の基準を満たすことが必要となる．

▷骨形成不全症の医療補助以外の公的支援には，就学や就業・就労に対する支援，身体障害者手帳などがある．

低ホスファターゼ症磯島　豪 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1148-1151

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SUMMARY

▷低ホスファターゼ症（HPP）は組織非特異型アルカリホスファターゼの欠損により生じる疾患である．

▷HPPは，6つの臨床病型に分類され，重症度の幅が広い疾患である．

▷HPPに対する酵素補充療法は，周産期重症型と乳児型には絶対適応，その他の病型で症状が改善できる場合には相対的適応である．

▷HPPは，小児慢性特定疾病，指定難病の対象疾患である．

遺伝性出血性末梢血管拡張症（オスラー病）岩朝　徹 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1152-1156

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SUMMARY

▷遺伝性出血性末梢血管拡張症は小児慢性特定疾病・指定難病いずれにも指定されている．

▷診断には症状と家族歴をもとにしたCuraçao基準による診断と遺伝子検査による診断がある．

▷小児慢性特定疾病では確定診断され，何らかの症状があれば申請可能である．

▷指定難病においては確定診断に加え，一定以上の重症度が認定の要件となる．

▷小児期～青年期は無症状あるいは鼻出血のみの患者が多く，若年者の診断には遺伝子診断が有用である．

リンパ管腫／リンパ管腫症小関　道夫 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1157-1163

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SUMMARY

▷リンパ管腫，リンパ管腫症，ゴーハム病，リンパ管拡張症はリンパ管疾患とよばれている．

▷それぞれの疾患の臨床的特徴を理解し，区別して診断ができることが望ましいが，診断困難な例も存在する．

▷ゴーハム病はリンパ管腫症の一部と考え，小児慢性特定疾病ではリンパ管腫症での申請を検討する．

▷新規の薬物療法も開始されており，患者の状態に応じて他の外科的治療と組み合わせた治療を考慮する．

子ども虐待小橋　孝介 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1164-1170

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SUMMARY

▷子ども虐待の通告窓口は市区町村と児童相談所にあり，市区町村が一義的な通告窓口とされている．

▷児童福祉法では，国民の義務である要保護児童に対する通告以外に，要支援児童・特定妊婦に対する情報提供も努力義務として規定されている．

▷措置児童とは，一時保護された子どものほか，児童福祉施設等に入所している子どもなども含まれる．

▷措置児童には受給権が発行され，保険医療機関に受診した際には，保健医療による医療費の自己負担分が公費で補助され，患者負担は発生しない．

神経発達症大谷　良子 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1171-1176

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SUMMARY

▷神経発達症の特性を有する子どもたちは重症度や適応状態によって医療的支援を必要とする．

▷医療的支援の1つに制度の紹介や書類作成があり，ライフステージによって依頼されやすい書類がある．

▷障害者手帳や特別児童扶養手当の制度は特に質問されることが多いため理解しておくとよい．

▷書類を通して保護者と診断名や状態を話し合うことは子どもの特性理解を深めるプロセスになることもある．

▷自己理解がすすめられている思春期以降の子どもにおいては，本人も交えて書類の内容を確認することも多い．

▷書類更新は，子どもや保護者と診断や状態，必要性を見立て直し，共有し合うよい機会となり得る．

Ⅲ．附録

小児慢性特定疾患情報センター疾病名一覧および対応する指定難病石毛　美夏 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1177-1201

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注）小児慢性特定疾病と指定難病は異なる施策であり，病名が一致しないものや病名が同じでも診断基準が同一ではないものがある．表に「対応する指定難病名」として記したものは，小児慢性特定疾病の疾病名から筆者が対応すると推定するものであり，個々の病状や診断根拠により該当しない場合または他の指定難病が該当する場合もある．寄って，実際の疾患名の対応について疑問がある場合には，各自治体にあらかじめ確認する必要がある．

カラー口絵

カラー口絵 87巻8号 , 2024年8月 , pp.i-iii

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本誌本文中にモノクロ掲載した図表のうち，カラーで掲示すべきものを順に並べた．

［p. 958　図4］

［p. 1072　図2］

［p. 1154　図］

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目次 87巻8号 , 2024年8月 , pp.854-857

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お知らせ 87巻8号 , 2024年8月 , pp.858-858

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次号予告 87巻8号 , 2024年8月 , pp.971-971

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診断と治療〔第112巻・第8号〕特集予告 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1136-1136

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投稿規程 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1204-1205

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投稿論文チェックリスト 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1206-1206

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バックナンバー 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1207-1207

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奥付 87巻8号 , 2024年8月 , pp.1208-1208

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基本情報

小児科診療
87巻8号
(2024年8月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9806 診断と治療社

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投稿規定

小児科診療 87巻8号 (2024年8月発行)

特集 公費補助制度を使いこなす！

Ⅰ．総論

Ⅱ．各論

Ⅲ．附録

カラー口絵

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