小児科診療 87巻7号 (2024年7月発行)

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特集　「食べる」ことをめぐる問題―今，知っておきたい偏食・摂食障害・摂食嚥下障害への対処法―

序文高増　哲也 87巻7号 , 2024年7月 , pp.737-737

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　「食べる」ことは日常生活の一部であり，健康の土台となる活動です．ところが近年，子どもが食べることについて，多分野から問題が発生していることがクローズアップされています．そこで本特集では，まず「食べる」ことをめぐる問題について概説し，食べられない子どもへの対応について，行動・発達面から，精神・心理面から，摂食・嚥下機能面から，それぞれ解説していただくこととしました．

Ⅰ．「食べる」ことをめぐる問題

子どもが「食べる」こととその障害高増　哲也 87巻7号 , 2024年7月 , pp.741-744

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SUMMARY

▷食べることとその障害を考えるにあたり，食べることの生物学的な意味を考える．

▷食べることには，栄養，生きる楽しみ，仲間とのふれあいの場という意味がある．

▷食べることの障害には，行動面と機能面の問題がある．

▷食べることの支援には，食べる人，食べさせる人，に対するものと，養育上の問題や貧困の問題も含まれる．

▷食べることは人権である．

子どもの食をめぐる諸問題と子育てにおける食支援堤　ちはる 87巻7号 , 2024年7月 , pp.745-749

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SUMMARY

▷乳幼児期の食べ物の好き嫌い（偏食）は，食べ慣れていない新奇性恐怖によることが多い．

▷離乳完了から乳歯の生えそろう3歳頃までに与える食品は，咀嚼力を考慮することが重要である．

▷保護者が手づかみ食べの重要性を理解して，積極的にさせるように働きかけてもらう必要がある．

▷子どもは食べられたことを褒められると自信がつき，それが自己肯定感の育ちにもつながる．

▷子どもの様子に配慮しない習慣的な声かけを何度もすることは，集中力の妨げになる可能性もある．

子どもの食と栄養について西本　裕紀子 87巻7号 , 2024年7月 , pp.751-756

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SUMMARY

▷子どもにとって「食と栄養」は成長と発達を支える大きな力である．

▷「食事」は生きるための基本的な能力を引き出し発達させる重要な役割がある．

▷「不適切な食」は栄養不良（低栄養と過栄養）をもたらす．

▷低栄養（低身長）と過栄養（肥満）の根本的な因子は類似しており，改善は容易ではない．

▷「人生最初の1,000日の栄養」に始まり「切れ目のない食育」に社会全体で取り組む必要がある．

子どもの貧困と子ども食堂―広島県内の調査から― 江原　朗 87巻7号 , 2024年7月 , pp.757-761

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SUMMARY

▷子どもたちを地域で見守る活動のひとつとして「子ども食堂」が注目されている．

▷広島県内の「子ども食堂」の開催頻度と利用料金の中央値は1日/4週，100円であった．

▷広島県内の子どもの約半数においては，自宅または通学する小学校から2km圏内に「子ども食堂」が存在した．

▷「子ども食堂」の利用者数は，低所得世帯が多い自治体で多かった．一方，単親（父子・母子）世帯の割合が高い自治体で少なかった．

Ⅱ．食べられない子どもへの対応　行動面，発達面から

神経発達症の偏食にいかにかかわるか藤井　葉子 87巻7号 , 2024年7月 , pp.763-767

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SUMMARY

▷同年代の身長や体重の平均よりも低いことが多い．

▷同年代の体格の必要エネルギー量よりも低いことが多い．

▷摂取量が多く蓄えができると食べるのを減らしてむら食いになることがある．

▷優先順位の高い食材が多くなると順位の低い食材は忘れて食べなくなることがある．

▷口腔機能的に容易な食材が増えると動かし方を忘れ食べられなくなることがある．

食べない子どもに，家族はどのように対応するのがよいのか山口　健太 87巻7号 , 2024年7月 , pp.769-773

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SUMMARY

▷食べない子どもの対応には理解が必要だ．

▷子どもの状況や理由は様々で，理解に時間がかかる．

▷特に，「食べることが当たり前」という前提をもつ家族にとって，理解するのは難しく，情報収集が必要である．

▷また，心理的要因を考慮することも大切で，食べてくれるだろうという期待やプレッシャーが子どもにストレスを与えることもある．

▷声かけやかかわり方の工夫を用いながら，家族間でも連携し，長期的な視点でサポートしよう．

小児科外来における偏食への対処法大山　牧子 87巻7号 , 2024年7月 , pp.775-779

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SUMMARY

▷小児科外来で「食」に関する相談を受けたら，「そのうち治る」とは言わない．

▷簡単なスクリーニングをしながら悩みを傾聴する．

▷便秘を直す，睡眠リズムを整えることから始める．

▷栄養評価と微量元素欠乏に対する治療は必ず行う．

▷体重減少に対する親の不安を受け入れつつ，一切の強制をやめることを提案する．

▷親の仕事は，決まった時間に，バランスの良い食べ物を，家族が食べる食卓で出すことである．

▷子どもの仕事は「食べる，食べない」「食べる量，食べ方」を決めることである．

自閉スペクトラム症と食べることの問題北島　翼 , 作田　亮一 87巻7号 , 2024年7月 , pp.781-784

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SUMMARY

▷自閉スペクトラム症の特性と関連して偏食などの食事の問題が生じることは多い．

▷子ども自身は口腔内感覚過敏もあり食べ物として安心して食べることが難しくなりやすい．

▷親は様々な工夫を施してみても子どもに食事を食べてもらえずに疲弊していることも多い．

▷子どもが食事時間を楽しめること，親が子どもの食事にかかわる勇気をもてるようになることが診療の第一目標である．

▷家族や子どもと一緒に食事時間を楽しめるように考えていく小児科外来の時間は親子の関係性を豊かにしてくれる．

Ⅲ．食べられない子どもへの対応　精神・心理面から

摂食症の診断と病態安藤　哲也 87巻7号 , 2024年7月 , pp.785-792

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SUMMARY

▷「食行動症及び摂食症群」は，持続する摂食行動の異常により健康と心理社会的機能が障害される重篤な疾患である．

▷米国精神神経学会の診断基準DSM-5-TRでは「食行動症及び摂食症群」群には「神経性やせ症」「神経性過食症」「むちゃ食い症」「回避制限性食物摂取症」「異食症」「反芻症」「食行動症又は摂食症，他の特定される」「食行動症又は摂食症，特定不能」が含まれている．

▷遺伝的な脆弱性と環境要因の相互作用による生物学的な基盤をもつ疾患である．

▷発症後は飢餓と異常な食行動の生理学的な影響や，報酬と食欲に関する神経回路の異常，習慣形成や条件付け学習が，これらの疾患の強迫的な性質を形成している．

子どもの摂食障害の治療の現況と今後の展望鈴木　眞理 87巻7号 , 2024年7月 , pp.793-798

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SUMMARY

▷COVID-19パンデミックは10歳代の神経性やせ症や回避・制限性食物摂取症の新規患者数を増加させた．

▷子どもの神経性やせ症の早期発見，早期治療，治療中のサポートに学校の役割が大きい．

▷成長期の神経性やせ症では，心理教育，現実的な栄養指導，入院治療で迅速に体重回復をはかる．

▷欧米で有効性が示されているfamily-based treatment （FBT）を日本で広めるために医療，家族，就労現場での支援が必要である．

▷enhanced cognitive behavior therapy（CBT-E）は子どもの神経性やせ症にも有効で，定期的な身体的評価と成人より厳格な入院基準，親の参加が必要である．

▷神経性やせ症や回避・制限性食物摂取症には発達症だけでなく不安障害の合併もある．

摂食障害の栄養指導浮田（柴崎）　千絵里 87巻7号 , 2024年7月 , pp.799-805

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SUMMARY

▷神経性やせ症の患者に対する栄養指導では，病期によって指導法が異なる．

▷制限型の栄養指導では，この病気の症状によって起こる食事への弊害を説明する．

▷むちゃ食い・排泄行為（過食・嘔吐）では，その行為を否定するだけに終わらず，対処法を検討・説明する．

▷回復期の過食では，なぜ過食行動が起きるのか説明し，過食することを否定せず寄り添う栄養指導を心がける．

▷病気の回復とともに，健康維持の食事について紹介する．

摂食障害の家族支援小原　千郷 87巻7号 , 2024年7月 , pp.807-811

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SUMMARY

▷摂食障害患者の家族のケアの負担は重く，家族はメンタルヘルスを損ないがちである．

▷摂食障害患者の回復には，家族の協力が不可欠である．

▷摂食障害の家族支援は，家族をエンパワーするとともに，患者自身の回復を促進する．

▷家族支援として，family-based treatment，家族心理教育，社会的資源を紹介する．

▷効果的な家族支援には，家族のメンタルヘルスに配慮し，彼らを治療チームの一部として組み込むことが重要である．

Ⅳ．食べられない子どもへの対応　摂食・嚥下機能面から

食べる機能の障害とその対処法田村　文誉 87巻7号 , 2024年7月 , pp.813-817

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SUMMARY

▷離乳後期には咀嚼運動の基礎となる「すり潰し機能」が獲得される．

▷手づかみ食べをさせるときには，口腔機能がどこまで育っているかの確認が重要である．

▷食べる機能の障害の原因は複数あり，感覚の問題の影響も大きい．

▷食べる機能の評価には，食事時の外部観察評価が重要である．

▷食べる機能の障害への対処法には，食環境指導，食内容指導，摂食機能訓練がある．

摂食嚥下を学ぶための手段綾野　理加 87巻7号 , 2024年7月 , pp.819-824

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SUMMARY

▷小児科医が摂食嚥下を学ぶための手段として，以下について述べた．①小児の摂食嚥下についてまず手にとっていただきたい書籍など，②食事の内容や形態などについて，③摂食嚥下にかかわる解剖生理について学ぶためのもの，④摂食嚥下障害に対する検査について知るもの，⑤食べたくない子どもへの対応に関するもの，⑥健診などでの保護者からの疑問質問への回答のヒントになるもの，⑦小児の摂食嚥下に関する研修会など．

▷保護者からの食事についての疑問質問へお答えになる際の一助となれば幸いである．

重症心身障害児者の食支援淺野　一恵 87巻7号 , 2024年7月 , pp.825-830

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SUMMARY

▷重症心身障害児者とその家族にとって，食事は楽しみなものなので，数口であったとしても安全に継続できる方法を検討する．

▷経口摂取が安全に行えているかの評価は安静時の状態，食事場面評価，経時的評価，提供されている食環境の適合性などを総合的に行う必要がある

▷摂食嚥下機能障害を代償補完する環境支援として，食事形態や食事姿勢の工夫等がある．

▷経管栄養導入後もミキサー食を注入することで，家族と一緒の食事を楽しめる方法がある．

重症児デイサービスでの食育の実際大髙　美和 87巻7号 , 2024年7月 , pp.831-835

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SUMMARY

▷摂食嚥下障害のある子どもの食の課題については家族とだけでなく家庭以外の居場所で共有し，様々な食体験を重なることが大切である．

▷通所支援中に食事をする場面で，無理なく食べられる工夫や適した食形態の調理法等について家族や学校などの施設等と共有することが大切である．

▷児童発達支援センター以外の障害児通所支援事業での食事提供は現状は制度外でも，適した食形態や様々な食材を安全に経験する機会が必要である．

▷摂食嚥下障害のある子どもが健康な生活の基本となる食を営む力の育成に努める等の配慮が通所支援事業所でも必要である．

症例報告

コロナ禍の適応障害と診断し，1か月後に体重減少を契機に1型糖尿病の診断に至った思春期女児例五藤　明徳 , 長井　典子 , 伊藤　早苗 87巻7号 , 2024年7月 , pp.837-839

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要旨

　新型コロナウイルス感染症による社会情勢の変化により心身に不調を訴える小児は増加した．一方で，コロナウイルスの流行に伴って1型糖尿病の発症増加の報告もある．

　今回，当初コロナ禍における適応障害として経過観察中，体重減少を認め摂食障害の併発を疑ったものの，問診と精査のうえ，1型糖尿病の診断に至った1例を経験した．子どものこころの問題で診療中の患者に対し常に身体疾患の併発を疑うことが必要であると思われる．

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目次 87巻7号 , 2024年7月 , pp.738-739

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お知らせ 87巻7号 , 2024年7月 , pp.773-773

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お知らせ 87巻7号 , 2024年7月 , pp.798-798

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診断と治療〔第112巻・第7号〕特集予告 87巻7号 , 2024年7月 , pp.830-830

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お知らせ 87巻7号 , 2024年7月 , pp.836-836

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本号掲載広告一覧 87巻7号 , 2024年7月 , pp.840-840

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次号予告 87巻7号 , 2024年7月 , pp.841-841

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投稿規程 87巻7号 , 2024年7月 , pp.844-845

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投稿論文チェックリスト 87巻7号 , 2024年7月 , pp.846-846

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バックナンバー 87巻7号 , 2024年7月 , pp.847-847

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奥付 87巻7号 , 2024年7月 , pp.848-848

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基本情報

小児科診療
87巻7号
(2024年7月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9806 診断と治療社

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投稿規定

小児科診療 87巻7号 (2024年7月発行)

特集 「食べる」ことをめぐる問題―今，知っておきたい偏食・摂食障害・摂食嚥下障害への対処法―

Ⅰ．「食べる」ことをめぐる問題

Ⅱ．食べられない子どもへの対応 行動面，発達面から

Ⅲ．食べられない子どもへの対応 精神・心理面から

Ⅳ．食べられない子どもへの対応 摂食・嚥下機能面から

症例報告

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基本情報

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特集　「食べる」ことをめぐる問題―今，知っておきたい偏食・摂食障害・摂食嚥下障害への対処法―

Ⅱ．食べられない子どもへの対応　行動面，発達面から

Ⅲ．食べられない子どもへの対応　精神・心理面から

Ⅳ．食べられない子どもへの対応　摂食・嚥下機能面から

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