臨床眼科 70巻11号 (2016年10月)

増刊号 眼感染症の傾向と対策—完全マニュアル

序文 福田 昌彦 , 下村 嘉一
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 医療のなかにも「攻めの医療」「守りの医療」があると常々考えている。攻めの医療は最先端の医療技術に基づいた先進医療などがそれに当たるであろう。眼感染症診療は,さまざまな病原体のなかから疾患の原因を同定し,その病原体に合った治療方法を選択・駆使して障害を最小限にとどめるという,いわば守りの医療であると考える。どんなに素晴らしい手術をしても,術後感染を起こしてしまえばもとの木阿弥になってしまう。野球などのスポーツに喩えると,どんなに素晴らしいバッターを揃えて多くの点数を取ったとしても,守りがボロボロでそれ以上の点数を失えば試合には負けてしまうことになるのである。眼感染症の分野がメディアに取り上げられて脚光を浴びることはない,むしろ流行性角結膜炎(EKC)の院内感染などのマイナスイメージがつきまとう分野である。しかしながら,眼感染症に対する備えを万全にしなければ眼科医療は成り立たない根本的な分野でもある。

 眼感染症は日々変化している。抗菌薬の耐性化とMRSAの問題,重症例が多い角膜真菌症,いつまでたっても解決しないEKCとの戦い,再発を繰り返すヘルペスへの対応,新しく疾患概念が確立されたサイトメガロウイルス角膜内皮炎の問題,若者に重篤な視力障害を引き起こすコンタクトレンズ関連角膜感染症,マイボーム腺炎角結膜上皮症への対応,性感染症関連眼感染症,頭が痛い術後眼内炎の問題などさまざまなトピックスがあり,それらは時とともに変化していく。これらの情報は常にチェックしてアップデートしていく必要がある。

Ⅰ.知っておきたい眼感染症診療の動向

MRSA角膜炎との戦い 外園 千恵
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POINT

■MRSA角膜炎は日和見感染で生じる代表的な角膜感染症である。

■典型的には表層性,円形ないし楕円形の感染巣を形成する。

■患者背景として高齢,アトピー性皮膚炎,角膜移植後,瘢痕性角結膜上皮症がリスク因子となる。

■LASIKなどの角膜手術後に発症するMRSA角膜炎は重篤化しやすい。

注意が必要な角膜真菌症 江口 洋
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POINT

■診断時は,発症原因によって分類される2つの型を意識しながら患者の既往歴・生活歴を十分に問診することが重要である。

■角膜移植後は酵母型真菌感染が多く,植物による外傷後は糸状菌感染が多い。

■治療時に安易にステロイド点眼薬を使用しないことが重要である。

■種同定は古典的な培養と形態学的分類が基本である。

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POINT

■わが国ではアデノウイルス結膜炎の型は毎年変化しており,その背景には変異による遺伝子型がある。

■2015年には全国的に新型の1つである54型による大きな流行があり,角膜病変の重症化など臨床像の変化がみられた。

■近年報告されている新型は血清型とは異なる遺伝子変異率によって決められるようになっている。

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POINT

■1972年に提唱された角膜ヘルペス病型分類,および,1993年に提唱された角膜ヘルペス病型分類について述べた。

■real-time PCR法,multiplex real-time PCR法,LAMP法などについて概説した。

■単純ヘルペスウイルスに有効と期待される薬剤について述べた。

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POINT

■サイトメガロウイルスによる角膜内皮の特異的炎症。進行すると水疱性角膜症となる。

■典型例ではコインリージョン(coin-shaped lesion)と呼ばれる円形に配列する角膜後面沈着物や,拒絶反応線様の線状に配列する角膜後面沈着物を認める。

■虹彩炎や眼圧上昇を伴うことが多い。

■診断には前房水PCRによるウイルス検索が有用である。

■ガンシクロビルなどの抗サイトメガロウイルス薬とステロイド薬の併用治療の有効性が報告されている。

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POINT

■角膜内皮炎において,ヘルペス感染既往や角膜知覚低下,ステロイド単独治療への反応性などがヘルペス治療の必要性を示唆する所見となる。

■ヘルペス性角膜内皮炎の診断は,PCRによる前房水からのヘルペスウイルスDNAの同定が有効である。

■治療にはステロイドによる消炎に加えて,ヘルペスウイルスの種類に応じた抗ヘルペスウイルス薬の選択が必要である。

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POINT

■コンタクトレンズによる角膜潰瘍は,最も起こしてはいけないコンタクトレンズの合併症であり,重症例では失明例も存在する。

■緑膿菌とアカントアメーバが2大起因菌である。

■コンタクトレンズの種類,装用方法,消毒剤の種類,消毒剤の使用方法,ケアの方法,ケースの手入れ,ケースの交換時期などにより影響を受ける。

■コンタクトレンズの進歩,消毒方法の変化に伴って感染症も変化している。

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POINT

■2013年に難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)が先進医療として認められた。

■最新の網羅的PCRシステム(ストリップPCR)は,24種類の眼感染症主要病原微生物を網羅し迅速・簡便である。

■網羅的PCRは感染症診断,感染症除外診断(ステロイド投与前,術前など),混合感染・稀な感染症の網羅的検索,外来・術中迅速検査に有用であるが万能ではなく,従来の検体検査・臨床所見観察を併用した総合判断が必須である。

眼瞼の菌と角膜炎の考え方 鈴木 智
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POINT

■眼瞼は,睫毛根部を中心とした「前部」とマイボーム腺開口部を中心とした「後部」に大別できる。

■前部眼瞼炎の代表例がブドウ球菌性眼瞼炎であり,起炎菌は表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌である。

■後部眼瞼炎は「マイボーム腺炎」と同義である。起炎菌は,若年者では主にPropionibacterium acnesP. acnes)であるが,加齢に伴い変化する可能性がある。

■前部眼瞼炎・後部眼瞼炎それぞれに臨床所見に特徴のある角膜炎を生じうる。

性感染症と眼感染症 中川 尚
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POINT

■日常診療において性感染症由来の眼感染症に遭遇する可能性があることに留意しておく必要がある。

■HIV感染症と梅毒が近年増加傾向にある。

■患者が眼感染症と同時に,その原因となった性感染症についてもきちんと該当診療科で診断,治療が受けられるように対応することが重要である。

眼科領域での薬剤耐性菌 豊川 真弘
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POINT

■臨床上重要な薬剤耐性菌の動向について概説した。

■近年は,グラム陰性桿菌における耐性機序の多様化・多剤耐性化が深刻な問題となっている。

■日和見真菌症に対する抗真菌薬の感受性成績についても紹介した。

■主要な眼感染症由来真菌に対する感受性成績のデータベースが構築されつつある。

術後眼内炎の日本での動向 鈴木 崇
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POINT

■術後眼内炎(感染症)の発症率は横ばいもしくは減少傾向にある。

■腸球菌による術後眼内炎の視力予後は,不良と良好の二峰性である。

■術後眼内炎と鑑別すべき疾患として,眼内レンズ起因のTASS(toxic anterior segment syndrome)の多発症例が認められる。

■術後眼内炎の予防策として,抗菌薬点眼による術前減菌法,抗菌薬前房内投与が試みられている。

Ⅱ.薬剤別:上手な使い方のポイント

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POINT

■ニューキノロン系薬は多用される抗菌薬の1つであり,眼科感染症においては第一選択薬である。

■ニューキノロン系抗菌薬は,単剤で多くの細菌を殺す作用がある広域スペクトルの抗菌薬である。

■ニューキノロン系抗菌薬は体内動態に優れ,組織移行性が良好な薬剤であり,1日1回の大量投与によって感染症を治療する。

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POINT

■β-ラクタム系抗菌薬は注射薬から経口薬へと使いやすい安全な薬剤であり,比較的その毒性は低い。

■β-ラクタム系抗菌薬は一般的に,グラム陽性菌の治療には第一選択薬とされている。

■β-ラクタム系抗菌薬は時間依存性に作用するため,投与回数を多くすると効果的である。

その他の抗菌薬の使い方 岡本 茂樹
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POINT

■細胞蛋白質合成阻害薬としてマクロライド系,アミノグリコシド系,テトラサイクリン系がある。

■細胞壁合成阻害薬としてバンコマイシン,リネゾリド,ホスホマイシンがある。

■いずれも抗菌スペクトルが狭いか耐性菌が多いため,感受性テストの結果を待って投与する。

■抗真菌薬はポリエン系,アゾール系,キャンディン系があり,ポリエン系は副作用が強いため局所投与を行うが,アゾール系,キャンディン系では全身投与と局所投与を併用する。

ヨード製剤の可能性 秦野 寛
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POINT

■ヨード製剤は薬剤耐性がない。

■ヨード製剤はすべての微生物に有効である。

■消毒薬は3要素(温度,濃度,時間)が重要である。

自家調整点眼薬のすべて 相馬 剛至
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POINT

■既成の眼科用製剤がない,もしくは市販製剤では治療効果が少ない疾患を対象とする。

■適応外使用であり,施設に申請したうえで患者への十分な説明を行い使用する。

■防腐剤無添加であるため,点眼瓶の汚染に注意し,1週間ごとに廃棄,交換する。

■各点眼薬の薬剤活性に応じた使用期限を厳守する。

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POINT

■細菌性角膜炎におけるステロイド使用のポイント

 1)起因菌が確定し,その特徴が把握できていること。

 2)投与されている抗菌薬が起因菌に感受性があり,臨床的に効果が確認されていること。

■実質型角膜ヘルペスにおける使用のポイント

 1)抗ウイルス薬と必ず併用し,ステロイドを先に中止すること。

 2)ゆっくり漸減すること。

Ⅲ.疾患別:診断・治療の進め方と処方例

Ⅲ.疾患別:診断・治療の進め方と処方例 1.眼瞼疾患

麦粒腫 子島 良平
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POINT

■麦粒腫は眼瞼の付属腺組織の急性化膿性の細菌感染症である。

■疼痛や瞬目に伴う異物感を訴え,眼瞼の局所的な発赤や腫脹,硬結を認める。

■診断は容易であるが,高齢者では悪性腫瘍の場合もあり注意を要する。

■抗菌点眼薬で治療,重症例では内服を行う。

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POINT

■主としてブドウ球菌の感染が原因で生じる慢性前部眼瞼炎である。

■眼瞼炎の症状は,朝に悪化するのが典型的である。

■所見としては,黄色滲出物付着,collarette,皮膚びらん,睫毛脱落が特徴的である。

■治療は,主に眼瞼清拭,局所抗菌薬投与を行う。重症例では少量ステロイド投与,全身の抗菌薬投与を行う。

■眼瞼炎は慢性疾患であり,治療のアドヒアランスが重要であることを患者によく説明する。

伝染性軟属腫 箕田 宏
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POINT

■古くから小児に多い感染症であるが,最近では性行為に関連した成人例が増加している。

■成人における,大型な本症の多発例ではHIV感染を疑う。

■健常人における孤発例には内容物の除去などの外科的な治療が有効であるが,免疫不全者の多発例には抗ウイルス薬の有用性が報告されている。

ウイルス性眼瞼炎(HSV/VZV) 高村 悦子
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POINT

■眼瞼ヘルペスの再発は,同側の眼瞼に繰り返すことがある。

■アトピー性皮膚炎患者の眼瞼に小水疱を認めた場合,眼瞼ヘルペスを疑う。

■眼瞼ヘルペスと眼部帯状ヘルペスとでは,抗ウイルス薬の用法,用量が異なる点に注意する。

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POINT

■マイボーム腺炎は後部眼瞼縁炎の1つであり,マイボーム腺の開口部は,閉塞性マイボーム腺機能不全の所見を示すが,特徴として眼瞼縁の炎症や結膜炎症が強いことが挙げられる。

■マイボーム腺炎関連角膜上皮症は,角膜フリクテンと非フリクテン角膜上皮症に分けられる。

■角膜フリクテンは,角膜への表層性血管侵入と結節性細胞浸潤が特徴である。

■非フリクテン角膜上皮症には,点状表層角膜症に類似した角膜上皮障害がみられるが,それとは異なる特徴的な,やや大きな丸い上皮の点状染色や点状の暗い蛍光の抜けがよくみられる。

■マイボーム腺炎関連角膜上皮症には,クラリスロマイシンの少量長期療法が奏効する。

Demodexによる眼瞼炎 川北 哲也
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POINT

■眼瞼のDemodexには2種類あり,睫毛根部,マイボーム腺にそれぞれ寄生する。

■眼瞼のDemodexの数が増加することにより炎症を惹起する。

■治療は眼瞼の清浄,tea tree oilの局所塗布である。

Ⅲ.疾患別:診断・治療の進め方と処方例 2.涙器・眼窩疾患

涙小管炎 大江 雅子
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POINT

■中高年の女性に多い疾患である。

■経過の長い片眼性の多量の眼脂を主訴とする。

■涙管通水検査で涙囊炎と鑑別できる。

■涙点の形状変化・涙点周囲の特徴的な所見がある。

■放線菌・真菌が作る菌塊が原因である。

涙囊炎 宮崎 千歌
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POINT

■鼻涙管閉塞,涙囊炎に対する最も効果的な治療は手術である。

■抗菌薬の使用は急性期のみとする。

■漫然と保存的治療を継続せず,手術治療に移行する。

眼窩蜂巣炎 稲田 紀子
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POINT

■眼瞼に急性炎症性所見(発赤,腫脹,疼痛)がみられたら,眼球突出,複視,視力障害の有無を確認する。

■CT,MRI検査で副鼻腔・眼窩病変を検索する。

■早期に抗菌薬の全身・局所投与を開始し,副鼻腔炎が検出されれば耳鼻科に治療を依頼する。

涙腺炎 小幡 博人
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POINT

■感染性涙腺炎は稀であり,涙腺炎の多くが非感染性の涙腺炎である。

■細菌性涙腺炎の診断のポイントは,上眼瞼外側を中心とした腫脹や発赤,結膜の充血,眼脂,疼痛,圧痛である。

■涙腺が腫大していることをCTまたはMRIで確認する。

■細菌性涙腺炎の治療は抗菌薬の全身投与であり,内服,または,重症度に応じて点滴による治療を行う。

Ⅲ.疾患別:診断・治療の進め方と処方例 3.結膜疾患

細菌性結膜炎 亀井 裕子
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POINT

■細菌性結膜炎は幼小児および高齢者に多く,青壮年には少ない。

■症候としては急性カタル性結膜炎が多いが,化膿性結膜炎となるものは重症化しやすい。

■通常,抗菌点眼薬により1週間程度で治癒する。

■淋菌性結膜炎は化膿性が強く,角膜潰瘍を合併して失明に至ることがある。

■2週間以上症状が続く場合は,導涙障害や眼瞼皮膚炎などによる慢性炎症の存在を疑う。

クラミジア結膜炎 中川 尚
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POINT

■成人では急性濾胞性結膜炎,新生児では化膿性結膜炎または偽膜性結膜炎を示す。

■診断には抗原検出法(EIA,蛍光抗体など)や遺伝子検出法(PCRなど)が有用。

■マクロライド系,フルオロキノロン系の抗菌薬で治療する。

■結膜炎だけでなく全身合併症の存在を考慮した治療法を選択する。

ウイルス性結膜炎 北市 伸義
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POINT

■アデノウイルス,エンテロウイルス,ヘルペスウイルスなどが原因である。

■アデノウイルス角結膜炎は眼科領域で最も患者数の多い感染症の1つである。

■アデノウイルス角結膜炎の診断には急性濾胞性結膜炎,耳前リンパ節症,眼瞼結膜瞼縁部小出血点に注目する。

■感染拡大を防ぐため,迅速な診断と手洗いの励行,消毒が重要である。

東洋眼虫症 白石 敦
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POINT

■東洋眼虫は人畜共通寄生虫である。

■中間宿主はハエの一種であるメマトイである。

■本邦で10〜15mmの白色の小線虫を結膜囊に認めたら,本疾患をまず疑う。

■治療は摘出である。

■摘出の際には点眼麻酔により虫体の活動性を低下させることが重要である。

Ⅲ.疾患別:診断・治療の進め方と処方例 4.角膜疾患

細菌性角膜炎 庄司 純
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POINT

■原因菌により特徴的な細隙灯顕微鏡所見が出現することがあるため,初診時の他覚所見は詳細に記録することが重要である。

■細菌学的診断法により原因菌を確定診断する。

■薬剤感受性試験により感受性のある抗菌薬と薬剤耐性の有無について確認する。

■抗菌薬の投与ルートとして,点眼薬,眼軟膏,結膜下注射,点滴静注などがあり,重症例ほど投与ルートを増やして対応する。

■薬剤の投与と同時にPA・ヨードによる消毒を併用することがある。

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POINT

■単純ヘルペスウイルス角膜炎上皮型では偽樹枝状角膜炎をきたす疾患との鑑別を要する。

■診断は臨床所見と免疫クロマトグラフィ,角膜知覚が重要である。

■治療はアシクロビル眼軟膏。実質型ではそれに加えてステロイド点眼(急に止めずに漸減)を行う。

水痘帯状ヘルペス角膜炎 檜垣 史郎
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POINT

■三叉神経第1枝領域に帯状疱疹を発症し,眼部病変を認めた場合,眼部帯状疱疹(HZO)と呼ばれる。

■鼻毛様体神経の支配領域である鼻背,鼻尖に皮疹がみられる場合には,眼病変合併の頻度が高率で,ハッチンソンの法則といわれている。

■眼部帯状疱疹の眼合併症としては,角膜炎の他に,結膜炎,上強膜炎,強膜炎,虹彩炎,緑内障,眼筋麻痺,網膜血管炎,視神経炎などが挙げられる。

■水痘帯状疱疹ウイルスによる偽樹枝状角膜炎で,実質病変,虹彩炎が合併している場合,ステロイド点眼を併用処方する。

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POINT

■角膜内皮細胞に炎症を生じ,初期には角膜後面沈着物を伴う限局的な実質および上皮浮腫を呈する。

■進行すると浮腫は角膜全体に及び,不可逆的内皮機能不全を生じ,角膜内皮移植適応となることもある。

■単純ヘルペスウイルス,水痘帯状疱疹ウイルスに加え,サイトメガロウイルス,耳下腺炎ウイルスなどの関与も指摘されるようになった。

■眼所見のみならず,前房水PCR検査によるウイルスDNAの同定が重要である。

■ステロイド点眼,抗ウイルス薬の内服,点眼で加療する。

真菌性角膜炎 宇野 敏彦
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POINT

■真菌性角膜炎は酵母菌(カンジダ属)と糸状菌の2種に大別して考える必要がある。

■酵母菌による角膜炎は細菌性のものと所見上鑑別しにくく,検鏡培養で同定していく必要がある。

■糸状菌による角膜炎はhyphate ulcer,endothelial plaqueなどの特徴的所見を見逃さないことが重要である。

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POINT

■非常に難治である。特に初期で治療に成功しない症例や,移行期,完成期で初診した症例は注意が必要である。

■特異的な治療法は確立されていない。

■CLによるものが,全体の85〜90%を占める。それらの例は,CL保存ケースの汚染が原因である。しかも使用している消毒剤の効果が,煮沸消毒,コールド消毒,MPSと次第に弱まったため,アメーバがケース内で増殖し,CLに付着し角膜の傷から侵入して感染する。

■現在のところ,筆者らが提唱した,角膜掻爬,抗アメーバ効果のある薬剤の点眼,抗真菌剤の全身投与を組み合わせた,3者併用療法が最も有効である。

黄色ブドウ球菌角膜炎 門田 遊
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POINT

■黄色ブドウ球菌は,グラム陽性球菌で結膜囊常在菌である。

■外傷,コンタクトレンズ装用,免疫力低下などがきっかけで角膜炎を発症する。

■抗菌薬の治療によく反応するが,著しく免疫力が低下している場合あるいはMRSAの場合は難治となる。

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POINT

■非定型抗酸菌角膜炎は稀であるが,進行が遅く,前房炎症を伴う難治性の角膜炎では本症を疑う。

■特徴的所見の有無,微生物検査により早期に診断して治療を開始することが望ましい。

■通常の細菌学的検査では菌を検出できず,同定には抗酸菌染色と抗酸菌培養が必要である。

■アミカシン,クラリスロマイシンなど,感受性のある薬剤を用いてもきわめて難治である。

■初期のステロイド使用は炎症をマスクし,治療を長引かせる。

ノカルジア角膜炎 鈴木 崇
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POINT

■外傷を契機に発症する。

■糸状菌による角膜炎と類似した臨床所見(境界不明瞭な角膜細胞浸潤)を呈する。

■塗抹標本でグラム陽性の樹枝状の菌体を認める。

■アミノグリコシド系抗菌薬,ミノサイクリン,ST合剤を重症度に合わせて治療に使用する。

Ⅲ.疾患別:診断・治療の進め方と処方例 5.ぶどう膜・網脈絡膜疾患

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POINT

■片眼性,高眼圧,肉芽腫性の急性ぶどう膜炎である。

■前房水からのウイルスDNAの検出が診断には重要である。

■アシクロビルなどの抗ウイルス薬の眼局所,または全身投与が治療法である。

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POINT

■片眼性の肉芽腫前部ぶどう膜炎である。

■眼圧上昇を特徴とする。

■前眼部炎症は軽度から中等度である。

■慢性の経過をたどる。

■角膜内皮細胞の減少をきたす。

急性網膜壊死 岩橋 千春 , 大黒 伸行
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POINT

■急性網膜壊死の治療の基本はASAP(as soon as possible)であり,疑ったらただちに治療を開始する。

■初診時の壊死病巣が赤道境界部より周辺である場合には,急いで硝子体手術を行うのではなく,抗ウイルス療法をしっかり行う。

■初診時の壊死病巣が赤道境界部より後極である場合には,硝子体手術の時期を考えながら治療にあたる。

HTLV-1関連ぶどう膜炎 丸山 耕一
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POINT

■HTLV-1に感染することによって生じるぶどう膜炎である。

■顆粒状やびまん性硝子体混濁を生じ,網膜血管上に白色顆粒をみることがある。

■抗HTLV-1抗体が陽性であることが診断の根拠となる。

■重症化することは少なく,予後は良好であるが,約50%の症例に再燃をみる。

■ステロイド薬の局所治療に加えて,内服漸減治療を要することが少なくない。

眼トキソプラズマ症 蕪城 俊克
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POINT

■先天性感染と後天性感染があり,近年後天性感染の症例が増えている。

■本邦では10%前後に感染の既往があるが,ほとんどは不顕性感染である。

■活動性病変は1〜3乳頭径大の白色〜黄白色の境界不明瞭な病巣で,網膜後極部に起きることが多い。

■先天性感染は通常両眼性で黄斑部に陳旧性瘢痕病巣がみられ,その周囲に再発を起こす。

■後天性感染は片眼性が多く,陳旧性病巣が存在せず,トキソプラズマIgM抗体が陽性になる点が先天性感染と異なる。

結核性ぶどう膜炎 後藤 浩
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POINT

■日本は結核の中蔓延国である。

■網膜静脈周囲炎を呈することが多い。

■蛍光眼底造影検査による網膜無灌流域のチェックが重要。

■治療は抗結核薬の内服とともに,適宜ステロイドや網膜光凝固を併用する。

梅毒性ぶどう膜炎 鈴木 重成
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POINT

■ぶどう膜炎を診たら,鑑別すべき疾患として梅毒ぶどう膜炎を思い浮かべる。

■必ず非特異的反応(梅毒血清反応:RPRカード法)と特異反応(TPHA法,もしくはFTA-ABS法)を検査する。

■梅毒性ぶどう膜炎の診断には,問診や視診も重要であることを認識する。

Ⅲ.疾患別:診断・治療の進め方と処方例 6.眼内炎

術後細菌性眼内炎 薄井 紀夫
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POINT

■術後眼内炎の発症率は,急性眼内炎で0.03%,晩期眼内炎で2%程度である。

■起炎菌はグラム陽性球菌が多く,最近は耐性菌の報告が増加している。

■眼内炎に対する最も確実な治療方法は抗菌薬を用いた硝子体手術である。

■抗菌薬として塩酸バンコマイシンとセフタジジム水和物を組み合わせて用いる。

■確実な抗細菌療法とともに強力な抗炎症療法も必須である。

内因性細菌性眼内炎 喜多 美穂里
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POINT

■起炎菌が血行性に眼内移行したもので,眼外原病巣は肝膿瘍が最多である。

■糖尿病・免疫能低下などを背景に発症する。

■起炎菌はグラム陰性菌,なかでもKlebsiellaが最多である。

■抗菌薬全身投与・硝子体内注射,硝子体手術で治療する。

■稀な疾患であるが,予後はきわめて不良である。

外傷性眼内炎 松本 光希
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POINT

■外傷性眼内炎は穿孔性眼外傷の5〜30%に生じる。

Bacillus cereusによる眼内炎の予後はきわめて不良である。

■眼内異物がある場合の外傷性眼内炎の予後も不良である。

■外傷性眼内炎に対して早期診断,早期治療が必要である。

真菌性眼内炎 川上 秀昭 , 望月 清文
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POINT

■真菌血症患者で初回の眼底検査(散瞳下)で異常がみられない場合でも,1〜2週後に必ず再検査を行う。

■好中球減少患者では,好中球数が回復してから眼底検査を行う。

■菌種,薬剤使用歴ならびに眼内移行を考慮し,適切に抗真菌薬を選択する。

■治療方針を決めるうえで,感染症科医との緊密な連携が大切である。

Ⅲ.疾患別:診断・治療の進め方と処方例 7.術後感染症

LASIK関連感染症 山口 達夫
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POINT

■LASIK術後感染症の発症頻度は0〜1.5%であり,頻度は高くない。

■感染が起こると視力が低下する可能性が高いため,細心の注意を払う必要がある。

■原因菌はStaphylococcus aureus,MRSA,Streptococcus pneumoniaeNocardia,マイコバクテリア属,真菌などが挙げられる。

■鑑別診断としては,DLKとepithelial ingrowthが挙げられる。

■充血の程度と角膜の混濁の形を的確に診断し,特徴的な臨床像から原因菌を推測する。

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POINT

■角膜移植後はステロイド点眼や上皮のバリア機能低下により易感染状態となっている。

■早期治療が角膜移植片のダメージ軽減へつながるため,患者教育とかかりつけ医療機関との連携が重要となる。

■塗抹鏡検は原因菌を早期に同定できる検査として有用である。

■細菌・真菌・ウイルスなどのあらゆる可能性を想定した多剤による投薬は,治療期間の遷延を招くため,対象を絞った治療でこまめな診察が必要になる。

濾過胞関連感染症 山本 哲也
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POINT

■濾過胞関連感染症はトラベクレクトミー後の重要な晩期合併症である。

■濾過胞炎から眼内炎に進展する。

■初期からの十分な抗菌治療が必須である。

■硝子体波及例では緊急の硝子体手術を考慮する。

バックル感染 島田 宏之
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POINT

■バックル感染は,早期感染と晩期感染に分けられる。

■早期感染の予防は,ヨウ素系消毒薬による術野の洗浄である。

■晩期感染の予防は,バックルの確実な縫着,テノン囊や結膜の密な縫合である。

■早期感染ではバックル除去,晩期感染では露出したバックルを早期に抜去する。

■バックル除去後の,再網膜剝離のリスクは少ない。

基本情報

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臨床眼科
70巻11号 (2016年10月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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