増刊号 眼感染症の傾向と対策—完全マニュアル
序文
福田 昌彦
1
,
下村 嘉一
1
1近畿大学
pp.3
発行日 2016年10月30日
Published Date 2016/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410212003
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医療のなかにも「攻めの医療」「守りの医療」があると常々考えている。攻めの医療は最先端の医療技術に基づいた先進医療などがそれに当たるであろう。眼感染症診療は,さまざまな病原体のなかから疾患の原因を同定し,その病原体に合った治療方法を選択・駆使して障害を最小限にとどめるという,いわば守りの医療であると考える。どんなに素晴らしい手術をしても,術後感染を起こしてしまえばもとの木阿弥になってしまう。野球などのスポーツに喩えると,どんなに素晴らしいバッターを揃えて多くの点数を取ったとしても,守りがボロボロでそれ以上の点数を失えば試合には負けてしまうことになるのである。眼感染症の分野がメディアに取り上げられて脚光を浴びることはない,むしろ流行性角結膜炎(EKC)の院内感染などのマイナスイメージがつきまとう分野である。しかしながら,眼感染症に対する備えを万全にしなければ眼科医療は成り立たない根本的な分野でもある。
眼感染症は日々変化している。抗菌薬の耐性化とMRSAの問題,重症例が多い角膜真菌症,いつまでたっても解決しないEKCとの戦い,再発を繰り返すヘルペスへの対応,新しく疾患概念が確立されたサイトメガロウイルス角膜内皮炎の問題,若者に重篤な視力障害を引き起こすコンタクトレンズ関連角膜感染症,マイボーム腺炎角結膜上皮症への対応,性感染症関連眼感染症,頭が痛い術後眼内炎の問題などさまざまなトピックスがあり,それらは時とともに変化していく。これらの情報は常にチェックしてアップデートしていく必要がある。
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