臨床眼科 70巻10号 (2016年10月)

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要約 目的:ぶどう膜炎に続発した緑内障の臨床像と治療方法の調査。

対象と方法:2010年10月〜2014年9月に山口大学医学部附属病院眼科ぶどう膜外来を初診したぶどう膜炎患者171例を後ろ向きに調査した。

結果:ぶどう膜炎続発緑内障の発症率は22.8%,内訳は,炎症による続発緑内障53.8%,ステロイド緑内障46.2%であった。炎症群は前眼部ぶどう膜炎,ステロイド群は全身疾患に随伴したぶどう膜炎が多く,それぞれ,抗炎症治療,ステロイドの減量や中止,抗緑内障薬の点眼や内服,手術により加療された。

結論:ぶどう膜炎続発緑内障は炎症による続発緑内障とステロイド緑内障がほぼ同数にみられ,続発緑内障の原因に応じた治療が必要であった。

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要約 目的:涙囊炎を伴う鼻涙管閉塞に対し,半導体レーザーを用いて涙囊鼻腔吻合術(DCR)を行った結果の報告。

対象と方法:涙囊炎を伴う鼻涙管閉塞42例を対象とした。男性10例,女性32例で,平均年齢は62歳である。波長920 nmの半導体レーザーで涙小管を経由するDCRを行った。

結果:1年以上の経過観察で,通水が保たれ,流涙と眼脂が改善したのは27例(64%)であった。前半の3年間と後半の3年間の比較では,後期での改善率が高かった。合併症として,5例(12%)に涙小管閉塞が生じた。

結論:半導体レーザーで涙小管を経由するDCRは,侵襲が少ない手術である。涙囊炎を伴う鼻涙管閉塞に対する本法は,64%の症例に奏効した。レーザーの使用法と照射時間には,なお検討の余地がある。

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要約 目的:角膜内皮移植(DSAEK)と白内障手術を施行した症例において,同時手術および二期的手術の成績を比較する。

対象と方法:当院で2009〜2014年に水疱性角膜症に対しDSAEK,白内障手術を同時,または二期的に施行した56例62眼。術後矯正視力,角膜内皮細胞密度,術後合併症につき後ろ向きに検討を行った。

結果:Fuchs角膜内皮変性症(FED)症例では同時手術群,二期的手術群の術後経過に差はみられなかったが,FED以外の症例では二期的手術群のほうが術後視力が良く,primary graft failureの頻度が低かった。

結論:FED以外の水疱性角膜症症例では二期的手術のほうが経過良好であった。

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要約 目的:Swept-source光干渉断層計(SS-OCT)とspectral-domain光干渉断層計(SD-OCT)による同一眼での検査結果の比較。

対象と方法:両機種による検査を行った眼科患者255人467眼を対象とした。年齢は14〜92歳,平均66±12歳で,網膜硝子体疾患317眼,前眼部疾患129眼,炎症性疾患19眼などである。Vogt-小柳-原田病の1例2眼では,脈絡膜厚を測定した。

結果:SS-OCTはSD-OCTよりも有意に画質が鮮明で,測定可能率が高く,低画質画像の頻度が低かった(p<0.01)。固視不良眼での測定可能率と黄斑前膜の検出率には有意差がなかった。SS-OCTはSD-OCTよりも部分後部硝子体剝離の検出率が高かった(p<0.01)。Vogt-小柳-原田病での網脈絡膜厚はSD-OCTでは測定できず,SS-OCTでは測定でき,加療による脈絡膜厚の減少を計測できた。

結論:網膜硝子体疾患などに対しSS-OCTはSD-OCTよりも,より詳細に測定できた。

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対して光干渉断層計(OCT)による形態分類を行い,その分類が治療選択に有用であるかを検討した。

対象と方法:DMEを呈した非増殖網膜症28例36眼に対して,SD-OCTを用いた形態分類を行い,その結果により網膜光凝固またはトリアムシノロンテノン囊下注射(STTA)を選択した。

結果:OCTの網膜厚マップ,Bスキャン,3次元画像から浮腫の状態を3つのタイプに分類した。山形で浮腫のピークが中心小窩外にあるタイプは毛細血管瘤が浮腫の主な原因と考えられ,毛細血管瘤に対する直接凝固を含む光凝固が有効であった。山形で浮腫のピークが中心小窩内にあるタイプは中心小窩内に浮腫の主な原因があり,STTAが有効であった。中心小窩を環状にとり囲むタイプは主に黄斑部周囲の毛細血管からの漏出と考えられ,浮腫の部位の局所光凝固が有効であった。

結論:DMEをOCT像で分類することは治療選択に有用であると思われた。

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要約 目的:自然閉鎖した特発性黄斑円孔(MH)患者の視機能と,日常生活の物の見え方を経時的に追跡した報告。

症例:71歳,女性。1か月前からの左視力低下と変視を主訴に来院。初診時矯正視力は0.15,高度の変視を呈し,MHを認めた。患者は日常生活に支障をきたしている訴えとともに,その絵を書いてきた。しかし3か月後にMHは自然閉鎖した。閉鎖後6か月の間に視力は0.4に改善,変視や不等像視,コントラスト感度,立体視もそれぞれ改善していた。

結論:MHが自然閉鎖し,視機能は改善,自覚症状はほぼ消失し,患者のquality of lifeは改善した。閉鎖前後で患者の実際の見え方を絵として残しており,貴重な症例であると考えられた。

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要約 目的:シクロスポリン内服が奏効した難治性Mooren潰瘍の症例の報告。

症例:71歳の男性が1か月前からの右眼角膜潰瘍で紹介受診した。糖尿病と直腸癌の既往があった。

所見と経過:矯正視力は左右眼とも1.2で、右眼の上半部の角膜辺縁に潰瘍があった。Mooren潰瘍と診断し、ステロイド剤の内服と点眼、タクロリムスの点眼などを行った。1週後に角膜が穿孔し、表層角膜移植が行われた。5か月後に潰瘍が再発し、強角膜移植を行った。その10週後に角膜潰瘍が全周性になり、強角膜移植を行った。それまでの点眼に加え、シクロスポリン内服を開始した。潰瘍の活動性は沈静化し、以後12か月後の現在まで再発はない。

結論:複数回の角膜移植と薬物治療に抵抗した難治性Mooren潰瘍に対し、シクロスポリン内服が奏効した。

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要約 目的:多焦点眼内レンズの強膜内固定術を行った1例の報告。

症例:54歳の男性が多焦点眼内レンズを用いた右眼の白内障手術を希望して受診した。

所見と経過:矯正視力は右0.03,左1.0で,右眼に白内障と水晶体振盪があった。右眼に超音波乳化吸引術を行い,Zinn小帯断裂があり,水晶体囊も吸引した。核落下はなかった。多焦点眼内レンズを強膜内に固定した。術後の裸眼視力は遠方0.6,近方0.4であった。LASIKを行い,裸眼視力は遠方1.5,近方1.0になった。

結論:片眼の白内障に対し,超音波乳化吸引術と多焦点眼内レンズの強膜内固定を行った。残余屈折異常に対しLASIKを行い,遠方と近方とも良好な裸眼視力が得られた。

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要約 目的:診断と両親への対応に苦慮した淋菌性結膜炎の乳児の報告。

症例:自然分娩で4か月前に出生した女児が,眼瞼腫脹,眼脂,結膜充血,発熱で近医から紹介され受診した。

所見と経過:両眼に眼瞼腫脹と膿性眼脂があり,眼脂の鏡検でグラム陰性桿菌があった。淋菌結膜炎を疑い,セフトリアキソンの静注とセフメノキシム点眼を開始した。その翌日に解熱し,右眼の病変は消失し,2日後に両眼の所見はほぼ正常化した。眼脂の培養で,後日Neisseria gonorrhoeaeが分離された。その後の精査で,母親に患児受診の3日前に発症したと推定される淋菌性子宮頸管炎,父親に無症状の性風俗曝露歴があった。

結論:淋菌性結膜炎の再感染予防のために感染経路を特定することが重要であるが,両親への説明には細心の注意が必要であった。

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要約 目的:黄斑円孔が自然閉鎖した4症例の報告。

症例:症例1,2はそれぞれ54歳,55歳の女性で,左眼にstage 1B,stage 3の黄斑円孔を認めた。それぞれ1か月後,1か月半後には自然閉鎖した。症例3は46歳の男性。左眼に黄斑上膜および中心窩のやや耳下側にstage 3の黄斑円孔を認め4か月後には自然閉鎖した。症例4は53歳の男性。増殖糖尿病網膜症で硝子体手術を施行し,4年後に右眼に黄斑上膜に伴う黄斑円孔を認め3週間後には自然閉鎖した。

結論:Stage 3以上の特発性黄斑円孔や硝子体手術後の続発性の黄斑円孔においても自然閉鎖することがあり,後部硝子体剝離の完成や円孔部の架橋形成が自然閉鎖に関与する可能性が考えられた。

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要約 目的:重症心身障害児は中枢性視覚障害によりコミュニケーションがとりにくいことが多いことを確認し対応法を述べる。

対象と方法:愛知県立名古屋特別支援学校における2014年の在籍者について,中枢性視覚障害のサインである眼球偏位とコミュニケーションのとりにくさの関係を調べた。

結果:眼球偏位の頻度とコミュニケーションのとりにくさはよく一致し,重度の者は30%に上った。つまり眼球偏位の頻度によりコミュニケーションがとりにくくなる。一方,眼球偏位は姿勢を臥位にすると減少することが知られている。

結論:教育関係者がコミュニケーションのとりにくい生徒に,姿勢を臥位にして意思の疎通を図るように指導することが重要である。

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要約 目的:中枢神経系リンパ腫の発症後に腫瘍随伴性混濁卵黄様黄斑症に類似した眼所見を呈した1症例の報告。

症例:49歳の男性が右眼の視力低下で受診した。30か月前に中枢神経系リンパ腫が発症し,高用量のメトトレキサートで寛解した。最近,リンパ腫の再発が発見された。

所見と経過:矯正視力は右0.1,左0.6で,右眼の黄斑部耳側に顆粒状の黄色病変があった。光干渉断層計(OCT)で,網膜色素上皮に高反射の沈着物があった。メトトレキサートの硝子体注射で眼底病変は消失した。3か月後に左眼に右眼と同様の卵黄様黄斑部病変が生じ,視力が0.02に低下した。右眼に9回,左眼に6回のメトトレキサート硝子体注射で,視力は両眼とも0.9に回復した。初診から19か月の間,経過は良好である。

結論:本症例では,腫瘍随伴性混濁卵黄様黄斑症に類似した眼病変が中枢神経系リンパ腫の発症後に生じ,複数回のメトトレキサート硝子体注射が奏効した。

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要約 背景:若年者での特発性傍乳頭脈絡膜新生血管膜(peripapillary choroidal neovascular membrane:PCNM)の報告は少ない。

目的:両眼に発達緑内障の既往がある成人に発症した特発性PCNMの報告。

症例:22歳の女性が1週間前からの左眼霧視で受診した。出生直後に牛眼が両眼にあり、左右眼とも各2回の線維柱帯切開術が行われている。

所見と経過:矯正視力は右1.5,左1.0で,眼圧は右12mmHg,左15mmHgであった。両眼に視神経乳頭逆位があり,左眼の乳頭に接して網膜下出血を伴う2個の網膜下黄白色病巣があった。光干渉断層計,フルオレセインとインドシアニングリーン蛍光眼底造影で,2型脈絡膜新生血管があった。明らかな原因はなく,特発性PCNMと診断した。ベバシズマブ硝子体注射を行い,5か月後に眼底所見は正常化した。

結論:若年の成人に発症した特発性PCNMに対し,ベバシズマブ硝子体注射が奏効した。

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要約 目的:Fresnel膜プリズム装用で治療を行った急性内斜視2症例の報告。

症例:1例は16歳の女性で,落下による脊椎骨折が生じ,数日後から複視を自覚した。矯正視力は左右眼とも1.0で,右眼に−2.5D,左眼に−3Dの近視があった。遠見35Δ,近見30Δの内斜視があった。2か月後からFresnel膜プリズムの装用を開始し,6か月で内斜視は消失したが,2年後に再発した。他の1例は21歳の女性で,発熱が1週間続き,その後に複視を自覚した。矯正視力は左右眼とも1.5で,左右眼とも−7Dの近視があった。遠見と近見とも35Δの内斜視があった。3か月後からFresnel膜プリズムの装用を開始し,15か月後に内斜視は消失した。

結論:急性内斜視の2例に対し,プリズム装用による治療を行った。両眼視機能が維持され,斜視角が軽減した。

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要約 目的:新生児の先天性涙囊ヘルニアに対し,23G注射針で穿刺し,内容物を吸引した報告。

症例:在胎40週の自然分娩で生まれた女児に,出生直後から左の内眼角下方に3mm×3mm大の弾性軟で青灰色の膨隆と眼脂があった。生後20日目に直視下で経皮的に23G注射針っきの注射筒で囊腫を穿刺し,内容物を0.7ml吸引した。7日後の再診時に内眼角部の膨隆は消退していたが,鼻内視鏡で下鼻道に囊腫の再発があった。鼻内視鏡下でメスで囊腫を切開し,漏出した内容物を吸引した。以後,再発はない。

結論:先天性涙囊ヘルニアに対する23G注射針による穿刺と吸引の効果は一過性であった。

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 症例は初診時8歳の男児。学校健診で視力低下を指摘された。健診前に縄跳びの縄が眼に当たったこともあり近医を受診した。右眼底に網膜血管の蛇行と拡張がみられ,精査および加療目的で当院を紹介された。初診時の視力は右(0.4),左(1.5)。前眼部,中間透光体に異常はなく,右眼底に網膜つた状血管腫を認めた。右眼内斜視と偏心固視を伴うため,弱視治療を行ったが奏効しなかった。経過観察中に右視力が徐々に低下したため,MRIを施行したところ,右眼窩および鞍上部に血管奇形の合併を認め,Wyburn-Mason症候群であることが明らかになった。現在の視力は(0.04)である。

 写真は,17歳時の右眼底。撮影には,眼底カメラ(Topcon社,TRC 50DX)を使用した。画角は50°。視力不良のため固視が定まらなかったため,外部固視標を用い,健眼で視線を誘導した。網膜血管腫の微細な変化を見逃さないために,血管部にうまくピントが合うよう注意し撮影に臨んだ。

連載 今月の話題

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 医療におけるビッグデータのもつ大きな可能性が叫ばれて久しいが,眼科領域ではそれほどでもなかった。しかし,2014年からついに米国で眼科領域の全症例登録システムIRIS Registryの運用が開始された。これは2000万件の症例登録を目指すものであり,眼科の世界を変えてしまうものになりうる。この巨大な「黒船」が現れつつあるにもかかわらず,わが国での認知度は極めて小さい。そこで,現時点でのIRIS Registryを,アバスチンの問題,臨床研究の問題などを例にとって解説する。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第9回

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今月の症例

【患者】66歳,女性

【主訴・現病歴】眼の痒みを訴えて2年前から当院他医師のもとへ外来通院している。前房が浅いので,緑内障外来の受診を勧められる。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第10回

黄斑部毛細血管拡張症 古泉 英貴
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疾患の概要

 黄斑部毛細血管拡張症は特発性に黄斑部網膜の毛細血管拡張所見を呈する疾患群の総称である。病型分類としては2006年にYannuzziら1)がidiopathic macular telangiectasia(IMT)の名のもとに提唱したもの,具体的にはType 1 IMT(血管瘤型),Type 2 IMT(傍中心窩型),Type 3 IMT(閉塞型)が主に用いられている。しかしType 3 IMTは毛細血管拡張よりも血管閉塞が主体であること,頻度が非常に稀であり,また通常何らかの全身疾患を伴うことから,分類自体から除外することが提案されている。したがって,本稿でもType 1 IMT,Type 2 IMTについてのみ取り上げる。

 Type 1 IMTは男性に多く,ほとんどが片眼性である。検眼鏡的に中心窩周囲の毛細血管瘤が確認できることも多く,典型的にはその周囲に輪状の硬性白斑を認める。フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)では中心窩周囲の毛細血管拡張と毛細血管瘤からの旺盛な蛍光漏出がみられ,確定診断に有用である。光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)ではFAでの漏出所見を反映した囊胞様変化と網膜の肥厚所見を認める。治療はFAでみられる毛細血管瘤に対する直接光凝固が基本となり,黄斑浮腫の改善が期待できる。

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第26回

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はじめに

 いろいろな学会で涙道解剖の講義が華やかですね〜! そうっ,私,柿﨑の研究テーマの1つが涙道解剖なんで,いっちょかみしてみます! 涙道の手術は,解剖を理解して,あとは少しだけテクニックを身につければ,そう難しいもんじゃありません。ではでは,上から下に向かって涙道の解剖を解説1)していきましょう!

海外留学 不安とFUN・第10回

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Dr. Friedlanderのこと

 留学先のボスであるDr. Friedlanderは眼科医であり,隣接するスクリプスクリニックで診療を行いつつ,スクリプス研究所では網膜疾患に対する基礎研究の指導を行っています。Friedlander labは2000年代前半に虚血性網膜症および網膜変性疾患に対する骨髄由来幹細胞の治療効果をマウスモデルにて証明しました。

 Dr. Friedlanderはスクリプス研究所のラボの教授のみならず,難病である特発性傍中心窩毛細血管拡張症(MacTel)の研究に特化する研究所,Lowy Medical Research Institute(LMRI)のプレジデントも務めています。この研究所はオーストラリアを中心に事業を展開するウェストフィールドショッピングセンターを経営するLowy一族からの寄付によって運営されており,世界各国の眼・視覚に関する研究のエキスパートがMacTelプロジェクトに参加しています。年に一度開かれるLMRIミーティングでは,網膜細胞生物学(神経および血管),遺伝学者,臨床研究そしてイメージングなど多岐にわたる分野の教授が一堂に会し,さながら網膜研究のオールスター集合といった感じです。なぜこの希少疾患に対してそれだけの一流の研究者が同時にプロジェクトを遂行できるのでしょうか? それを可能にするのは,数億円以上ともいわれる豊富な資金を提供するLowyグループの財力であり,創業者のFrank Lowyの血縁がMacTelに罹患してしまったことに他ならないのかもしれません。

臨床報告

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要約 目的:線維柱帯切開術後の前房出血に対して粘弾性物質の使用による抑制を試み,従来の方法と比較した。

対象と方法:対象は,原発性開放隅角緑内障に対して線維柱帯切開術を施行し12か月以上経過観察した患者85名(68.8±8.2歳,男性47名,女性38名)である。40名は従来の方法で手術を施行し,45名は前房出血を抑えるように試みた。Schlemm管内に挿入したトラベクロトームを回旋する前に,前房内に1%ヒアルロン酸ナトリウムを充塡し,できる限り漏出がないように強膜弁を縫合した後に粘弾性物質を抜去した。12か月間にわたり術後経過を観察し,両群を比較した。

結果:術前および手術12か月後の眼圧は,従来群が25.7±2.8mmHg,15.3±2.9mmHg,前房出血抑制群が25.2±2.0mmHg,15.0±2.9mmHgであった(術前p=0.3,12か月後p=0.7)。両群とも全例で術中にSchlemm管切開部位から出血が認められた。術後に1mm以上の前房出血が,従来群では全例(100%)でみられたのに対して,前房出血抑制群では6眼(13.3%)であり(p<0.0001),前房出血が従来群では6.6±2.9日,前房出血抑制群では2.0±2.7日で消退した(p<0.0001)。術後高眼圧は従来群で6眼(15%),前房出血抑制群で2眼(6.7%)であった(p=0.2)。両眼ともに重篤な合併症はなかった。

結論:粘弾性物質の使用で,線維柱帯切開術後の前房出血の頻度が有意に減少した。

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要約 目的:白内障術後角膜内皮細胞減少における偽落屑症候群(PE)の影響の報告。

対象と方法:白内障手術を行ったPEを有する86例106眼と,年齢をマッチさせたPEのない対照群76例98眼を対象とし,患者背景と内皮細胞減少率を群間比較した。

結果:PE群は非PE群と比較して術前後の内皮細胞密度が少なく,瞳孔径が小さく,緑内障が多く,手術時間が長く,瞳孔拡張手技が多く,術後フレア値が高値と,背景には有意差があったが,術後3か月における内皮細胞減少率はPE群2.9±5.9%,非PE群2.6±4.9%と有意差はなかった。

結論:白内障術後角膜内皮細胞減少にPEは影響しない。

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要約 目的:知的障害者の眼科専門外来開設後10年の診療状況を報告する。

方法:受診時年齢,知的障害の原疾患,眼科的主訴,眼科的診断,治療とその結果を検討した。

結果:総数は239名で,初診時16歳以上が半数を占めた。原因不明例が多く,ダウン症,脳性麻痺,自閉症などが続いた。主訴は視力低下,眼位異常,眼瞼下垂,外眼部の異常で,白内障(63例),網膜剝離(17例),斜視(67例)の診断が確定した。27例の白内障術後には8割以上で視力が改善した。

結論:知的障害者が受診しやすい環境作りと丁寧な検査により確定診断や適切な治療法選択につながった。視力向上がみられる症例も多く,眼科専門外来は知的障害者のQOL向上に貢献していると考えた。

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 著者の郡健二郎先生は泌尿器科学を専門とされておられ,そのご業績に対して紫綬褒章をはじめ,数々の賞を受賞されておられるが,その中に平成16年に受賞された,「尿路結石症の病態解明と予防法への応用研究」と題する論文に対する日本医師会医学賞がある。私はそのとき,日本医学会の会長として医学賞の選考に携わったが,この医学賞は日本医学会に加盟している基礎・社会・臨床のすべての分野の研究者から申請を受け,その中の3名だけに受賞が限られるので,泌尿器系の先生が受賞されるのは珍しいことであった。そのため郡先生のことは私の記憶に強く残っていた。その郡先生が上記の題で200ページ近い本をご自身で執筆されたことは私にとって大きな驚きであった。

 この本は「研究の楽しさ,美しさ」「科研費の制度を知る」「申請書の書き方」「見栄えをよくするポイント」の4章に分かれているが,特に第3章の「申請書の書き方」では実際の申請書の執筆形式に沿う形で,それぞれの項目において基本的に注意すべき点(基本編)と,実際にどのように書くか(実践編)について詳細に記載されており,科研費を申請される方にとって極めて有用かつ実用的な内容となっている。

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 この本が書店に並べられて最初にタイトルを見かけた時,ある種の衝撃を受けた。というのは,タイトルは『医師の感情』であるが,副題が“「平静の心」がゆれるとき”となっていたからだ。「平静の心」とはオスラー先生が遺した有名な言葉であり,医師にとって最も重要な資質のことであったからだ。医師にとって最も重要な資質である“「平静の心」がゆれるとき”とはどういうときなのか,これは非常に重要なテーマについて取り組んだ本であると直観的にわかった。

 この本を実際に手に取ってみると訳本であった。原題は“What Doctors Feel”である。なるほど,この本はあの良書“How Doctors Think”(邦題『医者は現場でどう考えるか』,石風社,2011年)が扱っていた医師の思考プロセスの中で,特に感情について現役の医師が考察したものである。“How Doctors Think”は誤診の起こるメカニズムについて医師の思考プロセスにおけるバイアスの影響について詳細に解説していた。一方,この本は,無意識に起きている感情的バイアスについて著者自身が体験した生々しい実例を示しながら解説したものである。リアルストーリーであり,説得力がある。

文庫の窓から

『十四経発揮』 安部 郁子 , 松岡 尚則
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陳存仁の『中国鍼灸沿革史表』

 岡西爲人の『中国医書本草考』の案内に従って研医会図書館所蔵の書籍をご案内するこの連載では今,金・元時代をみている。しかしながら,今回取り上げる『十四経発揮』については鍼灸の書籍であり,岡西の同書第6章に陳存仁の『中国鍼灸沿革史表』を訳した文章があるので,まずは,これを主軸に中国の鍼灸の歴史を簡単におさらいしたい(表1)。

陳存仁(1908〜1990)は上海中医專門学校を卒業後,婦人科と鍼灸科の医師として活躍し,『中国薬学大辞典』やわが国の『皇漢医学叢書』の編纂にかかわった人物。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 豆と麦
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 神は細部に宿るそうです。原子核の中性子を研究すると,宇宙の構造がわかるというのもその例です。イギリスの詩人William Blake(1757-1827)は,次の2行で表現しました。

 To see a World in a grain of sand,

 And a Heaven in a wild flower.

べらどんな 急性と慢性
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 大学の教授は,毎週の講義では好きな話ができるものと思っていた。しかし最近ではそうではないらしい。学期のはじめにシラバスとかいう要約を教務委員会に提出するのである。

 こういう制約が嫌になって辞職した教授がいる。解剖学が専門で,昆虫学と随筆家としても名が通っている。この先生には「脳死」についての名言がある。

学会・研究会 ご案内

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次号予告

あとがき 稲谷 大
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 8月のお盆にあとがきを執筆しておりますが,読者のみなさんのお手元に届く頃には秋晴れのすがすがしい季節をお過ごしのことと存じます。特集の第69回臨床眼科学会講演集は本号で終了となります。いずれも力作揃いの15報の学会原著が掲載されています。原著締め切りに間に合わなかった場合でも,是非,臨床報告のほうで投稿していただければ,懇切丁寧に査読させていただきますので,どんどん投稿をしていただければと思います。

 さて,本号では,今月の話題として,編集委員の坂本泰二先生がIRIS Registryという米国眼科のビッグデータの運用を紹介しています。20世紀は科学の時代,21世紀はインターネットの時代だと思います。研究だけでなく,我々の生活も,ビジネスもすべてが20世紀のやり方が通用しなくなり,改革が必要になってきているように思います。臨床現場で患者の診察や検査を何もしなくても,地球の裏側にてマウスをいじっているだけで,とてつもない研究成果をあげることができるようになると思います。その先は,マウスをいじる必要もなくて,人工知能が研究テーマを考えて,結果も出して,論文も書いてくれて,論文の査読もしてくれるような時代が近い将来やってくると思います。なんとなく黄昏を感じてしまう編集委員なのでした。

基本情報

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臨床眼科
70巻10号 (2016年10月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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