看護教育 57巻7号 (2016年7月)

特集 論理的に話そう!

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 「もっと論理的に考えたらどうだ」「論理的に考えたらこうなる」。このように言われたり,言ったりしたことがある人は少なくないでしょう。実は,ここには「論理的」という言葉に対する大きな誤解が潜んでいます。実際は,「論理的に考える」のではなく,いったん考えたことを振り返った後「論理的に整理する」のです。これが大事なポイントです。同様に,看護教員が講義,会議,学会などで求められる,「論理的に話す」ということも,「論理的に考えを整理してから話す」という意味になります。

 今回の特集は,「論理的」という言葉の誤解を解いたうえで,いかにすれば論理的に話すようになれるのか,その思考過程や具体的な方策を,読者の皆さんに提供すべく組まれたものです。そもそも「論理的」とはどういうことなのかという解説をふまえて,普段の生活のなかでの「非論理的」な会話や話し合いの実際例などをみることにより,論理的に話すための学びのきっかけをつかんでいただければと考えています。

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「論理的思考」の誤解

福澤 今回の特集テーマは「論理的に話す」ということです。先生というのは人前で話すのが仕事なので,話すことそのものが苦手ということはないと思うのですが,率直なところ,中尾先生はいかがですか。

中尾 苦手ではありませんが,うまく話せていると思えないことはありますね。後で振り返ったとき,あそこは通じていなかったなぁと思ったり,学生とやり取りをして,これはちょっとわかってもらえていないなと感じたりします。これは論理的に話せていないということでしょうか。

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広い意味で“論理的に話す”ということ

 読者のみなさんは,会議や学会の最中に,「あの人,何言っているのかわからない。結局何が言いたいの?」などと思ったことがきっとあるでしょう。では,もしその不明な発言をした人から,「じゃあ,どう話せばあなたにわかってもらえるのですか?」と質問されたら,みなさんはどう答えますか?相手が「なるほど」と思うような返答をうまくできる自信はありますか?

 実際のところ,答えに窮するのではないでしょうか。なぜなら,私たちのほとんどは,ふだん他者とのやり取りの場面に立ち返り「相手が何を,どのように話してくれれば,自分がわかったと思えるのか」についてじっくりと考えたことがないからです。さらに言うなら,「自分は他者に対してわかるように話しているのか」という内省をすることなどほとんどない,と言っていいのではないでしょうか。

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 Part1では,「論理的思考」という表現の誤解を解き,論理的に話すために必要な論証について紹介しました。引き続きPart2では,論証についてより理解を深めていただこうと思います。

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はじめに

 劇作家は「会話」も「対話」も,場面として書きますので,この稿では「セリフのやり取り」をいくつも出して,「会話」と「対話」の違いや機能,トレーニングの仕方などを解説していきます。

 次の,2つのパターンのセリフのやり取りを,まずはお読みください。

《やり取りA》

男「せっかくの週末だし,どこかに行きたいなあ」

女「うーん,お腹すきそう」

男「あ,食パンの賞味期限が切れかかってたような……」

女「えー,フレンチトーストつくってー」

男「帝国ホテルのフレンチトーストって,汁に24時間も漬けとくらしいよ」

女「そこまでしなくていいから早くつくってよ」

男「ない」

女「へ?」

男「パン。全部食べちゃってたわ。忘れてた」

女「なんだそれ」

 以上はある男女の典型的なゆるーい会話ですが,それはそれでそういう会話があってもよいわけです。では次です。

《やり取りB》

男「せっかくの週末だし,どこかに行きたいなあ」

女「せっかくの週末であればこそ,平日の疲れを癒したり,睡眠不足を解消したりすべく,家で休息すべきではないかしら?」

男「いや,でも,気分をリフレッシュしたいし……」

女「リフレッシュ?週末のレジャー施設はどこも行列ができて,サービスを受けるのに30分から1時間は待ち時間になってしまうので,肉体的にも精神的にも疲労度が増す可能性が高いわ。私は,家で朝11時まで寝ていた場合の血中の乳酸値を計測しておくから,あなたはあなたで出かけたほうが疲労の回復にプラスになるという根拠を示してちょうだい」

 こんな調子では,出かけるにせよ寝ているにせよ疲れてしまいます。

 看護師をはじめとする医療従事者にとっては,患者さんとの「会話」も,とても大事でしょう。仕事だから,何でもかんでも対話が大事,というのはちょっと乱暴で,対話が必要なときには対話を,会話がふさわしいときには会話を,とスイッチを切り替えることが重要だという前提で話を進めます。

 なお筆者は,医療現場には「患者」としての立場でしか,入ったことはありません。この後には,医療現場での「会話」や「対話」を想定したやり取りのサンプルがいくつか出てきますが,あくまで「医療の専門家ではない」者の想像の産物だとお考えください。

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 この小論では,看護教員の方々に,論理的に考えること,さらには批判的に考えることについて解説する。読者諸氏は,すでにそのような思考力を十分おもちだと思うが,これまで日米英の3か国で,大学教師を30年近く務めてきた私の経験をふまえ,どうすればそのような力をつけることができるかを,できるだけ具体的な習得方法として伝えてみたい。

 本号の特集のテーマとしては,「論理的に話す」に重点が置かれている。特集の他の論考でも,そのためのスキルが具体的に紹介されている。どれも有益な方法の紹介である。とくに,福澤さんが明確に述べているように,「論理的に話す」とは,正確には「思考した後に論理的に整理する」という頭の働かせ方を繰り返すことでどうにか身についていくものである。そして,そこでは「内省」という振り返りが,頭の働きを後で整理するうえで役に立つ。

焦点 第105回看護師国家試験を振り返って

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第105回国家試験結果の概要

 厚生労働省は,2016(平成28)年2月14日(日)に実施された第105回看護師国家試験について,3月25日(金)に合格発表を行った1)

 今年度の合格基準は,必修問題は1問採点除外があり40点以上/49点,一般問題と状況設定問題は採点除外問題2問と「設問文が不明瞭で複数の選択肢が正解と考えられるため」との理由で1問が複数選択肢を正解として採点することとなったため151点以上/247点,この2つを満たす者が合格とされた(表1)。今年度の受験者総数は6万2154名で過去最高となったが,合格者はそのうちの5万5585名で合格率は89.4%と前年を下回る結果となった。合格率が90%台を切ったのは2年ぶりで,ここ10年間では88.8%の合格率であった2013(平成25)年の第102回に次ぐ低い合格率であった。

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 第105回看護師国家試験の学生の反応はさまざまであり,「過去問題集をやっていたので困らなかった」という声もあれば,「とても難しかった」という反応もあった。厚生労働省から発表された看護師国家試験の合格基準(厚生労働省2016)は,必修問題40点以上/49点(得点率81.6%),一般問題・状況設定問題151点以上/247点(得点率61.1%)であり,合格率は89.4%であった。この結果は第99回(2010年)に等しく,この6年間で最も得点率が低い,すなわち学生が点数を得にくい国家試験であったといえる。

 次年度第106回看護師国家試験は,2012(平成24)年4月に取りまとめられた「保健師助産師看護師国家試験制度改善検討部会報告書」1)をもとに作成される。さらに2016(平成28)年2月には第107回からの国家試験に向けての改善案2)が報告されている。これらの方向性をふまえながら,第105回看護師国家試験の学生の解答状況から不正解の要因を分析し,さらにテキストマイニング3)を用いて設問を分析し,第106回看護師国家試験に向けた対応を検討する。

連載 東西南北! 学生募集旅日誌・1【新連載】

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 今年も桜満開の4月の善き日に新1年生(43期生)が入学してきました。学生たちはきっと希望と不安をたくさん背負って入学式を迎えたことと思います。「来てくれてありがとう! 3年間一緒にがんばろうね。厳しいけど,ナースになるために目標をもってついてきてね(*^_^*)」と心のなかで呟きながら,ナースとして立派に巣立ってくれることへの期待と責任の重圧を感じていました。

 本校は,奈良県の信貴山の麓に位置する1学年40名の3年課程の看護専門学校です。開校時より,県外を中心とした募集活動を続けているため,全国から学生が集まっています。今年も北海道から7名,沖縄を含めた九州地区から11名の学生が,古都奈良の地へ来てくれました。約6割が関西圏外からの入学で,8割の学生が併設している学生寮に入っています。入学当初は親元を離れホームシックにかかる学生もいましたが,入学して2か月経った今では同じ目標をもった先輩や同級生と支え合いながら,楽しくも規律ある寮生活を送り,たくさんの笑い声が聞こえてきます。

連載 グループワークの“達人”への道・1【新連載】

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 今号よりグループワークの“達人”を目指すための連載を始めます。グループワークは,個人よりも集団のほうが達成の促進される作業や学習もあるという前提に基づいています。これはつまり,グループワークは万能ではなく,テーマや方法を選ぶ,ということです。しかし,だからこそ,そこに教師による創意工夫の余地が生まれます。創意工夫のない授業に学生は魅力を感じません。魅力を感じなければアクティブに学ぼうという意欲も生まれません。魅力的な授業をデザインするために,まずは教師がさまざまな工夫を創案してみましょう。それは身近なところから始められることなのです。

 グループワークを授業に採り入れる前に,まずは教師がアクティブになりましょう。第1回目はそういうお話です。

連載 笑いの伝道師Wマコトのコミュニケーション革命・7

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ひな壇芸人から学ぶ!究極コミュニケーション術

2人 はいどうも〜!Wマコトです。

中山 さぁ,本日もはじまりました『笑いの伝道師Wマコトのコミュニケーション革命!』。中原さん連載7回目のテーマは?

連載 考える力を育てるシンキングツールの活用・4

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多面的にみるとは

 今回は,視点を設定して対象を多面的にみるシンキングツールを取り上げます。多面的にみるというのは,対象をさまざまな角度(視点)からみることです。対象をみる視点を敢えて複数設定することで,先入観を超えて多面的にみることが促されます。

 人と人がかかわる現場で,最も重要なことはコミュニケーションをとることです。コミュニケーションの基本は,相手をよりよく理解しようとする姿勢だといえます。相手に対する印象や思い込みを排除して,いくつかの視点から相手のことをよく理解しようと努めることで,つい見逃してしまいがちなことに気づくことができます。

連載 臨床教育学 わからないこととの出会い・7【最終回】

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 前回は,私たちのわかり合えなさが,五感や認知といった身体的なレベルの違いに由来することを考えました。「相手の立場に立って考えてみる」だけでは乗り越えられない根本的な違いと,それゆえのわかり合えなさ。だとしたら,私たちは自分を,他者を,どのように理解し,どのようにかかわりながら生きてゆけばよいのでしょうか。このことを考えるために,最終回の今回は,「物語としての自己」を考えてみたいと思います。

連載 “医療安全力”を育むリスクアセスメントトレーニング・Training 27

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なぜ,“思い込み”を防止できないのか?

 日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業,平成26年年報1)(以下,本報告書)によると,事例情報参加登録申請医療機関からの報告のなかで,ヒヤリ・ハットの発生要因として最も多かったのが「確認を怠った,24.0%」であった。次いで,「観察を怠った,9.6%」「判断を誤った,8.6%」などのヒューマンファクターが挙げられている。他に,「連携ができていなかった,6.3%」も挙げられており,これらヒューマンファクターにかかわる要因として,“思い込み”も看過できない。

 臨地実習(以下,実習)で学生がインシデント・アクシデント事例の当事者になった場合,あるいは実習指導者(以下,指導者)や教員が気づいて対応が実施され,事例発生に至らなかった場合などの事実確認,および事例分析の過程においてさまざまな“思い込み”が発生している可能性がある。これら“あるある思い込み”として,「たぶん○○だと思い込んでいた」「たぶん○○さんが確認したと思い込んだ」「思い込みで実施する行為のリスクを予測していなかった」「きっと他の誰かが伝えたと思い込んだ」「相手もわかっていると思い込んだ」「違うかもしれないと思ったが,確認することができなかった」などを耳にしたことはないだろうか(図1)。ヒューマンファクターは「原因ではなく結果である」2)ことを考慮すると,“思い込み”が発生した根本原因を明らかにし,適切な防止対策を検討することが課題である。

連載 宮子あずさのエキサイティングWriting・19

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あるブロガーの不快な文章

 ある人を描くときに,その人が自分の目にどのように見えているか。その見え方を意識しないと,偏見に満ちた文章になってしまいます。最近ある男性ブロガーの文章を読んで,このことを改めて考えました。

 ただ,こうした書き手は彼に限った話ではありません。個人への反論・批判が目的ではないので,実名は出さずにおきます。1つのありがちな言説として扱う方が,この文章の趣旨に合うように思います。

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 実習のなかで出会った学生たちのことを思い出しながらDVDを鑑賞した。特に初めての実習では,極度の緊張と学生自身の不安定な自己像があらぬ方向へと向かい,不自然なふるまいの学生に出会うことが少なくない。目の覚めるような鮮やかな赤い唇で実習場にやってきた学生Aさん。そしてお立ち台の上の野球選手さながら堂々と報告を行った男子学生Bさん……。DVDのなかで本江先生が「さぁ力を抜いてみましょう……。あなたは,あなたのままでいいのです」とやさしく語りかける場面があったが,その言葉がフワリと着地するように私の心に重なった。

 DVDは前半と後半に分かれる。前半は学生が緊張を和らげ,患者さんに関心を向けて「気づかい」を示すための方法である。患者さんの血圧測定を行う場面の映像が流れ,そこでの「気づかい」の違いを考える。二人一組で相手の手をつまむ,掴む,握る,支える,両手で包む体験をさせて,触れられるときの「気づかい」を感じとる。さらに丹田を意識した正しい姿勢,瞑想,腹式呼吸を通じて,自己を調整する方法を体得する。

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 17年の臨床経験後,13年ばかり,大学で成人看護学・老年看護学・リハビリテーション看護学の教育に携わっている。臨床でがん患者さんと数えきれない出会い,肉親や親戚にもががん罹患者は多く,私にとってがんは身近であり,とても辛い経験をしてきた。

 日本では「2人に1人ががんにかかる時代」となりつつある一方,手術や薬剤の進歩によって「治る」がんも増えてきた。手術後の継続治療は慢性疾患のようにとらえられつつある。しかし,他の疾患と違うのは「死」が近くにあることだ。

新刊紹介

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基本情報

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看護教育
57巻7号 (2016年7月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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