連載 “医療安全力”を育むリスクアセスメントトレーニング・Training 27
─基礎編─“思い込み”による事例発生を防止する!─事例発生に至るプロセスの見える化と未然防止トレーニング
斉藤 奈緒美
1
,
石川 雅彦
1
1公益社団法人地域医療振興協会地域医療安全推進センター
pp.570-576
発行日 2016年7月25日
Published Date 2016/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200544
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なぜ,“思い込み”を防止できないのか?
日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業,平成26年年報1)(以下,本報告書)によると,事例情報参加登録申請医療機関からの報告のなかで,ヒヤリ・ハットの発生要因として最も多かったのが「確認を怠った,24.0%」であった。次いで,「観察を怠った,9.6%」「判断を誤った,8.6%」などのヒューマンファクターが挙げられている。他に,「連携ができていなかった,6.3%」も挙げられており,これらヒューマンファクターにかかわる要因として,“思い込み”も看過できない。
臨地実習(以下,実習)で学生がインシデント・アクシデント事例の当事者になった場合,あるいは実習指導者(以下,指導者)や教員が気づいて対応が実施され,事例発生に至らなかった場合などの事実確認,および事例分析の過程においてさまざまな“思い込み”が発生している可能性がある。これら“あるある思い込み”として,「たぶん○○だと思い込んでいた」「たぶん○○さんが確認したと思い込んだ」「思い込みで実施する行為のリスクを予測していなかった」「きっと他の誰かが伝えたと思い込んだ」「相手もわかっていると思い込んだ」「違うかもしれないと思ったが,確認することができなかった」などを耳にしたことはないだろうか(図1)。ヒューマンファクターは「原因ではなく結果である」2)ことを考慮すると,“思い込み”が発生した根本原因を明らかにし,適切な防止対策を検討することが課題である。
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