看護教育 55巻9号 (2014年9月)

特集 求める学生確保のための方策─面接をめぐる課題を中心に

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 看護系大学急増時代,看護専門学校では入学生確保は大きな課題です。応募者数を増やすために学校の個性をアピールすることも重要ですが,今も昔も,入学生選抜の要は入学試験です。もちろん優秀な学生をとることが目的ではあるものの,看護の場合、ただ学業だけで評価していいものかという判断と,いわゆる学業成績優秀な学生が大学に多く流れるなか,どのレベルの学生を入学させるかという決断が,検討課題となります。そのため,入試問題や方法を自校が求める学生のレベルに合わせることが重要となるでしょう。

 今回の特集は,学生確保のための入試の工夫を,面接に関する課題を中心にまとめたものです。客観的な数値での評価だけでなく,「人」を見る力を養ったうえでの面接を重視することにより,求める学生を入学させられるよう,全教員が力を合わせて取り組んでいただきたいと思います。

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はじめに

 2013(平成25)年6月に提示された日本看護学校協議会の「看護師等養成所の管理・運営等に関する実態調査報告書」による2012(平成24)年の受験動向をみると,専門学校全課程の43.3%が受験生は減少傾向にあると回答している。そのうち課程別の傾向では,3年課程においては増加傾向が43.2%,減少傾向39.3%とわずかに増加傾向が上回っている。

 受験生の層の広がりを示す指標としては,受験生のうち大学および短大卒業者の占める割合が増加傾向にあり,入学生のなかに社会人経験者の占める割合は39.1%,大学あるいは短大,専修学校を卒業者の割合も25.4%となっている。その結果,在籍者に社会人経験者が占める割合は全課程平均で40.5%となっている(表1~4)。

 超高齢社会を迎え,健康で自立した生活の維持に対する人々の願いが高まるなか,看護職者に求められる役割はますます大きくなっている。また非正規雇用の増加傾向のなかで,看護職は雇用が確実で経済的に自立できる職種としても魅力あるものになっている。そのため,高校新卒者だけでなく,一定の就業体験の後にあらためて看護職を目指す社会人など,受験生の多様化に対応して,社会人入試制度を導入している専門学校は多く,3年課程では67.0%が実施している(表5)。

 志望校の選択から面接指導に至るまで,手厚い進路指導を受けて受験する高校新卒者,仕事の傍らに予備校に通うなど,並々ならない努力をして受験に臨んでくる社会人などの受験者から,いかにして学生を選抜するのかは,学校の教育活動全体に関わる重要な課題である。本校の求める学生と,受験生確保に対する取り組みについて述べる。

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はじめに

 看護医療系学校受験対策の専門予備校として全国に32校を有する弊社が,看護学校受験対策講座を開講して30年近くになる。筆者(沼内)が弊社仙台校のオープニングスタッフとして講座開講に関わったのが1989年のことで,「東北初の看護学校受験対策の専門予備校誕生」として話題を呼び,地元のテレビ局が取材に来たことが思い起こされる。全国にひと桁しか看護大学がなかったこの当時,通学する学生の大半は看護専門学校の入学を希望しており,高望みすれば国立の医療技術短期大学合格を狙うという状況だった。まさに隔世の感がする。

 ここでは,多年にわたり看護学校受験対策に関わってきた経験から,劇的に増えた看護大学の現状にも言及しながら,看護専門学校の学生募集と入試の現状と課題を考察してみたい。

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 本校は2008(平成20)年度入学生から2014(平成26)年度の現在まで,7年間にわたりAO入試を実施してきた。AO入試による入学者は現在まで64名(7年間の入学者327名中)となり(表),すでに卒業した者は46名である(そのうち,卒業年度に国家試験に合格しなかった者1名)。年度によっては,AO入試入学者のなかで複数の退学者が出たこともあったが,他の退学者と比べ,学業を続けるかどうかについて入学後早い時期に決断する傾向がみられる。このような傾向は自分の進むべき方向を決める自己決定力が備えられていることを意味しているようにも思われる。

 ここで,本校がAO入試を導入した経緯と,導入に伴って入試の在り方が変化したことについて紹介したい。

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応募者が多い今こそ,学生を「選ぶ」ことを重視しよう

 ある専門学校のクライアントさんから,次のような衝撃的な話を聞いたことがある。

 「『10年前の入学者の高校の偏差値の平均』と『現在の入学者の高校の偏差値の平均』を比較すると,10近く下がっています」

特集2 ナイチンゲール アップデート

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 近代看護学の創始者フローレンス・ナイチンゲール。現代の日本でも,一般的な知名度も高く,また多くの看護学校の玄関には彼女の像が置かれているなど,広く看護師の代表として扱われています。

 しかし,彼女は過去の著名な看護師というだけの存在ではありません。彼女は政治家であり,統計学者であり,教育者であり,社会の問題を見つめ,保健・医療・福祉の世界に新しい仕組み,概念を多く生み出した改革者でした。

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 編集子が特集テーマに“ナイチンゲール アップデートupdate”とうたう。ナイチンゲール再訪revisitをめんめんとしてきた私は少々うつむく。しかし,顔をあげて,彼らの問いに応じよう。知るところ,考えるところ,を話させていただこう。

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『Notes on Nursing』の出版にまつわる事実

 ナイチンゲール看護研究所の書庫には,ナイチンゲールが書いた3種類の『看護覚え書』の原書が,桐箱の中に保管されている。

 初版本は1859年に出版されており,138mm×213mm,79ページの比較的薄手の本である。各章ごとのページの区切りもなく,びっしりと小さな活字が並んでいる。本の構成は,「はじめに」に次いで,「看護覚え書─看護であること・看護でないこと」というタイトルの序文があり,その後に1章から13章までの本文があって,最後に「おわりに」が配置されている。巻末の資料としては,“大英帝国において看護師として雇用されている女性の数に関する覚え書”が表と共に2枚入っている。

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ナイチンゲールは過失犯罪者か?

 皆が口をそろえて「ナイチンゲールは天使だった」と褒めそやす傾向には,違和感を覚える人も多いでしょうが,反対に「ナイチンゲールは過失犯罪者で,しかも名声欲の強い女だった」と聞けば,誰もが「まさか!?」と耳を疑うでしょう。

 ところが最近,フロレンス・ナイチンゲールの人格を貶める奇怪な風説が,世界的にじわじわと広がって,一部に定着し始めている気配があります。それは,

 「ナイチンゲールは,クリミアの天使どころか,クリミアでの重大な過失によって一万数千名の兵士を無為に殺した犯罪者である。しかもその証拠の隠滅をはかって失敗し,その後,罪滅ぼしのために社会改革事業に献身的に奉仕したが,それも結局,自分の名声を後世に残そうとする謀略であった……」といった内容です。

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 看護師の枠を超えて多種に渡って活躍したナイチンゲール。では,海外ではどのように知られているのでしょうか。アメリカの看護従事者をはじめ,連邦研究所で活躍する統計学者,公衆衛生師,心理学者や女性学者および,アメリカの隣国カナダでナイチンゲールのエキスパートと知られるDr. Lynn McDonaldとの会談を通して,海外でナイチンゲールはどのように理解されているのかをここで紹介したいと思います。

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参考図書の選択にあたって

 本校では,ナイチンゲールについては,専門分野Iの看護学原論(1単位30時間)のうちの1コマ(2時間)で授業を行っている。「単元」は,看護理論の位置づけである。カリキュラムの進度は,初めて看護学校で看護を学ぶ学生に,早く看護にふれてほしいという観点から,看護の歴史を学ぶ前に,自らの看護観を発展させる土台になるものとしてナイチンゲールに関する授業を優先している。ナイチンゲールについては,歴史的背景の理解が非常に重要であることから,ナイチンゲールのいわゆる環境説のみを説明しても,また,『看護覚え書き』の詳読を促しても,今一つ理解が難しいようである。

 そこで,今年度は,茨木保氏による『ナイチンゲール伝─図説 看護覚え書とともに』をよく読み理解してくることを授業前の事前課題として提示し,授業開始時に内容がどの程度理解できたかを把握する目的で,5分間プレテストを行うという外的動機づけを行い,看護学原論における2時間の学習目標到達に向けて取り組んだ。

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はじめに

 本校では入学間もない初学生に対して,専門科目として基礎看護学概論が開講となります。

 基礎看護学概論の学習目的は,看護の基本概念である人間・環境・健康・看護の概要と講造について理解し,看護の目的,役割,機能といった“看護の専門性”を学ぶことにあります。この学びは,学生たちのこれからの3年間の看護学の学びの基礎となりますので,ただ単なる知識として教授するのではなく,学生たちにとって初めての体験,わくわくするような看護の発見となるような講義にしたいと考え,『看護覚え書』を活用して初学生としての看護観を育てています。

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当校の紹介

 当校は1956(昭和31)年南薩高等商業学校として開校,1965(昭和40)年学校法人希望が丘学園加世田女子高等学校の設立認可を受けた。1967(昭和42)年4月に衛生看護科の設置認可(1学年定員40名),その10年後に全国一の看護科定員200名(5クラス)の認可を受けた。2002(平成14)年からは5年一貫看護師教育へと移行し,高等学校3年間を「基礎課程」,その後の2年間を「専門課程」と位置づけ,現在に至る。

 看護学科以外にはメディカルシステム科・総合福祉科・普通科があり,現在1400名を超える生徒がそれぞれの夢の実現に向けて学園生活を送っている。

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ナイチンゲールの描いた21世紀の看護

 ナイチンゲール(1820~1910)は,1867年6月4日付でいとこに宛てた手紙に「すべての看護の最終目標は,病人を彼ら自身の家で看護することだというのが私の意見です。……でも2000年のことについて話したところで何にもなりませんね」と語っていた。筆者はこれまでの研究で,ナイチンゲールが「在宅看護」をどのようにとらえていたか,その看護の方法や実践についてどのように語っていたかを彼女の27著作を横断した原文テキスト分析を試みた。彼女が描いた21世紀の看護は,「すべての病人が健康と回復への最善の機会を与えられる場」すなわち「その人自身の家庭」での在宅看護であるという考えに至った。看護をもっと広く,直接人々の生活にもち込んでより多くの人々が看護の恩恵にあずかれるようにする方法を彼女は晩年常に模索し,home nursingやhealth nursingという現在の在宅看護につながる新しい概念のための新しい言葉をつくっていた1)

 ナイチンゲールの予想どおり2000年に日本では介護保険制度が始まった。日本ばかりでなく,病院から在宅へという脱病院化・脱施設化は北欧でのノーマライゼイションの考えから始まった世界的な現象である。しかし医療費高騰のあおりから,日本では病院から高齢者が追い出されたような印象を受ける。筆者は,2000年から10余年の間地域での在宅看護の現場に携わり,ナイチンゲールの思想を活かした「より自由で元気になるような環境を確保できる」回復期ケアのための家庭的な少人数デイサービスを立ち上げた。さらに「彼らこそ他の誰よりもいっそう慎重な看護を必要とする」という理念から虚弱者や高齢者のために訪問看護師および介護支援専門員として介護保険当初から,地域医療における連携・協働の業務に携わってきた。

連載 卒業前の看護実践能力育成への取り組み 愛知県立大学看護学部「看護の統合と実践」検討プロジェクト・1【新連載】

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はじめに

 2009(平成21)年のカリキュラム改正以降,多くの看護専門学校や看護系大学において,学生の看護実践能力育成に向けてのさまざまな取り組みがなされている。特に「看護の統合と実践」における教育内容や教育方法については,夜勤実習や看護管理実習の導入,卒業前の技術チェックの強化など,それぞれの学校における創意工夫が見られる。2014(平成26)年のいま,今回の改正カリキュラムにより育成された卒業生も,看護師として2年目を迎え,各校において教育内容や教育方法の振り返りが求められる時期といえる。

 愛知県立大学看護学部(以下,本学部)においても,2009年のカリキュラム改正を受け,「卒業前の看護実践能力の確認,定着を図り,卒業後に進むべき看護専門分野への動機づけを図る」ことを目標とした「看護の統合と実践」科目を設定し,各看護学分野が教育内容や教育方法などについての共通認識,共通理解のもとで,連携・協働しながら学生の実践能力育成に向けて看護学部全体での取り組みを実施してきた。

 本学部の看護実践能力育成への取り組みの特徴は,1つの科目の企画・運営・実施に各看護学分野の全教員が連携を図り,教育内容や教育方法を共通理解していく体制として「看護の統合と実践」検討プロジェクトチーム(以下,プロジェクト)を立ち上げて進めたことにある。このプロジェクトでは,(1)卒業時に到達させたい看護実践能力レベルを全教員が確認したうえで,各看護学分野との関連性を検討し,本学部の実践能力の到達度を決定,(2)卒業前の看護実践能力の確認,定着を図るための方法として,SP(Standardized Patient:模擬患者)を活用した臨場感ある場面設定におけるOSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験)などを導入,(3)卒業後の進路選択を見据えた看護専門分野への動機づけを図るための方法として,学生の希望を考慮した専門分野別の少人数体制の演習を導入,の3点について検討を重ねながら,実践能力の育成を推し進めてきた。

 そこで,本連載では,本学部の卒業前の実践能力育成への取り組みプロセスと実施状況を13回にわたって紹介し,実践能力育成への取り組み方を振り返るとともに,読者の皆さんからのご意見を伺いさらによりよい教育に向けて取り組んでいきたいと考えている。

 第1回では,本学部における卒業前の実践能力育成に向けての,開講前の約3年間の取り組みプロセスと「看護の統合と実践」科目の全体プログラムについて紹介する。

連載 心一文字・9

『決』 園家 文苑 , 水戸 優子
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 1歳の子どもをもつ学生が私のところに相談に来た。夫は遠方に単身赴任中で,これまで子守をしてくれた親が腰椎ヘルニアを患ってしまい,もう子守は無理と言われたのだそうだ。そこでこの際,子どもと2人で学校と保育園に近い場所に引っ越そうと決めた。だが,本当にそこまでして看護の勉強をするべきなのか,それが子どもにとってよいことなのかと悩んでいるというのだ。

 数年前,私も似たような状況にあった。今なら子育ての経験が看護の仕事にも人生そのものにも豊かな幅をもたせてくれていると思える。でも,そのときは確かに「決めたことが正しいか」悩んだ。

連載 LGBT×看護学生×医学生 性と生と医療のはなし・4

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まお:みなさん,こんにちは。前回に引き続き,トランスジェンダーと医療について,ゲストの方をまじえてお話していこうと思います。

なおこ:前回はトランスジェンダーの方のなかでも,手術やホルモン療法を行っていない方々からお話を伺いました。

まお:今回は戸籍の性別を変更したトランスジェンダーの方からお話を伺います!ゲストは私たちのお友達,たぬよさんです。

たぬよ:たぬよといいます。26歳会社員で,東京都在住です。彼女と犬と暮らしています。

連載 看護はやっぱり面白い!? アラフォー女子大生の「看護」探求の日々・21

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 久しぶりに風邪をひいてしまった。在宅看護の実習レポートを提出した直後で,ホッと気が緩んだのだろうか。図らずもその週末は,自らが在宅療養の実体験をする「おまけ」が付いてしまった。

連載 “医療安全力”を育むリスクアセスメントトレーニング・Training 5

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はじめに

 看護基礎教育および臨床においても医療安全教育の重要性は言うまでもないが,医療安全教育に割くことのできる時間には限りがある。2009(平成21)年度の入学生から適用されたカリキュラム改定に伴い,新たに統合分野に位置づけられた「看護の統合と実践」に,医療安全の基礎的知識を修得することが含められた。しかし,現状では「医療安全」の科目に確保できる時間は15~30時間程度と思われる。もちろん,基礎看護学の看護技術に関わる「安全」としても,一部関連する時間もあるが,十分とは言い難い。

 臨床および看護基礎教育における臨地実習においても,さまざまな状況下でインシデント・アクシデント事例が発生しており,安全で良質な医療の提供は喫緊の課題といえる。インシデント・アクシデント事例の再発防止・未然防止を図るためには,医療安全教育・研修の実施が欠かせない。医療安全管理者の配置が促進され,医療安全推進の取り組みが展開されてきたことにより,医療機関内で職員への医療安全研修実施が定着しつつある。医療安全教育実施における今後の課題の一つとして,何を教えるべきかという内容の検討が挙げられる。さらに,臨床・教育現場の限られた時間のなかで,医療安全の基礎知識として,どのような内容を,どこまで教育するか,および効率的で成果の得られる教育方法の検討が望まれる。

 そこで,本稿では看護基礎教育における医療安全教育に焦点を当て,看護学生(以下,学生)の“リスクアセスメント力”育成,およびエビデンスに基づく教育内容の明確化についても提案する。

連載 ナースよ,リアリストたれ! 中西睦子が語る看護と教育・9

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1人だったらそのくだらない役割をおやりなさい

松澤 ナースの自我という問題がありましたが,そういう意味では,ナースは集団的な思考に慣れきっている,という言い方も先生はされていました。そのなかで個人が現実とほんとうに向き合って,リアリズムに徹して,そこからの問題提起ができないということでした。

中西 できないねぇ。現実というのは,その個人個人に見えている範囲の現実でしかないでしょう。だから「引っ越しといったら日通」というステレオタイプな認識になってしまう(笑)。

連載 ひろがる災害医療と看護 身につけるべき知識とスキル・11

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災害直後のこころのケア

WHO版心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)の支援とは

大沼麻実/大滝涼子/金吉晴

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター

サイコロジカル・ファーストエイド誕生までの歴史

 大規模災害が発生すると,支援のために国内外のさまざまな団体が被災地に入る。こうした団体による多様な支援は被災者の幅広いニーズに対応できるが,ときには支援方法や目的・目標の違いから支援者あるいは組織間に摩擦が生じることもある。したがって1つの支援方法だけを絶対視することは避けられるべきであり,支援者には他の支援活動との連携や調和を心がけることが求められる。

 他方で,支援活動の多様性を尊重すべきとはいえ,そうした活動は基本的に国際的なエビデンス,合意に基づいて実行される必要がある。しかし現在でもなお,国際的に支持されていない心理的ディブリーフィング(Psychological debriefing)などを取り入れた活動も一部に見受けられており,かえって被災地に混乱を生じることもある。

連載 Mail from USA 『JNE』を読み,世界の看護教育の流れを知る・65

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日本とアメリカにおける看護師免許試験の違い

 看護師を目指す者が,絶対に避けては通れないものの一つに資格試験がありますが,日本とアメリカでは,この試験においてさまざまな違いがあります。みなさまご存知の通り,日本では看護師の試験は国家試験であり,受験者全員同じテストを毎年2月中旬の同じ日に受け,マークシート形式になっています。合格したら,厚生労働省から看護師免許が発行され,取得後に書き換えなどはありません。一方で,アメリカの看護師免許は,州ごとに発行され2年ごとの更新が必要です。現在は,アメリカの看護師試験(NCLEX-RN : National Council Licensure Examination-Registered Nurse)はどの州もコンピュータ形式になっており,州の看護協会から指定されているテストセンターで受験することができます。試験は毎日おこなわれており,自分の都合がいいときに,webサイト上でテストセンターの空き状況を確認しながら受験日を選ぶことができます。また,日本では,不合格になると次の年まで待たなければいけませんが,アメリカでは,45日空けると,また受験することができます。不合格になったときに,1年待たなければならないとなると,それだけで,精神的に大きなプレッシャーになってしまいますが,アメリカのように,不合格になっても同じ年に再受験できたり,受験日を一度予約しても変更できたりするのは,とても簡便でかつ合理的なシステムだと思います。

 先に,コンピュータ形式と書きましたが,NCLEX-RNは,最低75問,最高265問が出題されます。受験者により,回答する問題数が違ってくるのです。最初の75問で合格点に達すると,そこで自動的に終了となります。逆に,点数があまりにも低い場合も終了となります。合格点に達しなかった場合は,テストは合格点に達するまで続行します。コンピューターでプログラム化されているので,それぞれの受験者に合わせて問題が出てきます。正答だと次に少し難しめの問題が出てきたり,間違った問題は同じような問題がまた何問か後に出てきたりします。私自身,日本とアメリカ2国で看護師免許の試験を受けましたが,個人的には,アメリカのシステムを支持しています。日本の看護師試験も,NCLEXのさまざまな利点を取り入れたら良いと思うのですが,同時に日本の“新人一括採用”,つまり新人看護師は皆4月から働き始めるという形態の変化も必要だと思います。たとえ1年に何度も国家試験を受けられて年の途中に合格しても,この雇用方法が変わらなければ,働き始めるのは結局次の4月まで待たなければならないという問題が出てきてしまうからです。

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 長濱晴子氏は同窓の大先輩である。長濱氏は47歳のときに重症筋無力症を患われた。その闘病体験を本学の1年生にお話しいただく機会が何度かあり,筆者も同席の機会を得た。さまざまな場面でご一緒した長濱氏は一貫して“行動力”の人であった。本書は長濱氏の幼少期から現在までの物語であり,長濱氏の看護史そのものである。特に印象深いエピソードが,“4曲目の「どんぐりころころ」は繰り返さない”だ。小学校受験に臨まれた長濱氏が,自分の好きな歌を歌うという課題に対し自分の前の3人の児童が「どんぐりころころ」を歌ったために,自分の得意な歌を歌うことを躊躇してしまい不本意にも4人目のご自身も「どんぐりころころ」を歌ってしまったというエピソードである。長濱氏はこの幼少時の経験から,“周囲に惑わされない心と自信”をもつために,“自信がもてるまで自分なりに繰り返す”ことを心に誓われ,“結果はどうあれ,そこに行くまでの過程が大事である”という価値観に至ったというのである。大学卒業後は交換看護師として渡米,帰国後は日本をより深く知るために京都で病院勤務,旧厚生省看護課,議員政策秘書とさまざまな看護の道を進まれた行動力や,重症筋無力症の治療を自宅療養に切り替えた決断力の源は,「どんぐりころころ」だったのである。

 長濱氏の周囲に惑わされない行動力は留まることを知らない。退院し治療を自宅療養に替えた長濱氏は,自己看護(Self Nursing)に取り組む。中国療法や快療法などさまざまな療法を行いながら,今の状態をどう考え(問題点の把握),どこにもっていこうとしているのか(目標の設定),今の身体に合った方法(計画)に基づいて自己看護を実践する。実践の結果によっては次の方法を模索する。まさに看護過程のプロセスをたどりながら,長濱氏の自己看護は進んでいく。そのなかで,“自分が治ったと思えば治った”という独自の健康観に至り,健康の源である元気を維持する努力をし,常に生きる使命を見出してる。難病を患われながらも活き活きと生きる長濱氏の姿は圧巻である。

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 看護関係資料集によると,全国の大学,大学院以外の基礎看護教育機関養成所数は,平成25年度で773校あり,2008(平成20)年の707校から66校増加している。そのうち3年課程養成所は565校で73.1%を占め,臨床現場の看護マンパワー育成としては現在も存在感が高い。

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看護教育
55巻9号 (2014年9月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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