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長濱晴子氏は同窓の大先輩である。長濱氏は47歳のときに重症筋無力症を患われた。その闘病体験を本学の1年生にお話しいただく機会が何度かあり,筆者も同席の機会を得た。さまざまな場面でご一緒した長濱氏は一貫して“行動力”の人であった。本書は長濱氏の幼少期から現在までの物語であり,長濱氏の看護史そのものである。特に印象深いエピソードが,“4曲目の「どんぐりころころ」は繰り返さない”だ。小学校受験に臨まれた長濱氏が,自分の好きな歌を歌うという課題に対し自分の前の3人の児童が「どんぐりころころ」を歌ったために,自分の得意な歌を歌うことを躊躇してしまい不本意にも4人目のご自身も「どんぐりころころ」を歌ってしまったというエピソードである。長濱氏はこの幼少時の経験から,“周囲に惑わされない心と自信”をもつために,“自信がもてるまで自分なりに繰り返す”ことを心に誓われ,“結果はどうあれ,そこに行くまでの過程が大事である”という価値観に至ったというのである。大学卒業後は交換看護師として渡米,帰国後は日本をより深く知るために京都で病院勤務,旧厚生省看護課,議員政策秘書とさまざまな看護の道を進まれた行動力や,重症筋無力症の治療を自宅療養に切り替えた決断力の源は,「どんぐりころころ」だったのである。
長濱氏の周囲に惑わされない行動力は留まることを知らない。退院し治療を自宅療養に替えた長濱氏は,自己看護(Self Nursing)に取り組む。中国療法や快療法などさまざまな療法を行いながら,今の状態をどう考え(問題点の把握),どこにもっていこうとしているのか(目標の設定),今の身体に合った方法(計画)に基づいて自己看護を実践する。実践の結果によっては次の方法を模索する。まさに看護過程のプロセスをたどりながら,長濱氏の自己看護は進んでいく。そのなかで,“自分が治ったと思えば治った”という独自の健康観に至り,健康の源である元気を維持する努力をし,常に生きる使命を見出してる。難病を患われながらも活き活きと生きる長濱氏の姿は圧巻である。
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