- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
ナイチンゲールの描いた21世紀の看護
ナイチンゲール(1820~1910)は,1867年6月4日付でいとこに宛てた手紙に「すべての看護の最終目標は,病人を彼ら自身の家で看護することだというのが私の意見です。……でも2000年のことについて話したところで何にもなりませんね」と語っていた。筆者はこれまでの研究で,ナイチンゲールが「在宅看護」をどのようにとらえていたか,その看護の方法や実践についてどのように語っていたかを彼女の27著作を横断した原文テキスト分析を試みた。彼女が描いた21世紀の看護は,「すべての病人が健康と回復への最善の機会を与えられる場」すなわち「その人自身の家庭」での在宅看護であるという考えに至った。看護をもっと広く,直接人々の生活にもち込んでより多くの人々が看護の恩恵にあずかれるようにする方法を彼女は晩年常に模索し,home nursingやhealth nursingという現在の在宅看護につながる新しい概念のための新しい言葉をつくっていた1)。
ナイチンゲールの予想どおり2000年に日本では介護保険制度が始まった。日本ばかりでなく,病院から在宅へという脱病院化・脱施設化は北欧でのノーマライゼイションの考えから始まった世界的な現象である。しかし医療費高騰のあおりから,日本では病院から高齢者が追い出されたような印象を受ける。筆者は,2000年から10余年の間地域での在宅看護の現場に携わり,ナイチンゲールの思想を活かした「より自由で元気になるような環境を確保できる」回復期ケアのための家庭的な少人数デイサービスを立ち上げた。さらに「彼らこそ他の誰よりもいっそう慎重な看護を必要とする」という理念から虚弱者や高齢者のために訪問看護師および介護支援専門員として介護保険当初から,地域医療における連携・協働の業務に携わってきた。
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.