看護教育 36巻4号 (1995年4月)

特集 看護教育をより豊かに―教員も一般教養科目の視点を持とう

論理的思考と看護教育 米田 和美
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筋を通す

 論理的思考力とは,物事を正しく考える力である.どうやって論理的思考力をつけるのか.「言葉を,なるべく意識的に検討しながらしんどく考える」1)のである.授業で検討するのは文章である.論理的な文章は,1)何を主張したいかが明瞭で,2)主張の根拠を明示し,3)無駄なことは書いていない特徴がある.この視点で,一文に凝るのである.どのように文に凝るか.次の文章で検討する.(検討の便宜上,一文ごとに番号をつけた.)

 読者はこの文章をどう解釈するだろうか.この文章には次の欠点がある.主語が書いてない.一つの文の中に多くの事柄を書いている.何を言いたいのかわからない.何が最も重要な結論なのか不明瞭である.主張の証拠を具体的に示していない.何のために看護しているのかの理由も不明瞭である.どうすれば,わかるか.一文ずつを検討するのである.

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 久保 私が文化人類学という言葉を知ったのは卒業論文の論題を選択したときでした.私は仏文科でしたが,指導教授との初めての面接時,「『第二の性』を読んで,人は女に生まれない,女になるのだ,という言葉に衝撃を受けたので,自分は,ボヴォワールにしたい」と言いますと,教授は急に席を立たれて,窓際にいき,一言も口をきいてくれなかった.次の面談のとき「君は人類学という学問に触れたことがありますか?」と.「人は女に生まれない,女になるのだ,という一行の言葉には,膨大な学問的背景,特に,文化人類学が提示したものから,多くが汲みあげられて,やっとあの一行に至っている」と教授が話されたのです,そのとき,初めて文化人類学という学問があるということを,知りました.指導教授は中村光夫先生でしたが.

 卒業後,看護の世界にUターンしてまいりましたとき,マーガレット・ミードの論文「看護・原初の姿と現代の姿」と題した1956年,アメリカ看護協会の要請で講演された講演録に出会いました.ニューギニアの2つの部族の出産の模様が紹介されておりましたが,その論で私の注意を惹いたことは,未開社会にあっても看護は,社会的機能であるということ,また,人類が存続していく上で看護は必要不可欠なものである,ということ,そして,看護という行為から「哲学する」ことが導きだされるといったことでした.

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はじめに

 看護教育の果たすべき役割には当然のことながら看護技術に関する教育,いわゆる専門的教育がある.それに加えてそれを支える基礎的教育があるといえようが,ただそれだけではなく看護教育にあたっては他のさまざまな事がらが関わりをもつことによってその本来の役割を果たすことができよう.たとえば,看護教育にとって諸学問が教えることはきわめて有意義なものなのである.

 ここでとりあげた哲学の分野,さらには教育哲学の分野もそのひとつである.では哲学や教育哲学が看護教育に対してどのような意味をもっているといえるであろうか.ここで哲学とは何か,教育哲学とは何かについて議論するような,いわゆる学問論をすることはあまり意味がないと思われるので,それよりもむしろ哲学や教育哲学がどんな風にもの事をみているのか,考えているのか,について述べていくことにしたい.そして,それらのものの見方や考え方を通して,それらが看護教育にとってきわめて大きな意味をもっていることを,それぞれに理解し考えてもらえればよいのではないかと思う.

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はじめに

 近年の学生の受講態度をみていると,講義で聴いたことや,黒板に書かれたことを丁寧にノートし,試験時にはそれを暗記して対処しようとする者がほとんどであるように感じられる.高等学校までの中等教育以下の教科は指導要領に従った,ある定まった範囲(これには,疑問の起こらない一定パターンを取り扱うとか,定説的なもののみ取り扱うという意味も含むが)の教科内容を教えられたまま,それを覚え込む(悪く言えば丸暗記)という傾向を助長するものであったのではないか.上級学校受験のためという情況もあって,やむを得ないということもあるが,高等教育を受ける人達がそのような姿勢を続けるというのは良くないことであって,教えられたことを単に覚えていくだけでは,忘れやすいし,覚えたもの以上に拡がりをもたせることはできない筈である.人間は「考える」能力と知識の応用という点で,質・量ともに他の動物をひき離しており,これらの能力が人間の特徴と言えるのではないか.教えられたことに「何故か」,「どうしてそうなるのか」といった疑問と,それについて自分の思考を加えていく過程を経て,理解,納得していくという態度が必要で,少しでも多くの学生がそれを身につけてほしい.

 このような考えのもとに,所属大学では「化学」の授業の初めの部分に,かなり多くの時数を費して,化学史のハイライト的な話をしている.それは以下のようなものである.

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人間を理解する視点

 私の趣味の一つに雑学がある.学会出張の折など,必ずその街の古本屋を覗く.ふと手にした書物の中に,はっとさせられるような一文との出会いがあると,宝物を見つけたような,得をした気分になる.

 忙しい生活の中にも,ふと5~6分の時間が浮くことがある.そんな時,私は買っておいた古本や漫画など,何でもよいから眺めることにしている.その時に得た知識が,本業である教育・研究に役立つことが意外に多いのである.

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研究の目的

 「老化」という生理的な衰えと「病い」というハンディを抱えると,身の回りの行為さえも自力では困難となり,他人の手に委ねながら生きていかなければならない.このような人々が,やがて迎えつつある人生の最終ステージをその人らしい人生を全うできるようにサポートしていくことは,私たち訪問看護婦にとって大きな課題である.

 本研究で述べるK氏は,後縦靱帯骨化症の発病を機に「寝るのがいちば~んいい」と一旦は“寝たきり”の生活に適応していったケースである.しかし,数か月の在宅療養生活を続けるなかで,“寝たきり”からくる最悪の状況(例えば痴呆や褥瘡,失禁等)を克服し,日常生活動作が回復するなど,自ら前向きで意欲的な生活を構築していったのである.このように,“寝たきり”というあきらめの生活から“寝たきり”が解消し意欲的な生活を維持していく変容の過程を,パウロ・フレイレの「意識化」理論を手がかりに,1)なぜ“寝たきり”に適応していたのか,2)意欲的な生活に変容させた要因は何かを明らかにし,「老い」て「病む」人々へのかかわりについて理解を深めたい.

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はじめに

 新カリキュラムが導入されて3年を経過した現在,改定の主旨を踏まえて,各々の教授目標が達成できたかを評価する時期にある.

 そこで今回,「成人臨床看護が改定の主旨に沿って設定した目標に達しているか」を各々の教授案を基に評価し,そこにみられる問題点からの改善策を考案した.

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 被災直後は,教官達自身が大なり小なりの災害を受けたうえに交通手段の殆んどが断たれたことで,出勤が極めて困難な状況におかれました.緊急事態の発生と分かっていても,相次ぐ震災速報に不安と恐怖がのしかかり,どう対応すべきかの判断力もなければ行動もおこらない有り様でした,教学委員(矢本教官)が学内での被害への対応と学生達の状況調査に当ってくれましたが,市内の電話が一切使用出来ないのは致命的なことでした.そこでまず,市外地に居住する者から,下宿者の実家・家族の勤務先へとあらゆる手段で連絡を続けました.「私の実習グループメンバーは大丈夫です」「長田区の1年生はみんな避難しています」等々.その度に涙々でした.学生達も入学時に自分達で作成した住所録をたよりに精一杯情報を集めてくれました.学生も教官も全員無事でした.これを機に学生全員の情報網が出来ましたがこれで学生達の心の絆がより強くしっかりと結ばれた感がいたします.

 手記を綴りました学生の小森さんは,長出区の下宿を後にします時,京都の実家に帰ること,友人の誰々さんは無事で,どこに避難していますので報告しておきますと,私の自宅に電話をくれた学生です.

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 1月17日は,早朝に起こった震度7の大地震のニュースに釘づけになっていた.

 時間を追うごとに増えていく死者・不明者の数に,画面を通して目に飛び込んではいても,現実に起こったことと思えずに,ただ呆然としているに過ぎなかった.

連載 晴れたらいいね!2足のわらじの自分予報・1【新連載】

私は花の女子大生 荒尾 晴惠
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 私は,千葉大学看護学部の社会人入学制度の試験に合格してから,それまで勤めていた看護学校を退職し,1回生として昨年4月から『大学生』をしています.

 色々な機会に,「職業は?」と聞かれますが,「はぁ,学生です」と答えると,相手の方の視線が私の顔を不思議そうに見て納得いかない表情に変わるのを私は見逃しません.そして,何度私は「少し,年はとっているんですけどね.大学生なんですよ」と笑顔で答えるわけです.

連載 病床環境理解のための12の課題・1【新連載】

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 日本の医療は大きく様変わりを始めている.それは,QOLやインフォームド・コンセントなど,患者の権利に関する内容に注目されていることからもわかるだろう.そのような中,入院患者の環境的な諸問題が健康回復に大きな影響を及ぼす要因としてクローズアップされ,多くの病院では患者の入院環境を取り巻く問題に対して,様々な試みがされている.

 病人が健康回復に向かうための環境的な要因の重要性を,特に衛生学的環境の改善から問い,看護実践によって証明したのが近代看護の創始者であるフローレンス・ナイチンゲールである.ナイチンゲールは,彼女自身の述べた看護の基本となる考え「自然が病人に対して最もはたらきかけやすい状態にすること(to putthe patient the best condition nature toact upon him)」1)つまり自然治癒力を高めるための手段の1つとして,環境を整えることが看護実践において重要であることを問うたと言える.

連載 癒しの環境・4

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 白衣を着る職業は意外に多い.看護婦,修道女,医師,エステティシャン,美容師,理容師,薬剤師,化学の先生,調理師,お寿司屋さん,パン屋さん,栄養士,そして職業ではないが花嫁さん.このうち,看護婦と修道女,花嫁さん以外は,私服の上に,白衣をはおる.

 白衣は,清純無垢の象徴である.天使は白衣を着る.汚れのない純粋さは,それだけで綺麗に見える.かつて修道女が看護することが多かったイギリスでは,いまだに,看護婦のことをシスターと呼んでいる.

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 手術を受ける患者の多くは,これで病気が治癒すると期待する一方で,同時に様々な恐怖や不安を抱いている.こうした患者に対する手術前看護のポイントは,患者が手術という危機を克服できるように,身体的・心理的に準備,調整することである.

 今回の事例は,疼痛としびれを主訴とした整形外科的手術を控えた患者である.学生は,患者の身体的苦痛の緩和を行ないながら生活を整え,患者の抱えた不安の軽減を図りつつ手術に向けての援助を行なった.この事例を通して,術前における患者の問題に対してどのような看護診断を用いるのかを検討してみたい.

連載 看護学教育研究実践への提言・13

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はじめに

 昨年の4月号より「看護学教育研究実践への提言」として,我が国の過去5年間の看護学教育研究の動向と今後の課題について連載が進められた.4~7月号では総論的に,また8月号~本年3月号では看護学教育研究の研究内容に焦点を当てて,各担当者が論じた.本号からは,我が国の看護学教育研究の動向と課題について,対象領域に焦点を当てて検討する.本稿に与えられたテーマは,「精神看護学教育研究の動向と今後の課題」である.

 まず,看護学教育カリキュラムにおける精神看護学の位置付けについて述べる.

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 生まれた年代や背景,国籍の違う人たちがテレビや新聞を見て北淡町にボランティアとしてやってきた.

 海外青年協力隊の試験を受け,1月17日が発表だった看護婦のHさん.落ちれば,次の6月の試験まで,英語に触れるためにニュージーランド行きを計画していた.結果は不合格.これはきっと日本にいてボランティアをやれということだと彼女は理由づけ,ニュージーランド行きのための貯金を使えば3か月ボランティアができると計画し,やってきた.

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 看護教育における臨地実習は,看護実践能力を育成する上で重要な位置を占めている.限られた実習時間の中で,学生が効果的に学ぶためには,教育方法の開発が必要である.今回紹介する文献は,臨地実習の教育手段の1つにコンピュータを活用した大学からの報告である.今後の実習方法に示唆を与えるものになるであろう.

 今日,健康に関する専門職の高度技術の要求に対して,看護学生を教育することは,看護教育に携わる者にとってのチャレンジである.看護教育プログラムは,全ての卒業生が効果的にコンピュータ技術を活用できるようにしなくてはならない.

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 セルフケアの概念は日本でも受け入れられ,看護教育の中でも取り上げているところが多いと思われる.人々が身体の変化(感覚と症状)を確認し評価するというのは,セルフケアの最も基本的プロセスの1つである.本文献は,この主観的な情報処理過程に焦点をあてたCommonSenseモデルの概要を紹介し,さらにこのモデルを用いた3つの研究分野からの文献検討を行ない,各研究分野の成果がどのようにセルフケアの知識に貢献するか,看護実践への関連,今後の研究の方向性について述べたものである.

 なお,Common Senseは一般的な感覚とか常識といった意味があるが,ここではそのまま原語を用いた.また,representationを描写と訳したが,Common Senseモデルおよび本文献では,状況分析的な意味が込められている.

看護学生フォーラム“ねんど”のページジャック・16

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皆さんは,医療と行政の関係について考えたことがありますか?

 いきなりこういう話をしたのは,その関係の真っ只中に身を投じようとしている人物が,我々“ねんど”の中から現れたからなのです.

基本情報

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看護教育
36巻4号 (1995年4月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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