調査・研究
「老い」て「病む」人へのかかわり―パウロ・フレイレの「意識化」理論を手がかりに
佐藤 正子
1,2
1世田谷区衛生部
2玉川大学大学院
pp.348-353
発行日 1995年4月25日
Published Date 1995/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901101
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研究の目的
「老化」という生理的な衰えと「病い」というハンディを抱えると,身の回りの行為さえも自力では困難となり,他人の手に委ねながら生きていかなければならない.このような人々が,やがて迎えつつある人生の最終ステージをその人らしい人生を全うできるようにサポートしていくことは,私たち訪問看護婦にとって大きな課題である.
本研究で述べるK氏は,後縦靱帯骨化症の発病を機に「寝るのがいちば~んいい」と一旦は“寝たきり”の生活に適応していったケースである.しかし,数か月の在宅療養生活を続けるなかで,“寝たきり”からくる最悪の状況(例えば痴呆や褥瘡,失禁等)を克服し,日常生活動作が回復するなど,自ら前向きで意欲的な生活を構築していったのである.このように,“寝たきり”というあきらめの生活から“寝たきり”が解消し意欲的な生活を維持していく変容の過程を,パウロ・フレイレの「意識化」理論を手がかりに,1)なぜ“寝たきり”に適応していたのか,2)意欲的な生活に変容させた要因は何かを明らかにし,「老い」て「病む」人々へのかかわりについて理解を深めたい.
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