助産婦雑誌 40巻9号 (1986年9月)

特別企画 主体性をはぐくむ妊産婦体操

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妊産婦体操の背景

 わが国の妊産婦体操は,昭和40年から社団法人全国母子健康センター連合会が母子健康センターを中心に全国的に普及をはかってきたもので,今年で21年になる。

 昭和40年当時,わが国の妊産婦死亡率は出生1万に対して8.8であった。アメリカ合衆国3.2,英国1.8,スウェーデン1.4,ニュージーランド2.2などに比較して非常に高く,死亡原因では妊娠中毒症,出血が上位を占めていた。厚生省では母性保護と新生児,乳幼児対策を包含した新しい母子保健の理念を進めるために,母子保健法を制定した年でもあった。

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はじめに

 まず初めに,人間にとって運動とはどのような意義があるのか考えてみたいと思います。

 私たちの24時間の生活を見ると,休息しているか,ある姿勢をとっているか,ある動作をしているかのいずれかです。すべての人は常に健康であることを願っておりますが,私たちが心身ともに健全であるためには,つねに適度の刺激,適度の運動が必要となっています。アルント・シュルツの生物学的原理という有名な法則がありますが,これは「我々の心身が一番よく機能するためには,常に適度の刺激が必要で,刺激が強すぎても,弱すぎてもその機能は衰える」という原理です。したがって私たちは常に全身を万遍無く適度に使うということが重要なこととなります。文明の中の生活は,身体の特定の部位だけを酷使したり,あるいはある一定の姿勢だけを強制し,私たちから身体全体を使う機会を奪ってしまいました。また日常の精神的なストレスは心身の疲労の蓄積をきたします。そのため私たちが健康に暮らすためには,どうしても努力して全身を使うという工夫が必要となります。ここに人間—運動—健康という大きな筋道ができ,健康であるためにはいかにして身体全体を使い,ストレスを乗り越え,適度に休息し意義ある生活を送るかが重要なこととなります。

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 どのようにして「乳房センター」はできたか

 本誌 国立岡山病院に「乳房センター」がオープンしたというニュースは,新聞などでも報道されてずいぶん関心を集めていらっしゃるようですが,本日は,全国でも初めての「乳房センター」の内容と,開設してからの実績をお伺いしたいと思います。

 「乳房センター」では,おっぱいに関する悩みはすべて引き受けようという趣旨で開設なさったということですが,今まで悩みがあってもどこに行ったらよいかとまどっていた女性たちには朗報だと思います。

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乳房の形態と発達

 1.乳房

 初めはほんのちょっとした筋肉にすぎなかった乳房も,年齢とともに変化する。

 乳頭は,円筒形でやや突出し,他の部位より色づいている。これを取りまく乳輪は,さらに色が濃い。最初の妊娠以降,いっそう濃くなるが,その程度には個人差が大きい。

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はじめに

 正常分娩は生理的ないとなみとはいえ,常に母児の安全を念頭に入れ援助する必要があり,無事終了までの間(中でもとくに児の娩出時)は,緊張の高いものである。それと同時に,産婦へのいたわり,おもいやりも重視したい。

 ME機器の導入とともに分娩経過の観察は,助産婦の五感による観察よりも,分娩監視装置によって,適確な情報を入手することができるようになったことは事実である。しかし,助産婦による直接的な観察や,産婦と直接かかわり,声かけをしていくというケアが,不要であるわけではない。むしろ,これらのケアが重要であるにもかかわらず,分娩監視装置に依存しすぎの傾向を憂いている。

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 現代は世をあげての体操時代.幼児から熟年さらには老人まで,なんらかの運動をやっているといってよいほどだ.妊婦や褥婦とて例外ではない.身体を動かし心も解放する.八間はたぶん動かずにはいられない存在なのだ.一昔前には出産前後に身体を激しく動かすなどということはタブー視されていたものだが,ビートのきいたリズムにのってエクササイズをエンジョイする妊婦や若い母親をみていると,隔世の感がある.お産のとらえ方が確かに変ったのだ.なんとなく暗い要素を秘めていた現象を,現代の女性たちは積極的に人生の明るい出来嘱として転回させえている.

 しかし,安全と効果の二大目標に到達するには,科学的な分析に基づいてつくられた運動のメニューが求められ,そのためには専門家による適切な指導とアドバイスが必要だ.

連載 産科臨床検査の実際・21

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 妊娠・分娩・産褥各期をとおして,妊産褥婦がショック状態に陥る症例はかなりの頻度でみうけられ,稀にではあるが,ショックから回復しないまま死に至るケースもある.産科のショックとして代表的なのは,帝王切開手術の際の腰椎麻酔による仰臥位低血圧症候群や分娩時の大出血による出血性ショックである.「産科」と「ショック」は常に隣り合わせのものといってよく,絶えずショックを念頭においてケアに当たる必要がある.

 今月は,産科ショックを中心に,血液凝固のメカニズムとDICの検査法について解説する.

連載 ニュースピックアップ・9

切り抜き帖 中嶋 真澄
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 大手スーパーの西友は,7月1日から,男女を問わず育児のための勤務時間を短縮できる「ベビーケアタイムシステム」をスタートさせると発表した,この制度は子供が満3歳になった次の4月15日まで受けられる.短縮できる時間は1日2時間まで.女子社員に育児時間を認めている企業はこれまでにもあるが,男女の別なく認めることを明文化したのは西友が初めて.(毎日/7月1日/朝刊)

連載 JJMライブラリィ

「家族」はどこへ
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 「家族」を知ることは,助産婦にとって援助の質を左右する重要なことである。この数年「家族」で目につくのは「崩壊」や「解体」ばかり。ともかく「家族とは何か」が活発に語られ始めた。「家族」もまた神話のベールが剥がされつつある。そんな過激な(?)「家族論」を読もう。

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§はじめに

 最近,新聞をはじめとしたマスコミで,出産をとり扱ったテーマのものがふえてきているように思うのは,この連載にかかわっているので,そういうものに目がいきやすいというだけではないような気がする。

 その中でも,ミセス聖子の妊娠についての報道は,やや飛躍したいい方をすれば,現代の一つの象徴的でき事として興味深い。いわゆるアイドル・スターが「妊婦」である自分や自分の妊娠のことを堂々と公開するということは,かつてなかったことではないだろうか。アイドル性とかスター性というものは,「妊娠」ということと相反するものを持っていたはずではなかろうか。また,妊娠中にレコーディングしたアルバムが,ヒット・チャートをにぎわしているともいわれる。アイドルの妊娠が異和感なく受け入れられているということは,軽薄短小風にいうならば,今は「産むことが流行っている」時代ではないだろうか。

連載 母乳育児Q&A

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A (乳腺炎の場合)

 オッパイがはって痛がる場合,3番目の原因として乳腺炎があげられます。乳腺炎は一般的には,急性化膿性乳腺炎,間質性乳腺炎,それらの延長線上にある膿瘍,以上を含めた意味でいわれます。

 しかし,膿瘍を形成しない急性化膿性乳腺炎と間質性乳腺炎との鑑別は,理論的にはできますが,現実としては非常にむずかしい場合があります。間質性乳腺炎は乳腺組織(乳腺房)をとり囲む組織に起こる化膿性の炎症ですが,蜂窠織炎の形をとらなければ急性化膿性乳腺炎との鑑別は不可能でしょう。そこで,急性化膿性乳腺炎と間質性乳腺炎とを含めた意味での乳腺炎の基本を下表のようにまとめてみました。しかし,この乳腺炎もうつ乳から派生する場合があります。明らかに乳腺炎,明らかにうつ乳という場合は良いのですが,ボーダーラインの場合は乳汁成分簡易分析法で,図のように鑑別すると,乳汁の細菌培養の結果を待たずに対応ができます。

連載 助産婦職能の変遷を探る・16

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瀬木氏のナチスドイツ印象

 瀬木三雄氏は,ドイツから帰国直後の1939(昭和14)年9月,"戦前の独逸"という随筆を東大医学部産婦人科付属助産婦復習科の同窓会機関誌「櫻蔭」に発表している。

 氏は,8月10日に日本に帰国しているが,その直後1939年9月1日,ドイツがポーランドに侵入するにおよんで,ついに第二次世界大戦が始まった。

連載 新生児理解のための基礎講座・18

先天異常と遺伝 仁志田 博司
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 先天異常は大きく,フェニールケトン尿症などの代謝性疾患と,口唇口蓋裂などの奇形症候群に分けられます。その多くが新生児期に発症し,早期診断と早期治療が救命につながることから,新生児医療においては重要な疾患の1つです。しかし,それらの異常に対する治療もさることながら,正しい遺伝学的な知識を持たなければ,予後の推測や次の子供への影響など,家族へ適切な情報を伝達することができません。本項では遺伝の基礎的な解説を行ない,外表奇形を中心とした先天異常の疾患に対する考え力を勉強しましょう。

連載 周産期の母子の看護

心理社会的アプローチ・6

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産褥期における母性行動

 前号では,分娩期における産婦の反応について,主として陣痛を中心とした助産婦の関わりについて考えてきた。出産体験は褥婦にとってどういう意味があるのか,助産婦にとっても重要な関心事でなければならない。

 今号では,産褥期に焦点を当てながら,全体として統合された人間への援助のあり方を考えてみたいと思う。

連載 おとめ山産話

お産の始まり 尾島 信夫
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 日本医事新報の質問欄(3241号134頁)に「出産は満ち潮に多いと俗説にいうが本当か」というのがあった。これについて弘前大の品川教授が「10数年前に統計をとったことがあり,その時の結論として,出産は1日24時間のうちのほとんどすべての時間に,同じくらいの頻度で始まって同じくらいの頻度で終了している。決して夜間,特に深夜に多いわけではない云々」と答えていられる。

 私はラマーズ法に打込む前の頃,お産が自宅で自然に始まって聖母病院に入院し,そして後産期に麦角剤を予防的に1本注射した以外は,まったく正常の自然分娩に終わった初産と経産(同傾向だったので同数例を合計した)数百例について,分娩開始時刻(後述)の統計をとってみて驚いたことがある。一昼夜を大ざっぱに4時間ごとに区分し,各区分の自然分娩開始頻度を計算してみると,6-10時15%,10-14時9%,14-18時14%,18-22時17%,22-2時22%,2-6時23%,つまり,朝の6時から夕方の6時までは合計38%,夕方の6時から朝の6時までの夜間は62%ということで,一昼夜の中で始まりのピークはタクシーが深夜料金をとる頃に一致するし,「妊婦は正午前後に泳いであとでゆっくり昼食を」と,故・室岡教授がすすめたのは私のこの曲線(「新ラマーズ法図説」136頁)を根拠にいわれたのではないかと思う。

連載 教育評価のはなし

研究のすすめ方(1) 岸 学
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 今回より,研究の考え方や進め方,研究の評価などについてお話ししていきます。

 研究については,学生が行なう研究や研究的な授業内容について,それをどのように進め,どのように指導していくかの面と,自らが研究を行なっていく場合とがあると思います。私自身も数年間,看護研究の授業を担当していますが,初めて研究を行なう学生に対して,研究のおもしろさ,難しさを伝えるのは興味があり,また責任の重大さを痛感しています。今回より述べていく内容は,定説となっていることではなく,私自身の経験をもとにした私見である点を御容赦ください。

連載 医療ソーシャルワーカーの相談窓口から

家族の支え 田戸 静
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 医療は,人間(患者)の身体機能の保持を中心命題とし,同時に,患者の心理社会的・経済的側面にも配慮しながら,みずからの命題の効果的な遂行を図る。人間が病むとき(病気ではないが,妊娠現象を含んでもよい),その個人が環境と関わる接点で社会生活上の諸問題が発生し,それが身体面に大きく影響してくるからだ。

 それだけに,病むことを,単なる身体的不調と片づけるわけにはいかない。身体の不快・不調感から派生してくる情諸的・社会的・経済的不適応の面にも目を向けないと,身体的不適応そのものが解決されないのである。以下に,そのようなケースを紹介して考察してみよう。

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 本誌に‘82年7月号から’84年3月号まで21回にわたり,島一春氏によって連載された「田中志ん物語・終りなき旅」が,このほど新潮社から『一万人の産声を聴いた』というタイトルで刊行されました。読者の方々からは連載中にも単行本化への希望の声をいただき,編集室としても肩の荷を降ろした思いです。

 なんといっても田中志ん氏は助産婦諸姉のシンボル的存在。編集部の私(高木)も初めてお会いしたときから,傑出した,それでいて素朴な人柄に魅せられ,どうにかしてこの逸物の存在を一人でも多くの助産婦に知らせたい,後の人々のためにも残しておきたい気持でいっぱいとなりました。幸い,当時評判となった『産小屋の女たち』(健友館刊)を読ませていただき,その"お産"に対する深い哲学に感銘を受けていました作家島一春氏の知遇を得,田中志ん物語の執筆を依頼することができました。

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昭和61年度日本助産婦会総会

 昭和61年度の日本助産婦会総会は,小雨のけむる長崎市の「ホテル日昇館シアターホール」で開催されました。

 日木の西の端が会場でしたので,出席者が少ないのではないかと懸念しましたが,日本全国から600余名の方たちの出席をみることができました。

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はじめに

 今日,セルフケア1)(生命,健康および安寧を維持するために,各個人が自分自身のために実施する実践活動)の考え方が定着しはじめ,セルフケア行動がしだいに広がってきている。

 母性保健の領域においても,決して例外ではなく,たとえば月経に関する保健行動をみても,内装用生理用品の普及による腟内操作は,高度の衛生行動が必要であり,また,激しいコマーシャリズムのもと,商品の適切な撰択が要求されるなど,セルフケアは高度でしかも範囲が広くなってきている。

私と読書

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呻吟をのりこえ,母性の回復を探る

 本書を読みすすめ,最終の章である"構造的育児不能社会の中で──現在の母親の呻吟と本来的な母性の回復をめざして──"と題した部分にさしかかった時,私は,今春職場を去った同僚のことを思い起こした。

 彼女は第1子出産のあと職場復帰したが,働き続けたいという希望をもちながら,さまざまな理由で退職していった。去る折に「何が理由とははっきり言えないが,子供に母乳を十分に与えたい,夫とも縁あって結ばれたのだから,面倒をみてあげたい。これ以上,自分の力では仕事を続けていくことができない」と,苦しそうに話した。迷い続けた何か月間であったことは,共に働く私たちにも,痛いほど伝わってきた。

Medical Scope

肩甲難産(2) 島田 信宏
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 肩甲難産は,胎児が大きくなればなるほど,発生率が増えてきます。この頭位分娩での肩甲難産例をなくすことが唯一の分娩麻痺発生防止対策であるといっても過言ではありません。今までは,分娩前に肩甲難産を予測することが難しかったのですが,今日では超音波断層法で胎児の大横径や腹囲・胸囲の長径を計測できるようになり,児頭大横径より腹囲が1.5cm以上大きかったり,胸囲が1.4cm以上大きかったりしたときには,胎児はほぼ4kgをこえていると考えてよいので,肩甲難産を回避するために帝切にするという考え方もでてきています。

 また,分娩第2期が初産婦で2時間以上,経産婦で1時間以上かかるような症例では,胎児はかなり大きく,肩甲難産になる確率が36%以上あると考えられます。そこで,リスクによってはこのような頭位分娩を帝切にすることも必要となってきます。実際に肩甲難産になってしまうと,図1のように,胎児の前在肩甲は恥骨結合下に,後在肩甲は仙骨下部にぴったりはりついたように固定されてしまいます。そこで前在肩甲から娩出させようとすると,図2のように,胎児を上から押し上げ,胎児をひっぱるようになりますので,分娩麻痺が発生しやすくなります。

基本情報

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助産婦雑誌
40巻9号 (1986年9月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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