助産婦雑誌 40巻8号 (1986年8月)

特集 夫立ち会い分娩

  • 文献概要を表示

はじめに

 ラマーズ法を代表とする自然分娩への動きの中で,「夫立ち会い分娩」が注目され,分娩時に立ち会いを希望する夫や実際に夫参加の分娩を実践する施設が増え,よい成果を上げる傾向にある。しかし,現在わが国において,母性看護担当者や産科医のあいだでも,夫立ち会いの分娩に対する評価は一致をみていない。

 夫立ち会い分娩の意義は,児の出生を夫婦で協力して迎え,苦しみと喜びを分ち合い,その後の育児を協力して行なっていく出発点とすることにあるといわれている。事実,ラマーズ法は夫とともに分娩に臨み,楽なお産としての成果を上げた事例が報告されているし,立ち会った夫も,分娩中の妻へ精神的援助ができたことを満足したといっている。

「新しいお産」と夫の役割 福田 稠
  • 文献概要を表示

はじめに

 最近お産はずいぶん安全になったといわれる。もちろん,数多い症例をとり扱う産科医にとって,時として,肝を冷すことは少なくないが,統計的にみれば,周産期死亡率は低下しており,母体死亡の症例も減少した。これは,ひとえに近代産科学の進歩のおかげであり,とりわけ,ME機器の発達,胎児胎盤機能検査の向上笠に負うところが大きいと思われる。現在のお産においては,各種のモニターや,場合によってはエラスター針等による血管確保なしの分娩は考えられず,さながら,分娩室はICUのような観を呈している。いいかえれば,少なくとも日本においては,お産の理想的な姿は産科ICUにおけるお産といっても過言ではない。また,お産の「安全性」を考えるときに,この方向は決して間違っているとはいえない。しかし,お産というものを「人間」あるいは「女性の人生」という視点に立って考えると,このような方法が果たして正しいものか疑問に思えてくる。

 お産は,現在,病気やけがと同様にとり扱われ,時には,子宮癌の患者さんの横に産婦が入院させられるということも起こり得る。しかし,お産は決して病気やけがのようなアクシデントではなく,女性が女性として生を受けた以上,その多くが経験し得る大切な人生の1頁である。入学や就職,結婚などと,なんら変わることのない,ある程度予測しうる出来事であり,生物学的にも,初潮や閉経と同じように女性のライフサイクルの1コマなのである。

お産と流行 我妻 堯
  • 文献概要を表示

はじめに

 過去30年間に助産学における診断法や治療方針は大きな変化を示した。その中には,他の医学の分野におけると同じように,最近の科学技術の進歩に支持された新しい診断法や治療技術が大部分を占めているのは当然のことである。医療機器や薬剤の発達・進歩のおかげで,著者が学生時代には想像もつかなかったことが可能になった。これらの変化は科学の進歩に伴う,いわば必然的な変遷と見なし得るであろう。

 しかし一方で,助産学の中には,このような必然性を伴わない,いわば時の流れに従う流行ともいうべき現象が起こっていることも事実である。他の医学の分野ではこのような流行現象はあまり見られないから,助産学あるいは産科学独自のものではないかと思われる。本稿はこの流行現象の1つをとり上げて批判するのが目的である。

  • 文献概要を表示

はじめに

 夫立ら会い分娩に私が関わって6年めになる。その間,夫立ち会い分娩経験者に対してアンケート調査をくり返し,その検討結果を臨床に応用しながら,「助産婦としてどう関わるべきか」その具体的援助方法について模索してきたことをここに報告する。

  • 文献概要を表示

はじめに

 出産の場は,日本の社会通念として,これまで男子禁制であった。しかし,欧米の影響を強くうけた社会生活の様相の変化に伴って,わが国でも,ラマーズ法による分娩,夫参加によるお産が試みられるようになってきた。沖縄県でも,夫婦でお産に臨むことに関心が高まりつつあり,当クリニックでは,そのニーズに応えるため,昭和56年から今日に至るまで,「夫参加によるお産」を積極的に推進し,実施している。

 家族のあり方が問われている現在,夫参加によるお産は,夫婦の精神的な結びつきの象徴とも理解できるし,親と子の絆の原点とみることもできる。さらに,夫の参加によって出産そのものが楽になるという効果も期待できる。今回,当クリニックで「夫参加のお産」を体験した夫婦を対象に意識調査を行ない,同時に感想を聞く機会を得たので,その結果を考察し報告する。

  • 文献概要を表示

 司会 きょうは実際にお産に立ち会った夫の方3人にご出席いただきました。まず,どんなお産だったのかあたりから,お話しいただければと思います。

  • 文献概要を表示

はじめに

 ひとつひとつの受精卵が細胞の分裂と器官の分化とを繰り返しながら子宮内で成長をつづけ,やがてヒトの個として胎外生活が可能になるまで成熟してゆく過程を解明することは,産科学,ことに胎児医学を志す者にとって恒久の課題である。この目的に対して,今日,さまざまの側面からアプローチが試みられていることは周知のとおりである。なかでも,この10年余の間に流布した電子スキャンはin vivoで,リアル・タイムにおける胎児の生理現象の観察を可能にした。その結果,成長にまつわる胎児の評価も,形態のみでなく機能的な面まで拡充され,たとえば,胎児の眼球運動などに代表されるように,諸種の現象が胎児行動を科学的に体系づける研究課題として注目を集めるようになってきている。本稿では,まず初めに本領域のこのような学問の流れを歴史的な観点から解説してみたい。

  • 文献概要を表示

 今回は私たち助産婦,保健婦が一体となって取りくんでいる竜北町の母子一の援助活動を全国の皆さまにお知らせしたいと思います.

 私(坂上トミ子)は昭和37年から竜北町役場で保健婦として働いていますが,それ以前は助産婦として熊大産婦人科,八代総合病院で働いていましたので,妊婦や母子の援助には助産婦の力が欠かせないことを実感してきました.今,竜北町では助産婦と保健婦そして医師,関係者の方々との連携がとてもうまくいっており,そのことを大変誇りに思っています。いつまでも健在なれ!わが町の輪と和.

連載 産科臨床検査の実際・20

心疾患合併妊娠の検査法 石井 明治
  • 文献概要を表示

 呼吸・循環系は妊娠に伴って著明に変動する.そのため,心・肺疾患合併妊娠における母体・胎児への影響は大さく,まれにではあるが,母児の予後に重大な結果を招くこともある.統計的にみても,心疾患は妊産婦死亡の主要因となっている.このように,心疾患は,妊娠に伴う偶発症のうちで最も重視しなければならない疾患の1つであるから,妊娠・分娩・産褥各期をとおしての循環系の変化を十分に理解したうえで,心疾患合併妊娠に対処する必要がある.

連載 ニュースピックアップ・8

切り抜き帖 中嶋 真澄
  • 文献概要を表示

 長崎市の産婦人科医院で,排卵誘発剤を使っていない女性(35歳)が一卵性の女の4つ子を,自然出産で産んだ.赤ちゃんは4人とも1230-1880グラムの未熟児だったが,母子ともに経過は順調とのこと.

連載 新生児理解のための基礎講座・17

新生児の免疫と感染症 仁志田 博司
  • 文献概要を表示

 新生児は,成人ならば重篤な免疫不全症候群とほぼ同じといえるような特異な免疫状態にあるため,種々の抗生物質が開発された今日においても新生児医療において感染の占める位置は大きく,胎児の2%は子宮内で,新生児の10%は出生時期に何らかの感染を受けているといわれるほどである。

 新生児の感染症も,疫学的観点からみると,時代の流れとともに変わりつつある。ブドウ球菌(リッター氏病)や溶連菌による感染症が新生児室内で大流行し多くの新生児が死亡した従来型から,あまり病原性の強くない日和見的な細菌(opportunistic bacteria)による散発約発生の型に変わってきている。さらに近年になり,従来あまり知られなかったB群溶連菌やクラミジアによる新生児感染症などの新しい感染症がクローズアップされてきた。

連載 母乳育児Q&A

  • 文献概要を表示

(うつ乳の場合)A 乳房に疼痛を持つ疾患の中で,乳房うっ積の次に見られて来るものにうつ乳があります。うつ乳は正しくはうっ滞性乳腺炎といいますが,なんらかの原因で乳汁の分泌が滞り,乳腺組織内に乳汁が溜った状態にあります。しかし,細菌感染を伴わない無菌性の炎症です。

 うつ乳の原因には,色々ありますが,それぞれに応じ対応の仕方も異なるため,原因と治療を,表のようにまとめてみました。

連載 周産期の母子の看護

心理社会的アプローチ・5

  • 文献概要を表示

1.分娩期の産婦の特性

 妊娠および分娩・産褥経過は,1人の女性が妻から母親になる発達課題の側面からみて,重要な役割変化のプロセスといえよう。妊娠・分娩・産褥に至る女性の役割変化の過程には,めざましい身体の変化,産婦自身にもコントロールしがたい感情の変化が伴う。

 頭で知識として理解していることと,実際に体験することとの間にはズレが生じやすい。特に分娩期における陣痛に対する産婦のとり組み方や反応は実にさまざまである。しかも,妊娠・分娩・育児に対処する手段を十分にもち合わせていない,すなわち,そのストレスを処理するのに直接使える力法を産婦がもち合わせていないという点で,「危機状況」である1)。たとえ経産婦であっても,前回の分娩に際して,脅え,わだかまりなどの「危機状況」を体験している場合もある。分娩期というストレス状況にある母児の安全と緊張緩和のための助産婦のアプローチは,産婦のニーズに対応するものでなければならない。後述するが,分娩中の産婦のニーズは,そばにいてほしい,腰をさすってほしい,分娩経過に先行した説明がほしい,など切実なものが多いためである。

連載 助産婦職能の変遷を探る・15

瀬木氏と妊産婦手帳 大林 道子
  • 文献概要を表示

始末書問題をひき起こした瀬木氏の一文

 前回は,1940(昭和15)年5月に公布された国民優生法の成立に,瀬木三雄氏が関与していたかどうかを検討し,関わりがないことを傍証してきた。しかし,その論拠は瀬木氏の戦後の回想が主な資料なので,今一つの感は免れなかった。氏が同法公布後の戦中に同法への批判的記述を行ない,警視庁一厚生省優生課から抗議を受けたという論文を探していたのだが,それが今回みつかった。

 「日本医事新報」の昭和17年6月6日号"優生法と崖婦人科学"である。この論文の構成は,一.緒言 二.優生法の本質的問題 三.優生法施行及び取締に対する医師の希望と疑点 四.優生法に対する希望 五.優生審査会の構成となっている。

連載 源流への旅

子産み子育て考・17

  • 文献概要を表示

§はじめに

 今日では,出産は夫と妻の私事としての面のみ強調されて取り扱われることが多い。もちろん,夫の家族,妻の家族にとっても,血縁者が一人ふえるという喜びはあるが,特に都市では,夫婦の子供としての存在が強い。しかし各地に伝承される産育習俗の中には,単に夫婦,家族の子供というだけでなく,ムラの子供,地域の仲間が一人ふえるという意識をもって出産を迎える習俗もある。これらの習俗からは,子供がこれから帰属する共同体側からの子供観を知ることができる。

 今回は生まれてくる子供を地域社会がどのようにして迎え入れ,はぐくんでいったのかを探ってみたい。

連載 JJMライブラリィ

産む・産まない
  • 文献概要を表示

 「子どもは神からの授りもの」では通用しない時代になりつつある。人工授精,体外受精,男女産み分けと「産み」の現場が様変りしている。こうした情況のなかでこそ,「産む」こと「産まない」ことを人間らしく考えたい。自分の選択が本当の「人間の英知」であったと胸張れるように。

連載 おとめ山産話

  • 文献概要を表示

 周産期死亡や障害の予想される新生児に対する対策は生後では時すでに遅く,妊娠中から危険性を察知して先回りして対処すべきであるという主張から,30年ほど前にCliffordが警戒すべき妊娠をhigh risk pregnancyと名づけたというように,私は理解している。

 しかし,最近は,その意味が敷衍拡大されたらしく,妊産婦の重要な合併症,あるいは異常そのものも包含する用語として扱われていることが普通のようである。

連載 教育評価のはなし

論文体テストの作り方 岸 学
  • 文献概要を表示

 前回は,客観テストの特質や,テストを作るときの注意についてお話ししました。今回は,それに引き続いて,もう1つのテスト形式である論文体テストを見てみましょう。

 須賀哲夫著「知覚と論理」(東大出版会)の中に次のようなエピソードが紹介されています。ある先生が哲学の試験で「イデオロギー」という語の説明を求めたところ,「これはコオロギの一種ではありません」という答えがかえってきたというのです。これを×にするとイデオロギーはコオロギだということになり,○にすると試験そのものが成立しなくなってしまうという話です。もちろん,「ふざけている」といってしまえばいいのですが,教育評価の点からみると,出題者側の反省を促すには名答であろうと思います。

連載 医療ソーシャルワーカーの相談窓口から

  • 文献概要を表示

 「こんな話でも相談にのってもらえますか」と相談室を訪れたM子(29歳)は妊娠36週である。母親学級で医療ソーシャルワーカーの存在を知り,思い切って相談にきたという。

 M子はぐっと昂ぶる感情を抑えながら,次のように話してくれた。

  • 文献概要を表示

はじめに

 わが国の国公立・私立のすべての助産婦養成機関が加入する全国助産婦学校協議会は,毎年,全国の助産婦学校教官の業務や処遇内容について調査を行ない,その結果を関係各機関に報告して,助産婦教育に携わる専任教官,臨床実習指導教官の待遇改善を要望してきた。

 近年における日本の社会・経済・文化面における進歩・発展と並行して,助産婦教育に直接関与する学校および臨床の教官の待遇は,ここ数年前まではわずかながらも年々改善されてきた。しかし,もともと不十分な教育条件下でスタートした学校が多いうえに,最近は,行政改革の影響などもあり,改善の歩みが停滞しがちな傾向にある。この点について,助産婦教育に携わる関係者の意見はほぼ一致している。

Medical Scope

肩甲難産(1) 島田 信宏
  • 文献概要を表示

 去る5月9日,東京で,「手の外科学会」という学会が開催されました。整形外科や外科の先生方を中心とした学会で,「分娩麻痺」,すなわち脳神経叢麻痺の話題が数多くとり上げられました。関東地方には,現在上肢の機能回復がほとんど望めない分娩麻痺の方々が約500名もいるということでした。私も,産科の立場から,分娩麻痺発生のメカニズムとその発生防止対策について外科系の先生方にお話ししました。

 確かに,分娩麻痺の発生率は,私たちの努力で減少してきています。北里大学病院では0.04%にまで減らすことができました。しかし,整形外科の先生方のところへは,いまだに数多くの回復不能な症例が来院されており,全体的には,減少しているという印象は受けないとのことでした。そこで,今月と来月で,その発生防止対策をもう一回考えてみようと思います。

基本情報

00471836.40.8.jpg
助産婦雑誌
40巻8号 (1986年8月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

継続誌

文献閲覧数ランキング(
7月27日~8月2日
)