助産婦事典
新生児の吸啜と乳首
二木 武
1
1都立母子保健院
pp.772-776
発行日 1979年11月25日
Published Date 1979/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205631
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1.吸啜機構
吸啜運動は哺乳の基礎となる行為であり,この運動は吸啜,嚥下などの一連の協調した反射運動として行われる。このうち吸啜は,成人では呼吸の時にみられると同じ吸入運動によって吸飲がなされるが,乳児の場合は成人の場合とまったく異なっている。乳児の吸啜は口腔内に陰圧をつくって吸引することと,舌や顎などにより乳房や乳首が圧出することの2つの機能によって行われている。「吸啜」のうち「吸」はすうこと,「啜」はすする意味であるが,「吸啜」という言葉は上述の2つの機能を巧みに表現しているといえよう。
すなわち,母乳では授乳時に乳頭は口腔の後部まで深く吸われる。上下の口唇は乳輪部に密着,閉鎖される。ついで下顎が上昇し,また前後に動いて上下顎で乳輪部を圧迫し,また舌先で乳頭,乳輪を硬口蓋にむけて圧迫し,乳管洞のミルクを圧出する。また口唇を乳房に密着したまま交互に下顎を下降させることにより,口腔内に陰圧をつくり吸引が行われる。母乳ではこの舌や下顎による咬合圧機能が,哺乳の主力になっているといわれる。そのための強力な顎や舌の運動が,その後の乳児の顎の発育に不可欠といわれる(図1)。
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