特集 産褥期精神障害の臨床
産褥期の精神障害
市川 潤
1
1市立函館病院分院精神科
pp.752-758
発行日 1985年9月25日
Published Date 1985/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206717
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なぜ「産褥期」精神障害か
「産褥期」は出産というできごとの一部分を占めるにすぎないにもかかわらず,この特集のテーマが,「産褥期精神障害の臨床」となっているのには理由があると思われる。その1つは,産褥期の精神障害の発病頻度が妊娠中のそれに比べて著しく高いことである(図1参照,自験例についての統計は,本誌36巻2号12ページ参照)。2つには,妊娠中の精神障害の病型には特異的なものはないのに対し,産褥期には,他の時期には見られない特殊な病像,経過,予後を示す精神病の一群が存在することである。それは,症状も多彩で激しく,重篤な病像を呈するため,病因論的にはもとより,治療・看護の面でも重要な疾患である。
したがって,妊娠・分娩・産褥・授乳などのような,出産にまつわる時期の精神病について,古くから,妊娠精神病,産褥精神病あるいは授乳期精神病などの名称はあるものの,上のような理由から「産褥期」精神病の名称が,それらの総称ないしは代表として用いられてきている。らなみに,上の3つの名称のほか,月経時に現われる精神病を指す月経精神病をも含めて,生殖精神病と総称することもある。また,出産以後の精神病を妊娠中の精神病と対比させて,「産後」精神病と総称することもあるが,この場合も,その内実は産褥期精神病とほとんど同義である。
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