連載 おとめ山産話
お産の始まり
尾島 信夫
1
1聖母女子短期大学
pp.832
発行日 1986年9月25日
Published Date 1986/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206966
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日本医事新報の質問欄(3241号134頁)に「出産は満ち潮に多いと俗説にいうが本当か」というのがあった。これについて弘前大の品川教授が「10数年前に統計をとったことがあり,その時の結論として,出産は1日24時間のうちのほとんどすべての時間に,同じくらいの頻度で始まって同じくらいの頻度で終了している。決して夜間,特に深夜に多いわけではない云々」と答えていられる。
私はラマーズ法に打込む前の頃,お産が自宅で自然に始まって聖母病院に入院し,そして後産期に麦角剤を予防的に1本注射した以外は,まったく正常の自然分娩に終わった初産と経産(同傾向だったので同数例を合計した)数百例について,分娩開始時刻(後述)の統計をとってみて驚いたことがある。一昼夜を大ざっぱに4時間ごとに区分し,各区分の自然分娩開始頻度を計算してみると,6-10時15%,10-14時9%,14-18時14%,18-22時17%,22-2時22%,2-6時23%,つまり,朝の6時から夕方の6時までは合計38%,夕方の6時から朝の6時までの夜間は62%ということで,一昼夜の中で始まりのピークはタクシーが深夜料金をとる頃に一致するし,「妊婦は正午前後に泳いであとでゆっくり昼食を」と,故・室岡教授がすすめたのは私のこの曲線(「新ラマーズ法図説」136頁)を根拠にいわれたのではないかと思う。
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