連載 周産期の母子の看護
心理社会的アプローチ・5
分娩期における産婦の援助—産婦の陣痛体験へのアプローチ
和田 サヨ子
1
,
新道 幸恵
2
1聖母好短期大学
2国立公衆衛生院衛生看護学部
pp.704-709
発行日 1986年8月25日
Published Date 1986/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206939
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.分娩期の産婦の特性
妊娠および分娩・産褥経過は,1人の女性が妻から母親になる発達課題の側面からみて,重要な役割変化のプロセスといえよう。妊娠・分娩・産褥に至る女性の役割変化の過程には,めざましい身体の変化,産婦自身にもコントロールしがたい感情の変化が伴う。
頭で知識として理解していることと,実際に体験することとの間にはズレが生じやすい。特に分娩期における陣痛に対する産婦のとり組み方や反応は実にさまざまである。しかも,妊娠・分娩・育児に対処する手段を十分にもち合わせていない,すなわち,そのストレスを処理するのに直接使える力法を産婦がもち合わせていないという点で,「危機状況」である1)。たとえ経産婦であっても,前回の分娩に際して,脅え,わだかまりなどの「危機状況」を体験している場合もある。分娩期というストレス状況にある母児の安全と緊張緩和のための助産婦のアプローチは,産婦のニーズに対応するものでなければならない。後述するが,分娩中の産婦のニーズは,そばにいてほしい,腰をさすってほしい,分娩経過に先行した説明がほしい,など切実なものが多いためである。
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.