medicina 58巻10号 (2021年9月)

特集 腎疾患—エキスパートへの質問で学ぶ診療のキホンと最新情報

藤田 芳郎
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 一口に医師といってもさまざまなありようだ.専門分野の多様性は言うまでもなく,働く場所においても,開業医,地域病院の医師,あらゆる分野の医師を抱え最先端を自負する大規模病院,そして大学病院がある.腎臓内科の中の一専門分野においても,基礎研究者,統計を扱う疫学の研究者,臨床医などさまざまである.さらに時代によって急激な変化があり,その変化の速度は増している.地域病院の中で腎臓内科医として働いている一臨床医を取り上げてみても,腎臓内科の中の多くの分野,移植,血液透析,腹膜透析,手術関連,腎病理,水電解質などの中の一分野のみに特化している医師は少なく,さらに腎臓内科のみに特化せず,腎臓・内分泌科,腎臓・糖尿病科,腎臓・膠原病・感染症科,腎臓・循環器科,腎臓・血液内科などを標榜し,二股三股もかけて働いている人が少なくない.化学療法の進歩によって腫瘍科との連携も必要とされるようになってきている.また,昨年からはCOVID-19によって思いがけない変化が起きている.COVID-19対策も引き受けてその中心になって働いている医師も多いのではないか.COVID-19時代の真っ只中にあって今までと変わりなく目の前の患者さんに没頭して忙しく日々を過ごしているうちに,気がついてみると浦島太郎になっていたということになりはしないだろうかと,ふと心配になることもあるのは私だけであろうか.

 一医師に与えられた時間は限られている.生活もある生身の人間だ.今までは治療法がなく見落としていても患者さんに不利益はなく,逆に診断できても患者さんにとってあまり利益はないという病気が最近の進歩で治るようになった,かつては「見落としてもよかった病気」が今や「見落としてはいけない病気」になった,また原因不明であった病気に「病名」がつけられ治療法が与えられた,などという情報をいかにつかむか.そういう情報が気軽に入る環境をいかに作るか.目の前の患者さんに没頭して日々過ごしていても最新情報を自然に簡単に短時間で知りたいという医師は多いのではないか.競争社会であっても医療現場においては競争原理を働かせずに情報と知識を分かち合う臨床現場であってほしい.患者さんに役に立ち治療に応用できる実践的知識および具体的な治療法を知り,患者さんにより役に立つ臨床医でありたいと願う医師,現場が忙しくても基本と進歩を理解し患者さんに還元する喜びがほしいという医師をわかりやすく助けてくれる雑誌が欲しい.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!
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●今月の特集執筆陣による出題です.腎疾患の診療に関する理解度をチェックしてみましょう!

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Point

◎血清クレアチニン(Cr)やeGFRcreat(クレアチニンによる推定糸球体濾過量)は,筋肉量や蛋白質摂取量によって変化しうるが,シスタチンCやeGFRcys(シスタチンCによる推定糸球体濾過量)はそれらの影響を受けにくい.

◎eGFRcreat値は,慢性腎臓病の重症度分類に用いるために算出する値であり,各個人の体型にあったGFR推定値ではない.よって,薬物投与設計では用いない.

◎Cockcroft-Gault式による推定クレアチニンクリアランス(CCr)は,各個人の体型にあったCCr推定値となるため,薬剤投与設計で用いられる.

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Point

◎腎機能障害をみた際は,腎形態,尿量推移,体重推移,直近のクレアチニン推移などから急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)を鑑別する.

◎緊急透析の適応は,各種パラメーター(代謝性アシドーシス,高カリウム血症,心不全など)だけでなく,その後の臨床経過を予想し判断する.

◎AKIの治療の基本は,腎機能が改善するまで,血圧・体液量を適正に保ち続けることである.

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Point

◎高血圧の治療目的は,脳心血管病の発症や死亡を減らし,患者の生命予後に加えてQOLを改善させることである.

◎降圧目標は,既存の疾患の有無により異なり,75歳未満の成人では130/80 mmHg未満である.

◎高血圧の治療は,生活習慣の修正(非薬物療法)および薬物療法により行う.

◎血圧が高くなくても生活習慣を適正化することにより,高血圧の発症を予防することが大切である.

◎積極的な適応となる病態がなければ,降圧薬はCa拮抗薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,あるいは少量の利尿薬を第一選択薬として用いる.

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Point

◎原発性アルドステロン症の早期診断のためには,有病率の高い疾患群において積極的なスクリーニング検査が重要である.

◎スクリーニング検査が陽性であれば機能確認検査を実施する.機能確認検査のなかでカプトプリル負荷試験は簡易かつ短時間で実施できるため外来でも実施可能である.

◎血中アルドステロン濃度測定が2021年4月から新規検査法に変更となったため,カットオフ値の見直しなど今後の対応が求められる.

◎薬物療法において,ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬は現在3剤使用可能であり,2型糖尿病患者において腎機能障害の進行抑制が期待できる新たなMR拮抗薬が現在臨床試験中である.

よく出会う糸球体疾患の治療の実際

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Point

◎IgA腎症は,腎生検によってのみ診断され,糸球体へのIgAの優位な沈着がみられる腎炎と定義される.

◎IgA腎症の治療法は臨床病理学的重症度,組織の活動性に応じて個別に決定する.

◎一日尿蛋白>0.5 gかつ尿中赤血球>10/HPFを呈し,活動性病変を有する症例には積極的にステロイドパルス療法を行う.

◎上気道炎後に肉眼的血尿を繰り返す症例には扁桃摘出術を考慮する.

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Point

◎膜性腎症の77.9%が一次性であり,一次性ネフローゼ症候群の36.8%を占め,高齢層での発症頻度が高い.

◎係蹄上皮細胞上のM型ホスホリパーゼA2受容体などの各種自己抗原とそれに対する抗体の同定が診断において重要である.

◎自己抗体力価は治療効果の判定に有用であり,治療抵抗性を推測するうえでは抗体サブクラス(IgG4優位性)および補体活性化経路(レクチン経路の活性化)が参考になる.

◎レニン・アンジオテンシン系阻害薬などを含む支持・保存的療法もしくはステロイド単独あるいは免疫抑制薬併用のいずれかを臨床病理学的所見に基づき開始する.

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Point

◎ネフローゼ症候群は,大量の尿蛋白漏出と低蛋白(低アルブミン)血症を特徴とする症候群である.急性腎障害を呈する症例も多く,浮腫,脂質異常症,血栓症,易感染性などさまざまな病態を合併する.

◎ネフローゼ症候群はステロイド治療を基本とするが,易再発性,依存性および抵抗性によるステロイド積算使用量の増大が懸念される.またシクロスポリンの長期使用による腎毒性も問題点である.

◎頻回再発型/ステロイド依存性の微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)に対し,リツキシマブは再発回数の減少やステロイドおよび免疫抑制薬の減量を可能とする.

◎膜性腎症に対するリツキシマブの寛解導入効果が臨床試験などで報告されており,治療選択肢の一つとなりうる.

◎ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ治療は,長期的な治療戦略や安全性など今後明らかにされるべき点も多い.日常臨床においては,保険適用にも留意して診療に当たる必要がある.

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Point

◎糖尿病性腎臓病(DKD)の診断には,尿中アルブミン,eGFR(シスタチンC)を測定し,尿検査を施行(沈査を含む),糖尿病網膜症併発の有無から,まずは,non-DKDの鑑別診断後,腎症病期を確定する.

◎糖尿病性腎臓病には,正常アルブミン尿を呈しながら,eGFRが急速低下する非典型例が存在するため,eGFRの経過観察が重要である.加齢,高血圧,動脈硬化,脂質異常症などが病態に関与する.

◎血糖コントロールは,網膜症,神経障害など糖尿病性細小血管障害の予防・進行阻止に重要であるが,腎症に対しては,降圧薬,RAAS阻害薬,SGLT2阻害薬などの腎血行動態改善を標的にした治療がより効果的と言える.

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◎初期対応として重要なことは,細菌学的検査のための検体を採取したら,その結果を待たず早期より治療を始めることである.

◎適切な抗菌薬を推奨された期間投与する.

◎診断に苦慮する内因性腹膜炎,結核性腹膜炎,真菌性腹膜炎の予後が悪いので注意する.

◎腹膜炎の予防,特に内視鏡前の予防投与を忘れないようにする.

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◎腎移植後感染症の診療に際しては,移植後の時間によって変化する免疫抑制状態の変化(net state of immunosuppression:NSI)と,それに関連する疫学的特徴(epidemiologic exposure)を把握することが重要となる.

◎ワクチン接種による感染症予防が腎予後や生命予後を改善することが示されており,適切な時期にワクチン接種を行うことが重要である.

◎移植後特有の感染症(CMV感染症,BKV腎症,尿路感染症)について理解し,早期診断,早期治療を行う必要がある.

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◎全身性強皮症を早期に捉えるための徴候としてRaynaud現象,手指腫脹,爪郭毛細血管異常,爪上皮出血点がある.

◎全身性強皮症の臓器障害や予後の予測にはびまん皮膚硬化型,限局皮膚硬化型の病型分類が用いられる.

◎腎クリーゼのリスク因子として罹病期間4年以内の早期びまん皮膚硬化型,抗RNAポリメラーゼⅢ抗体,先行する心疾患やステロイド投与がある.

◎アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の導入により腎クリーゼの短期死亡は減少したが,さらなる予後改善には早期診断,治療介入が不可欠である.

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◎SAPHO症候群は,Synovitis-Acne-Pustulosis-Hyperostosis Osteitisの頭文字をとったさまざまな疾患を含む概念で,皮膚所見に加え,特に前胸部(胸部・鎖骨を中心)に生じる無菌性の硬化性もしくは肥大性骨関節病変を引き起こす.

◎本邦では皮膚症状の80%以上が掌蹠膿疱症であり,その治療薬として生物学的製剤のIL-23阻害薬が2018年SAPHO症候群の亜型である掌蹠膿疱症(PPP)/掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis:PAO)に対して世界で初めて使用可能となった.

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◎膠原病診療の基本は「病態診断→除外診断→臨床診断→治療・フォローアップ」である.

◎臨床経過,検査所見から,腎組織型を予測する.ループス腎炎の組織型に応じて,免疫抑制治療の適応を判断する.

◎活動性のループス腎炎に対するベリムマブの有用性を証明した大規模RCTが2020年に報告された.標準療法への追加が検討される.

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◎ANCA関連血管炎は多発血管炎性肉芽腫症(GPA),顕微鏡的多発血管炎(MPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の3つを含む疾患概念であり,中〜小型の壊死性血管炎である.

◎GPAでは中〜小型の壊死性血管炎に加えて,血管外の壊死性肉芽腫性炎症が特徴的であり,EGPAは中〜小型の壊死性血管炎に加えて,好酸球性の炎症を伴うことが特徴的である.

◎ANCA関連血管炎の診断においては,同様の症状を呈するような感染症の除外が重要となってくる.

◎GPAとMPAは,同様の薬剤を用いて治療をされるのに対して,EGPAはこれら2疾患とは異なる薬剤を用いて治療することもある.

◎GPA/MPAに対してC5a受容体拮抗薬は効果が期待でき,今後ステロイドを用いない治療もできるようになってくる可能性がある.

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◎IgG4関連疾患(IgG4-RD)は,多くの臓器を標的とし,高度な免疫細胞浸潤かつ/もしくは線維化により臓器機能障害をきたす慢性全身性疾患である.

◎IgG4-RDでは,唾液腺,涙腺・眼窩,膵臓,胆道,後腹膜・動脈周囲,肺などに加え,腎臓も主要な罹患臓器であり,IgG4関連腎臓病(IgG4-RKD)と呼ばれる.

◎IgG4-RKDの診断は,臨床像,血清所見,画像所見,病理所見などを総合的に勘案して行う必要があり,わが国のIgG4-RKD診断基準や,ACR/EULAR分類基準を用いる.

◎IgG4-RKDはステロイド治療に良好に反応するが,治療前の腎機能障害の改善は一定程度にとどまり,慢性の機能障害を遺しうる.

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◎病因について,「痛風は高尿酸血症の合併症の一つである」あるいは「痛風は尿酸塩結晶による関節炎を繰り返す疾患である」という考え方では,痛風における尿酸降下療法の意義は理解しにくい.

◎「痛風は関節内に尿酸塩結晶が持続的に沈着する疾患である」という考え方に基づき,痛風の尿酸降下療法を進めるのが適切である.

◎薬物による尿酸降下療法では,適応症例の選択,治療目標値,薬剤の選択,治療開始時期,治療期間を考慮する必要がある.

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◎補体を選択的に阻害する抗補体薬が次々に開発されている.

◎抗補体薬の適応疾患が広がるに伴って,補体関連疾患という疾患概念が確立されつつある.

◎補体は難解であるため多くの臨床医に敬遠されてきたが,今や知っておくべき分野の一つになった.

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◎非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は血小板減少,微小血管症性溶血性貧血,急性腎障害の3徴を満たす急性の疾患である.

◎aHUSは主に補体関連分子の先天的あるいは後天的な異常によって発症する.

◎aHUSの治療は血漿交換または補体阻害薬が第一選択となる.

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Point

◎onconephrologyは,がん患者にみられる腎臓の諸問題,腎臓病患者に発生するがんの諸問題に関する幅広い分野を取り扱う新しい学際的領域である.

◎腎機能障害患者に対して薬剤の効果を最大限に引き出しつつ安全に抗がん薬を投与するために,薬物動態および主要な排泄経路となる腎臓の機能を正確に評価する方法を知り,状況に応じて使い分けることができるとよい.

◎抗がん薬には体格を考慮した投与量が設定されているものと,そうでないものが存在し,それぞれの場合に用いる腎機能評価法が異なることに注意が必要である.

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Point

◎TAFRO症候群,POEMS症候群でリンパ節腫大を認める場合,生検にてCastleman病の病理組織像を呈することがある.

◎本邦におけるCastleman病は多くが特発性多中心性Castleman病(iMCD)であり,中等症以上の症例ではトシリズマブが適応となる.

◎TAFRO症候群は最近本邦から提唱された疾患概念であり,多くの点においてiMCDとは異なる臨床像を呈する.治療としてはステロイドが第一選択である.

◎POEMS症候群では,多発性骨髄腫に準じた治療として,サリドマイドや自家造血幹細胞移植が奏効する.

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Point

◎多発性骨髄腫の診断にはCRAB症状が重要であり,血清遊離軽鎖検査もM蛋白のスクリーニング検査として優れている.

◎腎不全でもほぼすべての骨髄腫の新規薬は使用可能であり,ダラツムマブを併用した治療が期待されている.

◎MGRS(monoclonal gammopathy of renal significance)の診断には腎生検は必須であり,M蛋白を産生している細胞をターゲットにした化学療法が推奨される.

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Point

◎1日のカリウム(K)摂取量と高血圧や心血管イベント発症の間には負の相関関係がある.

◎K摂取低下に伴う血圧の上昇には,遠位尿細管に発現するNa-Cl共輸送体の関与が報告されている.

◎ミネラルコルチコイド受容体(MR)の電解質作用には食塩の再吸収とK排泄があり,両者のバランスは遠位尿細管と集合管の協調的作用により調節されている.

◎MRの負の作用として心血管疾患や慢性腎臓病の進展作用があり,臨床研究からMR拮抗薬の臓器保護作用が明らかにされている.

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Point

◎従来,血液中と組織中のナトリウム濃度は平衡化されると考えられてきた.

◎しかしながら,皮膚などにおいて組織局所にナトリウムの制御機構が存在し,血液中と組織中のナトリウム濃度は平衡化されていないことが証明されている.

◎皮膚局所におけるナトリウムの制御機構は,体液保持,高血圧,感染症などと関連している.

◎骨や骨髄局所におけるナトリウム制御機構は,骨芽細胞や破骨細胞の機能を変化させ,骨量に影響を与えることが報告されている.

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Point

◎血中リン濃度を正常に維持する機構は,腎近位尿細管のリン再吸収機構を中心に機能している.

◎副甲状腺ホルモン(PTH)および線維芽細胞増殖因子23(FGF23)は,腎臓に作用してリン利尿を促進させる.

◎低リン血症(慢性)は,通常,腎臓でのリン再吸収能の低下に起因している.

◎高リン血症(慢性)は,進行した慢性腎臓病や透析患者における心血管障害の重要な危険因子である.

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Question 1

心不全のフロセミド治療中にHCO3が上昇し代償的にPaCO2が上昇してきた場合にはどのような治療を行えばよいでしょうか?

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Point

◎利尿薬の作用機序を理解する.

◎ループ利尿薬をもとに各疾患での利尿薬のPK/PDについて理解する.

◎利尿薬抵抗性への対応理解を深める.

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Point

◎心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は,心房の進展に応じて分泌されるペプチドホルモンで,心臓,腎臓,血管などでさまざまな作用をもたらす.

◎心不全の観点では,ANPはその強力な利尿作用によって心不全治療には大いに寄与するが,予後の改善効果はエビデンスレベルとして高いとは言えない.

◎AKIの観点では,腎代替療法の導入率を改善させる可能性がランダム化比較試験(RCT)により示されている.ただし,サンプルサイズやバイアスリスクなどの点で有効性が確立されていると言えず,さらに大規模でバイアスリスクの低いRCTが望まれる.

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Point

◎SGLT(sodium-glucose co-transporter)は近位尿細管における糖の再吸収に携わるトランスポーターであり,SGLT2阻害薬はこれを抑制することにより血糖降下作用を発揮する薬剤である.

◎SGLT2阻害薬は多彩な研究で心保護および腎保護作用が実証されており,この効果は非糖尿病患者でも認められることから,血糖降下作用とは一部独立した臓器保護効果があることが示唆されている.

◎ミネラルコルチコイド受容体(MR)は慢性的な塩分摂取,肥満,糖尿病などによりリガンド非依存的に活性化し,臓器障害に関わることが示されている.

◎新規に開発されたMR拮抗薬であるエサキセレノンやフィネレノンはステロイド骨格をもたず,MRへの選択性が高いことから,副作用を軽減しつつ臓器保護効果を示すことが期待されている.

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Point

◎腎不全患者の貧血のすべてが腎性貧血ではなく,薬剤性貧血やvolume overloadによる希釈性貧血,さらには骨髄異形成症候群やがんに伴う貧血も多く,HIF-PH(低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素)阻害薬の適応ではないものもある.

◎腎性貧血のうちでも,鉄が囲い込みされるような炎症状態ではエリスロポエチン製剤抵抗性となるが,そのような症例でHIF-PH阻害薬を使うことで,貧血の管理が容易になり輸血が減る.

◎HIF-PH阻害薬はヘプシジンを下げるので,鉄の腸管からの吸収は改善し鉄の投与は静注にこだわる必要はなくなるが,その副作用抑制の観点からも鉄欠乏に対して適宜鉄を補充することが肝要である.

◎透析患者の治験の結果では,ロキサデュスタット群ではダルベポエチン群よりも血栓塞栓症の発生が多かった.バダデュスタットの保存期のランダム化比較試験では,バダデュスタット群ではダルベポエチン群よりも主要な心血管イベント(MACE)が有意に多かった.

◎HIF-PH阻害薬の腎機能保護効果に期待がかかるが,一方で長期投与による眼に対する影響や肺高血圧や血管石灰化に対する危惧もある.また悪性腫瘍に対する影響など不明な点が多く,今後の研究が待たれる.

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Point

◎遺伝性腎疾患は多岐にわたるが,臨床診断が困難な場合,臨床情報と遺伝学的検査を併せて検討することで正確な診断につながることがある.

◎特に,疾患特異的な治療が存在する常染色体優性多発性囊胞腎(ADPKD)やFabry病およびレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬が有効であるAlport症候群などではできるだけ早期の正確な診断が重要である.

◎近年,次世代シークエンサーの進歩により,網羅的にさまざまな遺伝学的検査を行うことが可能となっている.

◎遺伝学的検査に際しては,各種ガイドラインや指針の趣旨をよく理解しておく必要がある.

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Point

◎ミトコンドリア腎症は,核DNAもしくはミトコンドリアDNA変異による遺伝性疾患である.

◎腎病理でのミトコンドリアの質的・数的異常が診断のきっかけとなる.

◎診断のための補助的方法はあるものの,最終診断には遺伝学的検査を行うことが望まれる.

◎遺伝子診断に基づいた効果的治療が可能となりつつある.

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・6

皮膚・皮下病変のPOCUS 太田 智行
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 日当直などでも,皮膚や皮下病変に対する診療機会は少なくありません.皮膚・皮下病変は視診だけで判断できることもありますが,POCUSを実践することで精査が可能になります.患者説明や治療の方針を決める際に役立つことも多いので,積極的に利用してください.

【症例】41歳男性.顎の下の腫瘤には以前から気づいていた.先週から少し大きくなってきたので(図1),気になって週末の救急外来を受診した.

連載 主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・1【新連載】

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 高齢化が進み,内科治療で何とか内臓機能を維持できても,足腰が弱って生活範囲が狭くなってくる患者.体力がどんどん低下する患者.家族の介護負担が増え,施設転院を余儀なくされる患者.このような患者が多くみられる時代になってきた.

 リハビリテーション(以下,リハビリ)は,もはやリハビリ科医やリハビリ関連職種のみのものではない.内科医の日常診療にも最新のリハビリを取り込んでいく時代になった.本連載の内容を実践すれば,担当した患者の生活機能や運動機能を改善し,生命予後を延長することも可能になり,さらなる“名医”としての成功が約束されるだろう.ぜひ,最後までお付き合いいただきたい.

連載 ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・6

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 前回まで,脳出血には好発部位があること,運動障害や感覚障害をきたす脳出血について勉強してきましたが,意識レベルが悪くなる,注意力が散漫になる場合はどうでしょうか?

 今回は,意識障害と高次脳機能障害の原因となる大脳皮質領域の障害について,一緒に勉強していきましょう!

連載 目でみるトレーニング

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 医薬品情報業務(DI業務)は,薬物療法の最適化に必要な情報を扱う.一見,質疑への対応に目を奪われがちだが,薬剤師業務の変遷に伴ってDI業務も「評価」「整理」「周知」「適正使用の推進」など,大きく変化してきた.以前,評者は「DI業務は薬剤師の病棟業務や各専門領域業務の『監督』であり,病棟業務は与えられた情報に基づいて具体的に戦略を実行する“player”」という図式を勝手に描いていた.しかし,近年の対人業務へのシフトに伴って,DI業務も情報を評価,取捨選択し具体的な処方設計に携わる“player”の1人として活躍が期待されている.

 本書には76の事例が章に相当する8つのひきだし(1.薬学的な思考,2.換算,3.服薬タイミング,4.小児,5.腎機能,6.在宅医療,7.粉砕・一包化・簡易懸濁法,8.安定性・製剤特性)に収載されている.まさに現場目線の痒いところに手が届く内容である.臨床でよく遭遇する「問い」を発端にして,情報を提供するに至るまでのアプローチを視覚的に記載しているため,非常に理解しやすい.アプローチの内容は主に,①情報根拠(添付文書,論文),②根拠(現象)に付随する知識,③同効薬との比較,④関連性が高い予備的なクリニカルクエスチョン(現象に関連するもの,薬剤に関連するもの)で構成されており,これまでのやり方で得た情報にさらに厚みをもたせることができる.

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 ついに『総合内科マニュアル(亀マニュ)』が改訂された.実は,私は亀マニュのファンだ.医師3年目のときに総合診療の後期研修を始めたが,本当に右も左もわからなかった.多少は内科の知識をもっている自信があったが,それは粉々に打ち砕かれた.かといって,同期や先輩のようにUpToDate®を紐解き知識を増やすような甲斐性もなく,仕事にひたすら追われていた.

 当時,私は常に2つのマニュアルをポケットに入れていた.1つは『診察エッセンシャルズ』という診断学に特化したマニュアルであった.しかし,内科マネジメントについても同様にマニュアルが必要であった.結果的に,私が選んだ相棒は亀マニュだった.ベットサイドで診療し,亀マニュを見るという日々をひたすら繰り返した.いつしか,亀マニュは自分の血肉となり携帯はしなくなった.ただ,その後の自分の内科マネジメントの原則や原理は亀マニュが基本となっていることに変わりはない.そして,今回の改訂である.

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medicina
58巻10号 (2021年9月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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