特集 腎疾患—エキスパートへの質問で学ぶ診療のキホンと最新情報
利尿薬やその他の新薬の有効性と注意すべき副作用
「HIF-PH阻害薬の光と影」の本当のところを教えてください
濱野 高行
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科腎臓内科学分野
キーワード:
HIF-PH阻害薬
,
ヘプシジン
,
ESA抵抗性
,
鉄の囲い込み
,
悪性腫瘍
,
Iron First
Keyword:
HIF-PH阻害薬
,
ヘプシジン
,
ESA抵抗性
,
鉄の囲い込み
,
悪性腫瘍
,
Iron First
pp.1647-1650
発行日 2021年9月10日
Published Date 2021/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402227823
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Point
◎腎不全患者の貧血のすべてが腎性貧血ではなく,薬剤性貧血やvolume overloadによる希釈性貧血,さらには骨髄異形成症候群やがんに伴う貧血も多く,HIF-PH(低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素)阻害薬の適応ではないものもある.
◎腎性貧血のうちでも,鉄が囲い込みされるような炎症状態ではエリスロポエチン製剤抵抗性となるが,そのような症例でHIF-PH阻害薬を使うことで,貧血の管理が容易になり輸血が減る.
◎HIF-PH阻害薬はヘプシジンを下げるので,鉄の腸管からの吸収は改善し鉄の投与は静注にこだわる必要はなくなるが,その副作用抑制の観点からも鉄欠乏に対して適宜鉄を補充することが肝要である.
◎透析患者の治験の結果では,ロキサデュスタット群ではダルベポエチン群よりも血栓塞栓症の発生が多かった.バダデュスタットの保存期のランダム化比較試験では,バダデュスタット群ではダルベポエチン群よりも主要な心血管イベント(MACE)が有意に多かった.
◎HIF-PH阻害薬の腎機能保護効果に期待がかかるが,一方で長期投与による眼に対する影響や肺高血圧や血管石灰化に対する危惧もある.また悪性腫瘍に対する影響など不明な点が多く,今後の研究が待たれる.
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