medicina 57巻10号 (2020年9月)

特集 循環器診療2020—どこまで攻めて,どこから引くか?

香坂 俊
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 循環器領域ほどカラフルな選択肢を提示する領域は珍しいのではないか.ただ,選択肢が多彩であるからといってそれらすべてを選ばなくてはならないということではない.たとえば冠動脈に対するカテーテルインターベンション(PCI)は素晴らしい技術であるが,ここ10年来エビデンスの集積によって,冠動脈に狭窄があったとしても症状が安定していれば安定狭心症に対する適応はかなり「限定的」であることがわかってきた.また投薬に関しても,ランダム化研究(RCT)の結果をそのまま鵜呑みにして,いくつもの薬剤を加算的に使用していくやり方から,近年は状況によっては薬剤を「絞る」という方向に舵が切られつつある.

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本号では「2020年の循環器診療」という特集を組ませていただき,延べ26名以上の先生方に,虚血性心疾患・不整脈・心不全・弁膜症などの各領域の最近の進展に関して執筆をお願いしています.さらに各稿では,その進捗に関するエビデンスの提示と,そのエビデンスがどのように現場に取り入れられていくのかということを中心に構成させていただいております.本日は,循環器領域のエビデンスの提示や創出ということに造詣の深いお2人の先生方にお話を伺えればと思います.(香坂)

*新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,本座談会はwebでの収録を行った(2020年5月22日収録).

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Point

◎動脈硬化性疾患の二次予防においては積極的なLDLコレステロールの低下が推奨されており,スタチンの効果が不十分な場合,エゼチミブさらにPCSK9阻害薬の追加も考慮される.

◎米国における一次予防ではスタチンの使用が推奨されている.

◎スタチンは有用な薬剤だがスタチン不耐の問題は常に念頭に置くべきである.

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Point

◎集団平均値で得られた血圧管理目標値は,患者個人の血圧管理にとってあくまで参考値である.

◎白衣高血圧や血圧変動の大きな個人には,ガイドラインの血圧管理目標値をそのまま適用することは危険である.

◎75歳未満かつ高血圧症以外の危険因子をもたない個人では,厳格な降圧治療を慎重に行う価値がある.

◎糖尿病患者,および75歳以上の高齢者では血圧値120〜139/80〜89mmHgを管理目標値とすべきである.

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Point

◎スタチン投与中の冠動脈疾患の残余リスクとして,高中性脂肪血症にも注目する必要がある.

◎エイコサペンタエン酸(EPA)には中性脂肪(TG)低減効果,心血管イベント抑制効果が報告されている.

◎REDUCE-IT試験を踏まえてEPAと今後のTG治療について言及する.

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Point

◎運動は軽度・短時間であっても体に良い.無理なく継続できる運動から勧める.

◎喫煙は体に悪い.1本/日でもダメ.禁煙するなら早いに越したことはない.

◎禁煙治療ではニコチン依存症治療用アプリという新しい治療法が注目されている.

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Point

◎現在の循環器疾患予防では,吹田スコアによる絶対リスク評価をベースに主要な危険因子(高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙など)を包括的に管理することが推奨されている.

◎デジタル医療の進化やワクチンの開発などにより,未来の循環器疾患予防の戦略は劇的に変わる可能性がある.

◎総務省や厚生労働省を中心にデジタル医療の充実が検討されており,将来的には,主要な危険因子だけでなく各個人の背景要因も含め,EHR(electronic health record)・PHR(personal health record)に蓄積されているデータが人工知能により自動的に解析され,各個人に最適な治療や健康・介護サービスなどが提示されるようなシステムの構築が期待される.

◎近年,循環器疾患分野でも新規のワクチン開発が進められており,また,既存の感染症分野のワクチンの循環器疾患予防への有効性についても検討されている.臨床試験の段階に入っているものもあり,実用化が望まれる.

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Point

◎心不全は各種の心疾患の終末像として発症する病態であり,疾患ごとの管理が必要である.

◎心不全診療ガイドラインでは,BNPやNT-proBNPなど血中のバイオマーカー測定が高い推奨クラスを得ている.

◎BNPやNT-proBNPはその特性が異なるため,それぞれの性質を理解したうえで活用する必要がある.

◎BNP測定においては,心外因子がBNP分泌を修飾して予想外の数値変動が起きることがある.

利尿薬でどこまで踏み込むか 武井 眞
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Point

◎心不全急性期には早期に十分量のループ利尿薬を持続静注もしくは6〜12時間ごとのボーラスで投与し,速やかなうっ血の解除を目指す.

◎心不全急性期に血清クレアチニンの上昇を認めた場合,利尿薬の減量を安易に判断せず,うっ血の改善具合,臨床経過を併せて検討する.

◎退院時の利尿薬量については確実なうっ血解除がなされる最低限度の量を見極める.

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Point

◎左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者では,ACE阻害薬(またはARB)とβ遮断薬を導入する.

◎ACE阻害薬とβ遮断薬導入後で,症候性かつ左室駆出率が35%未満の場合は,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を追加する.

◎ランダム化比較試験に反映されにくい集団(高齢者など)における真の至適薬物治療の検証が待たれる.

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Point

◎アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)/SGLT2阻害薬いずれも収縮能が低下した心不全(HFrEF)への大規模臨床試験で予後改善効果が示されており,積極的な使用が望まれる.

◎ARNIの有用性はリアルワールドデータでも示されているが,非糖尿病心不全でのSGLT2阻害薬の有効性はリアルワールドデータではまだ検証されていない.

◎両薬剤ともに収縮能が保たれた心不全(HFpEF)への効果は現状証明されていない.

心不全診療の未来 小保方 優
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Point

◎HFpEF患者にはHFrEFに効果的な画一的な治療(“one-size-fits-all”アプローチ)は効果が乏しい.

◎この一番の理由はHFpEFが心臓・心臓外のさまざまな異常が混ざり合ったheterogenousな症候群であることだと考えられている.

◎このheterogenousなHFpEFを比較的均一なサブグループに分類し,個別治療をするフェノタイピングが今後のHFpEF治療の鍵である.

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Point

◎2018年に改訂された心筋梗塞の定義では心筋障害と心筋梗塞を明確に差別化した.心筋障害はトロポニン値の異常値を示すものとし,急性心筋梗塞は心筋障害に虚血症状,もしくは画像診断で心筋虚血を示す根拠を伴うものとした.

◎0-hour/1-hourアルゴリズムは効率的な急性冠症候群を疑う患者の層別化を可能とした.

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Point

◎ISCHEMIA試験は,中等度以上の虚血所見を有する安定狭心症に対する冠血行再建の有効性を検討した大規模無作為化試験であるが,冠血行再建の予後改善効果は示されなかった.

◎安定狭心症に対する冠血行再建の適応適切性基準が提唱されているが,ISCHEMIA試験の結果を受け,今後は血行再建の適切性をより限定する方向に改定されるものと予想される.

◎ISCHEMIA試験以降,本邦においても“盲目的”な冠動脈造影・血行再建術は生命予後や医療費の観点からも,控える方向に舵を切らざるを得ない段階に来ていると考えられる.

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Point

◎冠動脈インターベンション(PCI)後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)継続期間は,出血のリスクを鑑みて,“short DAPT”と呼ばれるより短い継続期間となりつつある.

◎心房細動合併PCI患者に対するDAPT+抗凝固療法による3剤抗血栓療法は出血リスクが高い.

◎心房細動合併PCI患者に対する抗血栓療法は,P2Y12阻害薬と抗凝固療法を用いた2剤投与が推奨されつつある.

◎心房細動合併PCI患者におけるステント留置1年以降の抗血栓療法は,抗凝固療法のみを行うOAC aloneを支持するエビデンスが国内から報告されている.

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Point

◎虚血性心疾患の2次予防においては,高用量ストロングスタチンを処方する.

◎高齢者における一次予防については,現在までに十分なエビデンスはなく,個別に考慮する.

◎エンドオブライフの患者に対しては,スタチン中止も選択肢に入れる.

◎スタチン不耐は投与開始後遠隔期にも起こりうるので留意する.

虚血性心疾患診療の未来 小船井 光太郎
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Point

◎慢性冠症候群の診療では,適切な薬物療法がまず行われるべきである.

◎COURAGE試験やISCHEMIA試験により,血行再建の効果は従来考えられていたよりも限定的であることが示された.

◎慢性冠症候群の診療では,カテーテル検査や血行再建を行わずに外来診療で薬物療法を行うことが標準治療となる可能性がある.

◎ハイリスク症例に対するCHIP PCIは,増え続ける心不全患者への治療の一つとして確立される可能性がある.

◎ハイリスクCHIP患者に対しては,各専門領域で構成されたmultidisciplinary teamアプローチが重要である.

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Point

◎各種ウェアラブルデバイスや植込み型心電計による心房細動の検出率は良好である.

◎心房細動の早期発見が予後や脳梗塞発症率などの改善に寄与するかどうかは明らかではない.

◎65歳以上の一般住民に対する機会あるごとの脈拍測定あるいは心電図は強く勧められる.

◎脳梗塞既往例に対する72時間以上の長時間心電計装着も強く勧められる.

◎植込み型心電計は,問診や各種画像診断で検査前確率を高めたうえでも診断のつかない潜因性脳梗塞に施行すべきである.

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Point

◎非弁膜症性心房細動では血栓塞栓症と出血リスクを評価し,抗凝固療法のリスクとベネフィットを考慮したうえで治療法を決定する.

◎血栓塞栓症高リスク患者は出血高リスク患者でもあり,出血リスクが高いことを理由に抗凝固療法を行わないのは慎むべきと考えられる.

◎血栓塞栓症と出血リスクがきわめて高い場合,左心耳閉鎖が良い選択肢となり得る.

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Point

◎薬物治療抵抗性および有症候であることが依然として治療選択の重要なキーワードである.

◎第一選択としてのアブレーション治療は過剰介入である可能性がある.

◎生命予後改善効果については今後も議論が必要である.

不整脈デバイス治療の明暗 谷本 耕司郎
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Point

◎洞不全症候群では心房ペーシングが重要であり,心室ペーシングを最小限とするペースメーカ植込み・モード設定を選択する.

◎低心機能心不全患者における植込み型除細動器(ICD)の突然死予防効果は虚血・非虚血を問わず確立している.

◎ICDのショック作動は患者のQOLのみならず,生命予後も悪化させるため,ショック作動を低減する設定が重要である.

◎欧米に比較し,日本では虚血性心筋症の予後が良いため,一次予防目的のICD植込み適応にはリスクを層別化し,判断する必要がある.

不整脈診療の未来 相澤 義泰
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Point

◎虚血性心疾患に伴う致死性不整脈に対しては,植込み型除細動器(ICD)が最も有効かつ確実な治療である.

◎除細動機能を有するデバイスはICDのほかに完全皮下植込み型除細動器(S-ICD),着用型自動除細動器(WCD)がある.

◎ICD植込み後の不整脈再発により頻回のICD作動がしばしば問題となる.

◎カテーテルアブレーションは不整脈再発によるICD作動を抑制するのに有効である.

◎マッピング技術の進歩により,カテーテルアブレーションの治療成績は向上している.

弁膜症など構造的心疾患(SHD)

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Point

◎弁膜症患者の自覚症状には『攻める』問診が有効である.

◎弁膜症は高齢者では稀な疾患でなく,聴診は必須である.

◎心エコー図検査は弁膜症の診断や重症度評価に不可欠である.

◎心エコーの結果と身体所見の答え合わせが聴診スキルの精度向上に役立つ.

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Point

◎現在,日本では外科中等度リスクまでが経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の適応であるが,今後は欧米と同様に手術低リスク患者にも適応が拡大することが予想される.

◎標準的薬物治療後も心不全症状が残存する機能性僧帽弁逆流症患者に対するMitraClip®治療は患者の予後を改善する報告があり,治療の選択肢として考慮される.

◎TAVIとMitraClip®の適切な適応は拡大傾向にあるが,未解決な問題は多い.今後の多施設共同研究などの結果,長期成績も考慮し,時代背景に応じた適応判断が重要である.

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Point

◎本邦における成人先天性心疾患(ACHD)患者数は約50万人であり,今後も年々増加する.

◎適切な心内修復術が施行されたACHD患者であっても,遺残症・続発症・後期合併症などに留意する.

◎中等度以上の複雑なACHD患者は専門施設での定期的な診療を要する.

◎本邦では心房中隔欠損症,動脈管開存症,卵円孔開存症に対するインターベンション治療が可能である.

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Point

◎冠動脈CT検査(CTA)は陰性的中率が高く,除外診断能に優れており,検査前確率が低い症例や慢性冠動脈疾患(CAD)診断がされていない症例に行うことが推奨される.

◎負荷心筋シンチグラフィ(MPI)は検査前確率が高く,高齢で冠動脈石灰化が高度であることが予想される症例や冠血行再建術が必要な症例,CTAに適さない腎機能障害,不整脈症例に行うことは適している.

MRIを用いた心筋症の鑑別 加藤 真吾
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Point

◎遅延造影MRIは,虚血性心筋症と非虚血性心筋症の鑑別に役立つ.

◎拡張型心筋症においてβ遮断薬などの薬物治療の効果予測ができる.

◎薬物負荷心筋血流MRIは虚血を正確に評価できる.

◎MRIは肥大型心筋症や心サルコイドーシスの診断やリスク評価に役立つ.

◎T1マッピングは,心アミロイドーシスや心Fabry病の鑑別に有用である.

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Point

◎心不全在宅診療では,入院中の治療をシームレスに外来で継続することが重要である.

◎包括的疾病管理プログラムと退院後の看護師による訪問診療により心不全再入院率が減少する.

◎高齢者や多疾病合併心不全患者,HFpEF(左室駆出率の保たれた心不全)症例では包括的疾病管理の効果は限定的なため,症例の特性に合った介入が必要である.

◎退院早期の心不全増悪によるうっ血には,外来でループ利尿薬を静脈内・皮下投与する.

◎高齢心不全患者の在宅診療では,かかりつけ医はACP(アドバンス・ケア・プランニング)を導入する努力が求められる.

特集の理解を深めるための25題

問題/解答

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・29

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 前回は日常診療で頻度の高い本態性振戦について勉強しました.動作時振戦である本態性振戦のなかには,Parkinson病による安静時振戦が紛れています.圧倒的に本態性振戦に遭遇する頻度が高いのですが,どのように区別していけばよいのでしょうか? それでは安静時振戦の特徴について勉強していきましょう!

 

*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月31日まで公開)。

連載 ケースレポートを書こう! acceptされるために必要なこと・6

英文校正 見坂 恒明
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 ケースレポートを英語で書いた場合,その英文が正しいかどうかを,まずは指導医や共著者に確認してもらう.そして次の段階として,英文校正を依頼する.帰国子女や留学で英語が堪能な医師であっても,英語が母国語でない限り,書いた論文を英文校正に出していることが多い.まして,英語が得意でなければ,投稿前に英文校正を受けることは必須である.今回は,意外に語られることが少ないものの,実はとても重要な英文校正について解説したい.

連載 フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・9

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総論

 皮疹は鑑別が難しい症状の1つですが,手掌・足底に認めるということは鑑別を絞る大きな手がかりです.「手掌,足底の皮疹」の鑑別は表1に示す通りです.なお,表1には全身の皮疹の一部として手掌,足底に認めるものを含みます.

 この中でも,髄膜炎菌,リケッチア,トキシックショック症候群,感染性心内膜炎などは見逃すと致死性になりうるので注意しましょう.本章ではこの中でも注意したいものについて述べます.

連載 本気で書く! 入院時サマリー! 患者情報,丸見え化プロジェクト・4

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 「肺炎は治ったから退院させたいのに,なぜか退院させられない……」.皆さんも一度や二度ならず,経験したことがあるのではないだろうか? 退院時,思いもよらない問題に直面して退院が長引いていく,ということはしばしば起こりうることである.

 特に高齢者では,複雑な健康問題や社会問題をいくつも併せもっていることが多い.このような高齢者はその機能を障害する要因を「医学面」「心理・社会面」「機能面」「環境面」の観点から包括的に評価・管理を行うことで予後が改善すると報告されており1),入院時から退院を見据えたマネジメントができるよう,医学的情報以外の情報も迅速に収集しておく必要がある.

連載 目でみるトレーニング

連載 物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・28

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ポイント

認知症では生活状況に合わせた支援が必要です

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はじめに

 年齢からくる役回りとして書評の依頼を受けることが多い.「書評は読んでから書く」というあたりまえの原則を維持するために前書きから後書きまで通読することになるが,自分の専門領域外の本となると興味はあっても,知らないこと,理解できていなかったことを消化しながらの作業となり結構つらい.が,今回は,その点,楽であった.本書は感染症専門医達による症例検討である.これは筆者が生活のため毎日行っていることである.(レベルは筆者のそれよりも遙かに高いけれど)さっそくプロ達のPearlを紹介すると…

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 万人が願う医療の進歩には,新たな治療法の開発だけでなく,今ある治療法の最適化が必要なことは言うまでもない.両者を推進する手段が臨床試験であり,その成果は直接医療に還元されるため,目の前の患者に不利益がなければよいものではなく,未来の多くの患者にも不利益があってはならない.しかしながら,臨床試験の発展の歴史は人体実験や研究不正との闘いの歴史であったと言ってよい.とりわけ,医が仁術から科学となり,特に19世紀後半に観察医学から実験医学へのパラダイムシフトがあって以降,世界では科学の名の下に度重なる人体実験が行われてきた.そうした,暗い歴史を経て完成したのが研究倫理であり,ルールとして明文化されたものが臨床研究規制である.とりわけ,わが国にあっては,2013年に発覚したディオバン臨床試験にかかる不正をきっかけに,研究の信頼性に関する議論が高まり,2018年の臨床研究法の施行に至った.実際,臨床試験は被験者の献身の上に成り立つ人類の事業であり,信頼できる研究成果であってこそ,疾病の診断・治療・予防に正しく還元されるのである.しかしながら,こうした考え方や研究の実践に必要な知識が研究者に浸透しているとは言い難い.

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medicina
57巻10号 (2020年9月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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