書評
—菅原岳史 著—絶対失敗しない! 臨床研究実践ナビ—臨床研究法時代のトラブル防止法を教えます
永井 洋士
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1神戸大学医学部附属病院臨床研究推進センター
pp.1701
発行日 2020年9月10日
Published Date 2020/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402227177
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万人が願う医療の進歩には,新たな治療法の開発だけでなく,今ある治療法の最適化が必要なことは言うまでもない.両者を推進する手段が臨床試験であり,その成果は直接医療に還元されるため,目の前の患者に不利益がなければよいものではなく,未来の多くの患者にも不利益があってはならない.しかしながら,臨床試験の発展の歴史は人体実験や研究不正との闘いの歴史であったと言ってよい.とりわけ,医が仁術から科学となり,特に19世紀後半に観察医学から実験医学へのパラダイムシフトがあって以降,世界では科学の名の下に度重なる人体実験が行われてきた.そうした,暗い歴史を経て完成したのが研究倫理であり,ルールとして明文化されたものが臨床研究規制である.とりわけ,わが国にあっては,2013年に発覚したディオバン臨床試験にかかる不正をきっかけに,研究の信頼性に関する議論が高まり,2018年の臨床研究法の施行に至った.実際,臨床試験は被験者の献身の上に成り立つ人類の事業であり,信頼できる研究成果であってこそ,疾病の診断・治療・予防に正しく還元されるのである.しかしながら,こうした考え方や研究の実践に必要な知識が研究者に浸透しているとは言い難い.
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