medicina 55巻9号 (2018年8月)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

徳田 安春
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 人工知能(artificial intelligence:AI)は医師の仕事をどこまで奪うのか.医療界のシンギュラリティがもう現実となってきているなかで,21世紀における医師の役割が問われている.deep learningで鍛えられたAIアプリは画像と病理の診断で医師を超えた.AI搭載の手術ロボットは腸管吻合術において外科医よりきれいに縫い上げている.「医師の役割は,患者の話を聞いて診療情報をAIにインプットし,出てきた結果を患者に説明することになるだろう」と予言する急進派IT研究者もいる.はたして,未来の病院の外来部門では,AI搭載ロボットの前に患者が並ぶことになるのか.

 私は,AI搭載ロボットにとって最も困難なスキルはフィジカルである,と思う.糖尿病網膜症の眼底スクリーニングなどの単純なスキルはAIでも代替可能である一方で,無数のパターンをとりうる個々の病歴に合わせて診察所見や手技を的確に取捨選択するフィジカル・アートは,AIには不可能に近い.フィジカル・アートは豊富な経験に基づく暗黙知であり,アルゴリズムとの親和性は低い.つまり,これからの内科医にとって最重要の課題は,フィジカル・アートを向上させることなのだ.

特集の理解を深めるための27題

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フィジカルはダイナミックな動きを取り扱う点で,力学に近いと思います.なかでも,絶対的な古典力学ではなく相対的な現代力学に近いと考えます.完成度の高いフィジカルを行う医師は,相対性理論での動く物体(生体)に対する観察者の立場をとり,診療での経験的技術と暗黙知によって,個々の患者での微妙な病態を捉えています.感度・特異度,尤度比などの単純な疫学手法が通用しない世界であり,不屈の鍛錬から相対的アートを生み出しているのです.そこで今回の座談会では,内科の各分野で突出したフィジカル診断のアートを身に付けた,“仙人”とも呼ぶべき先生方をお招きして,不屈の鍛錬と力学作品についてお聞きしました.(徳田)

循環器系の症候

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Point

不整脈患者に対するフィジカルでは,視診・触診・聴診(五感診療)を用いて,以下の4項目について知識と技術を身につけよう.

◎脈拍の触診のみでわかる種類の不整脈

◎脈拍の触診と心音の聴診を併用してわかる不整脈

◎心音を聴診してわかる不整脈

◎脈拍の触診と頸静脈の視診を併用してわかる不整脈

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Point

◎まずは「きほんの“き”」として,左心不全診断基準(Framinghamうっ血性心不全診断基準)に記載されている身体所見をしっかり取れるようになろう.

◎特にⅢ音はなんとしても取りたい所見.心尖部で聴診器ベル型にして「待ち」に行こう.

◎「右心不全」がメインな病態の身体所見は難しいが興味深い.特に「傍胸骨拍動」に注目する.

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Point

◎収縮期そのものを理解する.

◎critical diseaseとして大動脈弁狭窄症(AS)を念頭に置く.

◎収縮期雑音は聴取する領域が命!

拡張期の雑音が聴こえるとき 安 隆則
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Point

◎拡張期雑音はすべて異常である.

◎時相により拡張早期雑音(大動脈弁閉鎖不全症,肺動脈弁閉鎖不全症),拡張中期雑音(僧帽弁狭窄症,三尖弁狭窄症,重症大動脈弁閉鎖不全症,重症三尖弁閉鎖不全症),前収縮期雑音(僧帽弁狭窄症,三尖弁狭窄症)の3タイプに分類される.

◎重症や急性の大動脈弁閉鎖不全症では,拡張期雑音が小さく,短かく,低い音色になる.

感染性心内膜炎を疑うとき 志水 太郎
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Point

◎感染性心内膜炎(IE)の合併症は「塞栓による多臓器への遠隔ダメージ」「心臓の破壊」の2つである.

◎IEは「時間的・空間的多発」である.

◎IE診療はフィジカルの最高の訓練である.

◎IEのヒントは末梢に宿る.

ショックを疑うとき 平島 修
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Point

◎4つの因子,4つの分類,4つのフィジカルで勝負!

◎ショック患者は「早い,安い,うまい」フィジカルで!

◎「国歌斉唱サイン」で静脈圧を見破る!

呼吸器系の症候

喫煙者とその肺病変を見抜く 山城 信
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Point

◎診察が始まる瞬間から患者をよく観察し,喫煙のサインを見逃さない.

◎喫煙者は顔,口腔,胸頸部,爪に所見が出やすい.

◎禁煙のメリットと「あなたに禁煙してほしい」という想いを伝え,患者の行動変容を促そう.

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Point

◎肺炎の身体診察では,詳細な問診を踏まえて全身に目を配ることが重要である.

◎胸部聴診では吸気から呼気までしっかりと聴いて,左右差も意識する.

◎聴診で吸気のどの時期に副雑音のアクセントがあるかを区別して鑑別を進めていくと,診断に大きく近づく.

消化器系の症候

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Point

◎急性腹症の重症度は「ショック>敗血症>汎発性腹膜炎」の順.

◎腹部所見もさることながら,ショックと敗血症の身体所見を拾い上げることが大事.

◎腸管虚血では腹部に有意所見は出現しない.心疾患と透析がキーワード.

虫垂炎診断のknack & pitfalls 檜山 和寛
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Point

◎虫垂炎は全年齢で発生する.鑑別として特に若年女性,中年以降の「危ない右下腹部痛」に注意.

◎主訴の疼痛部位と診察上の圧痛の最強点が異なることがある.問診・身体診察の双方を必ず行うべし.

◎穿孔性虫垂炎を我慢強く耐えた患者では,いったん腹痛が改善し,鈍痛が続くことがある.見過ごすと医学的・社会的トラブルになることがしばしば.

◎圧痛が「それなりに」あれば精査すべき.圧痛が乏しく,随伴症状があれば虫垂炎の可能性は低く,精査の必要性も低い.ただし,フォローの一言を添えることが大切.

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Point

◎黄疸の多くはビリルビン値が2.5〜3mg/dLを超えると認識できることが多く,暗い場所や白熱灯下での見落としに注意する.

◎腹水の有無の評価として,移動性濁音や波動の身体所見を覚える.

◎肝硬変を示唆する有用な身体所見として,クモ状血管腫,手掌紅斑,女性化乳房,腹部静脈怒張などがある.

◎羽ばたき振戦は,固定的な姿勢を保持できないために生じる唐突な不随意運動であり,肝疾患以外でも見られる.

◎肝臓の打診と触診の一般的な方法は覚えたほうがよいが,身体所見から肝臓のサイズを正確に予見することは難しい.

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Point

◎潰瘍性大腸炎では,病変部位に関連する機能障害として夜間排便などがあり,日内変動も意識した問診を行う.

◎Crohn病の症状は多様であるが,低栄養を伴う慢性の全身疾患であるという認識をもって診療にあたることが必要である.

◎炎症性腸疾患では多くの症例で腸管外合併症を認めるため,腹部症状だけでなく,その他の症状にも注意が必要である.

内分泌代謝系の症候

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Point

◎糖尿病患者では膠原組織の変性により合併症を生じるため,全身の身体診察が重要である.

◎皮膚は傷がつきやすく感染しやすい.重症化するため予防と早期介入が重要である.

◎関節合併症はこわばりや疼痛をきたすため,膠原病や整形外科疾患との鑑別が重要である.

◎神経症状は典型的には手袋靴下型の分布をとる.糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)ではアセトンの増加による特徴的なフルーツ臭を呈する.

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Point

◎Basedow病はMerseburgの3徴(甲状腺腫大,眼球突出,頻脈)があれば想起されやすいが,これらが揃わない症例も多い.

◎患者は易疲労感,体重減少などの非特異的な全身症状で受診することもある.特に高齢者では交感神経症状が目立たないことも多い.

◎心不全症状や神経・精神症状を伴う甲状腺クリーゼは内科的緊急疾患であり,注意を要する.

◎発熱と咽頭痛(頸部痛)を主訴に来院した際は,亜急性甲状腺炎も鑑別に挙げる.

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Point

◎甲状腺機能低下症の症状は多岐にわたるため,系統的な診察が必要である.

◎甲状腺機能低下症に特徴的な音声・話し方や徐脈,アキレス腱反射の遅延といった所見は診断的価値が高い.

◎「3つの低下」を伴う意識障害患者を診た時には,粘液水腫性昏睡を疑おう.

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Point

◎副腎機能低下は単一の症状・所見に収まらない.

◎色素沈着,salt cravingは原発性副腎不全の4割にしかみられない.

◎胃腸炎,認知症状,抑うつ状態をみたら副腎機能低下を疑え.

◎社会生活,職歴,仕事の変化に副腎機能低下が隠れている.

財布生検の実際 片岡 仁美
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Point

◎財布生検とは,財布などの所持品から得た情報を診察に有効活用することである.

◎財布に入っていることの多い免許証の写真から,経時的な顔貌の変化を把握することが診断に有用となることがある.

◎所持品や免許証の写真など,患者から得られるあらゆる情報を活用することが重要である.

テタニーの診かた 稲福 徹也
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Point

◎テタニーとは,手足がしびれて筋肉が固まる(硬直)症状である.

◎原因は,低カルシウム血症,低マグネシウム血症,アルカローシスである.

◎テタニーを確認する身体所見としては,Trousseau徴候が感度・特異度ともに高い.

◎緊急性が高い鑑別診断として破傷風が挙げられる.

◎偽性副甲状腺機能低下症では特徴的な外見を呈することがある.

皮膚・粘膜の症候

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Point

◎いかなる臨床場面でも,「全身状態の観察→バイタルサインの確認→『手』からの診察」という一般的診察の順序を遵守する.

◎「緊急性」「伝播性」,そして予後に及ぼす「重大性」の軸を意識する.

◎臨床像としての「ゲシュタルト」を捉え,診断の鍵となる所見(key facts)を探しにいく.

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Point

◎紅斑をソフトに触診し,浮腫性(水)か浸潤性(細胞成分)かを鑑別する.さらに,表皮病変の有無も確認する.

◎皮疹が慢性化した場合,特に環状紅斑では白癬菌を考慮して皮膚科にコンサルトする.

◎薬疹を疑う場合はすべての薬剤の投与歴を確認し,粘膜疹や高熱などの随伴症状があるときは皮膚科にコンサルトして入院加療する.

◎生検を考慮する場合は写真を撮っておき,皮膚科にコンサルトする.浸潤細胞の種類と局在,および血管炎の有無が診断につながる.

紫斑の診かた 塚本 亮介 , 岩田 充永
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Point

◎紫斑は真皮や皮下組織への赤血球の漏出であり,紅斑とは異なり圧迫しても消褪しない.

◎触知可能な紫斑は血管炎や感染症の可能性が高く,鑑別に有用である.

◎電撃性紫斑病は感染により播種性血管内凝固症候群(DIC)や多臓器不全をきたし,予後不良である.

貧血を疑うとき 野溝 崇史 , 和足 孝之
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Point

◎貧血の有無の判断にはconjunctival rim pallorとbulbar conjunctival blood columnを評価するのが有用である.

◎鉄欠乏性貧血では青色強膜に注目する.

◎急性の消化管出血の確認には簡易チルト試験を施行するが,高齢者ではそれのみでは判断できないことが多い.

◎巨赤芽球性貧血を疑うときには神経所見を追加で確認する.

筋骨格関節系の症候

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Point

◎リウマチ性多発筋痛症(PMR)は全身の炎症性疾患であり,炎症性疾患に特徴的な病歴を意識して問診を行う.

◎PMRの炎症の首座は関節内ではなくその周囲であり,診察時には関節周囲の構造を思い浮かべて診察を行う.

◎PMRの診断は除外診断が基本であり,それを意識した問診と診察が重要な疾患である.

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Point

◎脊椎関節炎は問診と身体所見で鑑別を絞り込むことが可能である.

◎鑑別のために炎症性背部痛のエピソードや,皮膚病変などの関節外病変を細かく確認する.

◎関節の身体所見としては可動域制限や付着部炎,指趾炎の評価が重要である.

◎ASAS分類基準をもとに脊椎関節炎を診断するが,脊椎カリエスなど他疾患との鑑別に注意する.

神経系の症候

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Point

◎感覚障害の原因を推定するうえで,感覚障害の分布は非常に大きなヒントになる.

◎逆転腕橈骨筋反射は頸椎症性脊髄症を強く示唆する所見である.

◎半年以内の発症,高齢男性,有痛性,上肢に症状のある多発神経炎では悪性腫瘍を除外する必要がある.

筋力低下の部位診断 西垂水 和隆
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Point

◎筋力低下が主訴でも,まずはバイタルと全身状態を把握する.

◎障害部位による身体所見の違いで鑑別していく.

◎病歴と身体所見で,疾患の性質と障害部位を推定して診断する.

Parkinson病を疑うとき 塩尻 俊明
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Point

◎Parkinson病での安静時振戦の診察は,上肢の緊張を低下させたうえで行うことが重要である.

◎本態性振戦との鑑別は,暗算負荷,振戦の質,振戦の進展形式に着目する.

◎固縮がわかりにくい場合は,induced rigidityが有用である.

◎Myerson徴候の診察では,指が患者の視野に入らないようにして眉間を叩く.

歩行障害があるとき 山中 克郎
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Point

◎歩行の様子を注意深く観察することにより,背景にある神経疾患がわかる.

◎開脚歩行は前庭神経障害,小脳失調,深部感覚障害のいずれかを示している.

◎指タップ試験は小脳失調,錐体路障害,Parkinson病の鑑別に非常に有用である.

構音障害の診察 小野 正博
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Point

◎脳神経の核は脳幹の背側にあり,運動神経の核は内側,感覚神経の核は外側に並んでいる.

◎舌咽・迷走神経が麻痺すると,咽頭後壁が健側に偏位するカーテン徴候が認められる.

◎舌下神経が麻痺すると,舌は患側に偏位し,筋萎縮や線維束性収縮を伴う.

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・4

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 「腱反射」──上手く誘発することができれば,大きな武器になる手技です.指示が入らない患者さんでも,腱反射は信頼性をもって再現することが可能です.腱反射を習得することで,神経障害部位を推定することや神経の改善過程を知ることも可能です.本稿では,腱反射のコツや反射出現時の神経障害部位について述べていきます.

連載 医師のためビジネススキル・3

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事例

地方都市の300床の○○総合病院の総合内科医として働いているあなたは,普段の診療に加え,若手医師の教育に忙殺される毎日である.若手スタッフは増えず,高齢者の増加とともに入院患者数は増え,教育に専念することが難しい.レジナビなどの若手医師勧誘イベントには参加しているが,見学者自体が少ないのが実情である.

「うちは結構教育もしっかりしているし,いいプログラムだと思うけど,なんだかんだいって医局と関係ないと若手は来ないのか.あと,給料がすごく高いわけでもないし.都会の病院には人が集まるらしいし,やっぱり地方では限界なのかも.でも,地方でも人気がある病院はあるし,やはり有名な先生がいないとダメなのか.誰かうちに来てくれないかなあ」

連載 母性内科の「め」 妊婦・授乳婦さんのケアと薬の使い方・5

食あたりでしょうか…… 三島 就子
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症例

 36歳のCさんは妊娠33週で,これまでの経過は順調でした.3日前,職場の同僚たちに誘われて外食に出かけ,チーズたっぷりのピザやパスタ,スモークサーモンの入ったサラダをお腹いっぱい食べました.今朝から腹痛と下痢があり,少し気持ち悪さもあります.発熱はありませんが,お腹全体にしぶるような痛みがあり,排便後は軽快します.起床してから水っぽい便が3回続いていて,心配になったCさんは内科を受診しました.

Cさん:「食あたりでしょうか……」

連載 物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・3

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ポイント

・Alzheimer病はいつの間にか発症し,ゆっくりと進行します(潜行性発症,緩徐進行性).

・人格は保たれ,穏やかで,自覚症状も病識もないことが多いため,残薬の増加などちょっとした変化に注意します.

・確定診断は病理所見によるため,臨床診断は「Alzheimer病の疑い」になります.

連載 目でみるトレーニング

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 診断推論の第一人者である生坂政臣先生とその弟子である鋪野紀好先生が監訳された診断推論に関する書籍の日本語版である.原著の細かいニュアンスも可能な限り日本語訳に反映されている.生坂教授は私の師匠であるが,その欲目を差し引いても本書がこれから診断推論を学ぶ医学生,臨床研修医,専攻医はもちろん,我々,総合診療に携わる医師,実地医家の先生方の生涯教育のツールとしても有用な一冊であることは疑いようがない.

 本書は,二部構成になっており,Part 1では,前半で病歴聴取を中心に診療の基本について,後半で臨床推論のプロセスについて概説されている.Part 2では,一般外来における高頻度疾患から見逃してはならない疾患まで,総合診療医が対応すべき50症例を通じて診断推論のいろはを学習できる.各症例の冒頭で,患者の年齢,性別に加え,簡単な患者背景,病歴情報が示され,その情報から追加で聴取すべき情報,考えるべき疾患とそれらを鑑別するために有用な質問,治療,マネジメントなど,診療のさまざまな場面で直面する問題について読者に考えさせる構成になっている.また,類書では,身体診察,場合によっては検査結果まで供覧した上で質問が投げかけられるが,本書では,多忙,かつ利用できる医療資源が限られた外来で,最も効率的で効果的な病歴情報からの診断プロセスを学習できるのも特徴である.

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 総勢49名の各科専門医が研修医にとって特に必要な診察手技を書いた,という本です.病棟や救急室で必要とする診察手技は網羅していることが特徴です.冒頭の「医療面接」のチャプターは,病歴聴取や診療録の記載の仕方の基本,温度表,小児の診察などが網羅されているだけでなく,これからプロフェッショナルとして成長していく研修医にとって重要な事項もカバーしています.プロフェッショナリズムやフィードバック,臨終の立ち会いかたなどの項目です.

 さらにはコラムとして,臨床倫理コンサルテーションや事前指示,アドバンス・ケア・プランニングなどの具体的なやりかたについて学習することができます.超高齢社会に直面している日本では,全ての医師が,事前指示やアドバンス・ケア・プランニングについての理解と実践方法を身につけることが求められています.2年間もの激しい心理的および肉体的ストレスにさらされる研修医には,ストレスコーピングについての項目は大きな助けになるに違いないと思います.

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 本書の初版は2006年に出版された.約10年ぶりの待ちに待った,満を持した改訂といえる.

 日本蘇生協議会(JRC)が国際蘇生連絡委員会(ILCOR)に加盟を果たしたのが2006年である.JRCはILCORへ国際コンセンサス(CoSTR)作成者を多数派遣し,2011年に「JRC蘇生ガイドライン2010」を,2016年に「JRC蘇生ガイドライン2015」を出版することができた.「JRC蘇生ガイドライン2010」の画期的なことの一つは,CoSTRでは心肺再開後集中治療で取り上げているのみの「神経蘇生」の章を含むことである.これは本書の初版のメンバーの力によるところが大きいと思われる.さらに「JRC蘇生ガイドライン2015」では脳を含む全神経系を対象とするため「神経蘇生」から「脳神経蘇生」へと章名が改められた.救急蘇生領域の集中治療ケアには,脳卒中のみならず全神経系への取り組みが必須であることが,監修者の篠原幸人先生が本書の第1章の冒頭で強調されていることでよく理解できる.

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 クリニックの外来に備えておくべき必読書が出版されました.これを読破し目の前の患者さんに応用すれば,日常診療のコモンな症候に対して,検査なしで診断に迫れます.開業医も高齢化が進んでおり,読みやすい(文字が大きい),わかりやすい,患者さんに簡単に応用できる臨床本が必要です.ある症候に遭遇した際に,診断の肝(キモ)である病歴を聴取し身体診察を行い,陽性と陰性所見を数値化し,それを合算して,診断の確からしさを導き出します.数値が高ければ,診断の確からしさ(検査後確率)が高まり,検査は確認するだけの作業になります.検査偏重の自分から脱却できるかもしれません.例えば熱があるから条件反射的にインフルエンザ迅速検査,CRP検査を行う必要がなくなり,疾患の確率を考えて検査する医師に変貌できます.

 第1章では,徳田安春先生と上田剛士先生の熱い思いが語られています.お二人とも「21世紀適々斎塾」(大阪開催)の理事であり,臨床推論の達人です.この本と上田先生執筆の『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』(医学書院,2014)があれば,開業医にとっては鬼に金棒でしょう.

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基本情報

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medicina
55巻9号 (2018年8月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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