medicina 55巻8号 (2018年7月)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

丸山 大
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 血液内科を専門としない医師にとって,血液疾患は「よくわからない」と敬遠されがちなイメージをもたれているかもしれない.ただ,日常診療において貧血,白血球増多,血小板減少や,リンパ節腫脹,発熱など,さまざまな血液検査異常や臨床症状を呈した患者さんが一般内科を受診することは少なくない.あるいは無症状で受けた健康診断での血液検査,腹部超音波検査,CT検査,消化管内視鏡検査などを契機として血液疾患が診断されることも稀ではない.血液内科を専門としない医師の場合,これらの異常所見を認めた際に,そもそも「血液疾患」を疑うことが難しいことがありうる.あるいは血液疾患かもしれないと思っても,確証がないために血液内科専門医への紹介のタイミングに迷うことも想像される.これらの症例のなかには,緊急を要する場合もあれば,逆に慌てる必要のない場合もある.一方,すでに血液疾患で診療されている(されていた)患者さんの,血液疾患以外の一般的な診療を依頼されることもある.これらのさまざまなパターンで血液疾患の患者さんが,血液内科を専門としない医師を受診した際の診療上のポイントを理解いただき,血液疾患に対する「苦手意識」を少しでも払拭してもらうことは,より効率的な医療連携を行ううえで重要であり,ひいては患者さんの医療上の利益に繋がると考えられる.

 本特集では「血液疾患を見逃さないために」と題して,血液内科を専門としない医師が日常診療で遭遇しうる状況を想定して項目を構成し,それぞれの分野で第一線で活躍されている先生方へ執筆をお願いした.特に,最初の「血液疾患患者に対する一般診療上の注意点」の章では,すでに血液疾患と診断されている患者さんの診療を依頼された場合に留意すべきエッセンスをまとめた.次に,「血液疾患を疑う症候・病変の診かたと紹介のタイミング」としてさまざまな部位別の病変など,血液内科以外を初めて受診することが想定されるケースについてまとめた.さらに,「さまざまな症候・画像所見の診かた・考え方と紹介のタイミング」「血液検査値異常の考え方と紹介のタイミング」の章で症候および検査異常に基づく考え方を取り上げた.座談会では福島県白河市で総合内科医を中心に血液内科医としても診療されている東光久先生,岐阜市の総合病院で血液内科医として活躍されている笠原千嗣先生,および都内のがん専門病院に勤務している編者で,それぞれの地域や環境における血液疾患の特徴や医療連携の実情などについて話し合った.

特集の理解を深めるための26題

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日常診療ではさまざまな血液検査異常や症状をきたした患者さんが一般内科を受診することは少なくありません.また,健診の結果や無症状で受けた画像検査をきっかけに血液疾患が診断されることもあります.今回は血液疾患が疑われる場合の鑑別のポイントや,患者さんの高齢化などによって今後ますます重要となる血液疾患患者の緩和医療・在宅医療の現状についてもお話を伺いたいと思います.(丸山)

血液疾患患者に対する一般診療上の注意点

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Point

◎感冒症状を主訴に受診する血液疾患患者のなかには,感冒でない患者が紛れていることが多い.

◎感冒症状に対する安易な抗菌薬処方は,耐性菌を生み出す要因となるため,適正使用を心がける.

◎バイタルサイン測定・身体診察を行い,異常を認めれば,血液専門医へのコンサルトが必要である.

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Point

◎今後,糖尿病や脂質異常症などの併存疾患を有する血液疾患患者の増加が見込まれる.

◎血液疾患の治療で使用されるステロイド薬や免疫抑制薬によって新たに糖尿病や脂質異常症をきたすケースも多い.

◎移植後患者の長期フォローでは,心血管リスクの管理が重要である.

◎血液疾患治療後の長期フォローにおける健康的な食生活や運動,禁煙,節酒は,将来のがん罹患リスクの低減にもつながる可能性がある.

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Point

◎貧血の治療開始と同時に原因を検索し,消化管悪性腫瘍や慢性炎症などを鑑別する.

◎寛解に至った造血器腫瘍患者では,二次がんや心筋障害などに注意する.

◎再発が考えられる血球減少やリンパ節腫脹などは血液内科に紹介する.

HBV再活性化に関する注意点 楠本 茂
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Point

◎がん化学療法(免疫抑制療法)前に,B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化のリスク評価を行う.

◎ガイドラインに従い,リスクに応じたHBV再活性化対策を講じる.

◎血液疾患治療後のフォローアップ中の肝障害の鑑別診断にHBV再活性化を含める.

侵襲的処置を依頼されたら 崔 日承
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Point

◎寛解状態の患者に対しては,侵襲的処置も通常対応で問題はない.

◎侵襲的処置を必要とする場合,安全に施行可能な血小板数に留意し,必要に応じて血小板輸血を検討する.

◎ビスホスホネート製剤を使用中の抜歯を含む侵襲的歯科処置においては,前後約2カ月間の休薬期間を置くことが望ましい.

救急外来を受診したら 山内 寛彦
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Point

◎造血器腫瘍患者の救急診療では,造血器腫瘍の再発・再燃と免疫抑制による感染症に鑑別の重点を置く.

◎そのためには,造血器腫瘍の再発・再燃を支持する徴候や検査値異常について,基本的な事項を把握しておく必要がある.

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Point

◎血液腫瘍領域では新規薬剤の臨床開発が盛んに行われ,標準治療を変革してきた.

◎臨床試験/治験実施数は増加傾向にあり,一般診療で試験中の患者に遭遇する機会は今後増加する可能性がある.

◎臨床試験/治験に参加中の患者を診察する際は,併用禁止薬/併用禁止療法などに配慮する必要があるが,何よりも患者の安全を優先すべきである.

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Point

◎身体症状や心理社会的な問題は造血器腫瘍患者においても大きな負担であり,治療中から緩和ケアと連携することの重要性が提言されている.

◎造血器腫瘍患者の症状は多彩であり,症状の病態や原因を十分に鑑別する必要がある.

◎希望に沿った終末期の療養を叶えるためには,適切なアドバンス・ケア・プランニングを行う必要がある.

血液疾患を疑う症候・病変の診かたと紹介のタイミング

リンパ節腫脹 伊藤 勇太 , 棟方 理
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Point

◎リンパ節腫脹を主訴とする患者を診療するときには,局所的なものか全身的なものか,リンパ節腫脹の時間経過および診察所見などから,大きく①悪性腫瘍,②感染症,③非感染性反応性腫脹,④その他に分類して鑑別診断を絞っていく.

◎リンパ節生検を依頼する際には,処置に伴う合併症のリスクが高いと考えられる腋窩や非特異的な所見となりやすい鼠径は避けて,できるだけ主病変と思われる病変から生検を行う.

◎病歴や理学所見から悪性が疑われる場合,また腫瘍関連の臓器障害が出現している場合には,緊急性ありと判断して早めの専門医受診が必要である.

眼窩病変 鈴木 茂伸
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Point

◎結膜リンパ腫はサーモンピンク色の隆起病変である.

◎眼窩リンパ腫は眼部腫脹,眼球突出などの症状で,画像上moldingを示すことが特徴である.

◎大部分は低悪性度のMALTリンパ腫であり,眼部に限局している場合が多い.

◎両側に腫瘍を生じた場合,複数病変とは数えず単一組織病変でstage 1とみなす.

鼻腔病変 宮崎 香奈
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Point

◎わが国において鼻腔・副鼻腔リンパ腫の約75%を,節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型(ENKL)が占める.

◎ENKLは鼻腔などの節外病変を特徴とするNKまたはT細胞型のリンパ腫である.

◎鼻腔(周辺)限局例では放射線治療・化学療法同時併用療法(RT-2/3DeVIC療法),若年者の初発Ⅳ期,初回治療後再発・難治例ではSMILE療法後の移植療法が推奨されている.

甲状腺病変 賴 晋也
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Point

◎甲状腺悪性リンパ腫の発症頻度は,甲状腺悪性腫瘍の1〜5%と非常に稀な疾患である.

◎約90%に橋本病を合併しており,中高年女性に好発する.

◎中悪性度のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫および低悪性度のMALTリンパ腫が主な組織型である.

◎超音波検査では「著明な低エコー腫瘤像」が特徴的である.

乳腺病変 福原 傑
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Point

◎乳腺リンパ腫は,臨床的・画像的に乳癌と鑑別が困難なことがしばしばあり,疑うことが重要である.

◎悪性リンパ腫が鑑別となる場合には,まず手術ではなく,生検で病理学的診断を行う.

◎インプラント挿入数年後に乳房の増大を認め,インプラント周囲に液体貯留を認めたらリンパ腫を考慮する.

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Point

◎消化管原発の悪性リンパ腫は,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を除いて疾患ごとに好発臓器が存在する.

◎リンパ腫の組織型によっては年単位できわめて緩徐に進行するリンパ腫から,日ごとに増悪していくきわめて緊急性の高いリンパ腫まであり,多様性に富む.

骨病変,病的骨折 皆内 康一郎
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Point

◎骨病変,病的骨折から多発性骨髄腫が疑われた際には,鑑別のための検査,治療において注意が必要である.

◎悪性リンパ腫の骨病変も稀ながら認められるが,診断・治療のためには病理診断が必須である.

◎腰痛・骨痛を初発症状とする白血病も存在する.

皮膚病変 神山 祐太郎
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Point

◎皮膚に病変を呈する悪性リンパ腫は,皮膚に限局するものと,全身性リンパ腫の皮膚浸潤病変である場合に分けられる.

◎病態は各病理組織型により非常に多彩な病像を呈し,緩徐な進行を示すものから急速に進行し死に至るものまでさまざまである.

◎軽微な皮膚症状でも,通常の外用治療や抗菌薬内服に反応しない場合は,感染症やアレルギー性疾患,薬剤性障害と並んで悪性リンパ腫も疑って精査する必要がある.

◎悪性リンパ腫の皮膚症状を疑った際には漫然と経過観察をせずに,皮膚科医や血液内科医への早期の相談を行うことが重要である.

さまざまな症候・画像所見の診かた・考え方と紹介のタイミング

発熱 冲中 敬二
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Point

◎しばしば血液疾患は,不明熱をきたす.血液疾患のなかでは悪性リンパ腫の頻度が高い.

◎「丁寧な原因精査をしても原因不明」と気づくことが,鑑別すべき疾患を挙げることに役立つ.

◎発熱に高度の好中球減少を伴う場合には,速やかに抗菌薬投与を検討する必要があるが,その前に感染部位や原因微生物同定のための検査も検討する.

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Point

◎出血傾向が認められる場合,出血の様相,出血の既往,家族歴,薬歴,健康食品の摂取歴などを問診で確認する.

◎止血異常を鑑別する際,一次止血(血小板)と二次止血(凝固因子)のどちらに問題があるのかを見極める.

◎凝固異常が認められた場合,鑑別として出血傾向だけではなく,血栓化傾向の病態も念頭に置く.

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Point

◎悪性リンパ腫の治療効果判定に近年新しい国際基準が提唱され,FDG-PETはなくてはならない検査となっている.

◎高悪性度リンパ腫であるDLBCLやHodgkinリンパ腫はFDG高集積であるが,低悪性度リンパ腫である濾胞性リンパ腫やMALTリンパ腫などは必ずしも低集積とは限らない.

◎初期診断では良性疾患との鑑別が難しいこともあるため,注意する.

血液検査値異常の考え方と紹介のタイミング

白血球数・白血球分画異常 古林 勉
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Point

◎白血球数異常の鑑別診断には,血液塗沫標本での目視法による白血球分類が重要である.

◎急性の好中球減少症はウイルス感染や薬剤によるものが多く,感染症(発熱性好中球減少症)に注意が必要である.

◎末梢血中に芽球や異常細胞を認めた場合は,早急に血液専門医へ紹介すべきである.

◎白血球増加症では,増加している白血球分画や他の血球の増加あるいは減少の有無により原因疾患の鑑別を行う.

赤血球数異常 小笠原 洋治
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Point

◎貧血の鑑別では,赤血球指数,網赤血球数や鉄動態などから総合的な病態評価が必要である.

◎多血症診断では,JAK2遺伝子変異の有無と血清エリスロポエチン濃度が重要である.

◎緊急性,診断・治療の専門性を考慮し,タイミング良く専門医へ紹介することが重要である.

血小板数異常 冨山 佳昭
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Point

◎血小板減少患者に対しては,出血症状(特に口腔内や下肢)の有無を観察する.

◎出血症状がなく「血小板凝集(+)」とのコメントがある場合,ETDA依存性偽性血小板減少症を考える.

◎基礎疾患がなく,上記の偽性血小板減少が否定されれば,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の可能性が高い.

◎ITPの病状が落ち着いている場合,H. pylori除菌療法を試みてもよい.

◎基礎疾患がなく血小板数45万/μL以上の場合,本態性血小板血症を考慮すべきである.

汎血球減少 住谷 智恵子 , 清水 隆之
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Point

◎汎血球減少は血液疾患以外でも生じるが,高度の汎血球減少は血液疾患であることが多い.

◎急性発症の汎血球減少は,急性白血病の可能性があり,緊急で紹介が必要である.

◎急性前骨髄球性白血病は,白血球数減少で発症し,末梢血中に芽球が出現しない場合もある.線溶系亢進型のDIC合併に気がつくことが,見逃さないポイントである.

凝固異常 半下石 明
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Point

◎凝固検査は,出血・血栓傾向のある場合や手術など侵襲的処置が必要な場合に行われる.

◎凝固検査は,ワルファリンやヘパリンなどの抗凝固薬の用量調整の指標にも用いられる.

◎凝固異常の多くは,上記薬剤や肝疾患,ビタミンK欠乏,悪性腫瘍などが原因となり,原因ごとの対応が必要である.

◎凝固異常を伴う若年者では,先天性疾患を疑った家族歴の聴取が重要である.

◎凝固異常の明らかな原因がなく出血症状のある症例では,早急に血液内科へコンサルトする.

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Point

◎血液分野における血清蛋白異常では,高ガンマグロブリン血症の鑑別が最も重要である.

◎高ガンマグロブリン血症では,単クローン性(モノクローナル)か多クローン性(ポリクローナル)かの判別が必要であり,そのための検査として血清蛋白免疫泳動法,血清免疫固定法,蛋白分画測定がある.

◎単クローン性高ガンマグロブリン血症では,多発性骨髄腫などの造血器腫瘍を疑う.

◎尿中Bence Jones(BJ)蛋白は尿蛋白定性検査で用いられる試験紙法では陰性になるため,BJ型多発性骨髄腫を疑う場合には,尿免疫電気泳動あるいは尿免疫固定法を行う.

抗HTLV-1抗体陽性 野坂 生郷
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Point

◎HTLV-1感染者に起こりうる疾患としては,成人T細胞白血病・リンパ腫,HTLV-1関連脊髄症,HTLV-1関連ぶどう膜炎がある.

◎一般的にHTLV-1関連疾患の発症頻度は低く,多くの症例はHTLV-1キャリアである.

◎異常リンパ球の出現(5%以上),リンパ節腫脹,高カルシウム血症などをみた場合は専門医への紹介を考慮する必要がある.

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・3

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 錐体路障害を間接的に証明する方法として,腱反射の左右差を検討することがあります.手指の屈筋反射も錐体路障害の存在を疑う手掛かりの1つです.手指屈筋反射には,Hoffmann反射,Trömner反射,Wartenberg徴候があります.これらの反射中枢はC 6〜Th1に反射弓を認めるといわれ,特にC 8が優位といわれています1).本稿では,打腱器を使用せずに誘発できるHoffmann反射とTrömner反射について勉強していきましょう.道具のない診療所や離島で役に立つかもしれません!

連載 母性内科の「め」 妊婦・授乳婦さんのケアと薬の使い方・4

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症例

 32歳のAさんは妊娠16週になり,つわりの症状も楽になってきました.食事量も増え,体調も良くなってきたためそろそろ仕事に復帰したいと考えていました.しかし,最近,天気が変わりやすいせいなのか,頭痛が続いています.もともと片頭痛もちのAさんは,これまで市販の痛み止めで効果がないときは医者から処方された治療薬を飲んで症状を和らげていました.妊娠してからは薬を一切飲まずに我慢していましたが,頭痛が続いてつらいため,主治医に相談することにしました.

Aさん:「痛み止めを飲んでもよいのでしょうか?」

連載 物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・2

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ポイント

服薬のコンプライアンスに最大限注意!投薬量は体重・年齢を考慮し,きちんと飲める状況を確認・工夫することが大切です

連載 心電図から身体所見を推測する・8

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 第7回までは心電図から身体所見を推測してきたが,今回は胸部X線と心電図の両方から身体所見,特に聴診の情報を探っていきたい.

連載 医師のためのビジネススキル・2

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事例

 今年度から300床規模の中小病院(K病院)で勤務し始めたA医師は,経営会議に参加した.会議室ではみな頭を抱えながらため息をついていた.B部長は,「この地域で救急の強い●●病院は高度急性期により力を入れるため,救急病床やハイケアユニットなどを作り,病床整理を行っています.一方,一部急性期も行っていた▲▲病院は急性期機能を止めて回復期リハビリテーション機能を充実させています.当院はこれまで,創設者の『地域の人々の健康と安心を支え,地域から選ばれる病院になる』という理念に基づき,さまざまな患者様を受け入れてきました.実際に●●病院のように急性期ができるほどの医療スタッフ,医療機器はそろっていません.そろそろ私たちもどのような機能をもつ病院となるか,考えなければならない時期に至っています」と語った.

連載 目でみるトレーニング

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・24

Last Case 石山 貴章
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「結核じゃないか……?」

 CT画像を見ながら,その考えに囚われている自分を,自覚できない自分がいた…….

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 『魁!! 男塾』(集英社)が連載されたのは1985〜91年.まさに私の小学生時代を共に過ごした名作でした.当時,『週刊少年ジャンプ』でまず読むのは『ドラゴンボール』でしたが,時間をかけて読むときは『魁!! 男塾』の門を叩いたのを覚えています.当時,そのあまりの人間びっくりショー的な強烈さに仰天した漫画の1つでした.本書はその世代を過ごした中堅医師たちの熱い思いがほとばしる,会話形式の臨床推論の指南書になります.

 症例が全部で24例提示されていますが,まずその冒頭で伝授される「診断塾 塾生心得九カ条」は必読です.どの心得も素晴らしく,ここで九カ条全て箇条書きにしてもよいくらいですが,その中でも特に病歴を重視する姿勢が共感できます.例えば第三条の「病歴を映像化せよ!」などは,評者も普段の臨床やカンファレンスで意識することであり,症状の発症機転(Onset)や詳細な経過を,映像化できるほど詳細に確認していくことの重要性を実感しています.痙攣や失神など,ほぼ病歴で勝負がつくような疾患・病態も多く,とにかく困ったら病歴確認をと考えています.また,第四条では「患者の主訴1つより,illness scriptで考えるべし!」と主訴のみにアンカーしてしまうような認知バイアスへの対処も促しつつも,第八条で「経過が複雑で困ったときは,患者の解釈モデルに着目せよ!」と患者に聴く姿勢の重要性にも触れています.この部分だけで山ほど語れそうです.

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 本書は“West's Pulmonary Pathophysiology:The Essentials”の日本語版である.本書は約40年前に発刊され,改訂を重ねている“Respiratory Physiology:The Essentials(『ウエスト呼吸生理学入門 正常肺編』,Dr. West著)の姉妹版として出版され同様に度々改訂されているもので,「正常肺編」同様,原著がDr. Luksを共著者として改訂されたのを機に日本語版第2版が出版された.日本語版は,東海大学教授・桑平一郎先生と日本大学名誉教授・堀江孝至先生が翻訳をされている.

 「正常肺編」が呼吸生理の初学者を対象とし,入門編のような内容になっているのに対して,本書は「正常肺編」通読後の学生・医療関係者や,ある程度呼吸機能・呼吸生理の素養のある医師向けに編まれていると思われる.そこで,まったくの呼吸生理学の初診者であれば,まず「正常肺編」から読まれることをお勧めするが,本書においても冒頭Part 1を「呼吸機能機能検査とその意味するもの」として呼吸生理の基本をわかりやすく記述してあり,ある程度の臨床呼吸機能に触れた医療者であれば(初期研修医であっても)本書を読み進め,呼吸生理の理解を深めていくことは十分に可能であろう.また,随所に「正常肺編」における参照部位が明示されており,本書における疑問点などを基本に立ち返って調べることが可能であり,「正常肺編」と「疾患肺編」を有機的に利用することが可能である.本書のPart 2およびPart 3では具体的は疾患肺を扱い,閉塞性肺疾患としてCOPD,気管支喘息,限局性気道閉塞,拘束性肺疾患としてびまん性肺疾患,胸膜・胸壁病変,神経筋疾患,血管病変として肺水腫,肺塞栓,肺高血圧,肺動静脈奇形などについて記述している.それぞれの疾患の病態生理と臨床的特徴がコンパクトにまとめられており,本書の主眼である「疾患肺における生理学的変化」を理解するために,その根源となる病理学的変化を理解するための図表や臨床画像(X線画像,CT画像)が要所で挿入されており,理解の大きな助けとなっている.本書の内容を十分に理解することができれば,疾患肺に対する臨床的アプローチに深みが生まれ,また,研究的アプローチへのideaも想起させる好著である.また,各章の後半に「症例検討へのいざない」として症例提示があり,臨床現場でのリアリティーを醸しだし,呼吸生理を理解することの楽しさ,ベッドサイドでの病態把握に呼吸生理がいかに重要であるかを再認識させてくれる.

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 本書は,わが国の造血幹細胞移植医療をリードする国立がん研究センター中央病院の福田隆浩科長が,移植チームメンバーの協力を得て執筆した実践的なポケット版マニュアルです.造血幹細胞移植医療は他の医療と比べ患者の個別性が高く,また準備から外来フォローまで長期間にわたり,その間さまざまな職種がかかわる,極めて複雑で高度な医療です.そのため,一つの問題を解決するために,さまざまなWebや成書に当たる必要があります.移植の合併症が全身的であり,かつ多岐にわたるのがその理由の一つです.

 本書の特徴は,造血幹細胞移植医療の全てがこの一冊に盛り込まれている点にあります.例えば,移植後の高血圧に対して推奨される降圧剤が具体的に用量まで記載されています.つまり,エビデンスがあっても,実際にはどう対応すればいいのか迷う点にまで踏み込んで記載されています.また編成も移植の準備から,入院,外来フォローと経時的な流れになっており,移植にかかわるさまざまな職種の方が各職種の関与する項目の箇所を調べやすいように工夫されています.また,移植を依頼する立場の血液内科医にとっても移植適応,患者さんへの説明,また移植後のフォローと,座右にあって役立つ書となっています.このように対象とする読者が移植医のみならず,さまざまな医療スタッフ,コメディカル,一般血液内科医と多岐にわたるのも本書の特徴です.

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 本書の著者は,私の初期研修病院の先輩である萩原將太郎先生である.同院では在籍期間が重ならず,直接のご指導は受けなかったが,武勇伝はいくつも伺ったことがあった.萩原先生が内地に戻られて少し経った頃からであろうか,今に至るまでご指導ご厚誼をいただいている.

 本書は,専門家として,内科医として,そして教育者として,そのどれもで超一流であり,何より努力家である萩原先生の真骨頂とも言える魅力に溢れている.専門家としての側面は,さまざまな疾患や病態の機序を基礎医学の面からもわかりやすく解説されている点,最新の診断基準が豊富に記載されている点などに垣間見ることができる.内科医としての側面は,症例の身体所見で腱反射などの神経学的診察,Ⅳ音,Ⅱp亢進,眼底所見などを記載している点,p 105の「もちろん結核は常に除外すべき疾患です!」というコメントやp 184にランセット状のグラム陽性双球菌である肺炎球菌の喀痰グラム染色写真を載せている点などからもにじみ出てくる.教育者としての側面は,解説がクリアカットで教わる側の立場を大事にしている点,末梢血塗抹を医師が実際に見ることの重要性を強調していること,症例の解説で思考経路を的確に示していることなどから伝わってくる.

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55巻8号 (2018年7月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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