書評
—佐田竜一,綿貫 聡,志水太郎,石金正裕,忽那賢志 著—魁!! 診断塾—東京GIMカンファレンス激闘編
矢吹 拓
1
1独立行政法人国立病院機構栃木医療センター内科
pp.1169
発行日 2018年7月10日
Published Date 2018/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402225703
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『魁!! 男塾』(集英社)が連載されたのは1985〜91年.まさに私の小学生時代を共に過ごした名作でした.当時,『週刊少年ジャンプ』でまず読むのは『ドラゴンボール』でしたが,時間をかけて読むときは『魁!! 男塾』の門を叩いたのを覚えています.当時,そのあまりの人間びっくりショー的な強烈さに仰天した漫画の1つでした.本書はその世代を過ごした中堅医師たちの熱い思いがほとばしる,会話形式の臨床推論の指南書になります.
症例が全部で24例提示されていますが,まずその冒頭で伝授される「診断塾 塾生心得九カ条」は必読です.どの心得も素晴らしく,ここで九カ条全て箇条書きにしてもよいくらいですが,その中でも特に病歴を重視する姿勢が共感できます.例えば第三条の「病歴を映像化せよ!」などは,評者も普段の臨床やカンファレンスで意識することであり,症状の発症機転(Onset)や詳細な経過を,映像化できるほど詳細に確認していくことの重要性を実感しています.痙攣や失神など,ほぼ病歴で勝負がつくような疾患・病態も多く,とにかく困ったら病歴確認をと考えています.また,第四条では「患者の主訴1つより,illness scriptで考えるべし!」と主訴のみにアンカーしてしまうような認知バイアスへの対処も促しつつも,第八条で「経過が複雑で困ったときは,患者の解釈モデルに着目せよ!」と患者に聴く姿勢の重要性にも触れています.この部分だけで山ほど語れそうです.
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