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本書は“West's Pulmonary Pathophysiology:The Essentials”の日本語版である.本書は約40年前に発刊され,改訂を重ねている“Respiratory Physiology:The Essentials(『ウエスト呼吸生理学入門 正常肺編』,Dr. West著)の姉妹版として出版され同様に度々改訂されているもので,「正常肺編」同様,原著がDr. Luksを共著者として改訂されたのを機に日本語版第2版が出版された.日本語版は,東海大学教授・桑平一郎先生と日本大学名誉教授・堀江孝至先生が翻訳をされている.
「正常肺編」が呼吸生理の初学者を対象とし,入門編のような内容になっているのに対して,本書は「正常肺編」通読後の学生・医療関係者や,ある程度呼吸機能・呼吸生理の素養のある医師向けに編まれていると思われる.そこで,まったくの呼吸生理学の初診者であれば,まず「正常肺編」から読まれることをお勧めするが,本書においても冒頭Part 1を「呼吸機能機能検査とその意味するもの」として呼吸生理の基本をわかりやすく記述してあり,ある程度の臨床呼吸機能に触れた医療者であれば(初期研修医であっても)本書を読み進め,呼吸生理の理解を深めていくことは十分に可能であろう.また,随所に「正常肺編」における参照部位が明示されており,本書における疑問点などを基本に立ち返って調べることが可能であり,「正常肺編」と「疾患肺編」を有機的に利用することが可能である.本書のPart 2およびPart 3では具体的は疾患肺を扱い,閉塞性肺疾患としてCOPD,気管支喘息,限局性気道閉塞,拘束性肺疾患としてびまん性肺疾患,胸膜・胸壁病変,神経筋疾患,血管病変として肺水腫,肺塞栓,肺高血圧,肺動静脈奇形などについて記述している.それぞれの疾患の病態生理と臨床的特徴がコンパクトにまとめられており,本書の主眼である「疾患肺における生理学的変化」を理解するために,その根源となる病理学的変化を理解するための図表や臨床画像(X線画像,CT画像)が要所で挿入されており,理解の大きな助けとなっている.本書の内容を十分に理解することができれば,疾患肺に対する臨床的アプローチに深みが生まれ,また,研究的アプローチへのideaも想起させる好著である.また,各章の後半に「症例検討へのいざない」として症例提示があり,臨床現場でのリアリティーを醸しだし,呼吸生理を理解することの楽しさ,ベッドサイドでの病態把握に呼吸生理がいかに重要であるかを再認識させてくれる.
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