medicina 54巻7号 (2017年6月)

特集 外来診療必読エビデンス—日米比較で考える内科Standards of Excellence

谷口 俊文
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 代表的な内科外来疾患の多くは,いわゆる「生活習慣病」と呼ばれるものです.糖尿病,高血圧,さらにはがん,脳卒中,心臓病などが含まれますが,これらの疾患は食習慣,運動習慣,嗜好が発症や進行に深く関わっています.生活習慣病は健康長寿の阻害要因として考えられており,なおかつ国民医療費にも大きな影響を与えていることは明白です.生活習慣病の代表となる疾患にはそれぞれ,日本国内および欧米諸国における莫大な臨床研究の成果があり,予防や治療などに関するエビデンスが蓄積されつつあります.しかしながら,これらのエビデンスは日々更新されており,臨床現場の医師が最新の知識を保つのは容易ではなく,また海外におけるエビデンスの解釈をどのように日本の臨床現場に当てはめればよいのかわからないのが実情だと思います.

 外来診療では,生活習慣病のマネジメントはソフトエンドポイントになりやすく,心筋梗塞,脳卒中や死亡などのハードエンドポイントは自ら関わらないこともあり,それまでのマネジメントとの相関関係がわかりづらいという特徴があります.また“cost-effectiveness”という言葉がありますが,検査や治療介入による費用対効果がどれほどあり,日々の臨床現場で実践すべきか判断するための研究なども,昨今の医療費の増大を考えると意識せざるを得ません.

特集の理解を深めるための30題

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今回は米国で総合診療医として活躍された経験をもつ八重樫先生と石山先生をお招きしました.内科外来でよく遭遇する生活習慣病などのcommon diseaseのマネジメントという観点から予防医療に焦点を当て,「現状と問題点」「予防医療の将来を誰がどのように担うのか」などについて議論したいと思います.(谷口)

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Point

◎EBMとは,エビデンスそのものではなく,個別の患者に提供する医療の質を高めるためにエビデンスを利用する方法論である.

◎外来でエビデンスを活用する際は,原著論文を読むよりも,質の高い二次資料を利用するのが便利である.

◎診断推論では事前確率の見積りが,治療方針決定ではベースラインリスクの見積もりが重要である.

◎診療方針の決定に当たっては,患者にとっての真のアウトカムに注目する.

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Point

◎脳卒中のさまざまな危険因子を是正することが脳卒中の一次予防・二次予防につながる.

◎心房細動は脳梗塞のリスクを5倍上げることが示されており,脳梗塞の10〜15%が心房細動によるものと考えられている.

◎心房細動患者の脳梗塞リスクの層別化のためにCHA2DS2-VAScスコアが使用される.

◎新たな抗凝固薬(NOACs)が心房細動患者の脳梗塞予防に使われるようになってきている.

◎経皮的左心耳閉塞術(left atrial appendage closure device)は,脳梗塞予防のための新たな非薬物的療法である.

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Point

◎脳血管疾患は全死因の第4位であり,第2位の心疾患と合わせた血管疾患としてみると1位の悪性腫瘍とほぼ同等であるため,血管疾患の予防はきわめて重要である.

◎脳血管疾患の予防には,生活習慣の改善・リスク管理により疾病の発症を防ぐ一次予防,再発を防ぐ二次予防,リハビリによる社会復帰を目指した三次予防がある.

◎食事中のNaとK摂取量の比(mol/mol)が高いほど,心血管疾患や脳血管疾患による死亡率が増加することが明らかになった.

◎一次予防としての低用量アスピリン腸溶錠1日1回の内服は心血管イベント発症抑制に差はみられず,出血などの不利益のほうが多いため必要性は低い.

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Point

◎最も重要な一次予防は生活習慣の改善である.

◎心血管疾患の一次予防において,スタチンは最も豊富なエビデンスがある.

◎アスピリンによる一次予防は,出血とのリスク・ベネフィットを考慮する必要がある.

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Point

◎アスピリン療法は,心血管イベント抑制のための二次予防戦略として確立されている.

◎一方,アスピリン療法の一次予防効果に関しては複数の大規模試験で検討されているが,心血管イベントの抑制効果は確立されていない.

◎最近の日本人を対象としたJPPP研究でも,JPAD試験およびJPADコホート研究でも,アスピリン療法の一次予防効果は認められなかった.

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Point

◎非薬物療法は,高血圧症の予防や降圧薬の開始前だけでなく,降圧薬の使用中においても大切である.

◎高血圧症の非薬物療法には,減量,食事療法,減塩,運動,節酒があり,収縮期血圧を2〜20mmHg程度下げる.

◎肥満患者において,減量は最も効果的な降圧の非薬物療法である.

◎運動による降圧効果は,運動に伴う減量の程度とは関係なく現れる.

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Point

◎日本では高血圧症患者は年々増加傾向にあり,非薬物療法としては減塩が主軸である.

◎減塩目標は6〜8g/日だが,日本の平均食塩摂取量は10.0gと達成率は低い.

◎適切な減塩指導には,随時尿から食塩摂取量を推算しそのフィードバックと,患者の疾患受容に合わせた内面からのアプローチを行うことが有効と考えられる.

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Point

◎JNC8では60歳以上の高齢者の目標血圧は150/90mmHg未満と定められたが,賛否両論である.

◎SPRINT試験では,ハイリスク患者において積極的治療の有効性が示された.

◎収縮期血圧と心血管系リスクには明らかな相関があるものの,拡張期血圧は過度に下げるとリスクが上昇する“Jカーブ”現象がみられる.

◎高血圧治療の第一選択薬は,一般的にはサイアザイド系利尿薬,Ca拮抗薬,ACE阻害薬またはARBで,CKD患者にはACE阻害薬またはARBが推奨されている.

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Point

◎高血圧の診断・治療の指標として,家庭血圧が有用である.

◎海外のエビデンスは,肥満型で冠動脈疾患が多い疾病構造がベースにあるため,日本人にそのエビデンスが当てはまるかについては慎重に考えるべきである.

◎降圧薬の選択も重要であり,その際に「降圧速度」のような新しい情報も有用である.

米国編 2型糖尿病の治療 大塚 孝裕
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Point

◎米国の糖尿病外来では,合併症予防と進行阻止を重視した総合的診療が行われている.

◎血糖値のコントロールは,年齢,合併症,糖尿病罹患年数などにより変える必要がある.

◎メトホルミンは2型糖尿病の第一選択薬であり,メトホルミン単独で血糖コントロールができない患者には,2剤,3剤併用療法もしくはインスリンの併用療法を行う.

◎インスリンの強化療法に移行した患者では,メトホルミンとピオグリタゾンを除いて経口薬は中止する.

◎診療に当たってコストは重要な要素で,患者負担を減らした治療が求められる.

日本編 2型糖尿病の治療 能登 洋
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Point

◎治療開始時に,まずは個別化した血糖管理目標値を設定する.

◎治療は食事療法,運動療法から開始し,数カ月以内に反応がなければ薬物治療を開始する.

◎基本則として,合併症リスクを低下させるエビデンスの豊富なメトホルミンから開始する.

◎薬物は少量から開始し,適宜最大量まで漸増する.それでも血糖管理目標値に達しない場合に他種1剤を併用する.

◎適応があればインスリン療法も積極的に導入する.

米国編 肥満(症)の治療 樋口 雅也
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Point

◎肥満治療≠減量.スクリーニングとストーリーから始まる肥満治療.

◎成人肥満への対応はスクリーニングと行動療法が推奨される.

◎薬の処方や外科医との相談の前に,行動療法実践のステップと内服薬の見直しを行うべきである.

日本編 肥満(症)の治療 西澤 均
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Point

◎BMI 25kg/m2以上の「肥満」を認め,健康障害を合併するか,将来の合併が予想される内臓脂肪型肥満を「肥満症」として,医学的に減量が必要な疾患として捉える.

◎疾患側からみると,肥満・内臓脂肪蓄積を病態基盤にするものとそうでないものを区別し,「肥満症」では効率的な合併症の検索および減量を目指した介入を行う.

◎「肥満症」では食事療法・運動療法を基本とした減量と内臓脂肪減少に伴い,複数の合併症が包括的に改善する場合が多い.

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Point

◎高用量スタチンの効果に関するエビデンスが報告されている.

◎スタチン治療で血糖値上昇,HbA1c上昇のエビデンスはあるが,リスクとベネフィットを考えるべきである.

◎エゼチミブはスタチン治療中に併用することで,心血管リスクをさらに下げるエビデンスがある.

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Point

◎『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』は,“NIPPON DATA 80”に基づいた日本人のためのガイドラインである.

◎脂質管理は,一次予防群と二次予防群に分けてLDL-C値の管理目標値設定を行う.

◎残余リスクについては最新のエビデンスに注目する.

米国編 高尿酸血症・痛風 増野 陽子
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Point

◎痛風は冠動脈疾患,高血圧,糖尿病,脂質異常症,慢性腎臓病,尿路結石,肥満などと合併しやすい.

◎痛風の治療は急性痛風関節炎と再発防止に分けられる.急性期においては合併症を考慮したうえで抗炎症薬投与,再発防止においては高尿酸血症の治療が大切なポイントとなる.

◎急性痛風発作治療として,NSAIDs,コルヒチンまたは副腎皮質ステロイドを使用する.

◎再発防止として,痛風間欠期に尿酸降下薬のアロプリノール,フェブキソスタット,プロベネシドを使用する.

◎痛風間欠期に尿酸降下薬投薬と同時に,痛風関節炎防止としてNSAIDsまたはコルヒチンを投与する.

◎無症候性高尿酸血症が診断された際,原則として尿酸降下薬は使用しない.

日本編 高尿酸血症・痛風 谷口 敦夫
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Point

◎日本では痛風は増加しており,高尿酸血症は成人男性の20〜30%に認められる.

◎無症候性高尿酸血症では,合併症や高尿酸血症の程度に応じて薬物治療も含め治療法を検討する.

◎痛風では原則的に薬物による尿酸降下療法の適応がある.

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Point

◎禁煙はすべての喫煙者に勧められるべきで,一般に行動療法と薬物療法の組み合わせが勧められる.

◎薬物療法の一次選択は,ニコチン代替治療(ニコチンパッチ,ニコチンガムなど),bupropion,バレニクリンである.これらは一般に,心血管病患者や神経精神疾患を有する患者でも安全に用いられる.ただし,痙攣発作を有する患者にはbupropionは勧められない.

◎禁煙補助薬としての電子タバコ使用を支持する十分なエビデンスは現時点ではない.

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Point

◎35歳未満のニコチン依存症の患者でも禁煙保険治療を受けることが可能になった.

◎禁煙を希望しない患者には「動機づけ面接法」が有用である.

◎未成年者への禁煙治療のエビデンスはまだ不十分であるものの,禁煙治療はカウンセリングが主体となる.

◎禁煙治療を行ううえで医師会の役割は大きく,多職種の連携による禁煙支援・治療の普及が期待される.

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Point

◎COPDの重症度は1秒量のみでは決まらない.

◎治療は薬物療法と同様に非薬物療法も重要である.

◎薬物療法の基本は吸入気管支拡張薬であるが,重症度に応じて吸入ステロイド(ICS)や経口の気管支拡張薬,マクロライドなどの併用も組み合わせる.

◎禁煙指導は短時間でも効果があり,無理だと諦めさせず声をかけ続けるべきである.また,呼吸器リハビリテーションは忘れられがちではあるが重要である.

◎酸素療法は適応にも留意する.日中の酸素飽和度がCMS(Center for Medical and Medicaid Services)の基準に満たなくても,運動時や夜間の低酸素血症が隠れている場合がある.

日本編 COPD 市川 昌子 , 十合 晋作
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Point

◎画像では閉塞性障害は評価できないため,COPDの診断には呼吸機能検査が必要である.

◎治療は禁煙と薬剤投与のほかに,ワクチン接種やリハビリテーションなども考慮する.

◎治療効果の判定や患者のモチベーションの維持として,簡易質問票が便利である.

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Point

◎米国においても生活習慣病に関連する肝疾患,特に非アルコール性脂肪肝(炎),すなわちNASH,NAFLDが増加している.

◎アルコール性肝疾患については断酒を行い,肝硬変やアルコール性肝炎の発症を未然に防ぐよう努めるが,ドロップアウト例が多い.

◎NASH,NAFLDの治療の基本は減量である.肝疾患の進行度に合わせて栄養指導と運動療法を行う.

◎線維化の進展したNASHに対しては,ビタミンEなどの薬物療法の有用性も報告されている.複数の臨床試験が進んでおり,その結果が待たれる.

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Point

◎アルコール性肝疾患は過剰飲酒により引き起こされるが,リスクファクターを理解し生活習慣の改善を目指す必要がある.

◎アルコール依存の程度と生活習慣を捉えるため,AUDIT質問票を活用すべきである.

◎アルコール性肝炎の場合は,重症度を判定し専門施設と連携すべきである.

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Point

◎NAFLDは,有病率が世界人口の2〜3割という膨大な患者数がいることがメタ解析から示された,最も患者数の多い肝臓疾患である.

◎NAFLDにおける最多の死亡原因は心血管イベントであるが,肝関連死を含め,NAFLDの予後を決めるのは肝臓の線維化の有無である.

◎NAFLDの診断では,肝生検に代わり,脂肪化や線維化の程度をエラストグラフィで非侵襲的に定量できるようになった.

◎現在保険適用を得たNAFLD(NASH)治療薬は国内外ともにないが,多数の新薬治験が精力的に行われている.

米国編 がん検診 桑間 雄一郎
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Point

◎「何でもやる」日本のがん検診に対して,米国は「検診項目を吟味し取捨選択する」考え方である.

◎医療コストが高価な米国は,検査の効果と害を原則(本文参照)に基づき分析しガイドラインを策定している.

◎検査へのアクセスが良い日本の医療環境に,検診項目の取捨選択の考え方が加われば鬼に金棒である.

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Point

◎がん検診は「早く見つかればいいはず」ではなく,死亡率減少効果を検証することが重要.

◎がん検診の有効性は,「検診受診者」を分母とするのが正しく,「患者」を分母とした検討は避けるべきである.

◎特にlead-time biasとlength biasに注意する.

◎治療しなくてもよいがんは一定数存在し,そのようながんを見つけるのは「過剰診断」と言われるが,発見後にどのがんが過剰なのかを個別に知るのは難しい.

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Point

◎内科外来ではCKDに対して,①血圧・体液量,②血糖,③電解質・酸塩基平衡,④合併症(骨・ミネラル代謝,貧血,食事療法)のチェックを行い,網羅的に管理する(表1).

◎腎臓内科への紹介が必要なケース(表1)を理解しておく.

◎腎代替療法には,血液・腹膜透析,移植,保存的療法の選択肢がある.血液透析を行う場合は,バスキュラーアクセスを適切に選択する.

日本編 慢性腎臓病 今井 直彦
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Point

◎日本では国民の8人に1人がCKDであり,新たな国民病としての対策が求められている.

◎CKDの発症予防・早期発見・重症化予防に健診の有効的な利用が提唱されている.

◎蛋白尿を減らすこと,そして生活習慣病をコントロールすることがCKDの重症化予防の基本である.

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Point

◎歯周病は,主に嫌気性グラム陰性桿菌による慢性感染症である.

◎全身の病態もしくは治療(手術侵襲や薬)が,歯周病を悪化させることがある.

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Point

◎歯周病は,口腔内の細菌感染により生じる慢性炎症疾患であり,無症状であることが多く,罹患率がきわめて高い疾患である.

◎2型糖尿病や虚血性心疾患では,歯周病治療により疾患の状態や発症率に変化があったという報告がある.

◎米国では,疾患予防のために定期的に歯科医院に通院する習慣がある.

◎歯周病を予知するためのインターロイキン(IL)-1遺伝子型を調べる遺伝子検査が商品化されているが,精度の向上が必要である.

連載 フィジカルクラブpresents これって○○サイン!?・3

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5日前からの咳嗽,労作時の息切れを主訴に来院した80代女性.

頭位を45°上げて観察すると…

【動画】(時間:15秒)

http://mv.igaku-shoin.jp/medicina/5407h01

(2019年5月31日まで公開)

連載 目でみるトレーニング

連載 内科医のボクらに心療ができないはずがない・2

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 今月も,定例の心療教育セッションのために総合病院を訪れたイデ院長.そこへ,内科の初診外来を始めて間もない後期研修医が浮かぬ顔をしてやって来た.イデ院長が「どうした?」と声をかけると,「不眠の治療に悩んでいるうちに,自分も眠れなくなっちゃったんです…」と呻いたのであった.

連載 内科医のための 耳・鼻・のどの診かた・5

嗄声 笹井 恒雄 , 石丸 裕康 , 高北 晋一
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内科医にもできる!

診療に必要な知識・スキル

症例1

 72歳男性.ネフローゼ症候群でステロイド内服中.気管支喘息の合併もあり吸入ステロイド併用中であった.定期外来受診した際,以前と声が変わっていた.本人曰く,数週前より声が枯れる症状が出現したとのこと.

連載 心電図から身体所見を推測する・2

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 第1回総論(5月号)で説明したとおり,心電図には心臓以外の情報も多く含まれている.今回は胸郭の病態や身体所見を心電図から探っていきたい.

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・11

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 前回とは打って変わって,今回は完全なる失敗談.しかも通常とは異なり,他院で行われている臨床推論カンファレンスでのケースだ.近隣の長岡赤十字病院の総合診療科より依頼を受けて,2カ月に1回,私はこのカンファレンスに講師として参加している.内容は,私がまったく関わっていないケースをその病院の研修医がプレゼンテーションし,私は皆の前で自分の考えていることを「声に出しながら」臨床推論していくというものだ.また,要所要所で簡単なレクチャーも入れるように心がけている.

 このカンファレンスを,私は勝手に“Think Out Loud Conference”と名付けている.たとえ私が最終診断で間違った結論に至ったとしても,診断に迫るまでの思考プロセスを学んでもらおうとの意図がある.とはいえ,私も人間.やはり人前で大きく間違うのは,それなりに恥ずかしい.

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 総合診療のエキスパートである太田光泰先生(足柄上病院総合診療科・担当部長)と放射線腫瘍学のエキスパートである幡多政治先生(横浜市立大大学院教授)が監訳された,腹部放射線診断学を体系的に学習できる世界的名著“Meyers' Dynamic Radiology of the Abdomen, Normal and Pathologic Anatomy, sixth edition”の日本語訳版である.第1章に書かれている通り,本書は,「疾患の進展経路を説明すること」を目的に執筆された書籍である(p. 18).腹部のみならず,骨盤腔,胸部との関連について,発生学,解剖学に基づいた解説がなされている.

 本書は第1〜17章で構成されており,第1章では,腹膜腔内臓器間での進展,腹膜腔内と腹膜外腔との間での進展など,画像診断の進歩により,従来の区画化に対する画像解析では疾患進展による徴候を十分に説明できないことが明らかになったことによる新たなパラダイムの必要性が論じられている.臨床推論において想起できない疾患は診断できないのと同様に,画像診断においてもプレコンディショニング(予想,事前情報,経験)が視覚情報の多くを決定することが示されている.また,臨床推論では,最初から細部に注目するのではなく,まずは患者の全体像(ビッグピクチャー)を把握することが重要であるが,画像診断においても全体として見ることの重要性が解説されている.

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 時の流れに身をまかせ…というのはアジアの歌姫テレサ・テンの名曲であるが,日々の診療に身を任せていると刹那のうちに時は流れる.最近は2カ月,3カ月の長期処方も珍しくないので,患者さんと数回会ったらもう翌年,なんてこともざらである.そうこうするうちに,同じ処方ではや何年,処方は変わらずとも時代は着実に変わっていく.時代に追いつくために,せめて主たる診療ガイドラインだけでも目を通しておきたいと考えるのも医師であるなら当然である.昔と比べればこれらをめぐる環境は格段に改善されているので,意欲さえあればすぐに最新の診療ガイドラインに目を通すのはさほど難しいことではないはずである.意欲さえあれば.

 ただ,日々の診療で出合う疾患の診療ガイドラインは,主要なものだけに限定してもかなりの数に及ぶ.ましてや,複数の国内外の診療ガイドラインに目を通し,それぞれ比較検討するなどということは,理論的には可能だが,強い意欲に満ち溢れていたとしてもなかなか難しい.少なくとも今の私には無理である.

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 著者の倉原優先生を紹介する際には,質の高い有名なブログから始まることが多い.隠れファンの1人である筆者も,「コストを意識した吸入薬の一覧表」がSNSでアップされていたことをきっかけにコンタクトを取らせてもらった.が,実はまだお会いしたことがない.しかし,そのアプローチが奏功したのか,今回,本書の書評を書かせていただく貴重な機会を頂戴した.医師不足・偏在の存在する地域基幹病院の病院総合内科医として勤務している立場からすると「呼吸器専門医が教える診療の鉄則」であるこの書籍の存在はとても心強い(呼吸器専門医の不足・偏在については日本呼吸器学会からも提言がなされている:http://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=58).

 COPDのアウトラインについて,歴史や定義だけでなく+αの病態(話題のACOS/CPFE)にも触れておられ,さらには禁煙支援,リハビリテーション・栄養療法,そして人生の最終段階の医療の方法についても言及されているので,“疾患だけでなく,人を診る”ことを意識させてくれる.非呼吸器内科医が毛嫌いする可能性のある吸入薬についても,臨床試験結果をコンパクトにまとめながら,薬価や使い勝手についても併記されている.図表や写真が多用されているので,高い質で頭を整理するには最適の項目である.さらに第Ⅲ部「ちょっと知りたいCOPDの実臨床」には,「前立腺肥大症の併存」など,現場の悩みを共感してくれている臨床的な書籍である.

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medicina
54巻7号 (2017年6月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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