medicina 54巻8号 (2017年7月)

特集 がん診療—内科医が知りたい30のエッセンス

山内 照夫
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 がんは今や日本人の2人に1人が罹患すると言われています.したがって,がんの予防・検診,診断から最期までがん患者の病歴のどこかで医師として関わる可能性があります.これまでがん診療の多くは外科系診療科を主体に大病院で行われてきました.しかし,がん人口の増加とがん診療の複雑化に伴い,基幹病院を中心にこれからは一般開業医を含め,内科系専門診療医も連携して包括的総合がん診療に取り組む必要性があります.

 本特集では主に固形がんを対象に,がんに対する包括的総合診療を実施する際に一般医家や研修医にとって必要ながん診療のエッセンスを3部構成で系統的に取り上げています.

特集の理解を深めるための30題

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これまでがん診療の多くは外科系診療科を主体に大病院で行われてきました.しかし,がん人口の増加とがん診療の複雑化に伴い,これからは基幹病院を中心に,一般開業医を含め内科系専門医も連携してがん診療に取り組む必要性があります.今回は日本のがん医療の現状と,理想のがん診療に近づくために内科医がどのように関わっていけばよいかについてお話ししたいと思います.(山内)

総論─内科医が知っておくべきがん診療の基本

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Point

◎情報を正しく解釈するためには,統計疫学指標の定義を確認する必要がある.

◎集団寄与危険割合は各要因を足していくと100%以上になる.

◎統計,疫学は進化していくため,最新の情報のありかを知っておく必要がある.

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Point

◎がん検診は,国のがん対策の一環として実施される「対策型がん検診」と,それ以外の個人の自己責任のもとで受診する人間ドックなどの「任意型がん検診」に大別される.

◎わが国では科学的根拠による有効性が確立した5つのがん検診(胃がん,大腸がん,肺がん,乳がん,子宮頸がん)を,対策型がん検診として受診勧奨できる.

◎わが国のがん検診の受診率は低く,その精度管理も不十分である.

総論─内科医が知っておくべきがん診療の基本 【がん診療に必要な基本知識】

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Point

◎治療前に正確な病理診断と病期診断を行う.

◎臨床的診断や治療だけでなく,精神心理的診断やサポート,社会環境の把握・調整も重要である.

◎診断と治療方針の確認のために定期的な多職種カンファレンス(キャンサーボード)を行う.

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Point

◎個別医療(precision medicine)と個別化医療(personalized medicine)の違いを理解することが必要である.

◎殺細胞性抗がん剤やホルモン剤の開発の歴史とその種類を知っておく.

◎分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の作用機序ならびに有害事象について理解し,対応できるように準備する.

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Point

◎近年ではコンピュータの著しい進歩を背景に,放射線療法も急速に進歩している.

◎放射線療法の治療目的は,根治目的と症状緩和目的との2つに大別される.

◎放射線療法で最も用いられる放射線はX線である.粒子線治療ではより選択的に腫瘍に照射することが可能である.

◎放射線療法は外照射と内照射に大別され,放射線療法の大部分は外照射である.

◎近年,線量分布を改善する照射法として,強度変調放射線治療(IMRT)が普及してきている.

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Point

◎医療におけるコミュニケーションとは,医療者と患者との間で行われる,双方向性の言語的・非言語的なやりとりを指す.

◎良好なコミュニケーションは,医療者の患者に対する理解を深め,適切な症状緩和を提供するきっかけとなるのみならず,患者の治療アドヒアランスを高め,精神症状の軽減や医療への満足感の改善にもつながる.

◎基本的なコミュニケーションスキルとして,質問するスキル,傾聴,標準化,共感などが重要である.

◎がん医療において医師が患者に悪い知らせを伝える際の効果的なコミュニケーションを実践するための態度や行動としてSHAREがある.

内科医が知りたい主ながん種の知識─診断から治療まで 【消化器がん】

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Point

◎早期胃がんでは,内視鏡治療に対する絶対適応病変,適応拡大病変があり,術前の範囲診断,深達度診断が重要である.

◎内視鏡による存在診断,範囲診断は粘膜の色調変化やインジゴカルミン色素撒布およびNBI拡大観察によって行う.

◎外科的切除の適応となる早期胃がんに対する術前内視鏡検査では,術式を念頭に置いた正確な範囲診断が要求される.

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Point

◎病期診断の精度確認には,手術前後の所見の対比が大切である.

◎集学的治療により,予後の改善が認められている.

◎新規薬剤の開発や術前化学療法の研究が進行中である.

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Point

◎診断能の進歩により,早期大腸がんの検出ができるようになった.

◎内視鏡下治療の適応は,リンパ節転移の可能性が低く,一括切除可能な大きさと部位にある場合である.

◎手術療法では,原発巣の壁深達度予測に応じてリンパ節郭清範囲を選択する.

◎StageⅢ大腸がんの治癒切除後には,プラチナ製剤併用の術後補助化学療法を6カ月間実施する.

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Point

◎進行大腸がんは,積極的な化学療法と外科手術による集学的治療が重要である.

◎化学療法の進歩に伴い,遠隔転移を有する大腸がんの生存期間中央値は30カ月を超えた.

◎Key drugと分子標的薬の併用療法を理解し,症例に応じたレジメン選択が重要である.

◎治療レジメンの選択や予後予測において,遺伝子検査が必須となっている.

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Point

◎dynamic CT/MRIで早期造影効果,門脈・平衡相で低吸収域(washout)の所見が診断に重要である.

◎肝細胞がんの治療は,肝切除,肝移植,焼灼療法,肝動脈塞栓療法,化学療法,放射線療法が中心に行われている.

◎薬物療法では,一次治療としてソラフェニブ,ソラフェニブ不応例に対してレゴラフェニブが推奨されている.

◎肝細胞がんの治療法の選択においては,がんの進行度だけでなく,肝障害度も考慮することが重要である.

内科医が知りたい主ながん種の知識─診断から治療まで 【肺がん】

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Point

◎肺がんでは,①組織型,②ステージ,③年齢,④全身状態(PS),⑤バイオマーカー診断(遺伝子変異の有無やPD-L1発現の有無),の5つがわかれば治療方針を決めることができる.

◎手術,放射線治療,薬物療法を組み合わせて最大の効果が出るように治療する.

◎薬物療法では化学療法剤に加え,ドライバー変異を標的とした分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が使用される.

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Point

◎小細胞肺がんは肺がん全体の15%を占める,増殖速度の速い悪性腫瘍である.

◎集学的治療により根治が望める限局型と,より進行し根治困難な進展型に病期分類される.

◎限局型で条件が整えば,予防的全脳照射療法が推奨される.

◎免疫療法のエビデンスは確立しておらず,治療開発が進行中である.

内科医が知りたい主ながん種の知識─診断から治療まで 【乳がん】

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Point

◎早期乳がんの診断は,視触診,画像検査,病理学的検査などにより行われる.

◎局所治療(手術・放射線療法)を行うほか,全身の微小転移を根絶する目的で,サブタイプごとに適切な周術期薬物療法を行う.

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Point

◎診断時に遠隔転移を伴う原発乳がんや,手術の後に一定期間を経て遠隔再発をきたしたものを進行・転移乳がん,再発乳がんという.

◎通常は根治を目指した治療は困難であり,患者の生活の質(QOL)の低下を極力防ぎつつ,病勢のコントロールを目指す治療が中心となる.

◎治療は全身薬物療法の継続が中心となり,基本原則を理解しながら患者の状態に応じて使用薬剤の選択をしていく.

◎基本原則から外れる状況の患者への対応についても理解しておく必要がある.

内科医が知りたい主ながん種の知識─診断から治療まで 【泌尿器がん】

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Point

◎検診におけるprostate specific antigen(PSA)スクリーニングの普及により,早期の前立腺がんが多く診断されるようになったが,全年齢における明確なbenefitは確立されておらず,スクリーニングの是非については議論の余地がある.

◎確定診断には前立腺生検を,病期診断には造影CT,MRI,骨シンチグラフィを行い,評価する.

◎治療は再発リスク分類および期待余命を考慮し,前立腺全摘,放射線療法,経過観察から選択することが望ましいが,患者の希望も確認して最適な治療を選択する.

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Point

◎進行前立腺がんは適切な治療により,年単位の予後が期待できる疾患である.

◎LHRH agonistに加え,エンザルタミド,アビラテロンといった新規内分泌療法によりQOLを維持し,生存期間が伸びている.

◎進行の速い症例では,ドセタキセルなどの化学療法が症状改善と生存延長に寄与しうる.

◎鎮痛を目的とする放射線外照射に加えて生存の改善も期待できるラジウムが使用されている.

◎免疫療法の効果は限定的であり,現時点では標準療法には位置づけられていない.

内科医が知っておくべきがん患者のマネジメント

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◎抗がん剤による下痢は,発生時期により早発性と遅発性に分けられる.

◎早発性の下痢はコリン作動性の下痢,遅発性の下痢は粘膜障害が原因とされる.

◎コリン作動性のものは抗コリン薬の投与,遅発性のものはロペラミドが使用される.

◎遅発性のものでは,粘膜障害からの感染に注意する必要がある.

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Point

◎発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)を正しく診断することが重要である.

◎重症化のリスク評価を行う.

◎身体診察,原因検索により感染臓器を推定し,培養を提出する.

◎経験的治療をまず開始し,状況により治療を変更,終了する.

◎FNの発症リスクによってG-CSF製剤の予防投与を行うか検討する.

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Point

◎抗がん剤や分子標的薬による皮膚症状は,使用する薬剤の系統により大きく異なる.

◎EGFR阻害薬では,痤瘡様皮疹,乾皮症,角化,亀裂,爪囲炎などの副作用が多い.

◎マルチキナーゼ阻害薬では,手足症候群,多形紅斑などがみられやすい.

◎特に手足症候群や多形紅斑では,早急な対応を必要とする例もあるので,注意を要する.

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Point

◎がん患者ではさまざまな呼吸器合併症を起こす.

◎薬剤性間質性肺炎はがん治療の重要な副作用の1つであり,診断は除外診断による.

◎薬剤性間質性肺炎の治療は,被疑薬の中止,副腎皮質ステロイド投与,呼吸管理である.

◎適切な診断・治療のためには,呼吸器専門医との連携が必要である.

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Point

◎乳がんに対する内分泌療法は有意な骨密度低下を伴い,そのなかでアロマターゼ阻害薬(AI)については有意な骨折増加を伴う.

◎前立腺がんに対する内分泌療法(アンドロゲン除去療法:ADT)は,有意な骨密度低下を伴い,骨折の増加を伴う可能性が高い.

◎内分泌療法中の乳がん患者にビスホスホネートおよびデノスマブを投与することにより骨量は増加し,AI治療中の患者においてビスホスホネートおよびデノスマブが骨折リスクを減少させる.

◎ADT療法中の患者では,ビスホスホネート,デノスマブ,SERM(ラロキシフェン,トレミフェン)の投与により骨量が増加し,トレミフェンおよびデノスマブが骨折リスクを減少させる.

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Point

◎免疫チェックポイント阻害剤によりブレーキが解除された免疫は,免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれる特有の副作用を引き起こす.

◎irAEは理論的にあらゆる臓器で起こりうる.多彩な形で出現し,時に適切な対応の遅れが致死的になることがある.

◎irAEの診断には系統的な鑑別診断が必要である.特にがん自体の進行,感染症の合併,併用薬の副作用は重要な鑑別である.

◎irAEのマネジメントは重症度に応じて異なり,全身性ステロイドの投与が治療の中心となる.

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Point

◎がんサバイバーがもつニードに合わせたケアを行う.その際にはサバイバーの身体・心理・社会面をもれなく把握する必要がある.

◎サバイバーのケアには,健康行動の促進,対策型がん検診の推進など,予防医学の視点が重要である.

◎かかりつけ医がサバイバーを支援することが望まれる.そのためには,がん連携拠点病院が行っているがん地域連携クリティカルパスに参画する,拠点病院で定期的に開かれているがんに関する研修会に参加する,という方法がある.

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Point

◎高齢がん患者の増加が予測され,高齢者に対するがん治療は大きな課題となっている.

◎高齢者に対するがん治療の適応を判断する際,個々の患者の余命を推定することは重要である.

◎高齢者特有の問題を多面的に漏れなく把握し,治療の毒性発現や予後予測を行うツールとして高齢者機能評価の役割が期待されている.

内科医が知っておくべきがん患者のマネジメント 【オンコロジックエマージェンシー】

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Point

◎がん緊急症における脊髄圧迫症候群とは,腫瘍によって脊髄が圧迫され,疼痛とともに運動系や感覚系の神経障害を伴う病態の総称である.

◎主な原疾患は,肺がん,乳がん,前立腺がん,腎がん,原発不明がん,悪性リンパ腫,などである.

◎背部痛などの症状から本症候群を積極的に疑い,脊椎MRIによる早期診断に努める.

◎診断後は,整形外科,放射線治療科などへの診療依頼を速やかに行って,予後を考慮した治療方針を集学的に決定する.

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Point

◎がん患者の高カルシウム血症は見逃しやすいため注意する.

◎がん患者に体調不良の訴えがあれば必ずカルシウムを測定する.

◎高カルシウム血症では強い脱水症に陥っていることが多く,補液を十分に行う.

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Point

◎進行がん患者では,多様な身体・精神症状が病状の進行や治療に合わせて経時的に変化する.

◎症状の評価に当たっては,内科的な病態や原因の同定とそれらへの対応が重要である.

◎症状の評価と同時に,症状自体に対する薬物的・非薬物的治療を行うことで患者のQOL向上に繋げられる.

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Point

◎がん末期患者が最期を迎える場所は,依然として病院が多いものの,緩和ケア病棟や在宅も増えている.

◎緩和ケア病棟と在宅が連携して,患者の希望する療養を支えていくことが求められている.

◎終末期の苦痛が緩和できない場合,苦痛緩和のための鎮静を適切に行うことが重要である.

◎がん末期患者が希望する療養の場は変化することを理解して,それに対応する準備が求められている.

◎がん末期患者の身体機能は急激に悪化することを踏まえ,早めの準備を促すことが重要である.

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Point

◎標準治療は現時点での最善の治療であり,先進医療などの研究的な医療とは区別して考える必要がある.

◎標準治療は保険診療として行われる.保険診療として認められていない治療と併用するのは混合診療として,原則,禁止されている.

◎評価療養とされる治験(企業治験,医師主導治験,拡大治験)は保険診療との併用が認められ,GCP省令に従って行われる.

◎先進医療Bや患者申出診療は患者の費用負担が多く,混合診療として受けた場合との差別化について検討する必要がある.

連載 フィジカルクラブpresents これって○○サイン!?・4

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1カ月前から,急に声がかすれるようになった80代男性.

左手の母指で患者の気管を触診すると,“ドクッ,ドクッ”と拍動を触れた.

さらに,拍動を触れた部位に付箋を貼ると,心拍に一致して揺れが観察された.

【動画】(時間:14秒)

http://mv.igaku-shoin.jp/medicina/5408h01

(2019年6月30日まで公開)

連載 目でみるトレーニング

連載 心電図から身体所見を推測する・3

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 第1回「総論」,第2回「胸郭」で説明した通り,心電図には心臓以外の情報も多く含まれている.今回は肺野の病態などを心電図から探っていきたい.

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・12

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「ちょうどいい.1人,困っている患者がいるんだ.ちょっと診てくれないか?」

 お情けを受けたな,と思いつつ診察に行った患者だった.だが診察後,「原因は何だろう…」と,不謹慎ながらワクワクする自分がいた….

連載 内科医のための 耳・鼻・のどの診かた・6

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内科医にもできる!

診療に必要な知識・スキル

症例

 31歳女性.

 歯科治療中で左頰部の痛みを主訴に来院した.来院1週間ほど前に鼻汁・咳嗽・咽頭痛が同時期に同程度出現したものの体温は37℃前半だったため,様子を見ていた.症状は軽減してきたものの,来院3日程前から再度左頰部の疼痛および38℃を超える発熱が出現してきたため,救急外来を受診した.

連載 内科医のボクらに心療ができないはずがない・3

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 消化器内科医のコイズミ医師は,イデ院長からのアドバイスで,不定愁訴だらけの総合診療外来に密やかなやりがいを感じるようになっていた.しかし,今日のコイズミ医師は,なんだか様子がちょっとおかしい.定例の教育セッションのために病院を訪れたイデ院長の姿を見つけると,かなり焦った様子で走り寄ってきた.

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 「経験に基づく医療」から「科学的根拠に基づく医療」,臨床医学は20世紀末から21世紀にかけて大きなパラダイム・シフトを迎えている.賢者は歴史に学ぶ,この「歴史」とは多くの医科学者が積み重ねた科学的根拠と言い換えることができよう.臨床,研究,そして教育に情熱を注ぐ賢者,岩田 淳博士は此の度『医師として知らなければ恥ずかしい50の臨床研究:神経編』を監訳上梓し,我々を実臨床の大海原への旅に誘う.

 表紙を開くと,原著題名「50 Studies Every Neurologist Should Know」が目にはいる.原著題名にあるNeurologistの訳語である「神経内科医」に囚われない訳者らの心遣いは,いやおうなしに読者の想像力を掻き立てる.所謂一般診療でよく遭遇する認知症,てんかん,頭痛,脳血管障害について「なるほど,我々の処方の根拠はここにある」と頷くことに気がつく.神経眼科,神経耳科領域をあえて別項で取り上げた点は,症候に注目せよと警鐘を鳴らす著者一同の狙いと感服する.

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 大腸癌の罹患患者数が胃癌を超える勢いで増加している.特に男性・女性の総計では癌死亡率のトップになって久しいが,大腸癌診療に当たっては整理しなければならない,あるいは知っておくべき問題点は多い.

 大腸癌の効率的な検診はどうすべきか,受けたくない大腸内視鏡検査は本当に楽にできるのだろうか,手術は開腹が良いのか,腹腔鏡手術が良いのか,手術前に化学療法を受けるほうが良いと聞いたがそうだろうかなどなど,患者からの質問も多いこの頃である.また,血便,腹痛などの自覚症状に頼る診療では手遅れになることもしばしばである.特に右側結腸(上行結腸)では手遅れになりがちで,左側(下行結腸・S字状結腸・直腸)では症状も出やすいので,予後が良いとも言われている.

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 ネモニクス.英語では,Mnemonicsとなる.

 初めて私がMnemonicsに触れたのは,今から15年ほど前.まだUSMLEの勉強をしていたときだ.Mnemonicsという言葉にも,このとき初めて触れた.多分,TCA cycleの覚え方だったと思う.“Lindy is kinky, so she fornicates more often.”という文章である(自慢ではないが,覚えるべきその内容に関しては,全く覚えていない.また余談だが,当時妻が脇で私より早くこの文章を覚えては呟いていた.ただお互い,呪文のように唱えていただけだ.意味は,かなりsexualで過激である.興味のある方は,是非単語を調べてみてほしい).

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 久しぶりに“マイヤース”のページをゆっくりめくった.といっても日本語版である.あの世界的名著を日本語で読めることにまず驚き,さらに監訳を担当したのは,尊敬してやまない総合診療のわが師匠たちであった.感動に包まれてめくる本著は,原著第6版となり,最新でありながら,腹部臓器・疾患における普遍的な原則を放射線学という視点から理解するというスタンスを貫いていた.

 本著の最大の特徴は「腔」の描写であろう.「腔」とその区画を理解すれば,腹部疾患の限局と進展を理解できる.そしてその深い理解は,実際の医療現場では,迅速で効率的な病態の診断に繋がる.実際に私が本著に出合ったのも,研修医が終わったばかり,足柄上病院(神奈川県)で救急診療に追われる中,真夜中に一人で腹痛患者のCT画像を診断しなければいけない場面で,「腔」と「膜」を理解できていない自分に落胆し,探し当てた本であった.当時はそれを英語で読み下さなければならず,私にとっては大変な労力を要したものだが,それはそれで良い思い出だ.しかしこの日本語版を読むと,やはり日本人としてはよりしっくりくるし,研修医や救急医などが効率的に勉強するには最適な書籍になっていると思う.

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medicina
54巻8号 (2017年7月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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