書評
—太田光泰,幡多政治 監訳—マイヤース腹部放射線診断学—発生学的・解剖学的アプローチ
大平 善之
1
1国際医療福祉大・総合診療科
pp.1034
発行日 2017年6月10日
Published Date 2017/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402224964
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総合診療のエキスパートである太田光泰先生(足柄上病院総合診療科・担当部長)と放射線腫瘍学のエキスパートである幡多政治先生(横浜市立大大学院教授)が監訳された,腹部放射線診断学を体系的に学習できる世界的名著“Meyers' Dynamic Radiology of the Abdomen, Normal and Pathologic Anatomy, sixth edition”の日本語訳版である.第1章に書かれている通り,本書は,「疾患の進展経路を説明すること」を目的に執筆された書籍である(p. 18).腹部のみならず,骨盤腔,胸部との関連について,発生学,解剖学に基づいた解説がなされている.
本書は第1〜17章で構成されており,第1章では,腹膜腔内臓器間での進展,腹膜腔内と腹膜外腔との間での進展など,画像診断の進歩により,従来の区画化に対する画像解析では疾患進展による徴候を十分に説明できないことが明らかになったことによる新たなパラダイムの必要性が論じられている.臨床推論において想起できない疾患は診断できないのと同様に,画像診断においてもプレコンディショニング(予想,事前情報,経験)が視覚情報の多くを決定することが示されている.また,臨床推論では,最初から細部に注目するのではなく,まずは患者の全体像(ビッグピクチャー)を把握することが重要であるが,画像診断においても全体として見ることの重要性が解説されている.
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