臨床皮膚科 74巻11号 (2020年10月)

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要約 16歳,男性.出生時から仙骨部にえくぼのような小陥凹を認めていた.無症候に経過していたが,中学生時より尾骨部が淡紅色調に硬く隆起し増大してきた.初診時,仙骨部下方の正中に50×15mm程度のドーム状に隆起する硬い淡紅色結節を認め,その頭側に深部に向かって引きつれるような小陥凹を伴っていた.CT画像では仙尾部が直線的で尾骨先端が前方に屈曲偏位していた.また,潜在性二分脊椎と脊髄繋留を合併していた.Coccygeal padは仙尾骨部に生じる胼胝様の隆起性線維性病変であり,思春期の男性に好発する.尾骨の前方屈曲や下部仙骨の直線化を伴うことが多い.一方,潜在性二分脊椎は何らかの皮膚異常を高率に合併することが知られており,自験例ではatypical dimpleを認めた.Coccygeal padと潜在性二分脊椎はいずれも仙尾部の骨形成異常により生じる疾患であり,因果関係が推測される.仙尾部正中の皮膚異常所見を確認した際には,潜在性二分脊椎の可能性も考慮する必要がある.

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要約 症例1:76歳,女性.右肺癌の精査目的に造影CTを施行した.検査終了後,左手背から前腕にかけての皮下の腫脹を認めた.症例2:71歳,男性.食道癌の術後定期検査に造影CTを施行した.検査終了後に左前腕皮下の腫脹を認めた.いずれの症例もCT造影剤の血管外漏出と診断し,コンパートメント症候群の予防目的に切開およびドレーン留置を行った.造影剤漏出による合併症はなく,速やかに軽快した.多量の造影剤の血管外漏出時にはコンパートメント症候群をきたす可能性があり,対応を誤ると重篤な組織障害に至る.小切開とドレーン留置は外来ですぐに行える低侵襲の処置であり,多量の造影剤の血管外漏出,コンパートメント症候群を疑う所見がみられた場合,ドレナージの必要性を考慮すべきと思われた.

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要約 71歳,男性.1か月前より右下腿に限局した紅斑を伴わない1〜2cm大の緊満性水疱が出現.採血では好酸球上昇を認め,血中抗BP180抗体は陰性であった.病理組織像にて表皮下水疱および真皮浅層の血管周囲に好酸球の浸潤を認め,蛍光抗体直接法で基底膜にIgG,C3が沈着し,蛍光抗体間接法(spilt skin法)で表皮側に40倍以上で陽性であった.また,免疫ブロット法では230kD,180kD蛋白陽性であったが,BP180NC16a部位には反応を認めなかった.リナグリプチンを内服していたためDPP-4阻害薬による限局性類天疱瘡と診断し,薬剤中止にて症状は軽快した.水疱性類天疱瘡には限局した部位に水疱を生じるもの,結節,痒疹,汗疱様皮疹を呈するものなどさまざまな亜型がある.また,近年DPP-4阻害薬に関連した水疱性類天疱瘡が多数報告され,DPP-4阻害薬関連の水疱性類天疱瘡ではBP180NC16a抗体陰性,紅斑はあまり伴わず水疱・びらんが主体の臨床像と報告されており,自験例も同様の臨床所見を呈していた.

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要約 63歳,男性.53歳時から尋常性乾癬あり.初診1か月前より下肢を中心に緊満性水疱が多発するようになり当科を受診した.血清抗BP180抗体,抗デスモグレイン1および3抗体は陰性,血清TARC値は高値であった.病理組織学的に表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法で表皮真皮境界部にC3とIgGの線状沈着があり,蛍光抗体間接法でIgG抗表皮基底膜部抗体を認めた.1M食塩水剝離ヒト皮膚を基質とした蛍光抗体間接法では真皮側にIgGの線状沈着があり,正常ヒト真皮抽出液を用いた免疫ブロット法にて,患者血清中のIgGは200kDa蛋白質に陽性であった.以上から,抗ラミニンγ1類天疱瘡と診断した.治療はステロイド全身投与とメトトレキサートで行い,現在メトトレキサート単剤で抗ラミニンγ1類天疱瘡と尋常性乾癬の両疾患を寛解維持している.経過中の皮膚症状の増悪と血清TARC値の増減が一致しており,病勢との相関が示唆された.

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要約 87歳,女性.尋常性乾癬の診断でステロイド軟膏および活性型ビタミンD3軟膏外用療法中.間擦部の皮疹が難治であったため,初診2年後よりPDE4阻害薬(アプレミラスト:オテズラ®)を投与開始したところ,鼠径部に認めていた紅色局面上の小丘疹が急速に増大し巨大乳頭状腫瘤を呈した.臨床および病理組織所見より巨大尖圭コンジローマ(giant condyloma acuminatum:GCA)を疑った.PDE4阻害薬を中止し,エトレチナート(チガソン®)内服へ変更したところ,巨大腫瘤は著明に縮小し,4か月でほぼ消退した.自験例は,肥満による慢性的な刺激も巨大化の誘因として挙げられるが,PDE4阻害薬の関与も否定できない.PDE4阻害薬とGCA発症の関連は定かではないが,過去に同様の副作用報告もみられることから,PDE阻害薬投与中は陰部肛門部の観察も重要であると考える.

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要約 91歳,女性.右拇指球部の皮疹を主訴に受診.初診時14×21mm大の辺縁に鱗屑を付す境界明瞭で軽度陥凹した楕円形の淡紅色皮膚陥凹病変を認めた.病理組織学的に健常部から病変部に移行するにつれ角層が階段状に菲薄化するとともに顆粒層も減少し,病変部中央側では不全角化を認めた.Circumscribed palmar hypokeratosisと診断した.活性型ビタミンD3製剤を密封外用したところ,半年後に辺縁の隆起は若干改善した.自験例は本邦報告例中最高齢であった.病理組織所見として不全角化を示した点が特徴であり,病変部でのサイトケラチン(CK)10の発現減弱と,CK16の発現増強がみられた.自験例では,加齢に伴う皮膚菲薄化により外的刺激などの影響を強く受け特徴的なケラチンの発現様式を呈した可能性があると考えた.

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要約 73歳,男性.4年前に肺アスペルギルス症の治療のためボリコナゾールを内服開始した.2年前から頭部,顔面,両手背に角化性の丘疹,紅斑が多発した.病理組織所見は,顔面は有棘細胞癌,頭部・手背は日光角化症であった.ボリコナゾール内服中止とイミキモド外用により皮疹は改善した.ボリコナゾールは,その代謝物が紫外線を吸収して活性酸素を産生し,表皮のDNA損傷を惹起する.さらにボリコナゾールそのものがCOX-2の転写活性を誘導することで発癌を促進させる可能性が示されており,長期内服中に光線過敏症状を経て日光角化症,有棘細胞癌を生じうる.ボリコナゾールの光線関連皮膚障害は本邦ではまだ報告が少ないものの,十分な遮光指導を受けていない肺アスペルギルス症の患者に多い.ボリコナゾール内服患者には具体的な遮光指導と慎重な皮膚症状の経過観察を行うことで,光線関連皮膚障害を最小限に抑えることが期待できる.

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要約 72歳,女性.初診の約10年前に腹部に生じたBowen病の手術歴あり.その後,右肩部・右側胸部・右側腹部に角化を伴う紅斑が3か所出現した.治療として切除を行い,いずれも病理組織学的にBowen病であった.多発Bowen病の発症に砒素が関連している可能性を考えて問診を行ったところ,生下時より約30年間,井戸水を飲料水として使用していたことが判明した.砒素や放射線に曝露する職業歴はなく,長期間の紫外線曝露歴もないことから,自然由来の少量の砒素が混入した井戸水摂取による慢性砒素中毒による多発Bowen病と考えた.今後,日本ではこのような症例はみられなくなっていくと思われるが,海外では依然として砒素の関与する皮膚疾患がみられることを鑑みると,多発Bowen病の原因として砒素の関与を念頭に置き,井戸水の摂取が砒素曝露になりうるということを知っておくことは皮膚科医として必要であると考える.

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要約 73歳,男性.約47年間アスベスト曝露歴があった.当院受診1年前に左気胸を発症し,左胸腔にトロッカーを挿入されて手術を受けた.半年前から左胸部のトロッカー挿入部の瘢痕に一致して皮下腫瘤が出現した.3か月前から咳嗽が出現し,他院で胸部X線上透過性低下を指摘され,気管支炎として加療されたが改善せず,当院内科を受診し,皮下腫瘤につき当科を紹介受診した.腫瘤の生検病理組織では異型細胞が真皮膠原線維間に増生する像を認めた.異型細胞はカルレチニンおよびD2-40陽性で,p40,p63,TTF-1,ナプシンAはいずれも陰性であった.気管支擦過細胞診,肺生検でカルレチニン陽性の異型細胞を認め,皮下腫瘤はトロッカー挿入による悪性胸膜中皮腫の皮膚転移と診断した.悪性胸膜中皮腫は肺癌と比較して経皮的医療行為による播種が多く,穿刺や手術部位に一致して皮下腫瘤が出現した場合は皮膚転移を疑い,積極的に精査を行うべきである.

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要約 53歳,女性.初診2週間前に臍部の結節に気が付いた.臍部右壁に1.5×0.7cm大の広基性の暗紅色結節あり,ダーモスコピーでは色素ネットワークや色素小点・小球など色素性病変を示唆する所見は認められなかった.腹部・骨盤単純CTで尿膜管遺残症を疑う索状構造を認め,切除のため腹腔鏡下尿膜管摘出術臍形成術を行った.臍部の結節に関して病理組織では腫瘍細胞が胞巣状に増殖し,HMB-45,Melan-A,S100蛋白いずれも陽性であり,臍部原発悪性黒色腫と診断した.術後瘢痕部から2cm離して深部は腹膜まで含めた拡大切除を施行した.センチネルリンパ節生検の結果は陰性であった.以上より病期はpT4bN0M0,Stage ⅡCと診断した.臍部の結節では尿膜管遺残症を疑う所見が併存していても,悪性腫瘍を念頭に置き可能であれば生検を行い手術方法を検討すべきと考えられた.

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要約 67歳,男性.初診3年前に前胸部の紅色結節を自覚した.2年前より出血するようになったために近医を受診した.液体窒素冷凍凝固術を施行されたが改善せず,生検したところ,低分化の肉腫と診断され当科に紹介された.前胸部に2.5×2.5cm大の潰瘍を有する紅色の有茎性結節を認めた.1cmマージンで全摘皮膚生検術を施行した.病理組織学的には明瞭な核小体を持つ異型な核と,紡錘形ないし多辺形の細胞質を持つ異型細胞が胞巣を形成していた.免疫組織学的には,D2-40,CD31が陽性であり,CD34が陰性であることより血管肉腫と診断した.術後5年ほど経過しているが,明らかな再発・転移を認めていない.非頭頸部の血管肉腫の予後は良好とする報告がある.その理由として頭頸部と比較して切除マージンが取りやすい,完全切除が容易な単発性結節型が多い可能性,リンパ管への分化傾向を有している可能性が考えられた.

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要約 44歳,男性.血液透析中.中学生の頃から体幹に排膿を伴う皮疹が生じ,増悪寛解を繰り返していた.皮疹が増悪し,疼痛も増強したため当科に紹介された.受診時,両腋窩,下腹部,鼠径部に発赤腫脹を認め,排膿を伴う瘻孔が数か所開口し,左臀部と右鼠径部には膿瘍を伴っていた.化膿性汗腺炎と診断し,外科的処置や抗菌薬内服にて加療したが,炎症は持続し,瘻孔からの排膿も続いた.アダリムマブを導入後,皮疹は速やかに改善し,約1か月で治療効果指標であるhidradenitis suppurativa clinical response(HiSCR)を達成した.血液透析患者では感染症罹患のリスクが高く,生物学的製剤の使用は慎重になる.自験例では抗菌薬を使用しながら導入を行い,定期的な血液検査と画像検査により,導入後9か月間,感染症の罹患なく安全に治療が継続できている.

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要約 62歳,男性.初診の2〜3週前より背部痛があり,疼痛の増強と発熱のため当院を受診.左上背部に21×15cmの発赤を伴い波動を触知する皮下腫瘤があった.皮下膿瘍の臨床診断で,切開排膿後,入院し抗菌薬の点滴静注を開始した.血液培養と創部培養からActinomyces naeslundiiが検出されたため,抗菌薬をアンピシリン点滴静注に変更し,第24病日からはアモキシシリン内服とし,6か月間内服を継続して治療を終了した.その後,外来で経過観察中であるが,再発はない.皮膚科領域で放線菌症を治療する機会は少なく,巨大皮下膿瘍と菌血症を呈した例は稀であり,報告する.

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要約 17歳,女性.蚊に刺された部分の水疱形成と,周囲の発赤と腫脹,38℃台の発熱を認めたため蜂窩織炎の疑いで紹介され当院を受診した.抗菌薬とプレドニゾロンの内服で症状は改善したが,1か月後に再度蚊に刺された際に同様の症状を繰り返し再診した.病理組織学的に蚊刺部にCD4T細胞の増殖とEBER(Epstein-Barr virus-encoded small nuclear RNA)陽性リンパ球の浸潤を認めたこと,末梢血中EBV(Epstein-Barr virus)-DNA量3.6×104copies/cellsと高値であったことから,Epstein-Barr(EB)ウイルス関連蚊刺過敏症と診断した.EBウイルス関連蚊刺過敏症はEBウイルスが感染したT/NK細胞がモノクローナルに増殖する疾患群の一型である.蚊刺刺激によるCD4T細胞の増殖は,発熱などの全身症状の出現と関与していることが知られているが,近年EBウイルスT/NK細胞の増殖にも関与していることが明らかとなった.自験例では蚊刺部でCD4T細胞が増殖しており,症状出現のみならず疾患の進行を抑制するためにも,蚊刺刺激を避けることの重要性が示唆された症例であった.

マイオピニオン

皮膚病理はどうあるべきか 安齋 眞一
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 今回,日本の皮膚病理の現状を総括させていただく機会を得たことを非常にありがたく思っています.拙文では,本来,微妙にニュアンスのことなる皮膚病理学と皮膚病理診断学という言葉をまとめて「皮膚病理」と表現し,「皮膚病理にかかわる医師をいかに増やすか?」と「日本の皮膚病理のレベルをどうやって上げるか?」の2つ課題に関して述べたいと思います.

連載 Clinical Exercise・158

考えられる疾患は何か? 松本 優香
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症例

患 者:71歳,女性

既往歴:糖尿病

現病歴:初診の8年前に両上眼瞼に腫脹が出現し,近医にてベタメタゾン1mg/日の内服を開始され両上眼瞼の腫脹は軽快した.ベタメタゾン開始5年後に,糖尿病のためベタメタゾンの内服を中止されていた.その3年後に両上眼瞼の腫脹が再燃し,当科を紹介され受診した.

現 症:両上眼瞼に著明な腫脹を認めた(図1).発赤や熱感,圧痛は認めなかった.

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目次

欧文目次

文献紹介

次号予告

あとがき 玉木 毅
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 7月号のあとがきで石河先生も書かれていたが,なかなか新型コロナウイルス感染拡大の終息が見えてこない中,当方もいろいろなことが軒並みWeb経由になっている.学会・講演会をはじめ,院内外の諸会議,大学の講義やMRさんとの面談もほぼWeb経由になった.実は本誌の編集会議もWeb会議になっている.Zoom・Teams・Skypeなどの使用にもだいぶ慣れてきた.

 物理的な移動を要しないから時間を効率的に使える反面,今一つ相手の反応が直に伝わってこないもどかしさも感じる.また大人数のWeb会議などで,あえてミュートを解除して発言するのは,対面会議よりもかなりハードルが高いような気がする.実際Web会議では予定以外の発言は,対面会議より圧倒的に少ない.日本皮膚科学会東京地方会も今年度は全部Web開催になったが,おそらく質疑応答は激減するのではないかと懸念している(新人の先生などは,かえってほっとしているかもしれないが).

基本情報

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臨床皮膚科
74巻11号 (2020年10月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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