Japanese
English
症例報告
井戸水摂取が原因と考えられた多発Bowen病の1例
A case of multiple Bowen's disease probably induced by drinking well water
渡邉 裕介
1
,
川邉 瑠璃子
1
,
鈴木 大介
1,2
Yusuke WATANABE
1
,
Ruriko KAWANABE
1
,
Daisuke SUZUKI
1,2
1独立行政法人地域医療機能推進機構 東京新宿メディカルセンター皮膚科
2公立昭和病院皮膚科
1Division of Dermatology, JCHO Tokyo Shinjuku Medical Center, Tokyo, Japan
2Division of Dermatology, Showa General Hospital, Koganei, Japan
キーワード:
多発Bowen病
,
砒素
,
井戸水
Keyword:
多発Bowen病
,
砒素
,
井戸水
pp.893-896
発行日 2020年10月1日
Published Date 2020/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206183
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要約 72歳,女性.初診の約10年前に腹部に生じたBowen病の手術歴あり.その後,右肩部・右側胸部・右側腹部に角化を伴う紅斑が3か所出現した.治療として切除を行い,いずれも病理組織学的にBowen病であった.多発Bowen病の発症に砒素が関連している可能性を考えて問診を行ったところ,生下時より約30年間,井戸水を飲料水として使用していたことが判明した.砒素や放射線に曝露する職業歴はなく,長期間の紫外線曝露歴もないことから,自然由来の少量の砒素が混入した井戸水摂取による慢性砒素中毒による多発Bowen病と考えた.今後,日本ではこのような症例はみられなくなっていくと思われるが,海外では依然として砒素の関与する皮膚疾患がみられることを鑑みると,多発Bowen病の原因として砒素の関与を念頭に置き,井戸水の摂取が砒素曝露になりうるということを知っておくことは皮膚科医として必要であると考える.
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