臨床皮膚科 71巻3号 (2017年3月)

連載 Clinical Exercise・115

Q考えられる疾患は何か? 森本 亜希子
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症例

患 者:66歳,女性

主 訴:体幹,上肢に多発する茶褐色の小丘疹

既往歴:帯下増加症状のため,5年前よりエストリオール内服治療中.

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:5年前に上肢に自覚症状のない粟粒大の茶褐色丘疹が出現した.徐々に増加し,体幹に拡大してきたため,当科を受診した.

初診時現症:胸腹部を中心とした体幹と両上肢に粟粒大の茶褐色小丘疹が左右対称性に多発していた(図1a,b).眼瞼周囲には半米粒大の常色小丘疹がみられた.いずれも自覚症状はなかった.

マイオピニオン

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1. 病院に勤務する常勤医の数は減少している

 日本臨床皮膚科医会の勤務医委員会の全国調査では,皮膚科常勤医がいる一般病院は平成21年(2009年)の892施設から平成26年(2014年)には796施設へと減少し,一般病院に常勤する皮膚科医の数も1,510名から1,445名に減少している1).病院に勤務する皮膚科医の減少は,重症あるいは難治な皮膚疾患の診療を受ける機会と施設の減少に直結し,社会全体の不利益になることが危惧される.

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要約 2歳,男児.生後半年頃から両手足爪の肥厚を認めた.1歳6か月検診時に爪の異常を指摘され,近医皮膚科を受診した.爪白癬として外用加療されたが改善なく,外胚葉形成不全症が疑われたため精査目的で当科を紹介され受診した.手足爪の症状以外に先天歯と軽度の乏毛症を認めた.家族には同様の症状を認めなかった.患者と両親の末梢血DNAを用いて遺伝子解析を施行した結果,患者のKRT17遺伝子に既知のミスセンス変異をヘテロ接合体で同定し,先天性爪甲硬厚症2型と診断した.患者の両親には同変異が同定されなかったことから,de novoで生じた変異と推測される.近年の分子生物学の進歩に伴い,本疾患に対する遺伝子治療が可能な時代を迎えつつあることも踏まえ,わずかな症状も見逃さず,早期診断に努めることが重要と考える.

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要約 45歳,女性.市販のゼロカロリーくずもちを摂食した15分後より顔面の瘙痒感,浮腫が出現した.その後全身に蕁麻疹が出現,呼吸困難,血圧低下を呈し,近医でアナフィラキシーショックと診断された.精査目的で当科を受診し,甘味料であるエリスリトールによる即時型アレルギーが疑われた.プリックテスト陰性,皮内テスト陽性,好塩基球活性化試験陰性,経口負荷試験陽性で,エリスリトールアレルギーと診断した.エリスリトールアレルギーは近年報告が増加しているが,その診断は難しい.プリックテストや好塩基球活性化試験は偽陰性となることがあるため,注意が必要である.

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要約 49歳,女性.花粉症に対して日頃からエバスチンを内服していたが,数年ぶりにオキサトミドを内服した.その約5時間後から,下口唇(白唇部含む),口腔内,外陰部に違和感を自覚した.翌日から同部位に有痛性の紅斑,びらんが出現し,徐々に増悪した.発熱はなかったが,粘膜病変が著しかったので,入院のうえプレドニゾロン40mg(0.6mg/kg)を全身投与した.薬剤リンパ球刺激試験は陰性.パッチテストは皮疹部(下白唇部)で陽性,無疹部(上腕内側)で陰性であった.内服誘発試験も陽性となり,オキサトミドによる固定薬疹と診断した.抗ヒスタミン薬による粘膜病変が著明であった固定薬疹の報告は,われわれが調べえた限りでは皆無であった.また,自験例の経験を通じて,抗ヒスタミン薬も薬疹の被疑薬となりうることを再確認させられた.

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要約 20歳,男性.当科初診の約40日前に嚥下困難が出現し,当院内科で上部消化管内視鏡検査を施行した.食道にびらんがみられ,逆流性食道炎と診断され,ランソプラゾールを30日間投与されたが改善がなかった.7日前より舌から喉頭にびらん,潰瘍が出現した.当院耳鼻科でヘルペス感染症を疑われ,アシクロビルを7日間投与されたが改善せず,抗デスモグレイン3抗体が118U/mlと上昇していたため,当科を紹介受診した.舌から喉頭にかけて母指頭大までのびらん,潰瘍が散在し,軟口蓋びらん部の病理組織像で基底細胞が一層残存し,棘融解細胞を認めた.また,蛍光抗体直接法で,表皮細胞間へのIgG,C3の沈着を認め,粘膜優位型の尋常性天疱瘡と診断した.プレドニン70mg/日(1mg/kg)を開始し,約40日後には粘膜疹は上皮化し,抗デスモグレイン3抗体も30U/ml台まで改善した.粘膜優位型の尋常性天疱瘡では,食道病変が初発症状となることもあり,診断には注意が必要である.

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要約 35歳,女性.初診の2か月前から顔面,軀幹,四肢に軽い瘙痒を伴う紅色皮疹が出現し拡大したため当科を紹介された.初診時,軀幹と四肢に,周囲に鱗屑を付着する母指頭大までの乾癬様の紅斑および赤橙色を呈した毛孔一致性丘疹の集簇を認めた.掌蹠は全体的に潮紅し,著明に角化していた.左大腿外側皮疹の病理組織像では,角層と表皮に肥厚を認めたが,顆粒層の消失や表皮突起の棍棒状の延長はなく,また,真皮浅層の炎症細胞浸潤は軽度であった.臨床像および皮膚生検病理組織像より,自験例を毛孔性紅色粃糠疹と診断した.患者が挙児希望のため,シクロスポリンの内服にて加療し,3か月後に軽度の紅斑を残して略治した.本疾患の内服薬の第一選択はエトレチナートとされているが,エトレチナートが使用困難な症例において,シクロスポリンは有力な選択肢になりうると考えた.

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要約 82歳,女性.13年前胃癌全摘,2年前よりアルツハイマー型認知症あり.介護度は全介助で,おむつを着用していた.1か月前より臀部,大陰唇に弾性硬,紫紅色の扁平隆起性結節が左右対称性に多発,部分的に融合し敷石状を呈していた.発症前後で下痢,軟便があった.生検病理組織像にて表皮突起の延長,真皮浅層血管周囲に形質細胞,好酸球,好中球を含む単核球浸潤を認め,diaper area granuloma of the agedと診断した.清潔指導およびベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルの外用を行い,2週間後には軽快した.過去30年の文献検索で自験例を含めた22症例を集積検討した結果,20例が女性と明らかに性差があることを見出し,その原因について考察した.

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要約 35歳,男性.初診の約2か月前に,右上肢に自覚症状を伴わない丘疹が出現し,近医にてステロイド外用治療が行われたが軽快せず,当科紹介となった.肉眼では淡紅色の丘疹が多発しており黄色調は明らかではなかったが,ダーモスコピーでは黄白色の丘疹が確認できたために行った採血にて著明な脂質異常症と糖尿病を認めた.発疹性黄色腫を疑い,生検を行い確定診断した.血中トリグセリド値のコントロールにより,発疹は消退した.ステロイド外用でも難治な白色から黄色調の丘疹をみた場合はダーモスコピーでの観察をする価値があると考えた.

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要約 78歳,男性.約25年前に右外果腫瘤に気付いたが,自覚症状がないため放置していた.その後,腫瘤は徐々に増大し,10日前から疼痛が出現し,当科を受診した.右外果に潰瘍を伴う直径7cm大のドーム状に隆起した腫瘤があり,潰瘍内部には白色漆喰状の内容物を有していた.末梢血で尿酸値が8.7mg/dlと上昇し,痛風結節を疑い一部を生検した.組織では,HE染色(ホルマリン固定)で真皮に無定形物質が存在し,一部では針状の空隙が束状に集合していた.白色漆喰状物質のアルコール固定標本では,淡紅色調から褐色調の針状結晶を認め,デガランタ染色では黒色調に染色された.偏光顕微鏡下では,黄白色の光輝性結晶が観察された.痛風結節の診断で,結晶の可及的除去と,薬物治療を開始し,腫瘤の縮小がみられた.痛風結節は組織所見にて診断が確定でき,薬物治療による尿酸値のコントロールにて腫瘤が縮小していく場合がある.

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要約 29歳,女性.出生時より頸部正中やや左側に小腫瘤を認めていた.2014年11月末頃より腫瘤の腫脹,疼痛が出現したため当科を受診した.甲状舌管囊胞などを疑いMRI検査を行ったが,舌骨あるいは近隣組織との瘻孔や索状物などを示唆する所見はなく,皮膚〜皮下脂肪組織内の腫瘍であった.局所麻酔下で摘出したところ,囊胞壁は多列線毛円柱上皮で構成され,平滑筋成分を伴っていたことから気管支原性囊胞と診断した.気管支原性囊胞が皮膚に生じることは稀であるが,他の先天性頸部腫瘍と同様に近接組織との瘻孔や索状物などが存在することがあり注意が必要である.

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要約 29歳,男性.3年前より頸部に皮下結節を認め,2年前より上腹部に皮下結節が出現した.血中好酸球数,IgEが高値であり,上腹部の結節の超音波所見では,円形から卵円形の境界不明瞭な低エコー領域内にwoolly appearanceを認めた.上腹部の結節に対する皮膚生検より木村病と診断し,ステロイドの内服を行ったところ縮小傾向がみられた.頭頸部・上肢に生じた木村病において超音波検査の有用性が報告されているが,本症では稀な体幹部の皮疹においても同検査は有用であると考えた.

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要約 35歳,男性.初診3か月前より左眉毛内側に痤瘡様の丘疹が出現,当院受診時には径2cmの有茎性紅色腫瘤を呈し,急速な増大傾向を認めた.病理組織像では,真皮内に不規則に分葉した胞巣から成る比較的境界明瞭な囊腫様病変を認めた.胞巣辺縁部に好塩基性細胞を,その内側に陰影細胞と出血像を認めた.好塩基性細胞はいずれの部分においても核分裂像やクロマチンの濃染が目立ったが,明らかな異型は認めなかった.急速に増大した臨床経過と多数の核分裂像を伴ったことから,pilomatrix carcinomaとの鑑別を要したが,組織像にて異型性に乏しく,周囲への浸潤性増殖を認めず,毛母腫と診断した.このような特異な組織像を呈したのは,腫瘍が急速な増殖過程にあるためであり,Kadduらの提唱したproliferating pilomatricomaの疾患概念に合致すると考えられた.

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要約 67歳,男性.10年前に陰囊をズボンのファスナーで挟んで生じた傷が拡大したため,当科を受診した.陰茎基部に浸潤を伴った不整形の潰瘍を認め,病理組織学的に有棘細胞癌と診断した.MRI検査で尿道海綿体への浸潤が認められ,陰茎を含めた外科的切除が予定されたが,患者の強い性器機能温存の希望があり,シスプラチンとドキソルビシン併用による化学療法に加えて,放射線治療の併用により加療した.治療により腫瘍は退縮し,画像上では腫瘍は縮小し,病理組織学的に腫瘍細胞の消失が確認された.治療中に軽度の悪心と食欲低下がみられたが,重篤な有害事象は認めなかった.陰茎基部に出現した有棘細胞癌に対して,シスプラチンとドキソルビシン併用による化学療法に加えて,放射線治療の併用は整容的見地や機能保存の観点からも高い治療効果が期待できる治療法と考えられた.

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要約 症例1:7か月,男児.BCG接種1週間後より体幹四肢に半米粒大の丘疹が多発した.病理組織像にて真皮に非乾酪性類上皮肉芽腫を認めた.経過観察で自然軽快した.症例2:8か月,男児.BCG接種1か月後より接種痕と少し離れた皮下に硬結が出現した.病理組織像にて皮下に乾酪肉芽腫を認めた.自然消退を認めず,全摘を施行した.BCGワクチンにおける異なる皮膚副反応を経験した.BCG接種がすべての乳幼児に定期化されてからBCGワクチンの副反応の報告は増加しており,皮膚病変に関しては小児科ではなく皮膚科を受診する例も多い.BCG接種後の小児を診察する際には,副反応の存在を念頭に置き,また皮疹を鑑別して適切な治療を選択することが重要である.

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要約 80歳,女性.基礎疾患に関節リウマチあり.ステロイドと免疫抑制剤内服中.初診の1か月前から左前腕に一部丘疹を伴う浸潤性紅斑が出現した.生検病理組織所見で深在性真菌症が疑われ,Grocott染色,PAS染色で陽性の菌体要素がみられた.組織の真菌培養にてCryptococcus neoformansと同定した.血中クリプトコッカス抗原も512倍以上と陽性であった.肺病変 中枢神経病変などはみられず,原発性皮膚クリプトコッカス症と診断した.イトラコナゾール100mg/日を2か月内服にて前腕の紅斑は軽快したが,前腕の丘疹が再燃してきたため,イトラコナゾール200mg/日へ増量したところ略治した.露出部に浸潤性紅斑を見た場合深在性真菌症も鑑別に入れ,皮膚生検,組織真菌培養を積極的に施行すべきと考える.

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要約 63歳,女性.自己免疫性肝炎に対してプレドニゾロン20mg/日およびアザチオプリン50mg/日の内服で加療中であった.左手指の紅斑・びらんを主訴に当科を受診した.皮膚生検および培養検査にて皮膚プロトテコーシスと診断した.イトラコナゾール100mg/日で内服加療を3か月行ったが改善乏しく,200mg/日に増量した.その後,3か月で紅斑,びらんは褐色調の色素沈着を残すのみとなった.プロトテコーシスとは,葉緑体を欠く藻類に分類されるプロトテカによる稀な感染症である.自然界に広く分布し,免疫不全状態が感染のリスクとされる.プロトテコーシスは病理組織検査と培養検査によって特徴的な所見を示すことから,免疫不全患者で難治性皮膚病変を認めた際は,本症も念頭に置き確実に診断することが重要であると考えた.

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要約 60歳,女性.5日前に陰部に有痛性皮疹を生じた.両側大小陰唇,会陰に膿苔を付着したびらんがあり,肛門から会陰にかけて小型の膿疱が散在していた.上半身にも同様の膿疱が分布していた.肛門部と左上肢の膿疱の生検でいずれもすりガラス様の核を持った変性表皮細胞があり,免疫染色で2型単純疱疹ウイルスが陽性であった.二次感染および汎発疹を合併した陰部単純疱疹と診断した.アシクロビルとピペラシリンの投与で皮疹は軽快した.帯状疱疹とは異なり陰部単純疱疹の汎発疹は少なく,その多くは乳幼児や重篤な基礎疾患を持った症例である.自験例は通常の健康状態と思われ,このような個体における単純疱疹の汎発疹は遭遇することが稀なことから,特記すべき症例と考え報告する.

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欧文目次

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 生体内でL-トリプトファンをL-キヌレニンに変換する酵素であるIDO〔indoleamine-(2,3)-dioxygenase〕は,さまざまな癌で発現していることが知られている.L-トリプトファンの局所的枯渇はT細胞の抑制やTregの誘導による抗腫瘍免疫抑制状態を作り出すことが明らかになっている.本試験において用いられたインドキシモドはIDO経路阻害薬であり,前臨床試験では乳癌モデルマウスに対して化学療法と併用することで相乗効果が得られた.本試験はドセタキセルとインドキシモドの併用療法における安全性を検討するために計画された.

 試験デザインとしては,ドセタキセルを3週おきに60mg/m2から75mg/m2への増量,インドキシモドは300mg分2より2,000mg分2まで増量する5つのコホートでの3+3試験であり,至適投与量を決定するため用量制限毒性を評価し,副次的に血中薬物濃度を測定した.

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 疥癬は,ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)が角層に寄生し,人から人へ感染する皮膚疾患である.集団発生が問題となるが,途上国では掻破からの細菌感染が膿痂疹を生じ,敗血症,糸球体腎炎,リウマチ性心疾患などの重大な疾患を引き起こすことが問題となっている.感染者の大部分が亜熱帯地域に生活しており,このような地域では疥癬が風土病となっているため,感染者とその接触者を治療してもすぐに再感染してしまう実態がある.そこで筆者らは疥癬治療薬の集団投与を行い,疥癬の感染コントロールに対する効果を検討するため比較介入試験を行った.

 対象国はフィジー共和国で,複数の島からなる3つのコミュニティーが研究対象集団として選ばれ,それぞれ3種類の介入群(感染者およびその接触者に対しペルメトリンを投与する標準治療群,ペルメトリンの集団投与群,イベルメクチンの集団投与群)を無作為に割り付けた.最終的に研究にエントリー可能だったのは,イベルメクチン群587人,ペルメトリン群449人,標準治療群746人だった.主要評価項目は,ベースラインから12か月後までの疥癬有病率と膿痂疹有病率の変化とした.結果,疥癬の有病率は,標準治療群で36.6%から18.8%(相対低下率49%),ペルメトリン群で41.7%から15.8%(相対低下率62%),イベルメクチン群で32.1%から1.9%(相対低下率94%)と全群でいずれも有意に低下したがイベルメクチン群で最も低下した.膿痂疹の有病率も,標準治療群で21.4%から14.6%(相対低下率32%),ペルメトリン群で24.6%から11.4%(相対的低下54%),イベルメクチン群で24.6%から8.0%(相対的低下67%)と全群で優位に低下したが,イベルメクチン群で最も低下した.有害事象はイベルメクチン群でペルメトリン群よりも多く報告されたが(15.6%対6.8%),重篤なものは認められなかった.

次号予告

あとがき 渡辺 晋一
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 最近学会発表や投稿論文に不正確な診断がされている症例が増えているような気がする.さらに写真を示すだけで,現病歴や臨床・病理所見の記載が不十分なために,診断の問題点を検証しづらくなっている.つまり,典型的な症状がそろわなくても,自分が知っている珍しい疾患と1つでも共通点があれば,その診断にしてしまいがちである.特に自分の専門とする病気に結びつけてしまうことが多い.確かに専門医になるために,学会報告や論文を作成しなければならない事情はよく理解できるが,誤診例を今まで報告がない珍しい症例として報告するのはいかがなものであろうか.珍しい症例であればあるほど,本当にその診断が正しいのかを冷静になって考え直す必要がある.いったんこれらの症例が論文化されると,その論文を読んだ人も,同じような間違いをおかすことになる.実際にいくつかの論文の投稿があり,診断の問題点を指摘すると,「どこどこの雑誌に同じ症例があるから」とか「学会で発表したが,何も質問がなかったから」というコメントをもらうことがある.何も質問がないこととその発表が正しいということとは無関係である.これを防ぐために,問題点があれば,不興を買おうが積極的に質問をするべきである.また投稿論文の査読者の質も問題となっている.実際に症例報告として雑誌に掲載された症例でも誤診と思われる症例はある.特に臨床研究では,特定の症例を集めて,その検査データや治療データなどを新知見として報告するわけであるが,診断が正しくないと,集積されたデータは意味がない.しかし実際は新知見を得られたとするために,都合が良いデータを示す症例だけを集積した論文になることが多い.症例報告と異なり,臨床研究論文では,診断が正しくなされているかを検証することはきわめて困難である.もう一方の問題は,rejectされた論文のゆくえである.つまり査読者にその知識が不十分であると,投稿論文をrejectする可能性があり,素晴らしい論文や教育的な論文が日の目を見ないことになる.つまり査読者の責任は重い.今回『臨床皮膚科』の編集委員を降りることになったが,長いようで,あっという間の出来事であった.本誌のあとがきで日本の皮膚科の問題点を指摘する機会がなくなり,非常に残念であるが,査読の重責から解放されることに安堵している.

基本情報

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臨床皮膚科
71巻3号 (2017年3月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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