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疥癬は,ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)が角層に寄生し,人から人へ感染する皮膚疾患である.集団発生が問題となるが,途上国では掻破からの細菌感染が膿痂疹を生じ,敗血症,糸球体腎炎,リウマチ性心疾患などの重大な疾患を引き起こすことが問題となっている.感染者の大部分が亜熱帯地域に生活しており,このような地域では疥癬が風土病となっているため,感染者とその接触者を治療してもすぐに再感染してしまう実態がある.そこで筆者らは疥癬治療薬の集団投与を行い,疥癬の感染コントロールに対する効果を検討するため比較介入試験を行った.
対象国はフィジー共和国で,複数の島からなる3つのコミュニティーが研究対象集団として選ばれ,それぞれ3種類の介入群(感染者およびその接触者に対しペルメトリンを投与する標準治療群,ペルメトリンの集団投与群,イベルメクチンの集団投与群)を無作為に割り付けた.最終的に研究にエントリー可能だったのは,イベルメクチン群587人,ペルメトリン群449人,標準治療群746人だった.主要評価項目は,ベースラインから12か月後までの疥癬有病率と膿痂疹有病率の変化とした.結果,疥癬の有病率は,標準治療群で36.6%から18.8%(相対低下率49%),ペルメトリン群で41.7%から15.8%(相対低下率62%),イベルメクチン群で32.1%から1.9%(相対低下率94%)と全群でいずれも有意に低下したがイベルメクチン群で最も低下した.膿痂疹の有病率も,標準治療群で21.4%から14.6%(相対低下率32%),ペルメトリン群で24.6%から11.4%(相対的低下54%),イベルメクチン群で24.6%から8.0%(相対的低下67%)と全群で優位に低下したが,イベルメクチン群で最も低下した.有害事象はイベルメクチン群でペルメトリン群よりも多く報告されたが(15.6%対6.8%),重篤なものは認められなかった.
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