臨床皮膚科 71巻10号 (2017年9月)

連載 Clinical Exercise・121

Q考えられる疾患は何か? 小林 里実
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症例

患 者:62歳,女性

主 訴:軀幹,四肢,掌蹠の膿疱,左下腿の硬結を触れる紅斑

家族歴:父に高血圧

既往歴:45歳より潰瘍性大腸炎がありメサラジン(ペンタサ®)内服中.

現病歴:数年前より扁桃炎を繰り返していた.初診の4か月前より足底の膿疱と胸鎖関節炎が出現した.2か月前より左膝蓋下方に硬結を触れる紅斑が出現し,約1か月で軽快した.初診の6日前より38℃台の発熱と咽頭痛を認め,その2日後より胸鎖関節痛の増強と全身に膿疱が多発し,左膝蓋下方に硬結を触れる紅斑を認めた.

初診時現症:軀幹,四肢に紅暈を伴う膿疱が散在性に多発し(図1a),右手掌と右足底には集簇性あるいは散在性の膿疱と紅斑,鱗屑を認めた(図1b).左膝蓋下方には硬結を触れる手掌大の紅斑があり,圧痛を伴っていた(図1c).

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 1.はじめに

 最近のグローバル化時代を受け,感染症の拡散ならびに感染症対策が加速化している.世界三大感染症といわれるAIDS,マラリア,結核はいまだにその脅威の終焉からほど遠いが,新たな感染症にも焦点があたるようになっている.感染症対策というと皮膚科とはあまり縁のないことのように考えられがちだが,この流れの中で皮膚科医の活躍が必要とされる分野ができつつある.筆者も皮膚科と国際保健に対する2つの興味とをどのように融合できるか悩んでいた時期もあるが,現在は,日本での臨床の仕事の傍ら,皮膚科医として世界保健機関(World Health Organization:WHO)の仕事やアフリカでの研究に携わるようになった.このコラムでは,筆者の経験を紹介し,グローバル化時代の感染症対策について皮膚科医がどう活躍できるか考察する.

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要約 89歳,男性.左示指びらんの生検で有棘細胞癌(squamous cell carcinoma:SCC)と診断され紹介受診.左示指にびらんを伴う58×40mmの紅色局面を認めた.辺縁から1cm離して切除,全層植皮を行ったが植皮片が脱落したため左示指をMP関節から離断した.初回手術から1年9か月後に切除断端および左前腕に皮下腫瘤が多発.生検で真皮から皮下組織に比較的小型で胞体に乏しく,好塩基性の類円形細胞から成る腫瘍細胞巣がみられ,CK20,CD56,synaptophysin,EMA,Merkel細胞ポリオーマウイルス(Merkel cell polyomavirus:MCPyV)陽性,CK7,TTF-1陰性,MIB-1陽性率は90%であった.Merkel細胞癌(Merkel cell carcinoma:MCC)と診断し放射線照射を行ったが,MCC発症から1年6か月後に全身多発転移のため原病死した.初発のSCCはMCPyV陰性であったことから,後に生じたMCCは独立して発症したと考えた.高齢者では日光曝露などの因子を背景として稀ではあるが,複数のタイプの皮膚悪性腫瘍が発生する可能性があり注意が必要である.

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要約 74歳,男性.初診の1か月前より足底,手掌,前腕に自覚症状のない鱗屑を伴うクルミ大から手掌大の環状紅斑が出現した.病理組織像では液状変性と血管周囲にリンパ球を中心とした炎症細胞浸潤を認めた.掌蹠の環状紅斑は稀であるため,内臓悪性腫瘍の合併を疑い諸検査を実施した結果,直腸癌を発見した.直腸癌切除後に環状紅斑は急速に消失した.掌蹠の遠心性環状紅斑の報告は本邦で初めてであり,特異な部位に発症するデルマドロームとして注意すべき病態である可能性が示唆された.

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要約 67歳,女性.1984年にSLEと診断され,近年はプレドニゾロン(PSL)2.5mg/日内服で病勢は落ち着いていた.2015年1月から微熱,倦怠感,浮腫,動悸,息切れが出現,近医で間質性肺炎と心囊液貯留を指摘され4月に当科入院した.PSL 40mg/日で治療を開始したが,30mg/日減量時に漿膜炎再燃と血小板減少が出現した.mPSL 1gパルス後も血小板数は改善なく,破砕赤血球を伴う溶血性貧血を認めたことから血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy:TMA)と診断した.新鮮凍結血漿輸注と血漿交換,mPSL 1gパルスを行ったが改善しなかった.シクロホスファミドパルス(intravenous cyclophosphamide:IVCY)を行ったところ血小板数の回復を認めたが,虚血性心疾患を発症し第58病日に永眠した.TMAの標準治療は血漿交換であるが,膠原病に生じるTMAでは治療抵抗例が多く,治療抵抗性と判断した場合,速やかにIVCYやリツキシマブ投与を行う必要があると考えた.

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要約 24歳,男性.幼少期より発熱,関節痛を伴う蕁麻疹様紅斑の出現を繰り返していた.初診時,38℃台の発熱,四肢に瘙痒を伴わない大豆大までの浮腫性紅斑が多発散在していた.血液学的に,WBC 10,510/ml,CRP 2.44mg/dlと炎症反応の上昇を認めた.フェリチンの上昇はなく,抗核抗体は陰性であった.紅斑の病理組織像では,真皮上中層に浮腫があり,血管周囲にリンパ球が浸潤し,膠原線維間に好中球が散見された.当初,家族性地中海熱を疑い,コルヒチン1.0mg/日を開始するも軽快はみられなかった.その後,遺伝子検査にてNLRP3の遺伝子変異を検出した.クリオピリン関連周期熱症候群と診断し,プレドニゾロン30mg/日内服とカナキヌマブの投与にて軽快を認めた.クリオピリン関連周期熱症候群は,NLRP3遺伝子異常によりIL-1βの過剰産生をきたす遺伝性自己炎症症候群である.幼少期からの周期熱と瘙痒のない蕁麻疹様紅斑を呈す場合には本症を疑い,遺伝子学的検討を含めた精査が必要であると考える.

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要約 29歳,女性.2,3年前より後頭部に皮内結節が出現し,当科を受診した.初診時,ドーム状に隆起した1cm径の淡紅色皮内結節があり,病理組織では表皮内汗管を介して表皮と連続して皮下組織にかけて,境界明瞭で線維性被膜に覆われた腫瘍塊がみられた.内部には明らかな断頭分泌を伴わない小型の管腔構造が増生し,軟骨基質,粘液性間質,線維性間質も伴っていたことから,エクリン型皮膚混合腫瘍と診断した.皮膚混合腫瘍の中でもエクリン型は稀であり,また自験例のように表皮との連続性を認める症例は,本邦論文報告例や海外のエクリン型皮膚混合腫瘍50例を検討した報告でも認めなかった.表皮内汗管との連続性を認めた点も,エクリン型皮膚混合腫瘍が汗器官より発生した腫瘍であることを明確に示す所見として重要であると考えられたため,報告した.

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要約 43歳,男性.約3年前より左頸部から肩にかけての腫瘤を自覚.手術目的で当科に紹介され来院した.腫瘤は鶏卵大の弾性軟,ドーム状に隆起する皮下腫瘤で皮膚,下床との可動性は良好であった.皮膚表面に異常なし.CT上境界明瞭で,内部は大半が軟部濃度を呈し,一部に脂肪濃度を認めた.MRIではT1・T2強調画像で筋・皮下脂肪とそれぞれ等信号を示す成分が混在していた.腫瘍全体が軽度の造影効果を示した.病理組織にて成熟脂肪細胞,紡錐形細胞,膠原線維の増生を認め,紡錐形細胞はビメンチン,CD34,bcl-2に陽性,S100蛋白,α-SMA,CEA,NSE陰性であった.以上よりspindle cell lipomaと診断した.本症では脂肪肉腫などとの鑑別が問題となるが,発生部位や画像所見からある程度診断可能であると考えられた.

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要約 70歳,女性.2016年8月初旬より歩行困難が出現し,8月中旬には意識混濁をきたしたため救急搬送された.来院時,外陰部に黄白色の膜様壊死組織が付着する14×8cm大の筋層に及ぶ潰瘍を認め,皮膚生検で有棘細胞癌と診断した.血液検査では,補正Ca値17.1mg/dlで,高Ca血症による意識障害と考えた.また末梢白血球数54,900/μl(Neu 95.2%)と高値であった.血中PTHrP(parathyroid hormone-related protein-C)14.1pmol/l,G-CSF(granulocyte-colony stimulating factor)276pg/mlといずれも高値であること,抗G-CSF抗体による免疫組織学染色にて,腫瘍細胞の細胞質にG-CSF陽性像を認めたことからPTHrP,G-CSF産生腫瘍と判断した.PTHrPおよびG-CSF産生有棘細胞癌は稀であるが,高Ca血症や白血球増多をきたした際には念頭に置く必要がある.

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要約 83歳,女性.外陰部左側と肛門左側にびらんを伴う局面.組織学的に外陰部の表皮内には大型細胞の増殖があり,肛門部は大型細胞に加え印環細胞が多数混じて認められ,また,毛包に沿った深部はほとんどが印環細胞で,大型細胞は少なかった.CK7,CK20,CDX2の免疫組織学的検査で外陰部はCK7(+),CK20(−),CDX2(−),肛門部は,CK7(±),CK20(+),CDX2(+)であり,自験例を皮膚原発の乳房外Paget病(EMPD)と続発性Paget現象を併発した稀な症例と考えた.近年,皮膚原発EMPDと続発性Paget現象の鑑別にCK7,CK20,さらにはCDX2の染色パターンの解析の有用性が認知されつつある.その一方で,染色パターンの解析が臨床経過と不一致だった報告もあり,染色パターンをどこまで重視するか,臨床経過と一致しない場合にどのように解釈するかに関しては今後の議論の余地がある.

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要約 45歳,女性.41歳時に前医で右大腿の褐色斑を切除し,悪性黒色腫と診断された.その後は放置していたが,1年後に右鼠径部,3年後に右背部に皮下結節が出現,徐々に増大してきたため前医で針生検が行われた.転移性悪性黒色腫の診断で当科を紹介され受診した.検索の結果,悪性黒色腫多臓器多発転移TxNxM1 stageIVと診断した.転移巣の腫瘍細胞はBRAF遺伝子変異が陽性であり,ベムラフェニブ(ゼルボラフ®)内服を開始した.腹痛や倦怠感などの自覚症状は急速に改善し,いずれの転移巣も著明に縮小した.しかし,肝障害によるベムラフェニブ休薬後2週間で脳転移が急速に増大,多発し,死亡した.自験例において,ベムラフェニブは脳転移に対してもある程度効果はあったと推測されるが,脳転移症例に対するベムラフェニブの奏効率は低いため,他剤も含めた治療選択の確立が望まれる.

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要約 49歳(再診時),女性.15歳時,左側頭部に40×30mm大の瘢痕状脱毛斑が出現.20歳で当院にて全切除を施行し炎症性肉芽と診断した.25年経過し,同部に紅色腫瘤が出現したため,再切除を行った.病理組織学的に,表皮直下から筋層に至る境界不明瞭なびまん性の腫瘍病変,一部に出血,壊死を認め,類円形の腫瘍細胞がシート状に配列する像と,紡錘形の腫瘍細胞が束状に錯走する像がみられた.免疫組織化学染色では,ビメンチン,EMA,CAM5.2,CD34が陽性で,epithelioid sarcoma(ES)と診断した.初回の組織をこの切除標本と比較したところ,当初よりESであったと考えた.その後,局所再発および頸部・腋窩リンパ節転移を繰り返し,57歳時に頭蓋骨を含め切除し,リンパ節郭清を施行した.本腫瘍の頭頸部発生例は稀であり,40年間を経過し,現在も生存中の貴重な症例であった.

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要約 7歳,男児.右踵部外側に皮下結節が出現し,徐々に増大したため,単純切除術を施行した.病理組織学的には,主に皮下に結節性病変を認め,好酸性の胞体をもつ類円形の腫瘍細胞が胞巣を形成して増殖する領域と,紡錘形細胞が束状に増殖する領域から構成されていた.腫瘍細胞には核分裂像,核の大小不同,明瞭な核小体も認め,胞巣内には多核巨細胞を散見した.Fontana-Masson染色でメラニンを確認した.免疫組織化学染色では,S100蛋白,Melan A,HMB45が腫瘍細胞に陽性となった.FISH法でEWSR1遺伝子の転座が示唆され,RT-PCR法で融合遺伝子EWSR1-ATF1を検出し,明細胞肉腫と診断した.単純切除後,3cmマージンをとり拡大切除を施行した.現在7年が経過し,再発や転移は認めていない.自験例では,病理組織学的所見に加えて,FISH法やRT-PCR法が明細胞肉腫の診断に有用であった.

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要約 90歳,男性.4〜5年前から顔面に紅色丘疹,紅斑が出現.徐々に拡大し,ステロイドを外用するも改善せず当科紹介受診.額から両側耳前部,鼻部に小豆大の弾性硬の暗紅色丘疹が散在し,癒合して局面を形成していた.病理組織所見にて真皮全層でリンパ球様細胞が濾胞構造を形成しながら結節状に散在していた.免疫染色で,CD3−,CD5−,CD10+,CD20+,BCL-2+の腫瘍細胞が濾胞胚中心にびまん性かつ不均一に存在していた.胚中心に腫瘍細胞の浸潤を持つ濾胞構造と,反応性の正常構造を呈する濾胞構造が混在するpartial involvement of follicular lymphomaの像であった.PCR法で免疫グロブリンH鎖のモノクローナルな遺伝子再構成を認めた.PET-CTでリンパ節に多発異常集積像を認め,follicular lymphoma(FL)の皮膚浸潤と診断した.Primary cutaneous follicle center lymphomaとFLの病理組織像は類似しているが予後や治療法が異なるため,鑑別を行うことが重要である.

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要約 89歳,男性.初診3週間前より左示指にびらんが出現し,急速に結節を形成,増大した.初診時,左示指背側に11×10×2mm大,表面平滑で一部潰瘍化した鮮紅色の皮膚結節があった.病理組織像はCD30陽性,ALK陰性の細胞形質を有し,異型性のある核を持つ大型の細胞がシート状に増殖し,核分裂像もみられた.明らかな皮下脂肪織への浸潤はなかった.先行病変や皮膚外病変はなく,臨床像と組織像を合わせても,原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫,リンパ腫様丘疹症いずれにも分類し難く,原発性皮膚CD30陽性T細胞増殖性疾患のボーダーライン症例と診断した.病変は電子線の局所療法にて急速に縮小,照射開始6週間後には消退し,治療12か月後も再燃の所見はない.原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫,リンパ腫様丘疹症いずれにも少なからず再発がみられるため,今後も経過観察が必要である.

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要約 26歳,男性.22歳時に骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)と診断された.25歳の夏頃から日光曝露後に顔面,手背等に膨疹・腫脹や瘙痒感を繰り返すようになった.赤血球中プロトポルフィリン高値,尿中ポルフィリン体値正常,皮膚生検の病理組織像で真皮浅層血管壁にPAS染色陽性物質の沈着を認め,骨髄性プロトポルフィリン症(erythropoietic protoporphyria:EPP)と診断した.EPPはフェロケラターゼ(ferrochelatase:FECH)をコードする遺伝子の変異により生じる常染色体劣性遺伝性疾患であり,通常は幼小児期より光線過敏症状を発症する.しかし,成人発症のEPPも稀であるが自験例を含め今までに計22例報告されており,うち10例はMDSに関連して発症していた.成人発症の光線過敏において,特にMDSに合併して発症した場合は,EPPの可能性を疑い適切な検査を行う必要がある.

印象記

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 第116回日本皮膚科学会総会が東北大学大学院皮膚科学講座 相場節也教授(図1)を会頭に2017年6月2日(金)から3日間,仙台国際センター・川内萩ホールにて開催された(図2).第111回総会より京都と横浜の交互開催がなされていたが,第116回総会は久しぶりの地方開催となった.そばには清らかな広瀬川が流れ,周囲は青葉山の緑に囲まれた自然豊かな場所で開催された本学会への参加者は5,000名を超えた.

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欧文目次

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 天疱瘡のように自己抗体が関わる疾患では,血清中に分泌された抗体が病態を引き起こす.これらの疾患では自己反応性B細胞の遺伝子解析を行うことで自己抗体のレパトアの特徴を明らかにすることができるが,それらの結果は血清中自己抗体のプロテオーム解析によって補完される.自己抗体が関わる疾患のプロテオーム解析は進んでおらず,臓器特異的な自己抗体を有する疾患についての解析はいまだなされていない.著者らは天疱瘡患者(尋常性天疱瘡4例,落葉状天疱瘡2例)の血清中自己抗体のプロテオーム解析を行い,血清中自己抗体のレパトアが遺伝子解析(ファージディスプレイ法)で検出された結果よりもはるかに多様であることを示した.プロテオーム解析では天疱瘡患者1人当たり32.8±5.5のクローンが同定されたが,遺伝子解析では6.7±1.6のクローンのみ同定された.遺伝子解析で同定されたクローンの18%のみがプロテオーム解析のクローンと一致し,大部分は実際には血清中に分泌されていない天疱瘡自己抗体遺伝子であることが明らかになった.イムノグロブリン重鎖の可変領域は患者間であまり共有されておらず,この結果は特定のクローンに対する標的治療が有効でない可能性を示唆する.各々の患者においては少数のクローンにより血清中自己抗体の大部分が産生されていることがわかった.個々の天疱瘡患者の数年間の長期観察結果から,多くの抗体のクローンが持続して存在するが,クローン構成の割合が大きく変化することが明らかとなった.本研究によって従来の遺伝子解析では不明であった多様かつ経時的変化に富む自己抗体レパトアの存在が示唆された.これらの結果は同じ抗体価を持つ患者が,なぜ臨床的に多彩な病状を示すかを説明する論拠になりうる.

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 皮膚科診断のトレーニング本が刊行された.本書には,専門医が覚えておきたい100疾患が網羅されている.雑誌『臨床皮膚科』に掲載されている連載「Clinical Exercise」をまとめて編集し直したものなので,内容的にも十分吟味された症例がそろっている.

 本書の特徴として,ページ構成の工夫が挙げられる.ページの表が「Question」で,裏ページの「Answer」からなるクイズ形式で構成されている.表ページの「Question」には臨床写真,病歴が簡潔にまとめられており,それだけで鑑別診断を考えていくことができる.その際に,裏ページの「Answer」の解説が“うっかり”目に入らないので安心である.まさに診断トレーニングにうってつけである.必ず鑑別診断をいくつか考えてから「Answer」を読むようにしたい.あらかじめ答えを知って症例を診るのとでは,診断力の付き方が大きく違ってくる.自分でいくつか考えた鑑別診断の中に「Answer」の診断名が入っていれば,まずは「当たり」である.大きく方向性がずれていないことが重要である.楽しみながら読んでいただきたい.

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 上田剛士先生(洛和会丸田町病院救急・総合診療科)は数多くの文献から重要なメッセージを抽出し,わかりやすい表やグラフにして説明してくれる.評者と同様,『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』(医学書院,2014年)を座右の参考書としている臨床医は多いであろう.これは臨床上の問題点に遭遇したとき,そのエビデンスを調べる際に非常に重宝している.

 『日常診療に潜むクスリのリスク』は薬の副作用に関する本である.高齢者はたくさんの薬を飲んでいる.私たちは気が付いていないのだが,薬の副作用により患者を苦しめていることは多い.「100人の患者を診療すれば10人に薬物有害反応が出現する」(序より),「高齢者の入院の1/6は薬物副作用によるもので,75歳以上では入院の1/3に及ぶ」(p.5より)という事実は決して看過すべからざることである.「Beers基準」や「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」は存在するが,高齢者への適切な処方への応用は不十分だ.

次号予告

あとがき 玉木 毅
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 今年度から『臨床皮膚科』の編集委員の末席を汚させていただくことになった.浅学菲才の身ながら光栄に感じるとともに,その重責に身の引き締まる思いをしているところである.特に71巻3号で査読者の責任について記された渡辺晋一先生のあとがきは,容赦なく次々と送られてくる査読を前に,「的外れな意見になっていないだろうか?」とか,「論旨が不明に見えるのは,もしかするとこちらの知識や理解力が低いせい?」といった「迷い」が生じる一因となっている.ただ,あまり迷い過ぎると,査読はどんどんたまっていく一方で,これまた容赦なく次々と襲ってくる病院内の事務的雑用とともに山積してしまう.結局どこかで踏ん切りをつけて,処理していかなければならないと悟った.そこで金〜日曜日受取や学会出張などの例外を除き,とりあえず「2日以上はためない」というルールで査読するようにしたところ,病院内の事務的雑用の処理まで心もち早くなったような気がする.

 そんななか,20年くらい前留学から戻ったばかりの頃,The Journal of Dermatology(JD)の査読でヒヤっとした記憶が蘇ってきた.アジアの某国からの投稿であったが,論旨も明確,実験もほぼ完璧,はっきり言って自分の研究より数段エレガントなレベルであった.普通なら文句なくアクセプトだが,1つひっかかった.「JDへの投稿にしては良すぎる」と.そこで,論文のキーワードのいくつかで文献検索したところ,何とThe Journal of Clinical Investigation(JCI)に全く同じタイトルの論文を発見したのである.アブストラクトの文言まで酷似しており,どう考えても「盗作」である.当時は電子ジャーナルの時代ではなかったのでいわゆる「コピペ」ではなく,JCIの著者と同じラボで働いていたアジア人が,帰国後の学位取得か何かのために,JCI論文のファイルを体裁だけJD用に換えて投稿したのではと推測した.JDならバレないだろうと思われたのなら,ずいぶんと人を舐めた話である.そのまま掲載していたらとんだ赤っ恥になるところであった.ここまで稚拙ではないが,結果の写真を裏返して別論文に掲載などの話もあるし,あの小保方氏の話もしかりである.学生のレポートでもウィキペディアなどのコピペが絶えないので,検出ソフトがあるそうである.ただどんなソフトより,「何かおかしい」という直感こそ大事で,そんな勘所を今後研ぎ澄ましていければと思う.まあ将棋のように,これもそのうちAIに置き換わるかもしれないが.

基本情報

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臨床皮膚科
71巻10号 (2017年9月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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