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天疱瘡のように自己抗体が関わる疾患では,血清中に分泌された抗体が病態を引き起こす.これらの疾患では自己反応性B細胞の遺伝子解析を行うことで自己抗体のレパトアの特徴を明らかにすることができるが,それらの結果は血清中自己抗体のプロテオーム解析によって補完される.自己抗体が関わる疾患のプロテオーム解析は進んでおらず,臓器特異的な自己抗体を有する疾患についての解析はいまだなされていない.著者らは天疱瘡患者(尋常性天疱瘡4例,落葉状天疱瘡2例)の血清中自己抗体のプロテオーム解析を行い,血清中自己抗体のレパトアが遺伝子解析(ファージディスプレイ法)で検出された結果よりもはるかに多様であることを示した.プロテオーム解析では天疱瘡患者1人当たり32.8±5.5のクローンが同定されたが,遺伝子解析では6.7±1.6のクローンのみ同定された.遺伝子解析で同定されたクローンの18%のみがプロテオーム解析のクローンと一致し,大部分は実際には血清中に分泌されていない天疱瘡自己抗体遺伝子であることが明らかになった.イムノグロブリン重鎖の可変領域は患者間であまり共有されておらず,この結果は特定のクローンに対する標的治療が有効でない可能性を示唆する.各々の患者においては少数のクローンにより血清中自己抗体の大部分が産生されていることがわかった.個々の天疱瘡患者の数年間の長期観察結果から,多くの抗体のクローンが持続して存在するが,クローン構成の割合が大きく変化することが明らかとなった.本研究によって従来の遺伝子解析では不明であった多様かつ経時的変化に富む自己抗体レパトアの存在が示唆された.これらの結果は同じ抗体価を持つ患者が,なぜ臨床的に多彩な病状を示すかを説明する論拠になりうる.
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