Brain and Nerve 脳と神経 26巻3号 (1974年3月発行)

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アトラス　神経筋疾患の臨床3

神経筋疾患診断上の問題点，とくに"神経原性"・"筋原性"筋病変および"fiber type選択性"筋病変について田辺　等 26巻3号 , 1974年3月 , pp.274-279

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1．神経筋疾患の病態表現（診断）

　病態表現の形式

　神経筋疾患ではmotor unitの特性にも関連して，非典型性・病型移行性を示すものが多く，診断上entityとして問題が残る場合には，しばしば病態を形成する要因（problem list）的表現も用いられる。形式としては①古典的entity，②症候群，③疾患群，④原因分類，⑤局在分類，⑤要因併記，その他が例示される。最近の報告例では，①〜⑤に強調すべきkey wordを付したもの，および⑥が目立ち，また既知の概念のみならず新病型・移行型などの提起も含まれている。分類については，歴史的業績を尊重した上で新知見を加え，生化学的な面をも含めた本質的な病因・病態の解明が常に意図されるべきであり，間接証拠による機械的な亜型の細分化はその意義に乏しい。

総説

精神医学よりみた器質性脳症状群，意識障害を中心に—その病像の鑑別に焦点をあてて原田　憲一 26巻3号 , 1974年3月 , pp.281-290

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I．はじめに

　死戦期の昏睡を別としても，意識障害は臨床的にかなり，しばしばみられる脳機能異常状態である．米国では急性脳症状群acute brain syndromeなどともよばれる、Willi^37）は，いわゆる正常成人の約30％が少くともそれまでに1回は意識障害を経験していると推定している。また総合病院入院者全体の約10％に，せん妄状態がみられ，とくに60歳以上の老人の入院者ではその頻度は40〜50％にものぼるといわれている（Kolb）^18）。

　意識障害は一般に脳に急性の，多かれ少かれ重篤の侵襲が存在することの現われであるから，それを的確に把握することは臨床上大切なことである。ある脳疾患の初発症状として意識障害があらわれることがあるし（たとえば脳腫瘍），あるいはそれが身体疾患の主要な臨床症状であることもある（たとえば、インスリロームによる低血糖性昏睡）。また意識障害のていどは脳疾患の場合にはその疾患過程自体の重症度をそのまま反映する場合が多いし（脳出血，脳炎など），身休疾患の増悪の唯一の臨床標識であることもある（たとえば糖尿病）。そうでなく，意識障害が身休疾患の単なる一随伴症状である場合にも（実際にはそのようなことが多いのだが），診断（重篤度判定や予後推定など）やその身体疾患治療にいろいろな問題を提起することになるので，臨床上とく別に留意されねばならない症状である．

脳梁損傷による半球間連合障害（callosal disconnexion syndrome）について—その2 岩田　誠 26巻3号 , 1974年3月 , pp.291-303

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V・半球間連合障害の病像の問題点

　1．脳梁損傷患者の反応様式について

　以上に述べたような半球聞連合障害症候群において特徴的な現象として，劣位半球側の半球間連合障害における作話的反応があげられる。たとえば，左手の触覚呼称の場合，患者は全く答えられないのではなく，間違つた呼称を行うことが多い。Geschwindら^24）の例では，左手で腕時計を持たせると"風船"と答え，指輪に触れさせると"消しゴム"と呼称したりした。Jedynakの例^{51），56）}では，1本の鉛筆の両端を両手で同時に持たせて，"右手には何を持つていますか"と問うと，"鉛筆"と正しく答えられたが，"左手には何を持つていますか"という問には"くし"と答えた。またGeschwindの患者^24）は，左手に持つた金づちで正しく物品を打つ動作をしながら"これは髪をとく時に使うものです"と述べ，Jedynakの患者^51)，56）でも，槌をふるう動作をしながら，"私はくしを使つています"と答えた。この様な偽の答を行う現象は，言語野が劣位半球から切断（di—sconnect）された為の，一種の作話であると考えられている^25）。

原著

パーキンソン病と髄液免疫グロブリン矢吹　聖三 , 東　博文 , 早原　敏之 , 池田　久男 26巻3号 , 1974年3月 , pp.311-318

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緒言

　振戦，筋強直，akinesiaを3主徴とするパーキンソン病は臨床的には極めて古くから注目された疾患であるが，その病因については幾多の精力的な検索にもかかわらず現在もなお明らかにされていない。大脳基底核のdopamineが著明に減少しているという最近の発見は本病因の本質に大きく一歩近づいたと言えるが，dopa—mineの減少がパーキンソン病の原因か，結果かという大きな問題が未だ残されている。

　衆知のごとく嗜眠性脳炎，haloperidol等の薬物によつてもパーキンソン病と類似ないしは全く同一の臨床症状がひき起され，これらは症候性パーキンソニスムとしてパーキンソン病とは区別して考えられている。このように異つた病因により同一の臨床病理学的変化がひき起されるという事実は本病が必ずしも単一の病因によるものとはかぎらないという可能性を示している。

　一方臨床的にも本病は個々の症例により著しい症状の差異がみられ，本病に対するいかなる方面からの検索に当つても，精細な臨床的観察が前提となる。

　今回著者らはパーキンソン病を免疫学的立場から検索する口的で一元平板免疫拡散法を用いて20例のパーキンソン症候群のCSF IgGを測定した結果，高頻度にCSF IgG増多を認め，かつ臨床症状の分析の結果CSFIgG増多を示すものと，示さないものとの問には経過，神経症状等の相異が有ることが明らかとなつたので報告する。

DISC電気泳動法による髄液蛋白分画—正常髄液蛋白分画と分割採取髄液蛋白分画河北　英詮 , 村上　泰治 , 山内　紀之 26巻3号 , 1974年3月 , pp.319-324

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緒言

　1959年Raymondら^1）およびOrnsteinら^2）によつて開発されたポリアクリルアミド・ゲルDISC電気泳動法は従来の髄液蛋白電気泳動法に目ざましい進展をもたらした。それは優れた分離能力を有し，低蛋白濃度のものでも微量で，しかも濃縮することなしに泳動分析できる特徴をもつている故である。1939年Tiseliusによる電気泳動法の考案以来濾紙，寒天，殿粉ゲル，セルロース・アセテート膜等による支持体の研究技法が導入されたとはいえ，髄液の濃縮操作とそれに伴う必要量の髄液の採取はまぬがれないのである。しかしDISC泳動法による髄液蛋白の報告は少なく，したがつて不明の点も少なくない。未同定の分画，γ-グロブリンの高分子量分画およびデンシトメトリーについてもなお若干の問題を残している感がある。

　著者らは昭和41年3月から髄液のDISC泳動を行なつているが，今回は以上の点にも考慮を払いながら正常髄液蛋自分画について検討し，併せて分割採取髄液蛋白分画についても報告する。

Hirschsprung氏病腸管の自律神経支配について—主として組織化学的研究森木　丈士 26巻3号 , 1974年3月 , pp.325-329

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はじめに

　Hirschsprung氏病に関する研究は，1882年にHirsch—sprung^6）が初めて先天性疾患として発表して以来Whitehouse^17），Swenson^14,15），Hiatt^8）等のすぐれた業績がある。

　元来，この疾患は肛門側の腸管の狭窄とその口側腸管の拡張を呈し，臨床的に頑固な便秘を来す疾患である。このような所見に対し種々の研究が行なわれており，研究初期においては腸管拡張部に病変因子が存在するがごとく考えられていたこともあつたが，Wade,Royle，Scott,Morton等が自律神経支配の異常説を述べるようになり，その後Dalle valle,Whitehouse^17），植田，岡本^13），等により腸管壁内神経叢の変化が認められ現在では病変部が肛門側の狭窄部でこの部位がaganglionicsegmentであることが確認されている。このように最近の見解は腸管狭窄部の自律神経分布状態が，先天的に異常であると考えられているので，著者はHirschsprung氏病腸管の自律神経支配を知る為に組織化学的方法および鍍銀法を用いその分布形態を検討した。

Familial primary amyloidosisの腓腹神経の微細構造大田　典也 , 岩山　隆 , 荒木　淑郎 26巻3号 , 1974年3月 , pp.331-340

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はじめに

　Familial primary amyloidosisは腎，肝，脾など一般臓器に，さらに皮膚，末梢神経などに，小血管を中心としてamyloidの沈着する疾患である。末梢神経症状を示す本疾患の型には，ポルトガル型と北米型があるが，ここに述べる症例は前者の範疇に属するものである。

　本症の臨床上の特徴として四肢の温度・痛覚の著明に侵されたほぼ完全な解離性感覚障害が挙げられる^1,9）。電気生理学的検査では末梢神経伝導速度の低下は主要所見でなく，in vitroでの生検神経興奮伝導検査ではCpo—tentialの消失ないし著明な低下，A　δ　potentialのかなり明らかな消失とA　α　potentialの中等度の低下が述べられている^9）。末梢神経病変としては，血管周辺ないし内鞘へのamyloidの沈着であり，この意味では間質性neuropathyとみなすことができる。しかしながら，これに加えて軸索の障害（断裂，狭小化など），脊髄神経細胞の高度の変性所見などがあり，実質障害が強いことが述べられている^{1,7-9,13,14,17）}。

定量的組織化学法による中枢神経組織のMonoamine Oxidaseの測定法内村　英幸 , 平野　誠 , 斎藤　雅 , 向井　彬 , 挾間　秀文 26巻3号 , 1974年3月 , pp.341-345

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はじめに

　情動行動，記憶および意識（睡眠）の生物学的基盤の解明は，精神と身体との接点の問題であり，精神医学領域の基本的な問題である。従来，情動行動と生体アミンとの問に重要な関連のあることは示唆されてきた^5）。しかし，脳は構造的にも機械的にもheterogenousなものであるため，情動行動と生体アミンとの関連について検討してゆくには，方法論的に，脳の構造および生理的機能を基盤にしつつ，微量レベルでの生化学的検討を加えなければならないと思われる。このような考えにもとづき，われわれは，Lowryの定量的組織化学法^10）11）を用いて，視床下部，海馬などにおけるMonoamine Oxi—dase （MAO）の微量測定法を検討した。これらの部位の構造別レベルにおけるMAO活性，topographical di—stributionは，未だ報告されていない。ここでは，特に，定量的組織化学法によるMAO活性の測定法について検討した結果を報告し，測定例を示したい。

同名性視野欠損の性状と病巣局在との相関関係梶川　博 , 石川　進 , 池田　禎仁 , 渡辺　憲治 , 野坂　耕起 , 鮄川　哲二 26巻3号 , 1974年3月 , pp.353-361

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I．はじめに

　視覚路は，頭蓋内で長い径路をとりいろいろな部位で損傷を受け易く，また視覚路のどの部分が侵されるかによつてかなり特有の視野欠損を来し得るために，視野測定は頭蓋内病巣の局在診断上有意義な検査法となつている。しかしながら視覚路の詳細についてはいまだ不明の点があり，また実際に得られた視野表は種々の程度に修飾されているので，これのみから病巣の局在を決定するのは容易でないことがしばしばである。そこでわれわれはPostchiasmalの病巣によると考えられる同名性視野欠損を呈した59症例を選び出し，視野欠損の性状がどの程度病巣の局在診断に役立ち得るかを検討した。

多発性脳血管拡張の1剖検例緒方　絢 , 永江　和久 , 勝木　司馬之助 , 堀江　昭夫 , 田中　健蔵 26巻3号 , 1974年3月 , pp.363-371

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緒言

　臨床的に失外套症候群様症状が観察され，剖検により多発性脳血管奇形および広範な中枢神経系の病変が認められた症例を経験したので報告する。

　本例の脳血管奇形は拡張血管が単独にあるいは集合して海綿状を呈したもので，Virchow^30,31）の脳血管腫の分類によればTelangiectasisに該当するものであつた。木例を中心にして脳血管拡張について従来の報告例と対比して文献的考察を加える。

EFFECTS OF SENSORY ISOLATION UPON APPETITIVE, AVERSIVE, AND NEUTRAL INTRACRANIAL SELF-STIMULATION IN THE RAT Peter　O．　Peretti 26巻3号 , 1974年3月 , pp.373-378

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Previous studies have indicated that intracranial shock can have reinforcing properties. These studies, however, have either used subjects outside sensory isolation, or have used intracranial brain stimulationof the rat in only an appetitive or "pleasure" center. The present research attempted to investigate the effects of : (1) appetitive electrode placement in the rat's brain ; (2) aversive electrode placement ; (3) neutral electrode placement, and (4) brain stimula-tion and no-stimulation conditions both inside and outside sensory isolation. The results indicated a significantly higher rate of responding as well as a significantly longer response time in the sensory isolation condition with brain stimulation available for rats with electrode placement in the appetitive and aversive brain centers. Significant differences were also found for performances inside and outside sensory isolation concerning stimulation and no-simulation effects, electrode placement, and sequential effects.

NLA変法—脳外科検査時麻酔法の検討滝沢　利明 , 佐藤　誠太郎 , 佐野　圭司 , 本田　耕一 , 三浦　のり子 , 松本　正久 26巻3号 , 1974年3月 , pp.379-393

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I．NLA変法の背景--他の麻酔法との比較

　脳外科領域の日常的な検査である脳血管撮影や気脳撮影などは従来一般に無麻酔または不十分な局所麻酔や鎮痛剤を用いて行なわれているのが現状で，血管撮影における穿刺時の痛み，造影剤注入時の血管痛，気脳撮影における激しい頭痛，嘔気嘔吐，発汗，痙攣等かなりの苦痛を患者に強要している。その理由は以下に述べるように適当な麻酔法がなかつたことに帰すると思われる。すなわち，比較的簡単な検査手技に対して気管内麻酔は大げさ過ぎ，筋弛緩を来たした患者に坐位，仰臥位，腹臥位など挿管したまま種々の体位をとらせたり固定したりすることが困難である。また，麻酔医の都合に左右され随時多人数を処理することは現実には不可能である。ペントサールソジウム（ラボナールなど）は呼吸抑制がつよいこと，舌根沈下，喉頭痙攣などによる気道閉塞のため挿管を余儀なくされることがあり，また筋弛緩のため坐位をとらせることが困難である。塩酸ケタミン（ケタラール）は血圧上昇とそれに伴う脳脊髄液圧上昇が著しく，脳動脈瘤や高血圧症，頭蓋内圧亢進症には禁忌であり，また脳萎縮や脳血栓症などの患者では意識消失にもかかわらず頭頸部の不随意運動や反張が激しくみられることがしばしばあつてX線検査には不適当である。タラモナールによるNLAはフェンタニールが麻薬扱いのため日常検査には不自由であり，また呼吸抑制がつよい。局所麻酔は十分量用いると動脈やその脈拍が触れにくくなることがあり，また穿刺痛以外の苦痛には無力である。さて，これに対してペンタゾシンとジァゼパムを併用するNLA変法は上記の欠点を十分補って，少なくとも現時点では最も有効，安全にしてかつ簡便な麻酔法であり，脳外科領域の検査や小手術の麻酔法としてrou—tineに採用する価値があると思われる。われわれは種々の麻酔法を試みた結果この手技を確立し，今日までに約400例を経験したが一例も事故はなく満足すべき効果を得ているのでその一部を第31回日本脳神経外科学会^1）と第4回「NLAをめぐる懇話会」^2,3）に発表した。

症候群・徴候・8

Fabry （ファブリ）症候群平山　恵造 26巻3号 , 1974年3月 , pp.361

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　普通はFabry病と呼ばれることが多い。

　もともとは皮膚科領域の疾患として記載された〔Fabry （1898）：Pu—rpura haemorrhagica nodularis，後にAngiokeratoma corporis diffu—sum〕が，その後これが内科的にKardiovasorenaler Symptomenko—mplexを伴なうものであることが指摘され，〔Ruiter und Pompen（1939）〕，近年に到つて，これが脂質（glycolipid）代謝異常に基づくものであり〔Sweely and Klionsky（1963）〕，α-galactosidase欠損によるものであることが判明した〔Kint（1970）〕。伴性劣性遺伝を示し，殆んど男性にのみ発現し，幼少期に発病する。

症候群・徴候・9

Fisher （フィッシャー）症候群平山　恵造 26巻3号 , 1974年3月 , pp.371

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　ophthalmoplegia, ataxiaおよびareflexiaを呈するacute idiopathicpolyneuritisをFisher症候群と呼んでいる。これはFisher （1956）が，かかる症例を報告したのにちなんで，後にHynes （1961），あるいわGoodwinら（1963）が名づけたものである。しかしこれは脳脊髄液の細胞蛋白解離を伴なう蛋白増多を有することからもGuillain-Barré症候群の一つのvariationとみる傾向が強い。それはFisher自身述べているところであり，acute idiopathicpolyneuritisとGuillain-Barré症候群とは同義であり，唯前者の表現を採用したと記している。即ち，Guillain-Barré症候群の中で，ophthalmoplegia, ataxia, areflexiaを呈するものがFisher症候群であるともいえる。

　それではGuillain-Barré症候群の中に，Fisher以前にophthalmo—plegiaやataxiaを呈した症例の報告がなかつたかといえば，それは既にヨーロッパで少なからず報告されていたことがMunsatら（1965）のhistorical reviewにもよく記されている。ophthalmoplegiaをはじめとする脳神経領域の麻痺を呈するものはGuillainら（1937）によりfor—me mésocephaliqueと称せられ，又一方forme ataxiqueはAgéonに（1934）より指摘され，これには脊髄癆型と小脳型の二つの型があり（それらは後索や小脳自体が障害されたことを必らずしも意味するものではなく，運動失調の型をさしているものであるが）それぞれその後も多くの報告がある。この様に検討してくるとGuillain-Barré症候群について色々記載されていた中でophtha—lmoplegiaとcerebellar ataxiaのあるもののみ（areflexiaは原則として全てに存する）に特別にFisher症候群と名づけるのは屋上屋を架す感がないでもない。Munsatらも"The use of the eponym‘Fishersyndrome’ is thus unwarrented onboth historical and clinical grou—nds"と述べている。

症候群・徴候・10

Foville （フォヴィル）症候群平山　恵造 26巻3号 , 1974年3月 , pp.378

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　今日では多くの場合，側方凝視麻痺とFoville症候群とをsynonymeに用いているが，元はといえば，脳橋病変による一つの特異な交代性片麻痺を指している。顔面と上下肢の麻痺が反対側に起こる脳橋病変による交代性片麻痺がMillard （ミャール）とGubler （ギュブレル）により1856年に注目されて間もなく，1858年にFovilleは更にそれに「極めて奇妙な眼球運動障害」を伴なう例を報告した。すなわち，左顔面，右上下肢の麻痺に，左方凝視麻痺を呈するものである。これは後に下部脳橋型Foville症候群と呼ばれるものであるが，Foville症候群の原型である。

　このような特殊な交代性麻痺にFovilleのeponymeをつけたのはGrasset （1900）であるが，同時に彼は中脳型，及び上部脳橋型Foville症候群を記述した。

短報

エポン包埋切片でのヘマトキシリン・エオジン染色法について江川　重公 , 生田　房弘 26巻3号 , 1974年3月 , pp.394-396

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　病理組織学的所見の大部分がパラフィン包埋一ヘマトキシリン・エオジン（H・E）染色標本から得られているのに対し，電顕下の検索に先立つエポン包埋剤での光顕用切片染色は，ルーチンには，トルイヂンブルーが使われている。これらの両者間の所見の読みに時折戸惑を感ずる標本を誰しも経験されていると思う。特にパラフィン包埋H・E染標本で認められたエオジン好性物質，就中ウィルスや代謝産物にもとつく細胞核内封入体などをもつ部を選択的に電顕用超薄切片に出現させて検索したい場合など，"オスミウム固定され，エポン等の合成樹脂に包埋された切片にH・E染が施行できたら"という願いは切実な夢でもあつた。もちろん，トルイヂンブルー，サフラニン染色でも時に核内および胞体中のウィルス粒子群が明瞭に認められる時もある（第1図）。また，こうした目的で試みられた中で，H・E染色法にある程度代りうると思われたものの一つは合成樹脂切片に加えられたBodianおよびBielchowski染色であった^2）（第2図）。しかしここにも限界がある。

　ところが，1972年Changがオスミウム固定切片に過沃素酸を作用させることで，合成樹脂切片でのH・E染色が可能になる方法を報告^1）した。そこでこの原法を紹介し，われわれがそれを再試したのち，現在実施している手技をここに述べ検討の資としたい。

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編集後記臺　弘 26巻3号 , 1974年3月 , pp.398

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　「脳と神経」が発刊されてから4半世紀が過ぎた。この間に我国の脳研究は大幅に伸び，多くの大学に脳研究施設がつくられたばかりでなく，神経内科，脳神経外科の臨床部門も大学病院や総合病院に数多く設置され，多数の研究者や臨床家が活躍するようになつた。それにはなくなつた本川，時実両先生を始め，各領域の先達の長い努力がこめられており，また日本学術会議の脳研究連絡協議会の精力的な活動の果した役割も大きかつた。

　しかしこの月日は同時にある意味で深刻な反省をもたらすことにもなつた。創業と目先の課題を仕遂げるのに追われて，根深く広い科学研究を育てるのに欠けることはなかつたか，脳を調べるのに心を奪われて人間を守ることを忘れることはなかつたか。社会にも技術万能主義に対する反省が拡がり，人間性の冒？を叫ぶ声が大きくなつた時，とりわけて脳の研究に告発が渦巻いたのは何故であつたか。そこには事実に基づかない感情的議論が横行し，反科学主義と脳聖域論が奇妙に肩を並べている実態があるが，その一番の奥の底には，多くの悲惨な患者達がなお救われずにいるという事実があることを忘れてはならないだろう。

基本情報

Brain and Nerve 脳と神経
26巻3号
(1974年3月発行)

電子版ISSN：2185-405X 印刷版ISSN：0006-8969 医学書院

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Brain and Nerve 脳と神経 26巻3号 (1974年3月発行)

アトラス 神経筋疾患の臨床3

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