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ophthalmoplegia, ataxiaおよびareflexiaを呈するacute idiopathicpolyneuritisをFisher症候群と呼んでいる。これはFisher (1956)が,かかる症例を報告したのにちなんで,後にHynes (1961),あるいわGoodwinら(1963)が名づけたものである。しかしこれは脳脊髄液の細胞蛋白解離を伴なう蛋白増多を有することからもGuillain-Barré症候群の一つのvariationとみる傾向が強い。それはFisher自身述べているところであり,acute idiopathicpolyneuritisとGuillain-Barré症候群とは同義であり,唯前者の表現を採用したと記している。即ち,Guillain-Barré症候群の中で,ophthalmoplegia, ataxia, areflexiaを呈するものがFisher症候群であるともいえる。
それではGuillain-Barré症候群の中に,Fisher以前にophthalmo—plegiaやataxiaを呈した症例の報告がなかつたかといえば,それは既にヨーロッパで少なからず報告されていたことがMunsatら(1965)のhistorical reviewにもよく記されている。ophthalmoplegiaをはじめとする脳神経領域の麻痺を呈するものはGuillainら(1937)によりfor—me mésocephaliqueと称せられ,又一方forme ataxiqueはAgéonに(1934)より指摘され,これには脊髄癆型と小脳型の二つの型があり(それらは後索や小脳自体が障害されたことを必らずしも意味するものではなく,運動失調の型をさしているものであるが)それぞれその後も多くの報告がある。この様に検討してくるとGuillain-Barré症候群について色々記載されていた中でophtha—lmoplegiaとcerebellar ataxiaのあるもののみ(areflexiaは原則として全てに存する)に特別にFisher症候群と名づけるのは屋上屋を架す感がないでもない。Munsatらも"The use of the eponym‘Fishersyndrome’ is thus unwarrented onboth historical and clinical grou—nds"と述べている。
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