臨牀透析 36巻13号 (2020年12月)

特集 高齢透析患者の栄養管理

用語解説 加藤 明彦

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透析患者の栄養障害はPEW(protein energy wasting)と呼ばれる.これまでの報告では,高齢透析患者ではPEWの合併頻度が明らかに高いが,その理由として,非高齢透析患者と異なり,生理的な加齢に伴うさまざまな身体的,精神心理的,社会的因子が栄養障害の成立に関与するためと考えられる.

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透析導入は,腎機能を透析療法以外に補助できない場合に開始される.透析導入における腎機能の明確な基準については議論があるが,栄養状態の悪化は透析導入を考慮する状態である.一方,透析導入直後の予後は不良であり,とくに導入時に栄養状態が不良である場合には,その後の生命予後に影響することが示されている.導入時には,低たんぱく質食が腎機能低下,尿毒症物質の蓄積の予防から考慮される.しかし,エネルギーを同時にとることが栄養状態の維持には重要である.海外で近年注目されているincremental HDについても栄養状態の考慮が必須である.

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高齢透析患者は増加傾向にある.高齢透析患者は低栄養になりやすく,低アルブミン血症は約70%いると推定され,低栄養は生命予後を悪化させる.日本透析医学会のガイドラインでは,推奨されている栄養摂取量の遵守により骨格筋量が維持されることが述べられているが,年齢にかかわらず半数以上の透析患者はたんぱく質摂取量が少ない傾向がある.患者の栄養状態の現状把握のため,栄養状態や食事摂取の定期的なモニタリングが必要である.また,高齢透析患者には認知症や身体機能の低下が合併しやすく,透析の継続に影響する.各患者の病状・栄養状態・社会状態に合わせたトータルケアの一環としての食事指導が,今後の課題である.

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高齢透析患者における栄養障害は高齢化,食事量の低下に伴い生命予後にかかわる重要な危険因子である.栄養にはたんぱく質,脂肪,炭水化物などのmacronutrientsと,ミネラル,ビタミンといったmicronutrientsに分類される.ミネラルでは低K,低P,低Mg,低Naなどが重要である.ビタミンでは脂溶性,水溶性ともに摂取不足による欠乏症が重要であるが,微量元素に関しては,透析患者では蓄積もあるので注意すべきである.微量元素で欠乏が考えられるのはZn,Seである.高齢者の食事は緩やかな制限(liberal nutrition)とともに補助食品などによる補充が重要である.

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透析患者では65歳以上で認知症合併割合が増大しており,75歳以上では22.7%である.アルツハイマー型認知症はエピソード記憶障害が多く,視空間認知機能障害も認める.最初,中核症状の失語・失行・失認と実行機能障害などが現れる.透析患者に多い血管性認知症の特徴は,脳出血や脳梗塞などが原因で生じ,症状は脳の損傷部位により異なる.認知症はPEW(protein energy wasting)や栄養障害をきたす要因となるため,定期的な栄養アセスメント,食事行動アセスメントを行い,五感を活用するなど認知症患者の中核症状と実行機能障害に対応した食事の工夫が必要である.

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高齢透析患者においては,年齢や透析期間より口腔内状況のほうが栄養状態と密接な関係がある.食事摂取量は歯の状態や唾液分泌量,舌機能並びに飲み込むときの状態が大きく関与していた.このことより,口腔内状況把握は栄養状態の維持・改善のためにも定期的な診療ケアに盛り込み行うことが重要である.

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日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2018年12月31日現在)の報告と同様,当院においても高齢透析患者は増加傾向である.その生活背景は独居や高齢者二人暮らしが多く,高齢者特有の食嗜好や透析治療などにより低栄養状態に陥りやすい特徴がある.このような状況に対し,療養・栄養上の問題を早期にチーム医療で介入し,継続栄養指導では個別の透析日・非透析日に応じた栄養管理に加え,運動習慣や食事作りなどの自立支援による生活活動度の向上は,高齢者のADL・QOLを上げサルコペニア・フレイル予防のために重要であると思われる.

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高齢者において食料品アクセス問題は栄養状態と関連する重要な問題である.しかし,高齢血液透析患者における食料品アクセス問題についての先行研究はない.われわれは高齢血液透析患者における食料品アクセス問題と栄養状態との関連について調査した.アンケート調査より,食料品アクセス問題を有する者は33%(7/21名)存在した.食料品アクセス問題あり群はなし群と比較して年齢が有意に高く,血清P値が有意に低値であった(あり群83±3歳,なし群74±6歳,p<0.01;あり群4.1±1.5 mg/dL,なし群5.6±1.3±1.3 mg/dL,p=0.03).また,あり群はなし群と比較して血清Alb値が低い傾向がみられた〔あり群 中央値3.3 g/dL(IQR 3.0〜3.8 g/dL),なし群中央値3.6 g/dL(IQR 3.4〜3.9 g/dL),p=0.09〕.高齢血液透析患者においても食料品アクセス問題は,非高齢血液透析患者と同程度存在した.さらに,食料品アクセス問題を有する者はAlb値が低い傾向を示すことから,食料品アクセス問題のさらなる調査が必要と考えられる.

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超高齢社会を迎え,PD患者の約5人に1人が75歳以上の後期高齢者である.そのため,PEW,サルコペニアなど栄養障害と密接に関連する病態を早期にみつけ,早く栄養介入することが重要となる.PD患者の栄養障害の予防には,まずは十分量のエネルギーを確保し,そのうえで少なくとも標準化蛋白異化率で0.90 g/kg標準体重/day以上に相当するたんぱく質の摂取が必要になる.しかし,実際には多くのPD患者が推奨量を下回る.通常の食事からエネルギーやたんぱく質を確保できない場合は,経腸栄養剤を用いて栄養補給する.ただし,栄養介入の効果が明らかになるまでに3〜6カ月程度はかかるため,長期的なフォローが必要となる.

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栄養教育のための指導媒体には,食事内容を把握するための「食事記録表」と,陥りやすい問題点や目標とすべき摂取量を伝えるための「資料」や「フードモデル」などがある.透析患者は検査結果や透析間体重増加量を見て,自身で食事の振り返りを行い,最終的には体重管理・栄養管理を行えるようになることが望ましい.したがって,指導媒体も食事の問題点が把握しやすい「食事記録表」と理解しやすく個々の問題に沿った「資料」が望ましいと考えている.また高齢透析患者の場合,本人だけではなく家族や介護者・施設担当者などとの情報共有や指導を行う場合もある.そのための連絡手段や資料作成も必要である.

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血液透析(HD)患者の高齢化が進み,当院65歳以上のHD患者でフレイル35.9%,サルコペニア51.1%を認め,両者の合併も27.2%に及んだ.追跡調査するとフレイルの生存率は有意に低下し,4年以内に60.0%が死亡していた.そのため運動リハビリテーションおよび栄養補給の管理が重要になってくる.運動リハビリの継続が大切で,当院ではHD中にエルゴメータを使用したところ,身体機能面,ADL,QOLに一定の効果が認められた.早期に低栄養患者を見出し,栄養管理への介入が重要である.当院では,経口的栄養補助食品なども積極的に活用し栄養状態の改善に努めている.HD患者の高齢化とともに,運動・栄養サポートが必要と考える.

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血液透析患者の高齢化に伴いサルコペニア・フレイルを合併した透析患者は増加している.そのため,通常の食事だけでは補いきれない栄養を補給する経口的栄養補助(ONS)は,重要な栄養補給法となる.ONSを利用した栄養サポートは,ある程度経口補給が行える早い段階からの介入が重要となる.本稿では,サルコペニア・フレイルなどにみられる低栄養患者へのONSを用いた栄養補給法とその実践について,報告する.

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わが国では急速に高齢化が進展し,透析患者においても,この高齢化の影響を受けている.また,透析患者では,しばしばPEW(protein energy wasting)と呼ばれる状態がみられるが,高齢透析患者では生理機能の変化や嚥下機能も低下することで,より低栄養に陥りやすい.したがって,栄養状態を的確に評価し,栄養管理をすることが必要である.透析中の静脈栄養(IDPN)は,腎不全用アミノ酸製剤を含む高濃度のブドウ糖などの高カロリー輸液を投与する栄養投与法である.これまでに,IDPNにより,蛋白エネルギーバランスの改善や栄養指標の改善が報告されていることから,合理的な治療選択肢の一つといえる.IDPNの利点と欠点を理解し,栄養管理を実施する必要がある.

[コラム]透析中の栄養補給 市川 和子
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最近では,透析患者において透析日と非透析日では食事摂取量に差が生じることはよく知られるようになってきた.とくに午前透析患者では,4〜5時間の透析が終了して帰宅してから食事となると14時や15時になる人も少なくない.透析日と非透析日では,エネルギー量では体重kg当り1.5 kcal,たんぱく質では0.05 g少なくなっている.つまり透析で糖やアミノ酸などが除去された後,数時間も飢餓状態で経過することになる.この飢餓状態が異化亢進を助長させるのではないかと考える.一方,なかには独自の透析食を提供している施設もある.われわれの調査では,透析終了後30分以内に透析食を食べている患者の栄養摂取量は,透析日と非透析日を比べると提供しない施設とは逆に透析日のほうがエネルギー量は体重当り約1 kcal,たんぱく質では0.06 g多くなっていた.さらに透析食を摂取している患者のアルブミン値は3.7 gと非摂取患者と比べ0.4 gも高かった.透析日の昼食を透析終了後早期に摂取することは,栄養面からみて有効であると考えられる.

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透析患者で従来治療標的とされてきた高カリウム(K),高リン(P),高マグネシウム(Mg)血症は克服されてきている.その一方で逆の病態が栄養不良の問題とともに出現してきている.

OPINION

COVID―19 感染対策と診療の両立 小林 竜
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私なんぞが緒言を述べるというのは大変憚られるのだが,せっかくこのような機会をいただいたので,自由に述べさせていただこうと思う.2020年初めから新型コロナウイルス感染症(COVID―19)感染者が増加しはじめ,2月にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が横浜港に帰港し,私のいた神奈川県の医療機関を中心に受け入れが始まった.COVID―19患者の受け入れ・院内感染対策・病院システムの変更に追われる日々だった.そんななか,4月には都内の日本赤十字社医療センターに異動となった.周知のとおり,東京は3月下旬から急激にCOVID―19患者が増加しており,まさにCOVID―19流行の最前線に常にいるような状況だった.通常であれば,歓迎会・送別会などのイベントや飲み会を行うのが常であろうが,この流行状況では当然開催することはできないまま,日々の診療を行わなければいけない.研修医がローテートするたびに多職種で飲み会をやっていた昨年度と比べると,私のような新参者にとっては,コミュニケーション不足のなかでの多職種での診療は,上手くいかないことも多く,最初はやきもきしたものである.飲み会の席でしか話せないようなくだらない話,日頃言えないような文句・愚痴というのは,コミュニケーションを深めてチームワークを向上させるという点で診療にとっても重要であることを再認識した.そんななか,当科医師みんなでオンライン飲み会を開催したことも一体感を感じることができ,貴重な体験だった.

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第36巻総目次

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編集後記

基本情報

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臨牀透析
36巻13号 (2020年12月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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