臨床雑誌内科 118巻6号 (2016年12月)

増え続けるアレルギー疾患-内科医にできる対策と治療

「Total Allergist」とは 大田 健
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アレルギー疾患の発症には,「アレルギーマーチ」と呼ばれる経時的に連続する疾患の発現が認められる.アレルギー疾患では,しばしば複数のアレルギー疾患を併存・合併している.アレルギー疾患は,Th2サイトカインの作用により亢進するIgEの産生,マスト細胞と好酸球炎症を共有している.自然免疫系の関与も明らかになり,ILC2がTh2サイトカインのIL-5とIL-13を産生して病態に関与している.「Total Allergist」と表現される,アレルギー性疾患について臓器特異的な診療科を横断的にマスターすることにより適切に診療できる,専門医の養成が必要である.

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日本アレルギー学会が発行する『喘息予防・管理ガイドライン』は喘息の病態,診断,治療に関する最新の情報を網羅し,喘息管理の向上に大きく寄与してきた.2015年の改訂では,定義を含めた内容を簡素化し,喘息管理の目標や診断の目安も具体的に表に記載され,わかりやすくなっている.薬物治療に関しても新規治療薬の作用機序や使い方を示すとともに,難治例への対応を表と図に分けて提示するなど,より実地医療に即した形になっている.

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2014年に日本アレルギー学会より「アナフィラキシーガイドライン」が発行された.アナフィラキシーとは「アレルゲンなどの侵入により,複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され,生命に危機を与えうる過敏反応」であり,アレルゲンの可能性がある物質の摂取や曝露の後に,皮膚/粘膜症状に加えて,呼吸器症状,血圧低下による症状,持続する消化器症状のうち少なくとも一つが合併する場合にアナフィラキシーを疑う.誘因として,食物,薬物(抗菌薬やNSAIDsなど),手術関連,ラテックス,ハチ毒などがある.初期対応の要は,adrenaline筋注,酸素吸入,補液であり,再発予防のためには,専門医による誘因の確定と回避およびアドレナリン自己注射の携帯が必要である.

アレルギー疾患とは 山内 広平
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即時型アレルギー反応において,FcεRIに固着したIgEとアレルゲンの結合によるマスト細胞/好塩基球の活性化は多彩な化学伝達物質やサイトカインを放出し,皮膚,鼻,肺に蕁麻疹,アレルギー性鼻炎,気管支喘息として臓器特有の炎症病態を形成する.即時型アレルギー反応の全身的な伝搬はアナフィラキシーショックとして重篤な病態を呈する.近年,上皮に存在するTSLPなどの自然免疫分子がアレルゲンや微生物の刺激で放出され,ILC2からのIL-4,IL-13などを産生誘導し,IgEを介さないアレルギー性炎症が惹起されることが示された.自然免疫とIgEを介した即時型アレルギーとの関連が示唆されている.

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アレルゲンとはアレルギー反応を引き起こす物質(抗原)の総称である.I型アレルギーにおいて,主なアレルゲンは蛋白質であり,分子量が10,000~40,000間に分布するものが多い.皮膚テストは,皮膚のマスト細胞上のアレルゲン特異的IgE抗体の存在を評価する,I型アレルギーのための検査手法である.皮膚テストは,血液アレルギー検査に比べて,迅速で感度が高い.血液抗原特異的IgE抗体価検査は,皮膚テストに比べて,患者へのアレルギー反応のリスクがない点,患者が使用している薬剤の影響を受けない点,併存する皮膚疾患などの影響を受けない点,定量性・反復性がよい点,において優れている.

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咳の鑑別診断には,持続期間や痰の有無を基本に,各疾患に特徴的な病歴を熟知することが重要である.3週以内の急性咳嗽では急性気道感染症(上気道炎)や感染後咳嗽が多く,3~8週の遷延性咳嗽では感染後咳嗽が最多である.慢性咳嗽(8週以上)では,咳喘息,胃食道逆流症,副鼻腔気管支症候群などが主な原因となる.実臨床では急性上気道炎が先行する短期間の咳で,発症早期の咳喘息と感染後咳嗽の鑑別がしばしば問題となる.病歴のポイントは,咳喘息では咳がしばしば夜間~早朝に優位で季節性の変動があること,感染後咳嗽は徐々にでも自然に改善すること,である.

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呼気一酸化窒素(NO)濃度測定は,簡便かつ非侵襲的に採取可能な好酸球性気道炎症の評価法である.呼気NO濃度の測定法と解釈に関する国際ガイドラインが整備され,2013年6月に本邦での保険承認も得られた.呼気NO濃度は喘息の補助診断としての役割だけでなく,抗炎症治療や増悪による気道炎症の変化を捕捉するため,喘息治療のガイドとしての役割も期待されている.今後ますます一般臨床に普及することで,喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD),気管支喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の鑑別診断,気道炎症のモニタリング,治療効果の予測などに役立つことが期待される.

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気管支喘息治療の主軸は,吸入ステロイド薬による吸入療法であるが,すでにエビデンスが確立された薬剤を炎症部位にいかに有効に届けるかという点で,喘息コントロールの良し悪しは,吸入デバイスがカギを握る.そのため,正しい吸入手技操作が不可欠であるが,各メーカー作成の手順説明書のみでは十分とは言えない.指導者側に"吸入薬だから患者は吸入する","説明書通りに吸う"という思い込みもあり,実臨床現場では多くの誤操作(ピットホール)が日々生じている.患者が陥りやすい典型的なピットホールを捉え指導する方法は,効率的でわかりやすい吸入指導となる.効率的な吸入指導を目指す医療連携の試みも始まっている.

喘息 加齢と喘息 横山 彰仁
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高齢者は加齢に伴う全身機能低下があるが,個人差が大きく多様である.加齢とともに併存症が多くなる(多病性)ため,とくに心不全やCOPD-気管支喘息オーバーラップ症候群(ACOS)など診断・治療に若年者とは異なる点がある.吸入手技,発作時の自己対処法の理解が難しい場合があり,また併存症によりβ刺激薬や抗コリン薬などが使いにくいことがある.また,加齢に伴う視力・聴力・記憶力の低下,関節痛,吸気流速制限などにより,吸入療法が困難になりやすいが,一般にアドヒアランスは若年者より高い.多病性に伴う与薬数の増加による薬物相互作用,および加齢に伴う薬物動態の変化(血中濃度上昇)により,薬剤の副作用が起こりやすい.

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成人の食物アレルギーは,感作経路や臨床症状,対策がそれぞれ原因となる食物によって異なる.日常診療において経験する成人の食物アレルギーとしては,花粉食物アレルギー症候群,甲殻類アレルギー,小麦アレルギー(小麦依存性運動誘発性アナフィラキシー,加水分解小麦(グルパール19S)による即時型小麦アレルギー),アニサキスアレルギーがあげられる.診断には,問診(疑わしい原因食物の同定と臨床症状),特異的IgE抗体価の測定または皮膚テスト(プリックテスト)を組み合わせることが有用である.

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花粉症の治療戦略においては初期治療が重要である.薬剤は,重症度と病型によって選択する.薬物相互作用にも気を配る必要がある.舌下免疫療法の成功にはアドヒアランスがカギであり,副反応予防のための患者指導が重要である.

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国民の3割近くが罹患する花粉症の症状のなかで"目のかゆみ"は患者のQOLを著しく低下させる.花粉症の患者は内科,小児科,耳鼻科,眼科などを受診することが多く,眼科以外の科の医師も"目のかゆみ"をとるために抗アレルギー点眼液を処方することが多い.点眼液処方時の注意点は,各抗アレルギー点眼液の特徴,pH,防腐剤濃度などについてであるが,もっとも大切なのは,抗アレルギー点眼液を処方して1~2週間しても自覚症状が改善しないとき,点眼を中止し眼科を受診させることである.改善しないからといってステロイド点眼液や免疫抑制薬点眼液などは処方すべきではない.発症予防のための花粉防御メガネの装用,外出から帰宅時の洗顔,インターネットでの花粉情報の収集などの指導が大切である.アレルギー患者の治療に関わる内科医はTotal Allergistとしてアレルギー性結膜疾患についての基本的知識とともに,眼科医へ紹介する症例や時期についての認知が必要である.

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蕁麻疹では病歴や臨床経過から病型診断を行い,症状誘発因子のある病型ではその因子の同定を行う.ただし,必ずしも誘発因子があるわけではないので,安易なスクリーニング検査は避けるべきである.蕁麻疹の治療においては,抗ヒスタミン薬の内服にて症状の改善に乏しい場合,原因抗原検索や正確な病型分類が必要な場合には専門医への紹介を検討すべきである.アトピー性皮膚炎の診断基準は,(1)そう痒,(2)特徴的皮疹と分布,(3)慢性・反復性経過,の3項目である.アトピー性皮膚炎の治療においては,約1ヵ月治療を行っても改善しない場合,皮疹が重症である場合,ほかの疾患との鑑別が必要である場合などには,専門医への紹介を考慮すべきである.

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アトピー性皮膚炎はアレルギーマーチの初期に出現し,その予防がアレルギーマーチの進行の抑制に有効である可能性が考えられるようになった.アトピー性皮膚炎の基本病態の一つとして皮膚バリア機能障害があることから,発症前に保湿剤の塗布による皮膚バリアを補強することでアトピー性皮膚炎の発症を予防できないかをランダム化比較試験で検証した.新生児期からの保湿剤塗布によりアトピー性皮膚炎の発症を30~50%抑制できることがわかった.保湿剤塗布によるアトピー性皮膚炎の予防でほかのアレルギー疾患も予防できるかはまだわかっておらず,今後さらなる検証が必要である.

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わが国の成人アトピー型気管支喘息患者において,ダニアレルゲンはもっとも重要な室内吸入抗原である.環境整備チェックリストを用いて個々の状況に応じた環境整備指導を行うことによってダニアレルゲンを回避・除去することは,喘息発作や喘息増悪の予防に寄与する可能性がある.真菌はアレルゲンとしてアレルギー疾患の原因や増悪因子となるのみならず,真菌の増加がダニ増殖と関連することから,積極的な環境整備が必要である.ペットアレルゲンの関与については多くは問診から因果関係を推察しうるが,慢性曝露例では自覚症状が乏しい場合があり,注意を要する.

喫煙と気管支喘息,アレルギー 今野 哲
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喫煙は,われわれを取り巻く最大の環境要因であり,種々のアレルギー疾患に影響を及ぼす.喫煙がアレルギーに及ぼす影響を知ることは,アレルギー病態の解明の一助となり,また,日常生活における禁煙指導の重要性を示す根拠となりうる.気管支喘息をはじめとするアレルギー疾患においては,症状,アレルゲン感作,呼吸機能,炎症など,種々の側面に対する影響を考慮し検討する必要がある.

大気汚染とアレルギー 島 正之
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大気中には粒子状およびガス状のさまざまな汚染物質が存在しており,ヒトに対して短期的にも長期的にも影響を与える.粒子状物質のなかで粒径が2.5μm以下のものは微小粒子状物質(PM2.5)と呼ばれ,吸入すると細気管支や肺胞レベルまで到達しやすく,とくに健康影響が懸念される.大気中PM2.5への短期的曝露により喘息患者のピークフロー値(PEF)の低下や喘鳴症状の出現が生じ,長期的曝露ではアレルゲン感作や喘息発症リスクの上昇が認められる.光化学スモッグの原因物質であるオゾン(O3)濃度は増加傾向にあり,喘息患者の病態を悪化させる.自動車交通に由来する大気汚染は,喘息の発症や症状の増悪と関連している.

職業アレルギー 森川 美羽 , 石塚 全
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職業アレルギーは職業中に関連した物質に対する免疫アレルギー反応であり,喘息,過敏性肺炎,鼻炎,皮膚炎などがある.喘息の原因物質は多種類に及び,感作物質と刺激物質に分かれる.主にI型,またはIII,IV型アレルギーによる免疫機序で発症するものと,刺激物質によって誘発されるものがある.刺激性のガス,蒸気などの曝露数時間後に喘息症状を呈するreactive airway dysfunction syndrome(RADS)は刺激物質誘発職業性喘息に含まれる疾患である.職業性過敏性肺炎は,本邦では農夫肺,塗装工肺,キノコ栽培者肺などが知られ,急性と慢性がある.免疫学的機序により,細気管支周囲や肺の間質に肉芽腫形成や線維化を生じる.いずれもまず職業性を疑うこと,詳細な問診が診断には重要であり,治療および予防の基本として抗原回避に努める.

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薬疹は全身投与された薬剤,またはその代謝産物により誘導される皮膚粘膜障害である.比較的急性の経過で汎発性・左右対称性に皮疹をみることが多い.発症までの原因薬剤投与期間は2週間以内が多いが,投与開始後数年を経て発症するものもある.重症型の薬疹である中毒性表皮壊死症(TEN),Stevens-Johnson症候群(SJS),薬剤性過敏症症候群(DIHS)は急激に進行し致死的な経過をたどることもあるため,重症化を示唆する水疱やびらんの形成,著しい粘膜疹,高熱,臓器障害などの所見に注意して診察に当たることが重要である.

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現在,喘息に対して臨床使用できる分子標的薬は,抗IgE抗体(omalizumab)と抗IL-5抗体(mepolizumab)である.omalizumabの奏功背景として,呼気一酸化窒素濃度,血清ペリオスチン高値が同定されている.至適な治療期間を同定するために,中止後の影響も検討され始めている.IL-5抗体は,好酸球性喘息に限定して使用することが重要である.抗IL-5Rα抗体であるbenralizumabの有効性も報告されている.IL-13については,単独のIL-13抗体よりも,IL-4とIL-13の双方を阻害する抗IL-4Rα抗体(dupilumab)の有効性が高い.Th2を標的とした治療として,CRTH2,TSLP,TLRリガンドが検討されている.

免疫療法の可能性 下田 照文
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アレルゲン免疫療法はアレルギー疾患を長期寛解に導くことの可能な治療法であり,皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)がある.アレルギー性鼻炎に対してはSCITとSLITは両方とも有効であるが,喘息に対してはSLITはSCITより効果がやや弱い.アレルゲン免疫療法の有効性として6項目があげられる.a)花粉症およびダニによる通年性アレルギー性鼻炎の症状改善.b)ダニによるアトピー型気管支喘息の症状改善.c)対症治療薬の使用量の減量.d)アレルゲン免疫療法終了後の効果の持続.e)新規アレルゲン感作の予防.f)気管支喘息の発症予防.アレルゲン免疫療法の確実な効果を得るには,最低3年間の治療期間が必要である.SLITによる死亡例は報告されていないが,SCITと同様にアナフィラキシーへの備えは必要である.

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脂質 村田 敬

キホンをシンプルに考える 体液・電解質・酸塩基平衡異常のとらえ方(第7回)

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<Key Point>低Na血症の治療=Na投与ではない.原因の除去により血清Na濃度は改善することが多い.血清Na濃度の上昇にはinの張度を高め,outの張度を下げることが必要である.重症の場合には慎重に3%食塩液を投与する.治療経過中は頻回に血液・尿検査のフォローが必要である.

感染症Basicレクチャー 明日からの診療に使えるエッセンス(第7回)

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アミノグリコシド系抗菌薬とバンコマイシンは,体重当たりで投与量を計算し,トラフ濃度を測定しながら使用する.テトラサイクリン系,メトロニダゾール,クリンダマイシン,ST合剤は消化管吸収がよい.嫌気性菌感染症では,抗菌薬だけに頼らず十分な外科的処置も行う.

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64歳女。発熱・呼吸苦を主訴とした。5年前より気管支喘息のためプレドニゾロン内服加療中であった。入院時胸部X線およびCTでは両側肺野に浸潤陰影を認め、入院時検査所見では著明な炎症反応を認め、喀痰培養にてHaemophilus influenzaeが検出された。敗血症を伴う重症肺炎および気管支喘息発作に対し、プレドニゾロンと免疫グロブリン療法を開始した結果、徐々に全身状態は改善したが、入院10日目に咳嗽後、右腹直筋血腫を発症した。内服中のワーファリンをヘパリンへ置換し、保存的に経過観察したところ、数日後に皮下出血斑を確認できた。入院31日目CTにて腹直筋血腫の吸収を確認してヘパリンからワーファリンに戻し、入院38日目に退院した。退院後85日目の腹部CTにて腹直筋血腫はさらに軽快していた。

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49歳男。就寝中に出現した咽頭痛を主訴に救急搬送された。咽頭の異常所見は認めず、搬送時の心電図では明らかなST上昇は指摘できなかった。血液検査でも高感度トロポニンIが高値であった以外、心原性酵素の上昇は認めず、脂質異常症と高尿酸血症、喫煙歴、家族歴から急性冠症候群の可能性を念頭に置いていたが、診断を確定できなかった。46分後に気分不良と息苦しさを訴え、心電図にて下壁誘導のST上昇を認めた。緊急冠動脈造影検査にて右冠動脈seg.1の75%狭窄とseg.3の血栓閉塞を認め、経皮的冠動脈形成術を施行した。術後合併症なく経過し、第16病日に退院した。

基本情報

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臨床雑誌内科
118巻6号 (2016年12月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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