臨床雑誌整形外科 72巻4号 (2021年4月)

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は じ め に

 脛骨骨幹部骨折は人口10万人中17人程度の発症率で,骨折全体のうち2%程度を占め1),臨床の場でもしばしば目にする骨折である.Küntscherが1939年に髄内釘を導入して以降,脛骨骨幹部骨折に対する手術方法としても髄内釘固定が広く用いられている.以前より脛骨骨幹部骨折に対する髄内釘は,骨幹部閉鎖骨折やGustilo分類type 1程度までの開放骨折が望ましい適応とされており2~5),軟部組織の損傷がおさえられるなどの長所があるため合併症の発生率が低く,比較的良好な臨床結果が報告されている6~8).また近年では近位および遠位に複数のlocking optionを備えた髄内釘の登場により,手術適応も拡大している9).しかし,その術後成績の大規模な検討は2000年代以降ではほとんど報告がないのが現状である.

 本研究では,脛骨骨幹部骨折に対し近年広く用いられている遠位に複数のlocking optionを備えた複数社のインプラントを使用し,内固定術を行った症例の術後12ヵ月までの臨床成績(歩行能力,X線像評価),合併症を多施設共同研究で検討した.合併症については,感染,インプラント破損,コンパートメント症候群,術後12ヵ月時点での骨癒合不全を検討した.

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 術中脊髄モニタリングは,ハイリスクな脊椎手術において必須な手技と考えられている1).日本脊椎脊髄病学会(JSSR)脊髄モニタリングワーキンググループは,経頭蓋電気刺激筋誘発電位[Br(E)-MsEP(MEP)]のアラームポイントをコントロール波形の振幅30%以下へ低下させることを提唱しているが2),アラームポイントに達した症例の麻痺の有無やアラーム後の波形の回復について詳細な報告は少ない.本研究では,術中脊髄モニタリングでモニタリングアラームを生じた症例の術後神経障害とアラーム後の波形の推移を検討する.

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 わが国では,高齢者の増加とともに骨粗鬆症性椎体骨折の発生頻度が増加している.骨粗鬆症性椎体骨折の治療は,一般に安静と体幹装具の着用などの保存的治療を行い,大部分が著しい後弯変形の進行や偽関節の発生を起こすことなく軽快する.しかし,一部の骨折において早期に椎体圧潰がすすみ局所後弯が著しく進行するものが存在する.本骨折後の後弯変形の進行は,骨折の治癒後も腰痛の遺残を惹起し,その後の生活の質(QOL)を著しく低下させる原因となりうる.

 本研究では,新規の骨粗鬆症性椎体骨折と診断された患者に対して,受傷早期にMRIを撮影し椎体圧潰による楔状化変形の進行や疼痛の推移を調査し,椎体骨折後の予後予測が可能であるか否かを検討したので報告する.

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 仙腸関節障害(sacroiliac joint disorder:SIJD)は腰殿部・下肢痛の原因となるため,特に手術適応になることが多い腰椎椎間板ヘルニア(lumbar disc herniation:LDH)や腰部脊柱管狭窄症(LSS)との鑑別が重要である.SIJDと腰椎疾患は合併することがあり,Bernardら1)によると,その頻度は39%であった.また,SIJDは腰椎固定術後2)や除圧術後3)にも生じることが知られており,唐司ら4)は術前にpelvic incidence(PI)が大きいことが術後SIJD発症のリスク因子であると報告している.

 仙腸関節スコアはSIJDに特徴的な臨床症候を得点化したもので,手術適応となる腰椎疾患との鑑別に特に有用であり,スコア4点以上で感度90.3%,特異度86.4%である5).腰椎疾患の術前に仙腸関節スコアが高値であれば,腰椎疾患とSIJDの合併を疑い,腰椎術後に高値を示した場合,新たに生じたSIJDを疑うことができる.本研究では,腰椎疾患の手術前後の仙腸関節スコアが高値で,SIJDの合併が疑われた頻度とその対策を検討した.

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 骨粗鬆症関連骨折である大腿骨近位部骨折は増加の一途をたどっており,機能予後および生命予後の観点から手術的治療が推奨されている1~3).高齢者の大腿骨近位部骨折では,周術期に内科的介入を要することも多く,手術待機期間が長くなると静脈血栓塞栓症を含む合併症や術後死亡リスクが高くなることが報告されている4).そのため早期手術介入のために一般的外傷として扱われ,専門に関係なく手術が行われているのが通常である.しかしながら,骨脆弱性,骨折形態,手術手技などの要因で偽関節や再骨折を生じ,再手術などによりさらに治療に難渋することがある5)

 本研究の目的は,当院における大腿骨近位部骨折手術例の臨床成績を調査し,術後再手術を要した症例と再手術を必要としなかった症例を比較し,再手術要因を後ろ向きに検討することである.

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 手術手技の向上とインプラントの改善は,人工膝関節全置換術(TKA)後の患者に良好な長期成績をもたらした.当院が位置する宮崎県は温暖な気候と豊かな自然に恵まれ,ゴルフやサーフィンなどのスポーツが盛んな地域である.また,超高齢社会の到来により,老年人口比率は30%を超えている.高齢者の健康意識が高まるなか,TKA後にもスポーツ継続を希望する患者は増加している.本稿の目的は,TKA後のスポーツ活動に影響を与える因子を同定することである.

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 内側型変形性膝関節症(OA膝)に対する手術方法の一つである高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy:HTO)は下肢アライメントを矯正し,荷重軸を移動させることにより症状の改善とOA膝の進行を遅らせることが期待できる膝関節温存手術である.特に内側楔状開大式HTO(open wedge HTO:OWHTO)は腓骨の骨切りが不要で脛骨側の骨切りのみであること,術中に矯正角度を調整することが可能であること,専用のロッキングプレートを用いることで早期荷重が可能であることなどメリットの多い手術方法である1~3).良好な術後成績が報告されており4),近年OWHTOが普及してきている.一方,関節変形が高度なOA膝に対しては大きな矯正角度が必要となることが多く,OWHTOを行う場合には,外側ヒンジ骨折や膝蓋骨低位の発生,膝関節面傾斜の増大といった問題が生じる5,6).そのため関節変形が強く矯正角度が大きいOA膝例にOWHTOを施行する場合は十分な注意が必要である.Kellgren-Lawrence分類(KL分類)7)でgradeが低く関節変形が軽度なOA膝例の場合,矯正角度が小さく,年齢が若くて人工関節を行うには手術時期がまだ早い症例が多いため,手術的治療を行うのであればOWHTOがよい適応であると考えられる.本研究では,KL分類grade Ⅱ以下のOA膝に対してOWHTOを施行した症例の術後成績を検討したので報告する.

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 膝前十字靱帯(ACL)断裂の画像診断には,MRIが有効であり,ACLの連続性の有無,走行異常,靱帯内輝度変化などにより断裂の診断が可能である.また,ACL断裂の際に同時に起こる半月板断裂は,外側半月板が多いと報告されているが,MRIでの外側半月板断裂の診断率は100%ではなく,中田ら1)は,診断率は70~95%程度と報告している.また,ACL断裂のMRIでの二次的所見として,脛骨外顆の前方変位,外側半月板後節の後方逸脱などがある2,3).本研究では,ACL断裂受傷時のMRIにおける外側半月板後節の後方逸脱に着目し,外側半月板後節の後方逸脱と外側半月板断裂との関係を調査した.

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 2021年も年明けから2度目の緊急事態宣言が発令され,波乱含みでスタートしました.2月には本邦でもワクチンの接種が開始されましたが,今年もどのような年になるのか予断を許さない状況が続いております.この1年あまりを振り返ると,新型コロナウイルスに翻弄され,これまで常識と思われていたことが次々と覆されたと感じております.われわれ医療従事者の日常も大きく変化した年でした.大きくかわったものの一つにオンライン化があげられます.さまざまな学会が中止や延期せざるをえなくなった昨年春以降,各種会合がオンラインで行われるようになり,さまざまなパラダイムシフトをもたらしたように思います.

私論

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 整形外科医になって早30年が過ぎた.この間の技術の進歩は目覚ましいものがあった.しかし技術の進歩には功罪両面がある.便利さとひきかえに失ったものもある.

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 オプトアウトとは,個人情報を第三者提供するにあたって,その本人が反対をしない限り同意したものとみなし,提供を認めることである.2017年の個人情報保護法の改正でオプトアウトが規定されたのに伴い,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が改定された.これにより,介入や侵襲がなく要配慮個人情報のない研究の同意取得方法としてオプトアウトが明文化された.2020年に開始された日本整形外科学会症例レジストリーにおいても,同意取得方法の一つにオプトアウトが認められており,多くの施設でオプトアウトを選択していると考えられる.「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」1)(第12-4-2)にはオプトアウトの方法として,「研究機関のホームページのトップページから1回程度の操作で到達できる場所への掲載」,「医療機関等,研究対象者等が訪れることが想定される場所におけるポスター等の掲示,パンフレット等の備置き・配布」の二つが例示されている.

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 血管腫は頭頚部に多く発生する良性腫瘍であるが,まれに脊椎の硬膜内髄外に発生することが報告されている1).硬膜内髄外血管腫のMRI所見は非特異的であり,術前の画像検査だけでは,ほかの脊髄腫瘍との鑑別は困難とされる.本稿では,術前画像検査で診断できなかった胸椎硬膜内髄外血管腫の1例を経験したので報告する.

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 サルモネラ菌(Salmonella enterica)とは,腸内細菌科に属するGram陰性・嫌気性桿菌であり,家畜の腸管内では常在菌として保菌される.確定診断は糞便,血液,穿刺液,リンパ液からの菌の検出で,特異的な迅速診断法はない.健康な成人では症状は胃腸炎にとどまるが,小児や高齢者では意識障害・菌血症などをきたして重篤化する場合がある.われわれはサルモネラ菌感染による化膿性脊椎炎に対し抗菌薬投与と後方固定術を行い,良好な成績を得たので報告する.

 本研究において,患者の個人情報は匿名化し個人を特定できないように倫理的配慮を行った.

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 われわれは,特異なMRI所見を呈した馬尾発生傍神経節腫の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

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は じ め に

 ヒトの固有受容体は筋や腱が引き伸ばされることによって反射を引き起こし,四肢に安定性を与え,過度の運動を抑制する1).一方,変形性膝関節症(膝OA)患者では関節包の肥厚などによって,正常な解剖学的位置関係が変化し,靱帯の不安定性となり固有受容体の機能が障害されていることがある2)

 膝OAに対する膝蓋部の皮膚が露出したサポーターの作用機序は,固有知覚の改善であるとの報告がある.Herringtonら3)は,膝蓋部の皮膚が露出した軟性装具装着前後で三つの異なった種類の固有知覚の試験(軌跡試験,再現試験,角度認知試験)を行った.その結果,膝蓋部皮膚露出型サポーターを装着するとすべての固有知覚試験が鋭敏になった.

 過去の筆者の研究では,膝軟性装具の前面8ヵ所に穴を開け,皮膚の露出面積を増やしたクモの巣状穴あき装具の装着時には,穴なし装具装着時に比べて位置覚を評価する角度再現試験の誤差が有意に減少し,重症度指数の改善率が有意に上昇した4).このため,穴あき装具は膝OA患者の膝の安定性を改善し,膝疼痛を引き起こすような荷重を回避する可能性があると報告した.

 Pruitt5)は膝OAによる靱帯の不安定性は角度認知覚を変化させ,疼痛の増悪を引き起こすが,この靱帯の不安定性に対して支柱つき膝サポーターは,内外側方向への動揺性(外側スラスト)を制御することによって位置覚を改善し,膝疼痛を緩和すると述べている.

 われわれは穴あき装具の外側にヒンジ型支柱を挿入すれば,支柱による安定性と穴あきによる皮膚露出面積の増加によって位置覚が相乗的に改善し,膝疼痛が緩和するという仮説を立てた.そこで本研究では,装具メーカーに作製を依頼した支柱つき穴あき軟性装具と文献4での研究で使用した穴あき軟性装具との間で,角度再現試験の誤差と8週間の装具装着による膝疼痛の改善度を比較した.

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 高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy:HTO)は,変形性膝関節症や骨壊死に対する良好な治療成績が報告されている1).骨切り部の癒合に関する成績不良因子として喫煙や肥満,ヒンジ骨折などがあげられる2).術後の骨癒合を促進するためHTO術後に低出力超音波パルス(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)を使用し,骨癒合促進が確認されたという報告がある3).これらの知見を受けて,2016年4月より骨切り術後の骨癒合促進目的でのLIPUS使用が保険収載された.一方,患者自身が実施する治療であるLIPUSにおいて,その使用の実際は不明瞭である.骨折治療においてはLIPUS使用のコンプライアンス評価に関する報告がある4,5)が,HTO術後を対象としたものは渉猟しえた限りない.そこでわれわれは,本研究の目的をHTO術後患者のLIPUS使用のコンプライアンスを評価することで,効率的な患者教育へつなげることとした.病棟滞在中からのLIPUS使用開始は動機づけや習慣づけに有効と考えられ,高いコンプライアンスが得られると仮定した.

Vocabulary

多血小板血漿関節内注射 吉岡 友和
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 多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)は,全血を遠心分離して得られる「血小板を多量に含有する血漿分画」と定義される.その調製方法はさまざまであり,血小板のみならず白血球濃度や活性化法の違いなどで最終産物の生物学的活性が異なることが明らかとなっている1)

連載 革新的技術がもたらす小児運動器難病の新展開――基礎から臨床へ

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は じ め に

 われわれの身体の中の細胞(約47兆個)は,もともと一つの受精卵に由来しており,各細胞は基本的に父親,母親から受け継いだ同じ遺伝情報をもっている.この遺伝情報の違いがわれわれの体質,身体的特徴などの個性,病気の発症リスクなどに関係することが明らかとなっている.一方,体中の個々の細胞は発生,分化や新陳代謝の過程で常に分裂,増殖を繰り返しており,細胞分裂時に生じた複製エラーなどによって後天的にさまざまな遺伝情報の異常が蓄積してくることが知られている.実際にがん細胞ではさまざまなゲノム異常が生じており,このゲノム異常が癌化の原因であることが示されてきた.がんの本質を理解するには,がんで生じているゲノム異常の全貌(がんゲノム)を明らかにする必要があるとして,1986年にノーベル賞受賞者のRenato Dulbeccoがヒトゲノムプロジェクトを提唱し1),2000年にヒトゲノムのドラフトシークエンスの完成が報告された2)

 その後の次世代シークエンサーの開発に伴う技術革新,データベースや情報解析ツールの進歩により,2007年以降さまざまながんを対象に網羅的ながんゲノム解析が実施されている.国際がんゲノムコンソーシアム(International Cancer Genome Consortium:ICGC)[https://icgc.org/]などの共同研究ネットワークを通じて,30,000以上の検体の解析が終了し,膨大な解析結果がデータベースで公開されている.これらの成果によってがんの発生にかかわる分子メカニズムの解明につながるだけでなく,さまざまな臨床応用がすすんできた.未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害薬やイマチニブなど,がんのドライバー変異とその経路を標的とした低分子化合物や抗体薬などが治療に用いられている3).またBRCA1/2変異を有する腫瘍に対するDNA修復経路を標的とした合成致死を目指した治療法(PARP阻害薬)4)や,マイクロサテライト不安定など変異を多くもつ腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬5)など,がんゲノム情報に基づき有効な治療薬が選択可能となってきた.さらに,血液中の腫瘍細胞由来DNAを対象としたリキッドバイオプシーの手法も,治療法の選択や治療効果のモニタリングに有用であることが示されている6).国内においてもクリニカルシークエンスががん基幹病院で実施されるなど,がんゲノム解析が診断,治療方法の決定において重要なツールとして利用されている.

連載 X線診断Q&A

X線診断Q&A 小山 尊士
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Question

 症 例.71歳,男.

 主 訴:左下腿痛.

 既往歴:2年前に咽頭癌で放射線治療.糖尿病.

 家族歴:特記すべきことはない.

 現病歴:約1ヵ月前より長時間立位で左下腿痛が出現するもそのまま経過をみていた.しかしその後も徐々に疼痛が増悪し,夜間安静時にも激痛が出現するようになったため近医受診となった.

 単純X線像で腓骨皮質骨の欠損を認めたため当科に紹介され受診となった.

 身体所見:当科初診時には明らかな跛行を認めなかったが,左下腿後面中央に圧痛を認めた.

 圧痛部位に明らかな腫瘤の触知はなく,下腿最大周径左右差もなかった.

 血液学的所見:白血球(数)5,100/μl(好中球58.0%,リンパ球32.8%),ALP 331U/l,血糖125mg/dl,CRP 1.1mg/dlであった.

 単純X線所見:初診時左下腿単純X線像を示す(図1).

連載 卒後研修講座

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 腱板断裂は,代表的な肩関節変性疾患である.本邦で約1,900万人に存在するといわれ,40歳台以下では5.1%であるが,70歳台で45.8%,80歳台で50%と,加齢依存性の発生がみられる1).画像上腱板断裂がみられても,無症候性の断裂がその65.4%を占める事実は,断裂イコール治療の対象ではないことを示している.また,症候性の断裂においても,まずは理学療法の徹底を指示すべき症例がある一方で,いたずらに時間を浪費せずに即手術決定としたほうがよい症例もある.この辺のさじ加減が腱板断裂の診断と治療のむずかしさであるが,少なくとも手術適応,術式は単にMRIでみられる断裂の大きさで決まるわけではない.腱板断裂の治療方針について筆者の考えを述べてみたい.

連載 専門医試験をめざす症例問題トレーニング

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 症 例.6歳,男.

 主 訴:右膝から大腿部にかけての痛み.

 家族歴・既往症:特記すべきことはない.第一子.妊娠中や出生,精神運動発達に問題なし.

 現病歴:生来健康で活発な男児.特に誘因なく,1ヵ月前より右膝の痛みをときどき訴えるようになった.徐々に痛みが増強して跛行が続くために前医を受診した.膝関節の単純X線像で異常は認められず,精査目的に当院へ紹介され受診となった.

 初診時身体所見:体温36.8°C,身長107cm,体重18.3kg.来院時は右下肢をかばう跛行(疼痛回避歩行)を認めた.膝関節周囲を含め,股関節や足関節に発赤や熱感はなかった.大腿周囲径(右/左)は23/25cm,下腿周囲径は19/20cmであった.足関節と膝関節に可動域制限はなく,右股関節に屈曲,内旋と外旋時の疼痛と可動域制限を認めた.

 初診時画像所見:超音波検査では足関節,膝関節に異常がなく,右股関節に水腫と骨端の不整像があった(図1).単純X線像では右大腿骨頭に骨硬化像と骨端の扁平化を軽度認めた(図2).

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【要 旨】

 研究デザイン:多施設前向き研究.

 目 的:高リスク脊椎脊髄手術に際し施行した術中脊髄モニタリングのアラームと術後神経障害を解析し,術後神経障害を予防するインターベンションについて検討する.

 方 法:2010~2016年に高リスク脊椎脊髄手術に際し経頭蓋刺激末梢筋誘発電位[Tc(E)-MEPs]を施行した2,867例を対象とした.高リスク脊椎脊髄手術は1,009例が脊柱変形,622例が頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL),249例が胸椎OPLL,771例が脊髄髄外腫瘍,216例が脊髄髄内腫瘍であった.われわれは70%のTc(E)-MEPsの振幅低下をモニタリングのアラームポイントと定義し,アラーム後のインターベンションと術後麻痺について検討した.

 結 果:モニタリングの成績では真陽性,偽陽性,真陰性,偽陰性,そしてアラーム後のインターベンションによりレスキューされた症例がそれぞれ126,234,2,362,9,136例であった.変性手術ではもっとも多いアラームのタイミングは矯正で,レスキュー操作は矯正の解除であった.胸椎OPLLではアラームは後方除圧時に生じ,ロッドによるdekyphosisでレスキューされることが多くみられた.脊髄腫瘍の手術では腫瘍摘出時にアラームを生じ,手術中断,ステロイド投与などがレスキュー操作であった.しかし個々の手術においてレスキュー操作はまちまちであった.レスキュー率をレスキュー例/レスキュー例と真陽性例と定義すると,変形手術,胸椎OPLL,頚椎OPLL,髄外腫瘍,髄内腫瘍のレスキュー率はそれぞれ61.4%(35/57),82.1%(32/39),40%(20/50),52.5%(31/59),31.6%(18/57)であった.

 結 論:われわれの高リスク脊椎脊髄手術の神経障害発生率は9.5%であり,そのうちの52%が術中脊髄モニタリングでレスキュー可能であった.胸椎OPLLと髄内腫瘍のレスキュー率は低かったが,モニタリングのアラーム後速やかに適応のあるインターベンションを行うことで神経障害を未然に防ぐことが可能である.

喫茶ロビー

学生街の変貌 三笠 元彦
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 私は1940年に三田で生まれ育った.戦前の三田のことはほんの少ししか記憶にないが,慶應義塾大学の正門(幻の門)のとなりに丸善があったのは憶えている.小泉信三著「海軍主計大尉小泉信吉」(文藝春秋社,1975年)に「(信吉が)三田に通学するようになってから,慶応義塾門前の丸善の店員に顔を見憶えて貰ったことは……」と書かれているように,幻の門の横に丸善があったようである.丸善は戦災で焼失して,戦後は再建されなかった.丸善はなくなったが,三田通りには昭和の時代には本屋は5軒あった.令和の今は1軒もなくなっている.学生の活字離れが起こっている.

学会を聞く

第28回日本腰痛学会 鈴木 悟士
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1.は じ め に

 2020年10月30日(金)~11月30日(日),第28回日本腰痛学会がwebで開催された.本学会は腰痛に関する学際的研究の進歩・発展,知識の普及を図ることにより国民の健康の増進に寄与することを目的に設立され,毎年会員数を増やしながら開催され,医師だけでなく看護師や理学療法士などのメディカルスタッフも多く参加するのが特徴の学会である.本学会の概要と学会を通して筆者が感じたことを報告し,読者の方々にとって少しでも有益な情報となれば幸いである.

第45回日本足の外科学会 張 成虎
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1.は じ め に

 2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりわれわれの生活様式が大きく変化した1年であった.感染拡大防止のため大人数のイベントは中止もしくは延期された.歴史上延期されたことのないオリンピックも初の延期を余儀なくされた.

第47回日本股関節学会 黒田 隆
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1.は じ め に

 第47回日本股関節学会は,湏藤啓広会長(三重大学)のもと,2020年10月23日(金)~24日(土)の2日間にわたり四日市文化会館・都ホテル四日市において,新型コロナウイルス感染症の影響によって現地開催+web開催のハイブリッド形式での開催となった.筆者はオンラインで参加した.一般演題,ポスターを除く,ほとんどのセッションはライブのみワンアカウント配信であり,現地開催同様に自分の聞きたい講演を前もって選ぶ必要があることは従来どおりであった.

 以下に本学会のプログラムを概説する.

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 日常診療において,転移性骨腫瘍患者について相談を受ける機会は日々増えている.今から20年以上前に研修医をしていたころは,転移性骨腫瘍治療は緩和ケアとしての除痛のため,放射線照射のみで終わりにしていたように思う.予後が限られており,手術適応なしとされることが多かった.しかしながら特にここ数年は大きく状況がかわっている.当センターは埼玉県にあるが,県外から多くの転移性骨腫瘍例が手術目的で紹介されてくる.理由の多くは「とにかく迅速に移動可能にしてほしい」とのことである.このように積極治療が求められるようになったことにはいくつかの理由があると思われる.一つにはがん患者の生命予後が飛躍的に延びており,担がん状態で長期生存する患者数が増加していることにあるであろう.そして,骨という運動器が障害されると移動が困難になり,治療続行性が妨げられるからであろう.さらには,治療戦略がいまだ揺籃期にあり成熟したプロトコールなどないことから,骨・軟部悪性腫瘍に慣れている施設に県を超えてでも紹介して何とかしようということになるものと思われる.とはいえ,年間新規がん患者発生数が100万人前後で推移し,本書によるとがん患者の10~20%に転移性骨腫瘍が発生するとのことである.がん患者の生命予後が延びている中で脊椎転移は今後も増加することは確実であろう.さらに,がん診療においては脊椎転移のみならず,変形性脊椎症など骨シンチグラフィやPET-CTでhot spotとして描出されるため,転移と誤診される周辺疾患にも気を配る必要がある.さらには治療に起因した二次性骨粗鬆症による椎体骨折や,非定型大腿骨骨折,顎骨壊死など各科連携のうえ,治療のさじ加減を考えていく必要がある.

基本情報

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臨床雑誌整形外科
72巻4号 (2021年4月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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