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【要 旨】
研究デザイン:多施設前向き研究.
目 的:高リスク脊椎脊髄手術に際し施行した術中脊髄モニタリングのアラームと術後神経障害を解析し,術後神経障害を予防するインターベンションについて検討する.
方 法:2010~2016年に高リスク脊椎脊髄手術に際し経頭蓋刺激末梢筋誘発電位[Tc(E)-MEPs]を施行した2,867例を対象とした.高リスク脊椎脊髄手術は1,009例が脊柱変形,622例が頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL),249例が胸椎OPLL,771例が脊髄髄外腫瘍,216例が脊髄髄内腫瘍であった.われわれは70%のTc(E)-MEPsの振幅低下をモニタリングのアラームポイントと定義し,アラーム後のインターベンションと術後麻痺について検討した.
結 果:モニタリングの成績では真陽性,偽陽性,真陰性,偽陰性,そしてアラーム後のインターベンションによりレスキューされた症例がそれぞれ126,234,2,362,9,136例であった.変性手術ではもっとも多いアラームのタイミングは矯正で,レスキュー操作は矯正の解除であった.胸椎OPLLではアラームは後方除圧時に生じ,ロッドによるdekyphosisでレスキューされることが多くみられた.脊髄腫瘍の手術では腫瘍摘出時にアラームを生じ,手術中断,ステロイド投与などがレスキュー操作であった.しかし個々の手術においてレスキュー操作はまちまちであった.レスキュー率をレスキュー例/レスキュー例と真陽性例と定義すると,変形手術,胸椎OPLL,頚椎OPLL,髄外腫瘍,髄内腫瘍のレスキュー率はそれぞれ61.4%(35/57),82.1%(32/39),40%(20/50),52.5%(31/59),31.6%(18/57)であった.
結 論:われわれの高リスク脊椎脊髄手術の神経障害発生率は9.5%であり,そのうちの52%が術中脊髄モニタリングでレスキュー可能であった.胸椎OPLLと髄内腫瘍のレスキュー率は低かったが,モニタリングのアラーム後速やかに適応のあるインターベンションを行うことで神経障害を未然に防ぐことが可能である.
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